豊島独走?深浦進化論 第76期A級順位戦▲豊島将之八段vs△深浦康市九段

最近の深浦康市九段に注目している。

比較的中堅よりも年上の層で、最近の雁木調の将棋に追従している人は少ない気がする。羽生さんはやってますかね。

そんななか、かなり早い段階、たぶん夏ぐらいには既に雁木を取り入れていたのが深浦康市九段。先手でも後手でも組みやすいというのもあるだろうが、かなり多く雁木を指している。 17年度としての成績はそれほど特出したものではないが、夏以降に限っていえば、この雁木調の将棋を指しこなし、勝ちまくってる印象がある。

本局は順位戦ということで先後が決まっているのでお互いに準備があったはずで当然豊島将之八段もそのへんの作戦を前提に、本局の序盤を採用したのだと思う。

26手目△43金右がひとつの分岐点で、雁木と思われて先手の急戦調をみて手厚く一旦は受け止める方針。先手は銀を68に上がっている関係上、これ以上堅くならないので攻めるしかない。この辺の駆け引きは本局の見所の一つだった。(ただ、端歩の形を除けば類型は幾つかあるとのこと)。

この辺をみて私は以下のようにツイッターで呟いた。




そこからの豊島将之九段の指し回しがなんというか相当に過激だった。後手からの角交換にたいして同銀ではなく77同桂馬とした手、桂馬を跳ねてから71角と打った手、極めつけは51手目の▲33銀だった。後手のと金を放置して駒がいっぱい利いている33の地点に銀をぶち込んだ。言い方は悪いが、アマチュアっぽい直線的な手順だと思う。

ただ過激な一手だったが進んでみると穏便な局面に戻っていて、嫌な変化を回避するための過激さだったのかもしれない。

そして一旦収まってから後手待望の反撃。8筋を突き捨ててからの桂馬打ち△9四桂が厳しく、ここではやはり微差かもしれないが後手が良いと思う。

61手目、▲83銀と飛車取りに打った手に対して、深浦九段は32に飛車を逃げる。攻めに活用する含みのある一手。そこから先手の94の桂馬をむしり取った銀(94同歩で取れる銀)が終局(111手目!)まで残ったのがこの将棋の恐ろしさを示している。111手目まで……。

どこかで取り返す順があるはずと思ったがその余裕がなかった。その理由の一つは、67手目▲45桂に対して飛車を取り合う順を選んだことにあるかもしれない。ここは一旦は飛車を浮いて33歩で叩かれるのを避けておく、という手も有力だった。

飛車をとりあって53の地点に成桂を作られた73手目の局面では後手が相当忙しそうにみえる。この桂成りが詰めろというのが痛い気がする。ここでは先手が良くなっていてもおかしくないと感じた。後手の深浦九段は△39飛と王手にうち、詰めろの手順をひとまず回避。先手の豊島八段が桂馬を投入したことで局面が少し落ち着いたようにみえる。

しかし△42歩と受けて、▲33歩と叩かれてみると先手と後手の囲いの差が目立つ。後手にはもはや94の銀を取る余裕がない時点でその分、先手が良くなったのかもしれない。そこからジリジリと攻められて苦しくなった後手が84手目に△86角勝負手を放つが、豊島八段が冷静に▲81飛車なりと面倒をみて勝負あり、ということだった模様。

最後まで残った94の銀不成が先手玉の詰みを逃れている手順もあり、豊島八段がただ1人無敗の5連勝となった。

最近の豊島将之八段の将棋は強いというより恐ろしさを感じる。序盤の深い研究と鋭い踏み込みで圧勝することも多いが、本局や先日の対渡辺竜王の将棋のように局面に含みをもたせずにある程度まで決めきってしまって、そこで実戦的に勝ちやすそうな展開にもっていくという二段構えのような印象。

コンピュータソフトの影響、ということではないのかもしれないが、谷川が終盤を高速化し、羽生世代が序盤を整備して一応の人類の高みに登った後、停滞ではないがその流れの中で培われてきたコンセンサスのようなものに対してソフトがもたらした革新があり、その感覚を自身の将棋に取り入れたプロ棋士が何人かいると思うが、豊島将之の最近の将棋を見ていると確実にその中の1人であり、もっとも最先端の大局観というか将棋感覚を持っているのだな、と思わされる。

羽生・広瀬・久保と二敗で追いかける3人がいて、そのうちの二人との対局を後半に控えている豊島八段だが、このまま挑戦者になる勢いを感じさせる勝利だった。

深浦九段は負けてしまったものの、新しく取り入れた雁木調の作戦がかなり馴染んでいることを再確認した。三名降級という厳しい今期だが、キツイ面子をクリアしての2-3での折り返しは上出来ではないにしても残留可能性でいうとそれなりにあるような気がするがどうなるか?

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Tag : 深浦康市 豊島将之

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