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第二回電王戦の勝敗予測 from将棋世界2013年4月号&ニコ生直前記者会見

将棋世界 2013年 04月号 [雑誌]のiPad版が今回はかなり早かった。いつもは10日以降に発売されることが多いのだが、9日?とかで思わず見逃していました…。で昨日読んだという。

アップル様の承認次第なのはわかるんですが、早ければ早いほど売上が良くなるのは間違いないのでロジカルにそこを説明すれば今回以上にOKスピードが上がる気がします。逆に言えば遅いほど電子書籍版の普及は進まないと思う。週刊将棋もKindle版があれば私は正直毎週買うんですけど流石にKindleで表示するための構成が大変かな。。

で、将棋世界、観る将棋ファン向けの記事が増えてきた印象がありますが指す将棋ファンでもある私から見ても別に悪くないと思います。

今回は第二回電王戦についての記事がありましたが、その中で「勝敗予測」に絡むところだけを抜粋したいと思います。あとは先日行われたニコ生での直前記者会見の様子からも言及したいと思います。

まずは、プロ側の意見から。

阿部光瑠四段は特に言及なし。自信の程は?の問いには「50・50です。」とのこと。

佐藤慎一四段は「平行棒を強風の中目隠しして歩くくらいの自信ならあります。」とのこと。これは普通に考えるとかなり強気と思われそうですが、そういう状況でも「歩く」という意思の表現なので、歩いて「落ちない」といっていないところはご理解くださいw

船江恒平五段は「持てる力を出しきれば、勝てると思っています。根拠のない自信ですが、それが大事だと某棋士に言われました(笑)」とのこと。団体戦としてのスコア予想は「3-2か2-3になると思っています」とかなりの接戦を予想されていました。

塚田泰明九段は「(5勝全勝を当然狙うが団体戦としては)現実的には3勝2敗でも勝ちなので、これがスコア予想です。」とのこと。そういえば塚田泰明先生は、直前記者会見でボンクラーズの伊藤さんのインタビューに相当むかついてましたねw「あの序盤で名人を超えてるとかよくいえますね…」みたいな。

三浦弘行八段は「希望を込めて4勝1敗。」とのこと。ただし、三浦弘行八段はニコ生の直前記者会見でもあまりGPSを研究している感じではなく、例の勝てたら100万円企画についてもよく分かっていなかったです。3人の勝者が出たことについての感想を求められて、逆に「普通に指して勝ったんですか?それとも弱点を突いて?」と逆に質問していました。

それに対する現場の人の回答がやや誤解を生むなあと思ったのは、普通に右玉で勝ったというニュアンスで理解されているような感じだったところ。3勝とも正直コンピューター将棋のバグを突いた・突けただけ、という勝ち方だったというのが私の理解なのですが。

次にプログラマー側。将棋ソフト側の意見です。

習甦の竹内章さん「プロ棋士側の対策次第で大きく変わる可能性もあり、予想は確率の問題で難しい。確率が最も低いと思われるのはプロの全勝で、コンピューターのほうが勝敗に直結する局面でのミスが出にくいと考えるため」とのこと。

この方は会見などでも非常に誠実そうなお人柄がにじみ出ていたのですが、その方が冷静にこういうことを言われているということにやはり現実があるような気もします。「プロの全勝が最も確率が低い」という点に注目したいところです。

ponanzaの山本一成さんは特に言及されていませんでした。

ツツカナの一丸貴則さんは「コンピュータ側からみて2勝3敗までいければ御の字」とのこと。控えめですねw

この方の発言で注目したいのは「ponanzaの序中盤が佐藤四段に通用するか、等に注目している」というところでしょうか。ponanzaは他のソフトに比べると序盤中盤が強くて終盤が弱いらしいんですよね。対する佐藤慎一四段は序盤が上手い印象は正直ないんですが、割りと混戦になってきたところで勝負根性で突き抜けてくる印象なんですが、正直対コンピューター将棋としてのタイプとしては最も不向きな気がするのですが大丈夫でしょうか。

しかも後手番なのでおそらく角交換振り飛車(新藤井システム)を使うんじゃないかな?という気がしています。或いは横歩取り?この二点買いです。

GPS将棋の皆さんはスコア予想として具体的な数字は語っていませんが「研究者としてはコンピューター将棋の強さに期待したい。世界コンピュータ将棋選手権の順位は毎年変わっているので、ほかのプログラムも同等の強さが期待できます。」とのこと。

そうなんですよね。そこが恐ろしいところです。

最後にコンピュータ将棋協会会長の瀧澤武信さんのコメントからの抜粋。

コンピュータ将棋は棋力としては、05年でアマ六段、07年で奨励会二段、11年でプロ並みとされています。と冒頭でしれっと発言されていて、度肝を抜かれますw

そして興味深いのは出場ソフトの特徴についてのコメント。

第一戦の習甦は受けが得意ですね。ということなのですが、対戦相手の阿部光瑠四段は攻めが鋭いというかやや暴発気味の攻めがあるような気がしてるんですよね…。ただし、攻めと受けという形になると先手番阿部光瑠と後手番習甦ということで将棋としては大変おもしろいものになりそうです。

第二戦のponanzaは、特徴がよくわからない。ソフトの提供もない。

第三戦のツツカナは読み筋を人間ほどではないがほかのプログラムと比べると絞るのが特徴。

第四戦のPuella αはボンクラーズの後継で、Bonanzaのやり方を更に突き詰めたような形。

第五戦のGPS将棋はたくさんマシンを繋げて頑張るw

加えて、これらはお互い勝ったり負けたりで、能力的な差はない、と語られています。


ここから先が興味深いのですが、「どのソフトもそうですが序盤が上手ではないので、プロであれば間違い無く作戦勝ちできます」と断言しているところですね。

定跡が網羅されているので抜けがない、という印象があったのですが、そういうことではないのか、或いは入っていない局面になるとおかしな手を指すということなのか。後者のような気はします。

「ただしそこから優勢にするのに、大優勢でも逆転の要素があるようなよさではダメなんです」とも語っています。これは最善の頑張りで人間が一手でも緩むと逆転する、という展開に持ち込まれるからですね。

局面をスローダウンさせて、中押し勝ちを狙うべきだという。これは私も以前から主張しているところですが同意です。

もう一つ興味深いなと思ったのは、「ソフトが優勢になってもまれに詰みの途中で間違えたりバグもありますので、プロ側が不利になっても諦める必要はないです」というところ。この達観は如何にも開発者側らしいなと思いました。

そしてこの会長の予想ではなんと、「今回はプロ側の全勝か4勝1敗でしょう。その1敗も終盤トン死で勝てればいいのかなと。もちろんプロに勝ちたいとは思いますが、現実は厳しいでしょう」と答えてるんです。

ボンクラーズの開発者の伊藤さんがニコ生の直前記者会見のインタビューにて「既に名人超えてますし」としれっと言い切っていたのとは対照的ですね。

この瀧澤武信会長の発言で私は若干混乱していて、プロが全勝か4勝はすると言ってるんですよね。確かに序盤感覚というかプロの序盤とアマの序盤は違うんですが、定跡データベースに乗っている展開で中盤までいけば、かなり強いと思うんですが。。

ただ将棋ウォーズでも角換わり腰掛銀の既に結論がでている定跡にすっぽりとコンピュータ将棋がはまりこんでそのまま詰む、ということもありました。(例の渡辺明vs郷田真隆戦で郷田真隆プロが知らなかった筋)。そういう展開は確率が高いかは別として理論上はありえます。

すごく悲観的な展開予想を書くと、阿部光瑠四段の角換わり腰掛銀の攻めが習甦に受け止められて負け。佐藤慎一プロの角交換振り飛車がponanzaに上手く対応されて作戦負けしてそこから有利を拡大されて負け。船江恒平五段は矢倉系の熱戦になるも終盤の競り合いになって負け。塚田泰明九段はやっぱり後手番で横歩取りを指してpuella αの強烈な一撃を食らって負け。三浦弘行八段は矢倉を選択して熱戦になるがGPS将棋の終盤の強烈な計算力に屈する…というような。

プロ・アマの成績が2-8から4-6の間であることを考えると、そして直前記者会見で塚田泰明九段が秒読み将棋にすると全然敵わないと既に発言していることから、相当な苦戦が考えられるというのが私の今のところの予測です。

ただ瀧澤武信会長がおっしゃられるような、序盤中盤でコンピュータが変なことをやると中押し勝ちというのは、プロの優勢を勝勢に拡大する技術の高さを思うと当然ありえます。接戦ならばコンピュータ勝ち、中盤まででコンピュータがやらかすと中押しでプロ圧勝、という感じでしょうか。

なので見苦しい棋譜が残らないように、コンピュータ将棋側は形勢判断において大駒一枚分+金か銀ぐらいの差がついたら投了する、というような形にしておいてほしい気はします。この前の勝てたら100万円企画のときは負けた時の手順がやはりちょっと…と思いました。

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Tag : 瀧澤武信 三浦弘行 塚田泰明 船江恒平 佐藤慎一 阿部光瑠 竹内章 山本一成 一丸貴則 伊藤英紀

コメント

No title

ジャンルは全く違うのですが、ソフトウェア開発者としては「ゲームの強さ」という定量化しづらい概念に対してバグ・不具合という言葉を使うのは妥当ではない気がします。ある局面では上手く指せないというのなら、それは単に弱いということではないかと。
仮に将棋が完全解析され各局面における最善手が全て明らかになり、その情報に基いて「あるレベルにおいてはXX%の割合で最善手ではない手を指す」という作りのソフトが作られたとして、そのソフトがそのように指さなかったとしたらそれは完全に不具合でしょうけれども…少なくとも現時点ではそうではない訳で。

ちょうど今朝方激指と指していたら打歩詰めなのに負けになったせいもあって、そんな事を考えました(一応書いておくと、この不具合のパッチは既に公開されています)。

No title

↑のqさんに補足すると、将棋観戦さんがこの記事で「バグ」または「不具合」という単語を使っているのは
>3勝とも正直コンピューター将棋のバグを突いた・突けただけ、という勝ち方だったというのが私の理解なのですが。
というところだけですね(もう一つは単なる引用)。

で、これがqさんの言われるような意味でやや「バグ」の意味を取り違えた用法なのかというと、微妙な面がある気はします。
というのも、将棋観戦さんが書かれているように、100万円企画で勝った細川さんの対局などでは、コンピュータ側が序盤で玉を6三の地点に動かすような作戦をとっていたらしい(私は詳しく見てないのでわかりませんが)からです。
そのような作戦は、少なくとも現状では得な作戦とはされていません。

qさんのおっしゃるように完全解析がなされてない以上(終盤のごく限られた局面以外は)「正しい手」と「間違った手」を峻別することはできないわけなのでバグとは言い切れないことは確かですが、バグかどうかを決めるのは「正しい」かどうかではなく、開発者の意図に合うかどうかということであるから問題は微妙であると思います。

私は将棋ソフト開発に関して詳しくはないですが、例えば少し前の将棋ソフト開発であれば、開発者が手作業で膨大なパラメータを職人芸的に調整する、ということは行われていたことであり(例えば棚瀬さんはそういう作業のことを「ドーピング」と呼んでいた(https://sites.google.com/site/tanaseyasushi2/2007csa))そのような開発によって生まれたソフトは、「人間から見て明らかにおかしな手を指さない」ということは意図のうちであり、今回の玉を63に持ってくる作戦などはバグであると言うことは(開発者が63玉という手をおかしいと思うのであれば)普通のことであると思います。

しかし、例えば、開発者の意図として「人間から見ておかしい手を指さない」ということを持っておらず、「最も勝ちやすい手を探す」ということだけを考えている場合などでは、そのような意図の下にもっとも適当だと開発者が考えたアルゴリズムの結果としてどんな手が得られようと、その手に関する「結論」(現状ではルール違反の手やごく終盤の詰みがある/ないというレベルの手くらいしか出ていないが)が出ていない限り、それは意図したものであると言えると思います。

現状の将棋ソフト開発では、自動学習の技術が進歩したとは言え、人間の将棋に対する考え方を「利用」せずコンピュータに全て「自分で」考えさせよう、とはなっておらず、例えばプロ棋士の指した棋譜などをある程度「正しい」棋譜の例として自動学習のエサとして与えるというようなことは行われていると聞いていますので、「人間から見ておかしな手を指さない」ということが将棋ソフト開発の意図として含まれることは普通にあることで、したがって「6三玉」のような、「まずプロは指さないようなおかしな手」(単に玉が3段目に来るということだけであれば将棋観戦さんも書かれているように佐藤康光なども特定の条件の下で指してもおり、そしてそれは常識では指しづらいが良い手、少なくとも個性の表れた手であるということで賞賛されているがこのコンピュータの指した63玉は全くそのような意図が感じられるものではなかったのだろう)を指すことをバグと呼ぶことはありうることであると思います。

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