糸谷哲郎、タイトル戦初挑戦・竜王位獲得!

糸谷哲郎七段がタイトル戦初挑戦にして、森内俊之竜王から4-1の成績で竜王位を奪取した。これで、八段に上がるようだ。挑戦を決めて七段、奪取により八段ということのようだ。森内俊之前竜王は、これで肩書呼称としては前竜王か九段になる。森内プロが九段を名乗る(無冠)になるのはかなり久しぶりのことだと思う。三年以上ぶり?

それにしても、色々な意味で衝撃的なタイトル戦だった。私のやっている応援サイトのサブタイトルでもある、まさに「直感は経験の集積から成る分析」を体現するような、糸谷哲学を示してくれたように思う。

タイトルホルダーの品格やら、持ち時間の使い方云々やら言い出せばきりがないところではある。日本の縮図の一つであるところの将棋界や相撲界ではよくある話ではあるが、まずは素直に若き才能の開花を、お祝いしてあげたいし、そうして欲しいと願っている。

Twitter上の将棋クラスタの中ではひときわ有名なitumonさんの言葉をここで引用したい。



糸谷竜王は奨励会時代から「怪物」として有名で、でもプロになって対局してみると、皆一様に中盤くらいでよくなって「あれ?本当に怪物なんかな?」と思ったら終盤にはきっちり抜かされている
「プロ相手にこんな勝ち方するとはやっぱり「怪物」なんやな、うんうん」と皆納得したという糸谷伝説

https://twitter.com/itumon/status/540401825212420097



相手を、しかもトッププロを間違えさしたり、複雑な局面にして混沌に導いたり、相手が何を見落としているか察したり。と言ったものは中々棋譜を並べたりしても見につかない天性の物なのですよね、まさに見事な糸谷竜王の終盤でした。

https://twitter.com/itumon/status/540400819250548736


まさにこの2つに糸谷哲郎の、糸谷将棋の凄さが集約されていると思う。デビュー当時から、こういう将棋だったが、それだけではなく、色々な球種を増やしてここまで上り詰めた。順位戦ではしっかり時間を使うようになったところもその成長の証だ。

今回のタイトル戦においてなぜ時間を使わなかったか?の一つの理由としては、事前準備が万端であり、ゆえに本人としては考えるところがなかった、ということもあるだろう。また、タイトル戦の舞台で舞い上がっていて…というのもあるかもしれない。文字通りいてもたってもいられない…という。

そういう意味では、若手相手に胸を貸した森内俊之プロもまた横綱相撲というかタイトルホルダーの度量を示したのではないか。相手の得意を逃げずに受けて、その上で倒す。そういう気概を感じた。特に、その得意を避けた結果、逆転負けということになってしまった第四局がひとつのアヤだったかもしれない。

羽生さんが、家族内の逆転将棋を繰り返すことによって、またプロ入りしてしばらくするまで本格的に定跡を学ばなかったことにより、絶妙の間合い、勝負術を身につけたように、将棋倶楽部24という実戦の中で、独特の勝負術を身につけ、地方出身・在住というデメリットを跳ね返してその才能を開花させた糸谷哲郎プロらしいタイトル戦だったように思う。

将棋は逆転のゲーム、という意味ではその本質のひとつを示したとも言える。プロとコンピュータの戦いを控えた竜王戦で、人間とはなにか?人間とコンピュータの違いはなにか?ということをまた考えたくなるような気持ちに私はなった。

この竜王奪取までの、竜王ドリームの軌跡/奇跡を少しだけ振り返ると、三組優勝を決めた対戦相手はそれほど(対戦相手に失礼ながら)勝ってもおかしくはないと思う。(アベケン、中座、佐藤和、西尾)。

しかし決勝トーナメントの三浦・屋敷・行方というのは本当のトップクラスだし、それらのメンツに対して、一手損角換わりという、プロがみてもあれでどうにかなるのが驚き・・・というような、特殊な作戦を用いて、後手番が辛いと言われている状況にもかかわらず、圧勝に近い勝ち方をしている。

そして挑戦者決定戦で、棋界最高峰の羽生に先手番でのものとは言え、二勝している。

森内俊之プロの良さというのは、やはり対羽生名人との直近数年間の名人戦に代表されるような事前準備と、二日制という舞台における時間の使い方のうまさにあった。

そこは、ある意味暗黙の了解というか、相手が考えた時はこちらも考えるという、リズムの取り方、空気の作り方、が羽生世代やその前の世代のなかにあったように思う。

それは別に良し悪しではなく、そうやっていくことでより深く思索の中に入り込んでいく。相手の力を借りながら深く深く思考を重ねていく。そういうものだったのだと思う。

しかし、渡辺明プロがやはり森内俊之プロを打ち破って新竜王になった時に示したように、同じようにやっては勝てない若手がある意味勢いにのって騎虎の勢いで格上を破るというのは、なんともライブ感があるというか、若さの眩しさのようなものを感じる。

日本の閉塞感というのは、○○な▲▲はけしからん、というようなものでより強まっているような気が、老害サイドに近い私ですら思う処なので、今回の諸々については、成長とともに自然と薄まっていくと考えたほうがいいと思う。

ビル・ゲイツにしても、スティーブ・ジョブズにしても、将棋界でも第一人者の羽生善治プロにしても、その世界で天才を示す人というのはそれなりに、どこかしらエッジの効いたものを良くも悪くも持っているものだ。

猛烈な過剰と欠如というアンバランスのもとに示される才能というものもある。少しづつ積み上げて研鑽を重ねていくことで磨かれる才能もあるだろうが、色々なタイプの天才があるからこそ、面白いとも言える。

悪くなってから考えるよりは、本当は勿論悪くならないほうがいいわけだが、悪くなってしまったんだから仕方ない。そこから萎縮せずに相手を楽にさせずに、ぎりぎりに怪しく粘る、短い時間で最善の勝負術を発揮してトッププロを間違えさせる。ある意味、アマチュアとしてはこれほど参考になるお手本はないように思うし、結果だけが重要といってもよいプロの世界においても、もしかすると一度しかないかもしれないチャンスを一発で手にしたということは素晴らしいことだと思う。

あとは人間、ナーバスになると色々なその人独自の癖が出るものです。震える人もいれば、空咳が出る人もいるし、チック症の人もいる。居ても立っても居られなくなる人もいる。そういう意味では緊張の現れだった、それゆえの頻繁な離席だったかもしれません。

・・・にしてもw

にしてもやっぱり凄い将棋でしたね。第四局と第五局。私レベルのアマチュアにはよくわからないところも多いのですが、コンピュータ将棋が示すその数値をみていると相当な逆転だったことは間違いないです。感想戦のコメントを見ると132手目あたりが悪手だったようですね。

穴熊だったのに、玉が大冒険していったあたりもまた糸谷さんらしい。同じくタイトルホルダーになった広瀬さんが角に特徴が出るとしたら、糸谷将棋はやはり玉にあります。

糸谷哲郎プロに望むところとしては、来期の防衛、誰が出てきてもしっかり防衛してもらうことと、今後のさらなる活躍、これだけ勝ってるんだからそりゃあ竜王も奪取しちゃうよね、と納得させるような圧倒的な強さをこれからも見せつけて欲しいと思っています。

糸谷哲郎新竜王、この度は本当におめでとうございます!!
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