不用意な一着 (清水市代vs里見香奈 女流名人戦 第二局)

王将戦が男性の振り飛車トップと居飛車トップの対決であるように、女流トップ同士の対局であるところの本局。第一局は序盤のつくりが悪く、里見の圧勝だった。後手ゴキゲンを前に清水の作戦に注目したのだが…。

先日の女流最強戦、本田VS里見で出た序盤となった。ゴキゲン封じにはこれが手っ取り早く、私も用いている。ただし、相手が居飛車か振り飛車か分からない時は飛車先を決めることが含みを無くすのであまり宜しくない。

本譜の序盤には驚いた。53角で無理やり44を突かせるという趣向で、本田戦の時にも書いたが、44歩がついてある形は反撃の味に欠ける意味があるのだが、一手損にしてまで…という気もする。

その後、銀の繰りかえの隙に飛車先を交換したところで、里見が飛車先を謝らずに43銀とした手が発端となり、清水が突っ掛ける。この歩を打って幸せになるとは思えなかったが、第一人者に強気をぶつけたところを咎めたいという強情な手だった。

しかし一目で指し過ぎである。もとより、里見にもそれほどの強気の意味合いはなく、どっちを先にしても一緒だから、多少得がありそうな銀上がりを優先しただけだろう。振り飛車の金を乱しても清水に有効な後続の手がなく、攻撃体勢を整えるうちに、金を正されては、何のために打ったのか分からない手となった。持ち角を手放させていることと玉の堅さは主張だが、厳密にはあの23歩を境に後手が良くなったと思う。

里見の25歩は遠く23歩を咎めるものであり、「じっくりしてるとと金作りますよ」と焦らせ、相手に動いてもらって迎撃するという振り飛車らしい展開だ。

そこから先の手順は無理な攻めを丁寧にいなし、反撃したときには既に勝ちというもので、ほぼ完勝だったといえる。専門的には恐らく23歩以降はチャンスがなかったのではないだろうか。

これで里見は連勝となり、次の石田流に対する清水の作戦が注目されるが、清水はこの2戦、自分から仕掛けて勝手に転んでいる印象で、序盤で勝てない将棋にしているのが気になる。里見の終盤力を理解しているが故に少し焦ってしまっているのだろうか。

今まで何十年もそれこそ羽生のように君臨した清水だが、今度こそは危ないかもしれない。清水世代の次に来た若手は、あと一歩というところで届かなかった。例えば弟子の石橋は剛力だが力戦の宿命として安定度に掛けるし、千葉涼子にもそのきらいがある。矢内は安定しているが、将棋センスが悪いというか異質で良くなってから粘るところがあり、混沌とすれば根性の違いが出る。

里見は序盤下手だけが課題だったが、その序盤で大差になれば怖いところがないというのをこの2局で証明した。中盤以降の落ち着いた指し回しは見事というよりない。

次の対局は、恐らく里見の石田流に、清水が穴熊はやらないだろうから銀冠だろう。そしてようやく面白いねじり合いが見られるかもしれない。

里見も奪取リーチがかかれば、それなりに緊張するだろうし、もつれれば清水は勝負根性でどんどん力を発揮するだろう。

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