名著「東海の鬼 花村元司伝」をオススメします

これは文句なしに良書ですね。是非買ってご一読ください。


東海の鬼 花村元司伝東海の鬼 花村元司伝
(2012/02/14)
鈴木 啓志

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昨日の米長邦雄の本も全然悪くなかったです。ただ一点私がこだわりたい点があったので、そこだけが気になっただけで。

しかしこちらは完璧にオススメできる一冊ですね。著者の鈴木啓志氏って何者?というのも、最後まで読めば解決するのでご安心を。有名な鬼手の数々が弟子の深浦康市森下卓によって解説されている最後のほうも良いですし、勿論最初の方の、真剣師時代のエピソードから中盤メインのプロ入り後の活躍も素晴らしいです。

この本における私の感想は、「将棋界界隈の人が書いたもの」じゃない将棋関連書籍をもっと読みたいということです。アマチュア上がり、真剣師上がりということでその将棋の真髄が誤解され続けた感がある花村元司の将棋を、全く将棋界に関係のない(しかし縁もゆかりも無いわけではないのですが)、鈴木啓志氏が、このクオリティで書き上げたことに非常に意義があるように思います。

過去読んだことある書籍で知ってる話が、上手くまとめられているだけではなく、花村元司のご家族経由で紹介された情報ソースからのミッシングピースが埋められているので、断片的な理解から総合的なものへと理解が深まった。

全く花村元司を知らなかった人でも楽しく読めるだろう。

花村元司という棋士の魅力は何か?といえば、前回の紹介記事でも書いたが、鬼手。これに尽きる。絶局となった高橋道雄との一局は有名だし、常にこういう狙いをもって将棋を組み立てていた。ただ、これがもしかすると違うのかもしれない。私もそうだが、正確にその意図と本質が理解されていないように思う。

何しろ、名著?「ひっかけ将棋入門―たちまち強くなる (1979年) (ワニの本―ベストセラーシリーズ)」では、金は毎回裏返して指すべし、そうすれば金がないときに玉を代用できる!と書いている御仁である。

最近になるまでは、ややケレン味のようなもの、常に人間対人間という部分を重視した将棋ではないか?と私は思っていた。

通常の手よりも、鬼手を繰り出すほうが、人間は精神的にやられるからである。精神的に動揺して、その一撃でくずれてしまう。そういう意図があったのではないか、と私は思っていた。

私もまた、花村元司を評価しているようでいて、真剣師、くすぶり上がりであるというステレオタイプな考えに支配されていたためだと思う。

なぜ、ファンが糸谷哲郎や山崎隆之のような将棋を好むのか?と考えれば少しわかってくるところとして、作戦・棋風の個性というものがあるだろう。

本書では、コンピュータと花村元司の将棋を対極のものとして描いている。コンピュータをデジタル、花村元司をアナログとしての対比だ。あわせてアナログもその最も根本のところではシナプスの発火のオンオフであるともいう。

実を言うと、私の花村元司、花村将棋の誤解を解く鍵が、コンピュータ将棋にあった。今はもういなくなってしまいとても寂しいが、ボンクラーズという将棋ソフトが、米長邦雄と対戦する前のバグチェック的な意味合いで、将棋倶楽部24にて対人対戦をしばらくの間行なっていた。

私はコンピュータと指すと筋が悪くなる、という勝手な固定観念に囚われていて全く指さないのだが、見る分には大変面白く、魅了され続けてはや数年、というところ。

このコンピュータの指す将棋というのが、実は花村元司の将棋にとてもよく似ているのだった。人間では思いつかないような手を必ず1局に数手は織り込んでくる。

これが示すものは何なのか?私が思うのは芸事としての将棋、文化としての将棋という側面をムラ社会的な将棋界の隔絶が助長しているのではないか、ということだ。

これが筋、本筋、定跡、という考え方がパッと見は合理的なようでいて、実はその多様性を失わせてしまっている可能性。序盤の体系化と終盤のパターン化が、中盤の個性をどんどんなくしている現状。

コンピュータ将棋が強くなっていくに従い、私は将棋というのはその方向に進んでいくのだろうと勝手に思っていたが、逆であり、人間同士の将棋が予定調和的に、第一感の範疇での選択肢選びに終始するような将棋が増えている一方で、花村元司を彷彿とされるような、意識外の手を繰り出すコンピュータ将棋。

コンピュータ将棋が強くなっている、人間を凌駕しつつある・或いは凌駕したこの時代において、花村元司という人間を再考する「東海の鬼 花村元司伝」が出版されたのは偶然ではないような気がする。

私がコンピュータ将棋を愛するのは、花村元司の将棋を愛するのとほぼ同じ意味合いであり、その両者がそれぞれのアプローチの極北で「将棋の真理」に出会っているだとしたら、これほど素敵なことはない。

この本がきっかけとなり、将棋の多様性、将棋本の多様性が増すことを陰ながら祈るところである。

イカガ?(´・ω・`)つ東海の鬼 花村元司伝

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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

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