Welcome to the Kubota world! 第60回NHK杯1回戦第5局 ▲窪田義行六段vs△畠山鎮七段

第60回NHK杯1回戦第5局 ▲窪田義行六段vs△畠山鎮七段

例によって棋譜のみ入手した、異能派振り飛車党の窪田プロと攻め味鋭い畠山鎮プロの戦い。先手の窪田プロは今は数少ない先手藤井システムの使い手であり、序盤の端歩突き越しは手馴れたものだろう。

序盤のやり取りで相穴熊が濃厚となったが、相穴熊であれば端の位は大きい。とはいえ、後手の畠山鎮プロも覚悟の上だろう。端の分、どこかで具体的にポイントを稼ぎたいところ。

先週の野月プロのように、22に空気穴を開けたままで穴熊を構築していく。無事組みあがった時点で22銀とハッチを閉め、先手は3筋の歩を替えて攻めの銀を26に据える。前期の朝日杯オープンでも似たような将棋だったが、端の突き合いがあれば逆棒銀もあるが突き越しているために何となくぼんやりした銀にも見える。

後手は端を緩和する意味で銀冠穴熊に組み替える。先手も懸案の左金を無事玉に寄せることが出来て双方主張が通った形だ。あとは攻め駒の少なさをどうやりくりするか?という勝負となった。

攻めの棋風である畠山プロが、細かく歩のジャブを入れて先攻する。攻め駒の足りなさは左金を前線に繰り出すことでカバーしようとしている。細い攻めに見えるが94手目の54角は一目味の良さそうな手だった。このあたりでは微差だが後手が局面をリードしに行っている。端の関係で得た手数と歩を用いてぎりぎりの攻めを続けているとも言えるし、攻めさせられているとも言える。

先手は4枚穴熊であり、後手の穴熊は多少上ずっている意味があり、一段龍が潜在的脅威となっている。双方の棋風に合致した展開だと思う。切れたらお終いの後手は神経と歩を使って細かく攻める。131手目、同金の局面で遂に先手玉は危なくなっているように見える。特に相穴熊戦は先に手がついたほうが負け、という勝負のはずなのだが、対位取り中飛車における相穴熊らしい、通常の相穴熊とは少し違う感触があると思う。

それにしてもこの局面、金が斜めに誘われて今にも危なそうに見える先手玉だが馬が利いていて寄り付きがない。それでも懸命にパンチを繰り出す畠山プロだが、遂に刀折れ矢尽きた、という局面が149手目の28金というところだろう。

歩切れで相手に香車を二枚持たれている。一段飛車と香車・上からの押さえで圧迫されてしまうわかりやすい展開が見えている一方で、先手玉への手がかりがなくなってしまった。後は指しただけ、という感じだった。

どこが悪かったのか?

94手目から振り返って眺めてみたが、或いはずっと忙しかったのかもしれない。引っ張り込んで受ける、という表現がぴったりの窪田の受けつぶしが炸裂していたのだろうか。特に感心したのが115手目の38歩だろうか。見れば当たり前なのだが、1歩得する細かい上手さだ。123手目の48金引、で後手が強襲する手段がなく一段落するようでは既にパンチの打ち疲れが見えているだろうか。

続く125手目の74角成が良い手だ。受けつぶす気満々の手である一方、127手目の75馬が攻防。ここで先手の馬と後手の角の性能の差が出ているようだ。139手目の38金も重要な手で、同歩(26歩)などとするとたちまち逆転されてしまう。

最後はプロ将棋では珍しいぐらいの完切れだった。アマだと高段でもたまにこういうことがありそうだが、プロは指し切りを恐れるのであまりここまで切らされることはない。何となくだが、来期のB2における畠山の苦戦を予言しているかのようにも感じた。(来期のB2にはネチっこい将棋の人が揃っている)。

窪田プロはいかにもらしい将棋で、自身の持ち味を思う存分に発揮した。そういえば、前期の朝日杯決勝も似たような将棋で、先手の久保プロが角を上手く使えなかったことを敗因の一つとして挙げていたが、それと比べると窪田プロの角は縦横無尽に活躍していた。受け将棋のうまい人、特に振り飛車党においては、馬を引きつけるなど活用を図る手がうまい人が多いが、本局における窪田プロも流石の角・馬の運用だった。

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(2008/11/26)
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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

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