繋がった2.5枚の攻め と 胡坐指し

【第22期竜王戦七番勝負第2局】10/28・29(水・木) 渡辺 明竜王 vs 森内俊之九段


封じ手は▲1二歩だった。いわゆるプロ第一感の手。(私の予想手▲1六飛車は流石に外れた)。

私はこの手を細い攻めと見ていたが、名人に定跡なしならぬ竜王に定跡なし、二歩突っかけて収める理屈はないということだろう。また、攻めが細いが後手の攻め駒が間に合ってないので行けるとみたのかもしれない。

後手の森内といえば受けに定評のある棋士、駒損の細い攻めの面倒をみるのは望むところ。ただし反撃の駒の準備が整っていないのだけが唯一の気がかりか。

渡辺の▲1二歩の垂らしに対して、森内は強気の△3四銀。これは私が前日に3四の地点の当たりがキツいと思っていた変化に近い。しかし後々2三の地点に効いており、良い手だった気がする。

渡辺は攻めるだけ攻めて▲1八飛車とした手が凄いと思った。勝又教授言うところの「スピコン」というか、前期の歩を進める手渡し、前局の攻めるだけ攻めて銀を受けた手に共通する落ち着きっぷり。桂馬の頭に歩を打てば確かに飛車成りは約束されている。

龍を作った先手だが、依然攻めは細い。後手は待望のと金をつくり、次にと金を4七に進めることができれば、角が捌け、先手からのB面攻撃の含みがなくなる。それだけは防がねばならない先手の渡辺竜王は、なけなしの一歩を7五に使い、最後の持ち駒である香車を7四に打ちつける。

この香車を打った時点での先手の攻め駒は正確には何枚と表現すればいいのだろう。二枚の香車と龍で3枚、いや端の香車がそれほどでもないので2.5枚というところだろうか。

しかし解説にあるとおり、この香車に対して、後手が角銀交換に持ち込んだのが疑問だったかもしれない。

先手の攻めは結果的には切れていた。(1八飛車)1二歩が悪かったのか、或いはその後の進行でよりよい手順があったのか分からないが、森内が痛恨の敗着を、上記の角銀交換の疑問手の後に指してしまう。

2六歩という手は、相手の打ちたいところに打て、という意味ではどちらからも見えている手で、それを森内が指さなかったのは、この数手前、飛車を成り込まれた時点で相当悲観していたということなのかもしれない。

終局の少し前、森内は足を崩したまま数手着手した。それは相手に対する無礼というよりも、自身の負け方に対する、悔しさの表れとみた。恐らく封じ手前後では森内もやれるとみていて、その大局観は大きく誤ってはおらず、それなのに負けにしてしまったことについての感情をその数手にみた気がする。

それにしても一時代を築き挙げた羽生世代の三強が揃って、渡辺に対しては強い感情の動きと思われるものを盤上の振る舞いとして吐露しているのが印象的だ。

羽生の手はあれ以来震えるようになった。勝負の恐ろしさを知らされたからだろう。佐藤は1勝に涙した。タイトルの趨勢は全く見えていなかったというのに。そして今回、森内は足を崩したまま着手。

今期、是が非でも渡辺には防衛してもらい、順位戦では苦手棋士に完勝し、来期のA級を見たいものだ、とこの第二局をみて心から思った。





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