米長邦雄と電子書籍と観る将棋ファン

結構前の話しになって恐縮だが(これ自体は2010年12月12日に書いているがそれでも数日前の話しだ)、将棋世界が電子書籍になった。

将棋専門月刊誌「将棋世界」将棋雑誌初の電子書籍アプリを販売

1937年創刊と73年の長い歴史を持つ将棋専門月刊誌『将棋世界』(発行:日本将棋連盟 制作・販売:毎日コミュニケーションズ)が、将棋雑誌としては初となる電子書籍アプリ(iPad専用)を発売いたします。まずはアプリ本体を12月9日(木)にApp Storeにて発売、その後本誌電子版を2011年1月号から毎号発売いたします。2011年1月号の発売は12月中旬を予定しています。

『将棋世界』電子書籍アプリでは、誌面に掲載されたタイトル戦や講座、詰将棋解答等の盤面の駒を、実際に動かすことが可能です。紙媒体では頭の中で駒を動かす必要がありましたが、アプリでは誌面上の駒が実際に動くため、より一層記事と盤面が一体化しわかりやすいものとなります。

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<『将棋世界』電子書籍アプリの購入方法>
1)まずはApp Storeから、『将棋世界』アプリをダウンロード(税込230円) 
※2010年12月号が自動でダウンロードされます
2)アプリ購入後は、アプリ内「購入」画面から各号をダウンロード(税込600円)
※2011年1月号より発売(12月中旬発売予定。以降毎月中旬発売予定)
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上記は関連URLからの適当な抜き書き。アプリ(電子書籍版の将棋世界の入れ物)が230円。600円で毎月の最新号が入手できるという。

将棋倶楽部24の譲渡といい、新宿の道場の連盟公認化といい、モバイルサイトといい、素晴らしいスピード感である。

これがいわゆる「考えながら走る」ITベンチャーだったら分かる。一頃のwebサービスではスピード感と安定感の天秤で前者に重きをおいたサービス展開がなされることがあったし、今でもソーシャル系のサービスにはその傾向がある。

しかしそうではなく、将棋連盟という古くからある組織が行なったということにとても価値があると私は考える。

一部の将棋ファンにおける、米長会長や連盟批判というのは根強い(或いはネット特有の、声の大きい人が多数に見える、というケースかもしれない)が、古い体質の企業・団体がこういう新しい取り組みを行う場合の大変さ・困難さというのを知っている人間としては、ただただ驚くばかりである。

しかもトップの人間が、行おうとしていることの本質を見抜くばかりではなく、具体的な実装部分にまで知悉しているというのはかなり稀なケースだと思う。米長邦雄氏は、棋士のなかでもかなり早くからインターネットに取り組まれており、インターネットと将棋、電子書籍と将棋の親和性の高さを棋士の中でも最も理解している人間の一人である。

彼以外の誰かが会長だった場合に、今まで将棋連盟によってなされたネット系の取り組みに賛同を示したかどうか?、推進を後押ししたかどうか?、正しい方向性を示せたかどうか?というのは、ちょっと考えただけで恐ろしくなる。(特に幾つかの過去の失敗プロジェクトを見ているだけに)

将棋世界が、紙媒体購入者のバックアップサービス的に提供される(ちょうど日経新聞のように)可能性はあるだろうと思っていたが、新聞のビジネスモデルが販売店に大きく依存していることと比べるとそういうシガラミがないので、すんなり電子書籍化が出来たということなのだろう。

他の既存雑誌が、電子書籍化に移行する負のインセンティブはあるものの、積極的に進めるメリットがないことと比べると、将棋専門誌(紙)には確実にメリットがある。スポーツ雑誌や音楽雑誌でも、電子化することでライブと連動することは理論的には不可能ではないが、雑誌としての成り立ちがそもそも変わってしまう。

将棋雑誌はその本質を変えること無く、ネット上に柿木ツールによって立体的に立ち上げることが出来る。これは本当に大きい。読み物を愉しみ、気になる変化は柿木将棋盤にて実際に並べることが出来る。

有段者、なおかつある程度の高段者でなければ頭の中で棋譜を再生することは難しく、PCでも盤でも良いが実際に並べて愉しむ人間は全体の5%程度であろうことを思うと、将棋世界の電子書籍化というのは確実に読者層を広げうる。

あわせて、観る将棋ファンという古くて新しい存在がある。縁台将棋の時代であればいざ知らず、恐らく三〇年ぐらい前からは徐々に、昔は指したが普段は指す相手もいない、道場にも行かないが、日曜日のお昼のひとときをうたた寝とともにNHK将棋トーナメントとともに過ごす、というお父さんは日本に何百万人かいたのではないか。

これらを古くからいる観る将棋ファンだとすると、最近の観る将棋ファンというのはネット上に多く存在する男女を問わない、おそらくはメインの年齢層としては団塊jrよりも若い年代の人達。前者が受動的観るファンだとすれば、後者は能動的な観るファン。

失礼を承知で書けば、今の将棋世界を指さない人や棋力が低い人が(実際に並べずに)ただ読んでもその面白みは完全には伝わりきっていないと思う。情報感度が高く、あわせて高い知性と感受性をもつので将棋の素晴しさに気づいた人達にこの面白さが十分に伝わりきっていないというのは、とても勿体無いことだった。

電子書籍上に棋譜再生機能を備えておくというのは、そういう人達にわざわざ盤駒持ち出させて並べさせることをしないで、将棋の面白さ、その面白さを伝えるプロの観戦記者の観戦記の面白さを実現する。

或いは、電子書籍版だけに毎月特別収録されている対談、読み物系の付録があっても良いかもしれない。そうすれば読む将棋ファンは紙ではなく電子書籍版を買うようになるかもしれない。

私としては、アイパッドをもっていれば電子版に移りたいところなのだが、生憎持っていない。妻のもつアイパッドで試したいところなのだが、16Gなのでほぼいっぱいいっぱいであり、入れると怒られそうなのでそれもしていない。

年末年始で32Gのwifi版を買って、将棋系のもので充実させる、ということを画策している。

今後、将棋世界アプリに私が希望することとしては、検索性だろうか。よく、この変化について載っていたのは何月号だったろうか…というようなことで手持ちの将棋世界をひっくり返していることがあるのだが、電子書籍化された場合、その作業が逆に困難になる可能性がある。(体感的に真ん中あたりのページ、とか折れ目が付いているこの辺、とかそういうのがなくなるので)。

あとは雑誌版も捨てがたいので、出来れば雑誌版の年間購読者には安い併用を提供するような仕組みも検討してほしい。そうすれば、今は定期購読していないが、今後はするようになると思う。

新しい将棋ファン、観る将棋ファンが増える場合に予想されることとしては、将棋ファン全体として見たときの購買行動の変化、が考えられる。

従来の将棋ファンというのは経済観念が厳格であられる方が多く、不買の表明をそこまで高らかにする必要はないのではないか?と個人的に思うケースがよくあった。

従来のネットユーザーがネットは基本的に無料のもの、と考える一方で携帯ユーザーが着メロに毎月500円払うというような違いが、紙媒体購入層と電子書籍版購入層で現れるかもしれない。


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Author:将棋観戦
「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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