2010/05/09 第60回NHK杯1回戦第6局 ▲瀬川晶司四段vs△広瀬章人五段

2010/05/09 第60回NHK杯1回戦第6局 ▲瀬川晶司四段vs△広瀬章人五段

どちらもブログを持つ、ブロガー棋士同士の対戦。解説もブロガー棋士である片上プロだったようだ。

戦型は広瀬が最近多用している印象のあるゴキゲン。瀬川の作戦は37銀急戦だった。その後の進行はどこかで見たことがある…と思ったら、同じNHK杯の丸山vs羽生戦で出たものだった。私も感想を弊ブログに書いていた。(縦か横か? 升田の自陣飛車、現代に蘇るも不発 第59回NHK杯 丸山九段vs羽生NHK杯

確かあの時の感想戦では38飛車ではなく27飛車という手があったか?という話だったと思うが、瀬川プロの選択は58飛車打ち。続く手は68銀。上記の感想ブログにて、手損でも77の銀は68に引きたいと書いたが、その展開となった。上記の将棋を踏まえての修正案だろう。

ただし、その後の攻め合いは垂らした歩の成り捨てから、一歩ずつ後手の攻めの方が早い。45に桂馬を跳ねて、58歩となった局面では後手が二枚替えの駒得。62手目の局目では銀桂香と角の三枚替え。後手としては満足なのではないか。

先手は言いなりになったようだが、後手からの攻撃をできるだけ遅らせてから、角と金銀の二枚替えを実行する。これで金と桂香の二枚替え。依然後手が駒得であり、左側の駒が全部捌けきっているので後手が良さそうだ。

後手の安全確実なローラー作戦のような攻めに対して、先手は後手の51の地点に駒の利きを集中させる。41金が重そうだが、五月蝿い。どうするのかと見ていると51の地点に利かせる24角。これにて受けきり、という手だ。

止まると終わりなので先手の瀬川プロは必死に手を繋ぐが、やや切れ筋模様。そこからの後手広瀬プロの凌ぎ方が、何とも穴熊風で面白かった。端の突き合いがない美濃は寄りやすいとしたものだが、広瀬プロが指すと串カツ囲い風の堅い玉になるから不思議だ。

99手目、遂に先手の攻めが一服して、待望の48成桂が入る。成桂と金を交換した後、どのように攻めるのだろうか?と思っていると一転して52金と龍を叱りつける。逃げて65桂馬の筋を食らうと勝ち目がないと見た先手は龍を切って張り付くが、やはり一手遅れていそうな雰囲気。

111手目の48歩の受けに対しては遊び駒の活用で61銀左。このあたりの攻めたり受けたりの後手の手順は本当に勉強になる。先手の53桂馬に対して、最後の仕上げ、44角がカッコいい手だ。受ければ53の桂馬を抜かれた手が再び71の銀当たり。辛すぎるので、61桂成りと首を預ける瀬川プロ。

しかしこの44角で詰み、というのはどの時点でどの位で読めるものなのだろうか。53桂馬に対して受けると食いつかれそうな雰囲気もある中で、こんなぴったりした手があるとは。

将棋プロの出世コースとして小学生名人、新人王というのがあるが、広瀬は新人王を獲得している。その終盤力には定評があり、詰将棋解答選手権(ちなみに「解答」の二文字は重要らしい。確かに詰将棋選手権では作る方の選手権のように聞こえる)でも常に上位に来ている。

その反面、序盤に難有りということでそれを補う意味で四間飛車穴熊を用いていたようだが、一線級で通用しないことが出てきたためか、後手戦法のバリエーションが増えている。

終盤の切れ味の鋭さ、受けて持ち駒の条件を変えつつ、かれこれの寄せのスピードと詰み筋を測る能力の素晴らしさには素直に敬服するしかない。これで序盤巧者っぷりが備われば、相当に伸びるのではないか。戸辺プロのほうが序盤から中盤にかけての指し回しの上手さを感じさせるが、阿久津プロと同様に、しかし味は違うが広瀬プロは中盤から終盤の才能のキラメキを感じさせる将棋だ。

最後にこの先手の戦法だが、個人的にはやはり先手が好んで飛び込む変化ではないように思うのだが、次なる修正案は出てくるのだろうか?△55角への応手としては、飛車を打つしか無く、その飛車を後手が取れないのであれば先手もやれそうだが、取れてしまうこと、77の銀が手損で68に引くか66に出て相変わらず角道を塞いでいる状態にするしかないことを考えると、本譜のように後手の攻めが一手だけ早い、ぎりぎりの一手勝ちとなるのではないか。

それにしても本譜の後手番広瀬プロの指し回しは見事だった。ゴキゲン党であれば是非盤に並べたい将棋ではないか。今回は惜しくも負けてしまった瀬川プロだが、久しぶりに瀬川プロの将棋を見たが、プロになるきっかけとなった銀河戦での対局の思い切りの良さ、明るく元気に攻める姿を保っているのが分かった。この調子で是非萎縮せずに伸び伸びとした将棋を順位戦でも魅せて欲しい。
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(2010/02/13)
瀬川 晶司

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これは将棋好きならば、観る指す問わず読んで欲しい名作。瀬川プロの文章が兎に角上手く、私は引き込まれて一晩で読んでしまいました。中学生名人戦あたりで子供時代からのトップアマ、現在のプロの名前が出てくるのも注目のポイント。
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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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