二人の若手と羽生善治。

羽生善治が絶好調だ。まだ今期二敗しかしておらず、勝率一位。この人の場合、不調な時を探すほうが難しく、不調であっても六割超えしているという恐ろしさではあるが、しかし今期については絶好調であると断言して構わないだろう。

今期の永世竜王獲得だけではなく、二度目の七冠達成、他の棋士では考えられないが、羽生善治だったらやりかねない、そんな話まで出てくるほどに勝ちまくっている。

そんな羽生に対して、タイトル戦で豊島将之が、竜王戦挑戦者決定戦で糸谷哲郎が挑んでいる。

現在若手で活躍している棋士は何人かいるが、その中でも実力のある二人であることに異論のある人はいないだろう。どちらも羽生に挑戦するまでの戦いにおいて、素晴らしい戦いを見せてくれた。

そろそろ羽生世代もここまでだろう・・・と言われて早十年以上。失われた10年が20年になったように、羽生世代の台頭も延々と続いている。普及活動などにそれほど注力せず、トーナメントプロとしてのみ専念できた最後の世代であり、そして自らが切り開いた舗装した道と、それ以前の両方を知る世代でもある。

そんな世代の王者として君臨する羽生善治に、関西の二人の若き天才がどのように挑むのか?その序章としての今週の二局だった。糸谷哲郎は挑戦者決定戦の第一局を先手番で確り勝ち切っている。なので私は、今回第二局は落としても構わないと考えていた。

一手損角換わり戦法で、先手番の実力者たちをふっ飛ばしてここまでやってきた糸谷哲郎ではあるが、流石に羽生相手に通用するとは思わない。対羽生戦で糸谷が後手番一手損角換わりを指して勝ったのはかなり以前のことで、その後は順当に負けているはずだから。

将棋も一手損角換わりの右玉模様の戦型の最弱点である5三の地点を的確に咎められて、糸谷は敗れた。次の第三局、そこで先手番を貰えればいい、そこで勝ちきればいい、と私は第二局が始まったときからツイッターでつぶやいていた。

そして昨日の豊島将之である。タイトル戦は二回目の挑戦。前回は対久保利明で、振り飛車が最も充実していた頃でもあり、本人の棋力もまだ発展途上(勿論発展途上というのは悪い意味ではなく、豊島が到達するであろう頂上までの道程はまだまだ長い、それだけ大きなポテンシャルを持っているという意味だ)であり、惜しくも敗退した。

そして今回はどうだろうか?電王戦でほぼ唯一まともな将棋で確りと勝ち切った男であり、プレッシャーにも強く、浮ついたところがない。若いころの谷川浩司をみるような、そういう冷静沈着さと慎ましさを兼ね備えた男だ。そして電王戦の序盤でも分かる通り、かなりの研究家でもある。

初戦に投入したこの戦型も十分研究して、この形をもって後手番で羽生を屠るべく、投入されたはずだ。将棋自体は後手もやれた局面があったようだが、専門的すぎて私には分からない。先手玉が堅く、後手玉が薄いので、実戦的には薄い実利のために、ぎりぎりを行くという意味では後手番らしい展開であるものの、その紙一重の有利は些細なことで覆る。

そういう典型だったように思う。

とはいえ、今週の糸谷と豊島は後手番だった。後手番でもここまで戦えたことに逆に手応えを感じているかもしれない。次の先手番、次得られるかもしれない先手番で、二人がどのような将棋を見せてくれるのか、私はとても楽しみだ。
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