藤井聡太の進化。(三段リーグ~プロ入り初期、そして今)

細かい棋譜は振り返ってないのであくまでも印象論ですが。

超初期からプロ入り29連勝、その後の10局ぐらいはなんというか終盤力がまず大前提としてあり、それを活かした圧倒的な寄せという感じだった。ギリギリの応酬から得た持ち駒を活用した長手数の詰みや、ちょうどバスケットボールでいうところのスリーポイントシューターのような、シュート動作の初動が早くて相手が反応出来ないような鋭い寄せを見せていた。前者は特にプロ入り前の三段リーグの棋譜でみられたもので、後者はプロ入りから29連勝するまでの間に何度か見せていた。

29連勝のあと、17年7月2日に佐々木勇気に負ける。その後、18年1月6日に大橋に負けるまでの間の成績が37戦26勝11敗(0.703)だった。勿論、悪い成績ではないがプロ入り後最初の壁のようなものを感じていたのではないか。A級や年上の実力者に負けている。ただ11敗のうち5つが早指し戦の負けであり、経験の無さを読みのチカラで補うことで勝ち星を増やしていたことを逆に裏付けている(そして現在に至るまで夕食休憩のある将棋で負けたのはあの30連勝をかけた佐々木勇気との対戦だけなのだ)。

年明け初戦は大橋に負けたもののその後15連勝中。年末年始の8日間の休暇で更に進化したように見える(おそらくリラックスして将棋に没頭した期間なのではないか?)。

29連勝中は相手のプロがまだ藤井聡太が何者なのか分かっていなかった所もあったはず。その後の37戦は藤井聡太の距離感を掴んだプロがそれを警戒した将棋を指したために経験値等で格上の棋士たちが順当に勝ちきった時期といえる。その後の15連勝をみて思うのは、”局面のスローダウン”ということだ。

先日のA級プレーオフ、▲豊島将之vs△羽生善治戦の終盤で「△4八と」という鋭い手が出た。手の意味としては攻めあいで後手の羽生が勝ち、ということもあるが一直線の手順に応じざるを得ない状況をつくり、その先にある局面では羽生が勝っていますよ、という主張の手である。読みぬけがあると負けになるので勇気のいる一手であり、羽生が常々自身を鼓舞するように言っている踏み込み、局面をスピードアップさせる手だった。

最近の藤井聡太の将棋は、ある意味羽生のこの踏み込みとは真逆に見える。一手違いの切り合いに持ち込むのではなく序盤で得た微差を更に拡大するような指し回しが目立つ。昔で言えば大山流の指し回しというか、一手前に受ける、というような手を指してから万全の状態になってからあの詰将棋解答能力を用いして寄せに入る。29連勝で見せた鋭さと、その後の36戦で先輩棋士たちに警戒された後の将棋を経て、更に進化した印象だ。

ちょっと模様の良さそうな中盤でスピードアップさせずに模様の良さを具体的な数値としての良さに繋げて、そこでも慌てずに相手に暴発させて討ち取る、という将棋。特に衝撃的だったのは先日のC2の最終局、三枚堂達也戦で、50手目に三枚堂が△31歩と底歩を打ってから終局まで後手の三枚堂の駒台に歩が乗ることがなかった。通常、将棋の攻めというのは燃料としての歩があるはずで相手に歩を渡しながら攻撃のキッカケを得たり、手番を得て良くしていくものだ。

そういう手を一切指さずに次に厳しい手を見せて後手に動かせてその動いた手をひたすらに咎めて、本来は歩を打っておびき寄せる手を後手が指すしかなくなってからおもむろにようやく寄せにでたのだった。

次の対戦(3月22日)で藤井聡太はA級に圧倒的な成績で上がった元タイトルホルダーでタイトル戦経験が複数ある糸谷哲郎と対戦する。糸谷将棋の特徴としてはその創造力豊かな指し手にある。考慮時間の使い方にも特徴があり、そのコンビネーションにやられる棋士も多い。現在のトッププロでは最も個性的な棋士の一人であることは間違いなく、こういうタイプの将棋に対して藤井聡太がどういう指し回しを見せるのか?非常に楽しみである。持ち時間は5時間なので作戦的に翻弄されたとしても持ち直すことは十分に可能なはずで、幻惑する糸谷vsそれを必死に振りほどこうとする藤井聡太…という構図になるのか、或いは糸谷が先手で非常に真っ当なチカラのこもった将棋になるのか。

どちらが先手になるかによって大きく変わってくる気がするが非常に楽しみな対戦であることは間違いない。ここでもし藤井聡太が勝つようだと自身のもつ29連勝の記録を上回る連勝をしても誰も驚かないのではないか。

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「1マイル4分の壁」を突破した将棋界の今後。

「1マイル4分の壁」というものを知っていますか?

ウィキペディアから引用するとこのようなものです。


1923年にフィンランドのパーヴォ・ヌルミが1マイル4分10秒3の記録を樹立。それまで37年間も破られずにいた記録を2秒も更新する驚異的な世界記録だった。もうこれ以上の記録は出せないだろうと専門家は断言し、1マイル4分を切ることは人間には不可能というのが世界の常識とされていた。世界中のトップランナーたちも「1マイル4分」を「brick wall(れんがの壁)」として「超えられないもの」と考え、エベレスト登頂や南極点到達よりも難しいとさえ言われていた。

しかし、オックスフォード大学医学部の学生であったバニスターは、トレーニングに科学的手法を持ち込み、自分のコンディションを科学的に分析した。そして、2人のチームメイトをペースメーカーにして4分の壁を破った。

46日後の1954年6月21日、フィンランドのトゥルクで、ライバルだったオーストラリアのジョン・ランディが3分58秒で走り、バニスターの記録は破られた。その後不思議な事に、1年後までにランディを含め23人もの選手が「1マイル4分」の壁を破った。

https://ja.wikipedia.org/wiki/ロジャー・バニスター




将棋界における四分の壁はなんなのか?というのはあるものの、何かしらの心理的な障壁を打ち破ったのは紛れもなく藤井聡太その人でしょう。

29連勝、五段昇段すぐに朝日杯で名人・竜王・A級をなで斬りにして優勝で六段。しかもまだ中学生。

藤井聡太がミラクルであることは間違いないですが、そのミラクルに引きずられるようにして幾つもの驚くべきことが立て続けに起こっています。

若手タイトルホルダーが誕生したのも、各順位戦が超ハイレベルな昇級戦線を維持したのも、A級の6人プレーオフも全て将棋界における常識のようなものが崩れたからこそなのではないでしょうか。

漫画のような展開、漫画であればボツになるストーリーと言われる出来事が頻発していますが、これからも起きるような気がします。可能性の上限キャップが外れた世界となり、更に盛り上がっていくのではないでしょうか。

藤井聡太さんの活躍に触発される棋士が多い中、もっとも奮起しているのはもしかすると羽生善治竜王かもしれません。先日のA級プレーオフ、豊島将之八段戦での後手の桂頭を攻める▲35歩がそこまで厳しくないと読んだ手順、そして53に角をなられてぼろっと23の金を取られても平気と読み切った△48と金。じっと我慢する所と一気に踏み込む変幻自在の手順に、羽生善治の真髄をみた気がします。

以下、私の感想ツイートから引用して終わります。


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もし藤井聡太物語が漫画だったら?

SFとかでたまにみるのが、あるタイミングで本当の世界から異世界に移行してしまっていた…という話。

最近本当にそうなってしまったのではないか?と思う出来事、多くないですか?代表的なのは藤井聡太さんの恐ろしいまでの活躍。色々な人たちが言っていますが、藤井聡太さんのこれまでの活躍、プロ入り前を含めた出来事ってすごすぎます。このまま漫画や小説のストーリーとして提示すると確実に編集さんにボツを食らうよね、という意見も多いです。

きっと我々は知らぬ間に異世界に突入してしまっているのかもしれません。だとすると、ここから待ち受けている展開はどういうものか?というのを以下に示します。小説だと無理筋…という展開がきっと待っているはずです。

2018年5月、竜王戦5組優勝で七段に昇段。

2018年8月、 上州YAMADAチャレンジ杯で優勝。

2018年9月、竜王戦挑戦者決定戦に勝利。初タイトル挑戦を決める。

2018年10月、王座戦挑戦~奪取。初タイトル獲得。同時期に行われている新人王戦で優勝。

2018年12月、竜王奪取。二冠に。竜王位1期獲得で八段昇段を果たす。

どうでしょうか?まだこの物語のシナリオとしては甘いですかね?国民栄誉賞辞退、とかもあるかもしれませんね。

ちなみに昇段規程はこちら→https://www.shogi.or.jp/match/dan_provisions/

年末に何段になってるでしょう?というアンケートも取っています。よろしかったら回答お願いします。

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11/5時点のレーティング。藤井聡太は第何位??

http://shogidata.info/list/rateranking.html

こちらを参考に。

将棋棋士レーティング 最終更新日 : 2017年11月6日 ( 2017年11月5日 対局分まで適用済み)
年齢 順位戦

1 豊島将之 八段 1903 27 A
2 佐藤天彦 名人 1840 29 名人

3 永瀬拓矢 六段 1827 25 C1
4 菅井竜也 王位 1812 25 B1
5 久保利明 王将 1795 42 A
6 羽生善治 棋聖 1785 47 A

7 稲葉陽 八段 1783 29 A
8 斎藤慎太郎 七段 1783 24 B1
9 渡辺明 竜王 1778 33 A

10 糸谷哲郎 八段 1775 29 B1
11 阿久津主税 八段 1772 35 B1
12 広瀬章人 八段 1763 30 A
13 中村太地 王座 1760 29 B2
14 山崎隆之 八段 1760 36 B1
15 三浦弘行 九段 1754 43 A
16 千田翔太 六段 1751 23 C1
17 藤井聡太 四段 1745 15 C2


太字がタイトルホルダー…と藤井聡太さんです。



豊島さんが遂に1900点に到達していますね。1800点台が3名、「1800未満-1750点以上」が12名います。阿久津さん以外は全員「タイトル戦経験者」でしょうか。そう考えるとレーティングが実績を反映しているといえると思いました。

藤井聡太さんが関西所属なのでここからのタイトル戦線は挑戦手前での豊島将之vs藤井聡太、というのが多くなりそうな気がします。最近の豊島将之さんは手がつけられない強さで、このベスト10位ぐらいまでを相手にしても圧勝しています。逆にいうとそういう相手とよい所で真剣勝負を迎えられる藤井聡太さんにとっては、うってつけの成長の機会と言えましょう。

藤井聡太さんはあと100点ぐらいでトップ3に躍り出るわけですが、下手すれば今期中に実現するかも。それには対トッププロ相手に「炎の七番勝負」ぐらいの勝ち越しを見せる必要がありますが…それでも楽しみですね。

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藤井聡太vs菅井竜也が遂に!(観る将棋ファンのための見どころポイント)。



第67期王将戦一次予選の決勝が藤井聡太vs菅井竜也になりました。別山の対局が先日行われて、菅井竜也七段が山崎隆之八段を破って実現。
https://www.shogi.or.jp/match/oushou/67/itizi.html


藤井聡太さんの対戦相手としてまだ見てないなかで一番みたいのは久保さんか菅井さんでした。やっぱり対抗形で振り飛車の大御所との対局を見てみたかった。遂に実現、うれしいですね。
(本当は竜王戦の挑戦者決定トーナメントでも…ブツブツ)。

将棋とはどういうゲームなのか?というと、よく言うのは序盤中盤終盤、みたいな感じですが、悪手を指してはいけない前半戦と正確に指さなければいけない後半戦、みたいなイメージが私個人としては、あります。前半戦は割と自由に出来る。相手の体勢を崩すことができると、後半正しく指すのがとても楽になる。逆に前半で模様を悪くすると後半の選択肢がどんどん限定され、そしてその殆どが悪手になっていく。そんなかんじ。

居飛車と振り飛車による対抗形というのはまさにその序盤戦術、前半部分が重要です。特に現代将棋においては。一言で言うと「居飛車穴熊にさせるかどうか」につきます。これは偉大なる振り飛車党の大御所、藤井猛九段により開発された藤井システム登場の頃からそうです。現代生き残っている振り飛車党は、基本的には「居飛車穴熊にさせない」作戦で戦っています。(一部例外あり。先日の中田功先生のコーヤン流が有名ですね)。

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久保さんも菅井さんも(相)穴熊も上手ですが、基本的にはイビアナに組ませない作戦を採っている気がします。居飛車側は速攻をせざるを得ないというか、誘いのスキというか序盤で具体的にポイントを稼げるような手順を見せられるとその順に乗りたくなる。居飛車側に与えられる選択肢は大きくわけて二通り。

「玉はちょっと薄いけど序盤でポイントを上げられそうな展開」か「穴熊に囲えるけど駒組み段階でかなり振り飛車の主張を通す展開」のどちらか。

プロの場合は持ち時間が長いのと微差の得を維持拡大していく技術があるので特に主導権を握れる先手番の場合は、前者を選択することが多いような気がするが、アマチュアの場合は基本的にはなんでも居飛車穴熊を目指すほうが良いと思う。

振り飛車の美濃囲いは手数がかからない割に堅く、手がつくと早いという弱点はあるものの、攻略ポイントが明白故にある程度指しなれた人であればとん死を食らうことは無いし、通常は急戦調の居飛車よりも一路玉が深いのが大きい。

居飛車は序盤で多少ポイントを稼ぐことが出来るが玉が兎に角薄いので数手の緩手でひっくり返ってしまう懸念がある。羽生世代や行方先生、木村先生あたりはそれでもどうにかしてしまう印象があるが、久保・菅井という現時点最強振り飛車党の二人を相手にして果たしてどのぐらいの居飛車党が勝てるのか。

藤井聡太四段の対振り飛車戦略は正直言ってそこまで洗練された印象を受けない。急戦でも持久戦でも中盤ぐらいで少し作戦負けかな?という状況になっていることが多いように思う。振り飛車党はスペシャリスト故に想定手順の引き出しが多いというのもその原因の一つだけれども。

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恐らく先手がどちらであっても菅井竜也七段が作戦勝ちするんじゃないか?というのが私の個人的な予想です。菅井竜也七段が序盤中盤で作戦勝ちし、しかもあまり時間を使わない。藤井聡太さんは悩ましい局面では時間をしっかり使うタイプなので終盤で30分以上持ち時間の差が出来ていても不思議ではないのかなと。

菅井竜也さんの中終盤は割りと独特なものがあり、片銀冠や左美濃の攻略方法を知り尽くしている感じがありますし、びびって一気に行きそうなところでじっとと金を作りに行く手順を選ぶような胆力もある。

私は居飛車党ですし、藤井聡太さん応援ではあるものの、ここはそれなりに厳しい戦いになるのではないか?と見ています。逆にいうとここでの戦いぶりが今期の成績を占うと言っても過言ではないというか。(あとはこの前の佐々木勇気の横歩取り誘導のような展開に対する用意、でしょうか)。

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あの渡辺明竜王いうところのちょっと損な左美濃なのか、あるいは居飛車党全般的に大変な急戦調なのか、あるいは居飛車穴熊なのか。藤井聡太さんがどういう囲いで戦うのか?に注目するのがまずは序盤の鑑賞ポイントと思います。

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