増田四段インタビューと桂馬と矢倉(と藤井聡太さん)

2017年5月16日の将棋と、この以下のインタビューを読んで思ったことをつらつらと書きます。

驚愕必至!増田康宏四段インタビュー

まずこのインタビュー、必読です。増田さんの将棋を知らなくても、将棋の何かしらのファンであれば絶対に面白いです。将棋が指せなくても面白いし、指せると更に面白いはず。

興味深かった点は…

・覚えてからあっという間に強くなった。小2で四段。反則負け経験無し。この前の藤井聡太戦で初めて自分より年下に負けた。
・戦型固定(△8四歩なので矢倉か角換わりのみ)。
・詰将棋や研究会はやらない(実戦の詰め手順を勉強したほうがよい。ソフトで研究)。
・使ってるソフトは激指13(最新の14ではなく)。「(14差し上げましょうか?に対して)13を倒してから。局面によっては手強い」と発言。
・矢倉は桂馬が跳ねられないので雁木に注目。


あたりでしょうか。

矢倉は駒が偏りすぎていて、桂馬が77に跳ねる機会を失っているのがイマイチということで「矢倉は終わりました」という表現を使っています。
(文字通りの意味というよりは、面白く強調した言い回しとして、というニュアンスはありますが)。

最近の将棋、ソフトの評価値や指し回しの影響を一番大きく受けているのが、桂馬という駒の使い方や評価だと思います。

中原先生はかつて「銀桂交換だったら桂馬(のほうが得)」ということを仰っていた。桂馬使いの名手として、若干リップサービスもあったと思う。増田四段は77に跳ねられる可能性を消しているという点を重く見て、雁木を評価しているが、これは最近では少し珍しく、現代将棋では逆に、桂馬の評価はもっと低くなっているように思う。

同じようにソフトを活用した研究であっても、それぞれに個性がでているのが使っているソフトの個性や、研究の仕方によるものだと思われ、その点がとてもおもしろく感じた。

個人的には、昔の評価値を人間が調整していた将棋ソフトでは、歩を1点とすると、香車2点、桂馬3点、銀4点、金5点…という印象がある。これがBonanza登場前の人間のさじ加減によるものだとすると、現時点でもプロ棋士の感性のなかでの評価値というのは、大勢としてはこういうイメージがあるように思う。

ところが、昨日の斎藤慎太郎vs佐々木勇気の将棋では、40手目、後手の佐々木が何もせずに単に桂馬を△8五桂馬と跳ねた。感想戦コメントでは勝負手ということだったが、先手の斎藤慎太郎はこれを具体的に咎める(桂馬をタダ取りして形勢を良くする)手順が思いつかなかったという。

先日のNHK杯、千田vs藤井聡太でもやはり千田が単に桂馬を跳ねている。取りきられるまでの二手(銀を逃げる手を含めると三手)と桂馬の価値では桂馬の価値が低いということだ。

歩で手を稼ぐという手筋があるので、一手の価値を一点と仮に仮定すると、桂馬の価値は三点未満ということになる。個人的には香車の価値も同様に、点数としてはもう少し一点寄りなのではないか。例えば…

歩1点
香1.7点
桂2.4点


というイメージ。(あくまで個人的なイメージです。実際は知りません)。

ここでまた藤井聡太さんの将棋の話に戻る。コンピュータ将棋的世界ではこのように香車と桂馬の価値が低いものとされている。しかし人間の常識でいうと、もう少し高く評価するようにできている。その間におそらく藤井聡太さんは位置していて、それ故に人間的世界とソフト的感性の”美味しいどころ取り”になっている可能性がある。

Twitter上でソフトに詳しい方がつぶやいていたこととして「藤井聡太さんの手をソフトが読むと時間が経てば経つほどその評価があがる」というのはまさに、この仮説が正しいことを示しているように私は思う。

普通の棋士よりも安くそれらの駒の価値を判断している一方、その小駒の活用に重きをおいた指し回しで、駒効率の良い将棋になっている可能性がある。

藤井聡太さんに特徴的な手として、桂馬の活用があるがその一方で、桂馬の利きの地点である77や33に歩を埋める手筋を好むというものもある。この手筋は、増田四段が77に桂馬を跳ねられる可能性を失うから矢倉ではなく雁木、と言っているのと真逆ではあるが、その発言と藤井聡太さんの手筋はいわば”対偶”の関係にあるように思う。

藤井聡太さんは、完全に詰む・寄る局面や、対抗型のように押し引きがはっきりしやすい横の将棋であれば、それなりに押していく。その一方で縦の将棋の場合にはそういう展開を用いず、はっきりしない局面における小駒の活用や、陣形に悪影響を与えない細かい飛車角の動きが目立つように思う。

非公式戦の獅子王戦決勝での対羽生善治戦では対藤井システムとなった。(藤井聡太さんが居飛車側で羽生さんが藤井システム…ややこしいですね)。

藤井システムはご存知の通り、縦の将棋。居飛車も上手く指しこなす藤井猛プロが縦の将棋の感性を取り込んだ対抗型で通常の対抗型とは異なる感覚が必要だ。

藤井聡太さんがあの将棋で負けたのはその辺の感覚の違いが上手く掴みきれなかったのではないか?という気もしている。

この話にオチはないが、次の藤井聡太さんの対局は明日です。またabemaTVで放送があるみたいです。とても楽しみ。
関連記事

テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 藤井聡太

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)