今更、竜王戦第一局の感想(糸谷竜王、後手番で先勝)

いやーすごい将棋でしたね。なんというか、森内さんをイラつかせた渡辺明さんを糸谷さんがムカつかせる、的な。竜王戦というのはイラつき・イラツカせる系譜なのでしょうか。冗談ですが。

渡辺明ブログには全く言及されずに終わってたので、遅ればせながら私がかわりに書きます。

まず最初に私の棋力は相当低いですが、それでもなんとなくこの将棋の雰囲気というかニュアンスというか面白さが自分なりには感じ取ることができて本当に良かったなと思いました。

両者の持ち味が出つつも、より糸谷さんらしい展開、糸谷さんが好きそうな展開ではあったかなと。竜王戦に私が期待していた、糸谷さんの先手番では王道の指し回し、後手番では奔放ないい意味でケレン味あふれる将棋、というのが早速でたなと思いました。

封じ手後の後手の覚悟の角打ち。角交換系の将棋はどっちがどういうタイミングで、どこに角をおろすのか?がポイントになりやすいです。そして渡辺明棋王の置いた場所というのは、筋違い角ではあるものの、桂馬の頭を狙ってわかりやすいんですよね。

はっきりいって、この封じ手局面をもって同レベル同士の戦いで後手が勝つというのはなかなか無いような気がします。そのぐらい、後手が勝ちにくい将棋。形勢云々だけではなく、形として主張点が少なすぎるというか。

55手目ぐらいの局面でみても、飛車の位置、玉と反対側の金銀の位置、玉の位置、全部先手のほうがいいですよね。後手の5筋と1筋の位?は効いてるのか効いてないのか、今後役立つのかさっぱりわかりません。


58手目の6二角が最高にロックな手(by行方プロ)ですね。もはや有効手はないと。プロっぽくないけど、あからさまな狙いの手をほぼ唯一の主張点だった生角を投入して狙いに行くという。ロックといってもカッコいいロックじゃないですね。かなり芋臭いロックです。芋焼酎のロック、ぐらいに(寒

その手に乗るようにして渡辺明棋王が動きます。この辺は正統派王道の渡辺明棋王らしい見切り。金を繰り出して中段でうろちょろしている飛車を懲らしめたい、というわけですね。やたらと中座する糸谷さんとこの飛車のうろちょろは被ります(勝手な妄想笑)。

そして70手目前後でお互いに金・桂馬を取り合うわけですが、この辺で既に雰囲気出てきてます。両者と金をつくるものの、先手が銀を逃がして後手のターンです。厳密には銀の位置関係だけみても先手のほうが良いとは思うんですが、ここでターンを握れたのは、ケレン味発揮しがいのある展開になってるのではないでしょうか。

この後のやりとりで結局、派手に応酬するんですがやっぱり先手がよい、という局面になります。糸谷さんは以前も言ってますが、悪いところで考えても仕方ないと。考える余地がないということで割合サクサク指していって、先手の81手目、▲2一飛があまりよくなかったかも?という感想があります。ただ、普通の手にも見えるので、後手の銀得、実戦的には食らいつく余地が残った局面になった、というまことに人間同士の勝負らしい感じでしょうか。


とはいえ、ハッキリ言って84手目でただただ受けただけの△8三歩しかないのであれば、相当に先手が良いように思います。手順の意味合いとして相当悲しい手です。そして遂に!93手目があまりよくなかったようですね。取られるだけだったはずの3二の銀が防御壁になって、全く働いてなかった6二の角が96手目で△3五角と活用出来た、それだけで本望です。この角が使えずに負けたら相当カッコ悪いですからね。

その先の手順の善悪はさっぱりわかりません。もちろんそれまでの手順も分かってないんですが、96手目以降は一日目を思えば、そして後手番だったことを思えば糸谷さんにとっては万々歳な展開です。綺麗に手も足も出ないままにボコられる可能性すらあった糸谷さんがすくなくともパンチの打ち合いには持ち込むことが出来たわけですから。
正確な敗着や形勢判断は後日専門誌で確認したいと思いますが、アマチュアで今でもやはり大人気の対抗形、振り飛車側が美濃の時の玉頭戦のような味わいがありつつ、両者居飛車党なので縦の攻め合いが一手違いになるスリリングさ。どの棋風の将棋ファンにも楽しめる将棋だったように思います、唯一渡辺明棋王のファンを除いては…。

羽生さんとの挑戦者決定戦では後手番で勝ちきることは出来ずに、しかし先手で二勝し、竜王奪取した糸谷さん。ただその前のトーナメントではらしさ全開で実力者をぶっ飛ばしてます。

今回の防衛戦を迎えて、特に調子が良いわけでもなく。直近の順位戦、同じく力将棋な窪田さんとの将棋は酷かったですからね。あれみた後だと流石にファンの私でも、とりあえずいい将棋になってくれればいいか、というぐらいの期待感。開幕戦前夜祭での糸谷さんの挨拶で「仲間内に防衛戦の予想を聞いたら、ほぼ奪取でした」みたいな発言。アガらないタイプでもなさそうなんですが、その緊張が将棋に悪影響を及ぼさない不思議な体質?ですよね。今回の防衛戦初戦の展開は、そういうここまでのエンジンのかかってない感じを一気に払拭する、そういう予感があります。

勿論、渡辺明棋王は相当今回の負けについてムカついてると思います。糸谷さんにムカついているとかではなく、せっかくの先手番でキチンと優勢な状態で二日目を迎えたのに、という意味でです。ここからの渡辺明棋王には隙は無いと考えてよいでしょう。次は糸谷さんの先手番ですが、序盤の緻密さも含めてまたあっさりと、角換わり腰掛けの先手番なのになぜか思わしくない局面で封じ手、みたいな展開も充分に考えられます。

今回の初戦勝利でようやく五分、或いはまだ渡辺明棋王の奪取可能性のほうが高いかもしれません。七番勝負は長丁場なので、ここからの糸谷さんの調子がどうなるか?を見ながら楽しみたいと思います。
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