藤井聡太時代の幕開け

既報の通り、藤井聡太五段が羽生善治竜王、広瀬章人八段を破って朝日杯で優勝した。

本戦出場を決める予選で屋敷伸之九段を破り、本戦で佐藤天彦名人、羽生善治竜王、広瀬章人八段を破っての優勝。A級とA級兼タイトルホルダーを四人破っての優勝なので文句のない、フロックではない優勝といえる。決勝の広瀬章人八段もタイトルホルダー三人撃破したうえでの決勝だったことを考えるとその価値はさらに高まる。

レーティングでは既にベスト10以上のハイスコアとなり、名実ともにトップ棋士の仲間入りを果たしたと言って良いのではないか。

五段昇段後11連勝で朝日杯優勝により六段となったわけだが、明らかに29連勝していた頃の藤井聡太よりも強くなっている。年末に深浦に負け年始に大橋に負けたあたりではわからなかったが、2月以降の将棋におけるその悪手率の低さ、優勢になってからの指し回しは恐ろしいものがある。まさにバレンタインデー効果と言えよう(言えません。

17日の将棋で恐ろしいなと思ったのはいくつもあるが、まずは羽生戦における▲8八同金。藤井聡太さんは77に歩を埋める手とともに、同金か同玉の選択肢で同金と壁になる取り方を比較的選択することが多いようにおもう。これがソフト感覚なのかわからないが旧世代では大体人間の感性的に同玉を本線に読むことが多い。壁金に対する嫌悪感というか忌避感のようなものがあるというか。

あとは▲43歩。端歩の突き捨てのタイミングに代表される、藤井聡太さんらしい絶妙な打診だった。どう取っても後手は味が悪い。(ツイートでちらっと見かけたのがソフトの推奨手で51玉。これは流石に…と思うがどうなのだろうか?)。

こうなったのも角換わり模様で後手がそれを拒否して雁木に組んだ作戦に対する藤井聡太さんの準備が素晴らしかったということで、特に勉強になったのは44の地点が雁木の最大の弱点でありそこをしつこく狙って後手の左の桂馬が33に跳ねていることのデメリットを具体的な手順で顕在化させたところ。普通の、最新型の角換わりっぽい局面に進んでみると後手陣が弱かった。


最終盤の111手目、プロの解説でもそうだったし私も一目は銀を左側のどこかに打って縛る展開かな?と思っていた所で、じっと▲74歩。歩で足りてる、間に合うという読みの深さ。
藤井聡太さんの将棋をみていると他の棋士よりも歩・香・桂の価値がやや高く、しっかりと使えてる印象を受ける。恐ろしくレベルの高いプロ将棋の中ですら突出した上手さを感じる。


決勝戦の相手は広瀬章人八段だった。結果論になるがもしかすると久保利明王将が相手であればもっと苦戦した可能性もある。振り飛車の大御所との対戦も公式戦で早く見てみたい。菅井竜也王位と以前対戦した時にはチカラの差があったように思うが、そこからどこまで成長しているのかを公式戦で見てみたい。

広瀬章人八段はそこまで序盤巧者の印象がない。卓越した終盤力と、以前は確かプロ入り後の勝率で後手番のほうが良かった時期があったことを記憶している(最近はどうなのだろうか?)。作戦的には振り飛車穴熊もあるのかな?と思っていたが普通に角換わり腰掛け銀に進んだ。

普通に、というのがミソでほぼ後手番としては特にこれと言った工夫のない駒組みで、角換わりの先手番の展開を深く研究しているであろう藤井聡太さん的には精神的な負担が少ない序盤だったように思う。

駒組みが飽和して39手目、比較的短い考慮時間で藤井聡太さんが開戦。これに対して広瀬章人八段は△52玉。これは普通に考えて良い手ではないとおもう。ソフトの解析をかければこの1手の価値としては50~100点ぐらいのマイナス手なのではないか?駒落ち将棋将棋の上手のような味わいのある手で後手番らしい待機策かもしれないが問題は最も得意な戦型の藤井聡太さんを相手にしてどうなのか?という気がした。

ここから先は先手の攻めが確かに細く少しでも間違うと切れてしまう…という展開が続くのですが、これが全然切れない。つながり続ける。先手玉が全く危うくないので2-3手セットで手順を組み立てることが出来たのが大きいというか、着実に延々と攻めが続きます。これ、藤井聡太さん相手に絶対選んじゃ駄目な展開だ…と思いました。




朝日杯の本戦でA級以上の棋士たちとの対戦した将棋の棋譜を並べると恐ろしくミスが少なく、そして圧勝であることに驚きます。これはもう藤井聡太さんが完全に覚醒したと考えて良いでしょう。ここから五年は今の実力を維持し更に高めていく期間であることは間違いなく、下手すると今年中、遅くとも来年中にはタイトルを奪取しているのではないでしょうか。

1年にレーティングが50点上昇するとして5年で250点上がるのでやはりトッププロ相手に7割以上勝つ世界が待っているはず。名人獲得が最後のタイトルとなる形で八冠を制覇していても全く不思議ではないように思います。現時点の実力であっても番勝負でこの人に勝てる人はもはやほぼ居ない可能性が高いのではないでしょうか。

気になるのは今の若手プロたちです。特に十代の修行中の人たち。或いは既にプロになっている二十代。この辺の目の色が変わって三段時代のような修行を再開して(特に連携するわけではないものの結果として)藤井聡太包囲網のようにこの恐るべき新人を苦しめることが出来るかどうか。ただそのような切磋琢磨がより藤井聡太さんの将来の棋力を更に高めていくことになるわけですが…。

来期で最短での挑戦可能性でいうと、棋聖戦はこの前大橋さんに二次予選決勝で負けてしまったので秋のタイトル戦、王座戦ですね。まだ先は長いですが本戦まで勝ち上がれば…。

最後に谷川先生の煽りを真似したネタで〆たいと思います。
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テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 羽生善治 藤井聡太 広瀬章人 久保利明

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