NHK杯1回戦第七局 鈴木大介八段vs大石直嗣四段(解説糸谷哲郎)

NHK杯1回戦第七局 鈴木大介八段vs大石直嗣四段(解説糸谷哲郎)

これを書いているのは当日の朝なのだが、見れないことが確定している。しかし「NHK杯の公式ページ」にて棋譜がすべて見れるようになっていることをご存知だろうか。私は今朝まで知らなかった。今後はこちらにて閲覧しようと思う。

.kifなどの形で保存することを目的とされている方向けになっているのかは分からないのだが(恐らくなっていないのだが)、私はその類の行為を数年前に将棋を中断した際に諦めているので、閲覧だけ出来れば良い。願わくば、棋譜の閲覧というのは各サイトでちりじりばらばらに行なわれるのではなく、どこかしらにて、一括閲覧できると良いのだが。

将棋連盟のサイトのサブドメインにて、棋譜中継を管理しつつあるようなので、その辺りをクラウドっぽく活用できれば有料(優良)サイトになるのだと思うのだが。その際、記録係の棋譜入力も手書きではなく、.kifなどの形で作成するようにして一定時間毎にアップロードして、有料会員にはその(ほぼ)リアルタイム中継が見れるようにする。棋譜コメントが無いので、解説サイトのようなものを上手く講じる必要はあると思うが、出来なくはないだろう。

さて話が相当に逸れたが、この対戦はとても楽しみである。まずは解説が早見えで頭がよく、声がハッキリしている糸谷プロ。大石プロとは同じ森信門下の兄弟であり、棋風やエピソードも満載だろう。

そして振り飛車党の鈴木大介プロと、対振り飛車の研究に優れていると思われる大石プロ。大石プロで印象に残っているのは前期のC2、対矢倉戦。矢倉流中飛車への対策が素晴らしく、超急戦模様で撃破していた(https://contents.nifty.com/member/service/g-way/meijinsen_month/pay/kif/meijinsen/2010/02/02/C2/4433.html)。恐らくメジャーな振り飛車に対してもそれなりの対応を用意されていると思うのでその点に注目したい。




先手でも後手でも鈴木大介プロが中飛車にするような気がしている。対する大石プロは37銀か、居飛穴だろう。もし居飛穴を採用した場合、鈴木大介プロは年下に対して穴熊にはしない主義なので、銀冠vs居飛穴、振り飛車側が角道を開けたまま、という将棋になるだろう。

とここまでが朝8時時点の私の予想。以下は番組後の感想である。


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散髪後の公園にて、ツイッターから中継の様子を見ていた。1g4_さんが局面局面のスナップを投入してくれるので「中継の中継」とあわせて大変楽しく観ることが出来た。テレビは見ていないが、臨場感のある観戦となった。

戦型は私の予想が外れて、先手鈴木先生の石田流。勿論これもある。後手の対策に注目した。後手番の石田流対策といえば、関西。関西では久保・菅井という棋界が誇る捌きの振り飛車党がおり、どうやら研究が進んでいるようだからだ。

しかし本局の大石プロの対策はどちらかといえば、ありきたりのもので、固めるだけ固めることが出来るが、あとは先手にいじめてもらって間違ってもらえれば勝ち、という展開かと思ってみていた。穴熊に対して鈴木大介プロは銀冠。ここは予想通りだ。特に石田流においてはバランスを考えると穴熊よりも銀冠が良い。

銀冠完成前に後手から意表の仕掛け、9筋からの仕掛けから戦いが始まった。これは一目無理筋。幾ら穴熊とはいえ、というもので、そうは言ってもこのまま先手に最善形から攻められるよりはマシ、ということだろうか。あまり見たことの無い思想ではある。もしかすると、研究家の大石プロの工夫はここにあったのかもしれない。

大石プロの狙いは銀冠の最弱点である銀頭への歩にあった。その一歩を安全に得ることが出来れば良いが無理ならば、或いは攻めきらなければ反撃がキツいので、何かの時の燃料補給で9筋の歩を用意しておこうという意味だ。自玉が穴熊、振り飛車は離れ駒、ということでギリギリ成立しているかどうか、という面白い将棋となった。そして、やはり戦前の私が思っていたようにかなりの作戦家のようだ。

元々が木村一基プロとは違う意味で、正統派?の振り飛車受け将棋である鈴木大介プロとしては、直感的には無理、と思われる攻めが続くのは相手が穴熊とはいえ、精神的には楽だったのではないか。もっと辛い対穴熊戦は幾つもあったことを思えば、受け甲斐のある局面が続く。

9筋の非常用燃料を残し、全ての歩を使い尽くした後手は飛車切りを断行する。瞬間的には飛車金交換だが、次の77角成が馬を作りつつ、桂馬を取る手なので二枚替えとなる。ただしこのあたりは満を持してという感じではなく、先手に攻めさせられている感は強かった。

先手視点でいえば、攻めの桂馬を取ってくれて、飛車を貰えるのであれば十分に採算の合う取引であり、おまけに飛車の押し売りまで通り、後手が苦労して作った馬との交換となれば大喜びだろう。攻められることで発生した26の地点に角を逃げながら後手を攻める手まで生じた。それら幾つかのやりとりを経て現れた局面は、後手の攻めが細そうで、9筋で燃料補給する暇がなさそうな状況。

(しかしこのNHK杯の棋譜鑑賞ページ、駒台に9枚しか載らないのと最終手がどれか分からないのは結構宜しく無いと思われる。どこか存じ上げないが高い開発費をお支払いして作っていただいているならば、純粋なバグに近いものなので直して頂きたい。特に前者は致命的で、終盤になればなるほど訳がわからなくなるのではないか。)

後手の58飛車に対して、ヒラリと37に玉を上がった手が本局のMVPではないか。「週将ブックス 手筋の隠れ家」的にいうところの、プロにしか指せない手ではない類の良い手だ。通常銀冠の逃げ場といえば、17の方がメジャーなのだが、こちらに逃げた意味は49にある金の無力化。玉で48の地点を受けに行っている。

後手の攻め駒は45の桂馬まで含めてギリギリ4枚なのだが、49の金が使えなければ3枚。切れ模様となる。含みを持たせた攻めでは速度負けする後手は直接手を続けるがヒラリと銀冠の秘密の小部屋から最上階へと脱出する鈴木玉。無理やり49の金を使いに来た大石プロに対して素直に交換して、竜を叱りつける38金がまた好手。王様のいるべきところに敵の銀がいるという不思議な銀冠が完成した。

単騎で敵の城に忍び込んだ銀が王様の姿を見つけられずに焦っているのを、秘密の小部屋の最上階でニンマリする鈴木大介プロの王様、という図。後手はこの38金に対して同竜とするのは同銀で完全に切れてしまうので、逃げるのは仕方ないが、ここで打った▲55角が、28の銀を仕留め、遠くは敵玉を射抜くプロの名手。よく分からないが、大石プロがなけなしの駒を受けたということは詰めろ銀取りだったのかもしれない。

28の銀を取りきられては既に後手に勝ち目は無いが、テレビ将棋でもあるし、なんといってもまだ穴熊は潜在的な脅威は抱えつつも無傷に近いので、ここで大石プロが戦いの発端となった9筋から歩を入手する。仕掛けてから実に52手目のことだった。(52手目に端を突っ掛け、104手目に歩を取った)。

流石にここでは先手勝勢とはいえ、寄せ方を間違えると危ないし、33の桂馬は高いところにいる先手玉の玉頭を狙っている攻防の手でもある。鈴木プロの終盤の構想力が問われることとなった。まずはセオリー通りに守りの金を安い駒でハガシにいく44桂馬。後手は端で得た一歩を用いて攻め合い。△35桂馬が詰めろなのかどうかは分からない。しかし続く△15歩は詰めろ。(この手を詰めろにするための桂捨てだった)。

NHKのサイトの盤では駒台に駒が溢れているので分からないが、桂馬があるので、投了図からどこに逃げても桂馬を36に打つ筋がある。

全体を通してみると鈴木大介プロがその持ち味・棋風を存分に見せつけた完勝だったといえる。また、大石プロもその斬新な攻めのアイディアを披露し、負けたとはいえ、作戦家である自身の将棋を全国に知らしめたのではないだろうか。個人的には糸谷プロの解説が聞けなかったのは残念なところだが、身内のもので糸谷に似ているものと、その父親には携帯メールにて伝えておいたので見てくれたのではないかと思っている。

最後にNHK杯の前に私がTwitterにて呟いていた言葉を引用して終りとする。


今日のNHK杯、大石さんは37銀か居飛穴だろうな。もし居飛穴を採用した場合、鈴木大介プロは年下に対して穴熊にはしない主義なので、銀冠vs居飛穴、振り飛車側が角道を開けたまま、という将棋になるだろう。対深浦戦で何度かみた形。振り飛車側が苦労するが勝つとカッコいい将棋になる。

http://twitter.com/shogiwatch/status/14064526511



中飛車という予想は外れたが、大石プロの穴熊、そして鈴木大介プロの加齢な、もとい華麗なプロの技が炸裂したというところは当たったので半分正解というところだろうか。観戦前にこういう予想をしておくと、対局者になった気分でより観戦が楽しめるので、観る将棋ファンには事前の戦型予想を是非行って欲しいと思う。

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