英ちゃん流中飛車モドキ 第58期王座戦第3局 ▲羽生善治-△藤井猛

羽生王座の19連勝&19連覇がかかる第三局は藤井プロが後手番。

もしかすると後手番のゴキゲン中飛車もスペシャリストの世界になってきているのだろうか?或いは居飛穴が進出してきてやりにくくなったのか?得意戦法としていた鈴木大介プロが後手番で一手損を多用しているのをみるとそんな気がしてくる。

本局に藤井プロは何をもってくるのか、というのは延々と考えたもののなかなか判らない。強いて言えばゴキゲンだろうかと思ったのだが、試運転のA級対郷田戦で芳しい結果を得られず、同じくA級の谷川戦で用いた藤井システムも現時点結論を払拭するに至らず、どこまで行っても大変だった。

とはいえ、私が予想したのはその二つだったのだが外れた。藤井プロは△3三角戦法を採った。

第58期王座戦第3局 ▲羽生善治-△藤井猛

藤井プロの△3三角戦法は珍しいと思う。というか、この戦法で勝ちまくるイメージがサッパリないのだが、先手番では藤井システム、後手番ではこれを主戦法として普通に勝っている窪田プロが私は怖い…。(ツイッター上のitumon氏の情報では、「変幻自在!! 窪田流3三角戦法 (マイコミ将棋BOOKS)」の続編が発売されるらしい。「マイナー戦法の棋書は買い」という格言どおりに私は買う予定だ。10月14日発売の「マイコミ将棋BOOKS 神出鬼没!!窪田流3三角戦法 対居飛穴編」がそれの模様。)。

藤井プロの趣向は中飛車だった。この形は常に割り打ちがあるので、早めに飛車を引く形になる。そして手数が掛かるので5筋の歩を保留することとなる。ポジティブにいえば、5筋を保留することによって、他に手数を掛けることが出来るという意味がある。

私も以前後手番で似たような中飛車を多用していたことがある。印象としては、先手が左右分断型で来てくれると好勝負、三枚で囲われるとどこまで行っても左金の分つらい、というもの。

特に先手に飛車先交換されると3二の金が釘付けになっていて、どうなのだろう?…と思ったところで繰り出された△5四銀?△6四角の最強の攻撃策。

羽生王座は「経験を積むと無意識のうちに安全策を選びがちになるので意図的に踏み込むようにしている」というような発言をしていたが、本譜の応手はまさにそれを感じさせるものがあり、32手目から激しい応酬となった。

優劣は分からないが、将棋の組み立てとして、本譜の▲8六角(△5二金の強要)?角金交換?端の突き捨て?▲7七角!という手順には驚いた。▲7七角に対して5二から△7一金と戻る手が利けば良いが、それは反則なので、出来ない。後手は金を上ずらされ、端の突き捨てを入れられて、そしてじっと迎撃体勢を築く先手陣に攻撃しなければいけない状況となった。(羽生王座が正しい前提の表現だが…。)

現在は56手目の局面。玉の堅さはやや先手、駒の損得は▲香角(竜)△金(と金)、手番は先手。やや先手が良いだろうか。特に控え室が54手目で推奨していた△4一歩を57手目で▲3三角成とされた場合の変化で金桂と角の二枚換えを食らいつつ、先手にならない△4一歩と受けるしかないのであれば、かなり辛いと思う。

▲2一飛車成の分かりやすい詰めろに対して、△4一歩と受ける手があったが、その手に変えて△3一金と受けた手が一旦は良いが▲1一竜と香車を取りながら逃げた手が▲3三角成の先手。藤井プロは攻めあいを選択したが、怯まずに▲3三角成で上記の通り、先手が良さそうだ。

そう思った状態で夕食休憩に入り羽生王座が指したのは5九香車。この手の意味は▲3三角成に開き直って△5六とと銀を取られた時に▲3四馬だと冴えないので、と金を取りきって△5六同銀とさせた時に▲5五馬と天王山に引く手がほぼ詰めろ級&銀取りという意味。

要は後手陣左翼で団子になっている飛車金を相手にせずに勝とうということ。それではツライとみた藤井プロが▲3三角成に対して△同金とした手が敗着ということだが、なんというか結果的に戦犯とされた手のようにも思う。

解説チャットで挙げられていた4一歩や私も予想した2一歩という手は△3一金の前後で利かすことが出来たわけで、馬をぼろっと作られてから指すべき手ではないように思う。本来のA級戦犯は(△4一歩を利かせずの)△3一金(か、△3一金の後の2一歩を利かせなかったこと)ではないだろうか。

そこからも、どこまで行っても将棋であり、逆転の可能性を秘めた状況は続くが、このレベルではひっくり返ることはなかった。

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これで結局羽生王座が一九連勝で一九連覇を決めた。いつぞやの山崎プロが挑戦した時に若手実力者が不甲斐ないという気がしなくもなかったが、何のことはない、羽生王座が強すぎたのだなと今になって思う。

今期の羽生王座の強さはそれこそ尋常ではなく、タイトル戦を全てストレート勝ちで防衛している。これは年末に控える竜王戦でスタミナ切れしないように、無意識かもしれないが、スコープを竜王戦に合わせてきているようにしか見えないのだが…。

藤井プロは三局全てにおいて、作戦的に良くなる展開が少なかったように思う。瞬間的にこれは藤井プロ側を持ちたい、と控室がいう局面を迎えるものの、その数手以内ではっきり形勢に差がつく手が指されることが多かった。

これは藤井プロが悪いというよりも、選択した作戦が悪かったように思う。一手間違えると奈落、というのは激しい将棋を指す人の宿命ではあるものの、それがあまりに多すぎる場合は、その作戦自体が成功確率が低すぎる、ということになる。

一発被弾すれば墜落するしかないゼロ戦とはいえ、諸条件が悪すぎたように思う。

今期の王座戦をみて、後手番の苦悩というものが少し分かったような気がする。ゴキゲン・中座飛車・一手損。極端な話これしか後手番戦法はなく、もう少し広げて四間途中下車の石田流を含む角道オープン四間飛車、四間飛車穴熊、そしてこの3三角戦法ぐらいか。

逆にこういう状況だからこそ、藤井プロ同様に後手番戦術に悩む?渡辺竜王がどういう秘策を竜王戦で披露するのか楽しみになってきた意味もある。

居玉を好まない竜王なので一手損は指さないと見せて指すのか、或いは四間飛車穴熊があるのか、はたまた急戦矢倉の新しいラインナップが準備されているのか、中座飛車での秘策があるのか等々。

最後に、窪田プロの3三角戦法の既刊棋書と10月14日発売予定の棋書を紹介して終りとする。



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マイコミ将棋BOOKS 神出鬼没!!窪田流3三角戦法 対居飛穴編→こちらは10月14日発売予定。

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