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ボラティリティを抑える棋風?藤井聡太七段、まず一勝(第91期棋聖戦)

いやーすごい戦いでした。現時点で一番の実績と実力を兼ね備えた渡辺明三冠とのタイトル戦、初戦で見事に勝利しました。

以下、例によって個人的な感想です。苦情議論は受け付けませんw

渡辺明三冠にとっては少し可哀想というか、挑戦者のほうがプレッシャーを感じにくい環境だったことは否めません(それを言い訳にする人ではないものの、客観的にみて藤井聡太七段にとってはあまりにいつも通りで一方の三冠はこれからの日程含め、第一人者としての立ち居振る舞いも意識しつつ、和服で部屋は暑そう…ということで大変だったと思います)。それらがどの程度勝敗に関係していたか?はわかりませんが。。

振り駒の結果、先手は藤井聡太七段に。渡辺明三冠としては相手の成長度合いも見れるし、どっちでも良かったのではないでしょうか。目先の一勝に一喜一憂するというよりはタイトル戦をトータルで考える合理主義者なので。

角換わりかな・?と思ったら、意表の矢倉。脇システムになりました。デビュー戦の加藤一二三九段との対戦でも矢倉の大家に…というコメントを残してましたので、似たような意味合いもあったのかもしれません。

若い棋士は普通は初戦は得意のエース戦法を投入するものですが、このコロナ自粛期間中の勉強で矢倉についても十分エース級に育て上げた可能性はありますね。

渡辺明三冠は典型的な先行逃げ切り型のタイプなので後手番では絶対に勝とうというよりは無理せず相手の手に乗ってチャンスを伺うスタイル。脇システムから本局の馬を作る展開はそういう意味があったと思います。

67手目の局面で先手5歩得。後手は馬があって玉が堅くて手番なのでいい勝負ですが歩切れの歩損というのはバランスが一旦崩れるとあっという間…という印象もあります。

中盤では渋い手順が続きます。先手の藤井聡太七段がすぐに端から開戦するのではなく、後手の将来の攻めにしっかり備えた結果、後手が守りの金を繰り出してきます。後手の馬の利き+金が出てきて先手の攻め駒を責められて怖く見えますが、銀取りに金が伸びきった瞬間、ようやく先手が攻撃を仕掛けます。

このあたりの手順、先手の銀が取られそうで取られない手順は相当スリリングで面白いので是非並べてみてほしいです。馬の紐を断つために馬を責める手順で跳ねた桂馬が最終盤の詰み筋を消す…というドラマティックな伏線もあります。

98手目、二択とおもいますが、より強気な手を後手は選択、しかしそこで軽妙な垂れ歩がありました。この後の手順も、渡辺明三冠としてはじり貧になりそうな手順ではなく、ひとまず後手番だしワンチャンスあれば…という感じのリスクはあるけど刺されば勝ち、という手を選択していった印象があります。

対する藤井聡太七段は、攻めの足掛かりはつくりつつ、相手がやや細く仕掛けてきた時はぐっと受け止め、殴り合いの展開に極力持ち込まないように水面下の流れを穏やかに穏やかにしていくのが最近の将棋を見ていて感じます。この辺は研究パートナーの永瀬二冠にも共通している気がします。

ものすごい詰将棋解答能力を白兵戦的な攻め合い・殴りあいの中で発揮するのではなく、局面を収めることに用いつつ、自身の終盤力は大陸間弾道ミサイルのようにロングレンジで発揮するのが最も安定的に勝てると考えているのではないでしょうか。

本局も挑戦を決める準決勝、佐藤天彦九段戦の時のように相手の馬(と飛車)が働かない展開となりました。

最終盤のクライマックス、藤井聡太七段の様子を見ていると雰囲気的にわりと早い段階で詰まないことを読み切っていたように見えます。感想戦では「97玉で…」といってましたが、あれは絶対に詰まないことを確信したのが97玉の局面、ということで詰めろを掛けて下駄を預けた局面では既に「見えてない筋がない限りは、詰まない」と思っていたのではないでしょうか。

あれだけ慎重な藤井聡太七段が残り時間3分とはいえ1分も持ち時間を投入せずに王手ラッシュ前の手を指したので。

まずは一勝。対局後の渡辺明三冠の様子からすると、普段の若手相手のタイトル戦にはない雰囲気を感じました。ただ次は先手番。かつ暫く先になります。名人戦の星勘定をまずは最優先に、月末にかけて先手番の作戦を練るのでしょう。

渡辺明三冠が本気で練ってきた作戦での先手番にどう対峙するか?でこのタイトルの行方がみえてきそうです。
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テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 渡辺明 藤井聡太

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