用意の仕掛け ▲瀬川晶司五段vs△藤井聡太四段(第76期順位戦C級2組1回戦)

藤井聡太四段がついに順位戦に登場した。昔ほど金銭面での重みはないかもしれないが名人へ到達するための道のりとしての順位戦こそが将棋棋士にとっての本当の勝負の舞台と言ってもいいだろう。少なくとも名人になる可能性が高い藤井聡太にとってはここから名人になるまで一つも負けたくないという気持ちではないだろうか。

既に大々的に発表されているので結論から書くと藤井聡太が26連勝で順位戦デビューを飾った。

私が感心したのは序盤終わり、中盤入り口あたり42手目の着手で1時間を超える長考をしたところ。深く読めるということも勿論あるが、ここが勝負どころという時には必ず腰をおとして考えることが出来る。しかもその長考が持ち時間に応じた長さになっているのが凄い。早指しでも順位戦でもその持ち時間に適切な時間を投入して深く読んでいる。

その長考に至った原因は瀬川五段の用意周到な仕掛けだった。瀬川さんは終局後のインタビューで「こういう形になればいいなという形になった」と語っていた。後手の形が大体決まっているのでこのような研究を藤井聡太にぶつけることが今後も増えていくだろう。

長考の結果受け一辺倒の△44角が指された。これしかない手だったようで、こうなるともう少し先手の攻めが続く。

ただ、そこから進んでみるといつの間にか攻守交代していた。41手目の75歩が攻め継続の手のように見えたが後手の攻めの銀を進出させつつ、△77歩の叩きを生じさせたので見た目の印象ほど先手が良かったわけでもないのかもしれない。

そこから80手後半までの局面は、後手の調子が良さそうに見えた。先手は受け一辺倒の手ばかりを指しているように見え、後手玉は広く縦横の飛車を活用する攻めがあったからだ。

ところが91手目、先手の瀬川五段が受けただけに見えた桂馬を▲46桂と跳ねた局面では途端に景色が変わっている。私はabemaTVで観ていたのだが、この手を指す時の瀬川五段の表情というか姿勢は気迫に満ちていた。明らかに手応えを感じているように見えた。

この手を指された瞬間から暫くの間の藤井聡太四段の様子がすごかった。明らかに動揺しており、良い応手がないか必死に探していることがその目の動き、扇子を弄る手、忙しなく変わる体勢などから見て取れた。

しばらくしてまた藤井聡太四段はこれしか無さそう、という手を指した。中盤の長考と似た長考だった。AbemaTVの解説、藤井猛・黒沢の二人は先手の手として両取りの▲66桂馬ではなく、▲46桂馬と打てば先手の勝ちではないか?と解説していた。本局の展開をみるともし瀬川五段が▲46桂馬と指していたら先手が勝っていた可能性がある。

ただ実際にはどちらに桂馬を打っても後手には必殺の桂馬の成り捨てがあり厳密には勝っていたようだ。もし▲46桂と打たれたとしても詰み筋に藤井聡太は当然気づくだろうからその手を発見していた可能性はある。▲46桂の辺りからはまた藤井聡太は冷静になっていた。そして程なくして対局が終わった。

私は棋譜でしか今まで藤井聡太の対局を観ていなかった。はじめて動画中継でその対局後の様子をみてこれは羽生七冠以上のことになっていることが分かった。この様子を観るまでは、プロ棋士などがいう、負けた棋士にも…云々はあまり私の心に残っていなかった。自分が負けたときの予防線…までは思わなかったが、随分と大袈裟だなと思ってはいた。

しかしそれは全然大袈裟ではなかった。対局終了後にフラッシュが一斉に焚かれ、カメラのシャッター音が延々と続く。感想戦が始まる前に勝利者インタビューが始まる。すぐさま敗者にもコメントが求められる。唯一幸いだったのがその場を仕切っているのが朝日の将棋取材記者であることだろうか。敗者に対しても十分に配慮された質問だったように思う。

対局中の瀬川五段の姿は凛々しかった。真剣勝負に没頭する姿は殺気と男の色気のようなものが渾然一体となっているように見えた。▲46桂を着手した姿は本当にかっこよかった。対局直後にもかかわらず、他の棋士よりは取材慣れしているであろう瀬川五段は一瞬にして指導対局などで見せてくれるいつもの柔和な表情を浮かべていた。質問にも丁寧に答え、連勝が続く藤井聡太を慮るような言葉で自身の発言を〆た。

こんな事が毎回行われていたのか、とはじめて知り、私は以下のようにツイートした。





藤井聡太四段の次の相手は元奨励会、東大生のアマチュアだ。ここはプロとしては負けられない戦いだろう。是非28連勝を賭けて澤田真吾との再戦、澤田真吾にとってはリベンジマッチを迎えて欲しい。


最後に昨日終了した連勝に関するアンケートの結果。過半数の人達が新記録を予想(期待)していることがわかる。


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Tag : 藤井聡太

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