藤井聡太、ついに敗れる。(佐々木勇気、完勝)

んーこれは仕方ない。仕方ないし、長い目でみれば将棋界全体にとっても佐々木勇気にとっても、そして藤井聡太にとってもよい勝負だったように思う。

佐々木勇気が先手を得て、瞑想ののちに▲26歩と相掛かりを志向。後手も追従するが序盤の細かい手順がちょっと怪しい。なんというか普通の相掛かりではないことは分かる。特に意表の玉上がり▲68玉。

暫く進んで判明したのは、お互いに横歩を取るしか無い状況になっていた、ということ。そのための、金に紐をつける意味での68玉だったんだ。

序盤から用意のある佐々木勇気と、その用意が何なのかどういう展開が待っているのかを必死に読む藤井聡太。

佐々木勇気はこの対局が確定する前から、来ることに備えて実際の対局場に訪れ滞在し、肌で藤井聡太の将棋を感じていた。棋譜や中継からでは分からないプロ棋士もしかするとトッププロだけにわかる間合いは呼吸のようなものを五感を総動員し、第六感も駆り出して藤井聡太の将棋を感じ取っていた。

元々、藤井聡太が現れる前の天才といえば増田康宏であり佐々木勇気だった。二人共中学生プロの可能性があり期待され、しかし少しだけ遅れてプロになった。その後も活躍を期待されていたし今でもされているし、徐々に頭角を表し始めている。でもこの成績では、この棋士の才能を考えると物足りない、そういう成績だった。

増田康宏の師匠の森下卓は辛口で知られる。特にその才能に関する表現は辛辣にして正確を極める。その師匠が手放しに賞賛する増田康宏の才能。深浦康市ほどの努力をしていれば今頃竜王だったはずだ、という師匠の表現に増田康宏への期待を伺わせる。

佐々木勇気の師匠の石田和雄も同様に手塩にかけて育てた佐々木勇気の才能を愛する。石田和雄の場合は才能というよりも佐々木勇気という人間そのものを愛しているようにも見える。目に入れても痛くないという表現がふさわしい溺愛ぶりだ。

佐々木勇気はイケメンだが天衣無縫、天真爛漫という四文字熟語がぴったりな、天才かつ天然のプロ棋士。小学4年で小学生名人になるなどその才能に間違いはなく、世代トップの棋士であり、その世代は佐々木勇気世代と呼ばれるにふさわしい存在だ。年下との対戦となると普通はやりにくさを感じるところだが、佐々木勇気はその性格ゆえに気負いすぎないようにするどころか、気負いすぎることでむしろその状況を見えなくしたのではないか。

ここから一生続く戦いのなかで、この一局は単なる一局ではないことを理解し全力で万全の準備で勝負に臨んでいた。この一局で得たものは単なる一勝ではなく、佐々木勇気という一人の天才がついにその本領を発揮する第一歩のようにも見える。

藤井聡太にしても、29勝という歴代新記録を樹立し、8つも年上の実力者の先手番の用意に、全力を尽くして立ち向かい、負けるにしても最後までその才能を感じさせる指し回しだった。負けてもなお、ケレン味のない時間の使い方の上手さや、対局後の会見での精神年齢の高さを見せた。

いつか連勝は途切れる。しかしどこでどのように途切れるか?というのは重要で、ここで止まったのはむしろ良かった。佐々木勇気という大天才が完璧な準備と指し回しで止めたということに意味がある。

藤井聡太はこれからも実力を発揮し続けるだろう。次からの数戦、まだ大記録の余韻のようなものが本人には無くともメディアには残っているかもしれないが、それを気にせず実力を発揮して欲しいと思う。

以下、当日朝に終わったアンケート結果。

一票差?で佐々木勇気の勝利が予想されていた。このアンケートは3日間行ったが、面白かったのが序盤は藤井聡太がリードし、徐々に佐々木勇気が追いつき最後の数分で追い越したこと。観る将棋ファンの目利き力を感じたアンケートだった。
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