清水上徹さん五連覇! 第36期朝日アマチュア将棋名人戦防衛で。

1-1で迎えた第三局、振り駒で後手番となった清水上徹さんでしたが、見事勝利して五連覇を達成しました。

また、アマチュアタイトル初挑戦だった倉川さんは、初挑戦とは思えない震えない指し方、特にその積極的な指し回しには非常に感銘を受けました。

以下、簡単に感想を。

第36回朝日アマ将棋名人戦▲倉川尚 vs △清水上徹にて、棋譜を確認出来ます。

第一局に引き続き、先手番を引いた倉川さん。個人的には第二局の勝負を見ていて、これは倉川さんが先手を引いてそれでようやく勝負形かな?というつぶやきをツイッターで行いました。

それは倉川さんの棋力が劣っているとかそういうことではなく、このような大舞台でタイトル獲得がかかった時に、通常どおりの実力を発揮するのは難しくなる。

清水上徹さんはこの舞台だけではなく、あらゆるタイトルマッチ、プロアマ戦においての経験値がずば抜けているので、先手番を倉川さんがもって、またあの飛車先を決める指し方を観たいなと思っていました。

倉川さんの用意があって、清水上さんを翻弄?して、それでようやく勝負としては面白くなるのではないかと。


将棋はがっぷり四つの、膠着模様を迎えます。こうなったら、通常は千日手もやむなし、というのが最近の風潮だと思います。そういう展開でしょうか、というコメントもツイッター等では見られました。

しかし、私は倉川さんは打開するのではないか?とツイッターでつぶやきました。ここまでの積極性を失ったら良くない、と思っていたのではないでしょうか。

逆にいうと、そのぐらい自分を奮い立たせないと、一旦守勢に回ると経験値の差でつらくなると思ったのかもしれません。

第二局がまさにそういう将棋で、勢いの良さでは先後の得の差を埋めきれなかった、というような印象を受けました。

先後の陣形が全く同じ形で、しかし離れ駒の金の位置としては振り飛車側の金が一路玉に近い。この時点で倉川さんが仕掛けましたが、結果的にはこの仕掛けは不発だったようです。

加藤一二三九段が指摘していたような、二筋が薄くなったことをみて転戦するのが良かったようですが、このへんはやはり現役でほぼ唯一トッププロとして大山康晴名人やダルマ流の振り飛車を相手に戦ってきた加藤一二三九段の凄みを感じました。

78手目が振り飛車らしい、軽い好手。この手があるのであれば本譜の攻めは良くなかったです。

桂損を甘受し、反撃を狙うはずが、飛車の逃げ場所を間違って余計に自陣を削られることになりました。このへんでは私は先手はもう投げてもおかしくないと書きましたが、せっかくの大舞台、ここからの第二ラウンドもなかなかの見応えがありました。

しかし現実問題としての駒損は大きく、後手の清水上徹さんが危なげなくまとめて五連覇を決めました。

清水上徹朝日アマの感想コメント、倉川さんについての印象についてがなかなか興味深かったです。


そして倉川さんのコメントはアマ全体へのエールのようなものだと私は感じました。

お二人ともお疲れ様でした!そして清水上徹さん、五連覇おめでとうございます~!


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(2008/08)
天野 高志、清水上 徹 他

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Tag : 清水上徹 倉川尚 ゴキゲン中飛車 加藤一二三 行方尚史

プロ将棋より面白い!…かも。第36回朝日アマ将棋名人戦第1局 ▲倉川尚 vs △清水上徹

第36回朝日アマ将棋名人戦の棋譜は、アマ連のウェブサイトで見れます。

昨日第一局目が、本日朝8時から第二局、決まらなければ午後から第三局が行われます。

挑戦者は倉川尚、タイトルホルダーは最強のアマ、清水上徹。現在四連覇中だ。奨励会修行経験のない純粋なアマとして小学生名人からあらゆるタイトルを総なめにしている。プロとの対戦成績でも善戦しており、プロより強いアマ、と言っても過言ではない。

倉川尚さんは元東大将棋部の主将で年代としては片上大輔プロと同じぐらい?おそらく大学中の交流もあったと思われる。学生時代から今まで特にアマタイトル戦での目立った記録はないと思う。しかし、プロにかぎらずアマでも若年齢化が進むタイトル争いの中、見事初挑戦を決めた。

プロもアマもかなり層が厚いのだということを今回の初挑戦で再認識した。

結果を先に書くと、倉川尚さんが熱戦を制したわけだが、その序盤作戦の練りに練った具合と、中終盤のねじり合いがとてもおもしろい将棋だった。また、実績としては劣る挑戦者が先勝したほうが、清水上徹さんには申し訳ないが盛り上がる、という側面もあるだろう。

振り駒で先手番を引いた倉川尚さんは、初手2六歩。振り飛車党に対して飛車先を決めるメリットのほうがあるかもしれない。特に一般的な研究将棋からMY定跡・MY研究方面に持ち込む意味でも。

それにしてもこのオープニングには驚いた。飛車先を決めてから自ら角交換。私は相居飛車のこのオープニングでは自分から角交換することが(最近は減ったが)ある。

なので電王戦の阿部光瑠プロがやった時にプロでもやるのか!と少し驚きつつ喜んだ記憶がある。今回のはもっと凝っていて、角交換してから端歩の突き越し。ゴキゲン中飛車の丸山ワクチンやら、後手のレグスペやら、あとは最近の藤井流の角交換振り飛車の手順を全部踏まえた作戦。

相手の清水上徹さんも振り飛車の専門家なので、この作戦の意図はすぐに汲み取っただろう。とはいえ、序盤で少し時間に差がついたのはもしかしたら大きかったかもしれない。

このへんは倉川尚さんの試合巧者っぷりが出ていたように思う。挑戦者が少し先行する形でレースを引っ張る形で、将棋が進んでいく。

丸山ワクチンvsゴキゲン中飛車っぽい展開で両者左美濃に。リスクを取らずに双方同じぐらいの囲いにできれば悪くない、と倉川尚さんは思ったかもしれない。後手はバランス重視で金銀分断の片銀冠になることが多いので四枚銀冠を構築することも想定していたとおりなのだろう。

後手のその代償は2五桂ポン。すぐにどうなるわけではないが、この桂馬が取りきられることは基本的には殆どないので、気分が悪いはずはない。

45手目の局面。後手は歩得だが、陣形の差で専門的には先手がやや指しやすいように思う。ただ具体的な良さにつなげるまでは遠い。そのように見るのが人間だと思う。コンピュータ将棋はどのように評価するのだろうか。

・・・と思ってGPS将棋にかけてみたのだが、面白いことにほぼ互角とみていた。理由は端歩の関係性をそれほど重く見ない、というコンピュータ将棋らしいところにあるような気がする。やや先手良し、というところであるいはそのほうが正しい見方なのかもしれない。

端歩は将来のための年金・貯金のようなものなので早死したら活きないものなのでw

中盤の難所、と思われるところで先手が端に桂馬を跳ねた。後手の飛車が二筋から五筋に転じた場面だ。この後手の桂馬は飛車を無力化出来るならば2一に置いてるよりも価値がある。相手玉側に近いところに成り込むことはそんなに期待していない。

そこで3筋になってもいいですよ、と先手は▲1七桂。それぐらい、飛車の活用を急がないと勝機がないとみたのだろう。もし3七に成ると双方の陣形をみたときに後手の左金が浮いているのが非常に目立つ。先手の飛車は二段目になりこんでくるので、銀ブラならぬ金ブラなのでよろしくない。

飛車を捌かせると勝てないとみた清水上徹朝日アマ名人は角を打ち込むことで二筋の歩を支える。先手の倉川尚さんも馬を作ろうと5三に手筋の歩を垂らす。角交換型の振り飛車ではよく出てくる手だ。

63手目の局面。ここが後手からみた頑張りどころだったようで、本譜は等価交換で馬まで先手に作られて飛車が隠居してしまったので後手が辛くなった。

局後の感想として示された手順はなかなか凝ったものだが、そこまでやって後手良しというものではなく、振り飛車らしい曲線的な指し回しでチャンスを伺うことが出来たはずだ、という感じ。

確か倉川尚さんはこの挑戦権を獲得した際の指し回しもかなり強気の震えない指し回しだったようだが、この日も初挑戦とは思えない堂々としたもので、流石に学生将棋でトップクラスである東大将棋部で主将を務めていた人はハートが強いなと思った次第。

清水上徹朝日アマ名人としては、この四連覇中にはなかったビハインドスタート。如何に震えない倉川尚さんとはいえタイトルが掛かればそれなりにクルだろうし、ここからは逆に清水上徹さんの四連覇の経験値が出てくるところだろう。

第二局は繰り返しますがこの後、アマ連のwebサイトで中継されます。動画系の何かがあるのか…は知らないですが、多分ないと思います。


棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3
(2013/05/23)
先崎 学

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内容紹介
私は声を発した。
「詰んでただろ」
木村がきっと私を睨んだ。
「どこでですか」
「香を取るところ」
しばし木村の目が泳いだ。「どこですか」。
投了直後で興奮しており、図が頭の中で作れないのだ。
私はていねいに、先の変化を説明した。ふたりは同時に悲鳴のような声を出した。
(本文より)

特別な才能を持った選ばれた人間が、強いプレッシャーと戦い続けながら一手一手に魂を込め続ける棋士たちの日常。
高度な技術と強い執念がないまぜになった対局室には、今日も新しいドラマが生まれる。
先崎学が将棋そのものというテーマに真正面から挑んだ「千駄ヶ谷市場」シリーズ、ついに最終巻。

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Tag : 倉川尚 清水上徹 行方尚史

第65回全日本アマチュア名人戦、今泉健司さん(広島)初優勝

全日本アマチュア名人戦が9月25日放映され、優勝は今泉健司(広島)、準優勝は加來博洋(東京)となった。

実際の対局は9月12日に行われ、すでに結果が、発表されていた。

将棋の第65回全日本アマチュア名人戦全国大会最終日は12日、東京都港区のチサンホテル浜松町で行われ、今泉健司さん(広島)が初優勝した。

 今泉さんは決勝で実績十分の加来博洋さん(東京)と対戦。元奨励会三段同士の対決となり、相振り飛車の力戦から今泉さんの鋭い攻めが決まった。準決勝で今泉さんは前回アマ名人の井上徹也さん(長野)を、加来さんは初出場の水谷創さん(愛知)をそれぞれ破った。

 アマ名人に輝いた今泉さんは38歳の会社員。2006年のアマ竜王戦など全国大会で優勝した実績を持つ。アマ名人戦では、3度目の出場を実らせた。

将棋、広島の今泉さんが初優勝 アマ名人戦



上記のリンクに出ている今泉健司さんは、以前の写真よりも髪型がさっぱりしており、社会人らしい姿に見える。昔よりもずっとプロ棋士っぽい。少し痩せられたのだろうか、精悍な顔つきに見える。

お二人とも元奨励会三段であり、その時点、当時のプロの底辺よりも当然に強い実力を有していただろう。実績としても加来博洋さんの赤旗新人王戦決勝戦へ進出している(決勝では2-1で阿部健治郎プロに敗れた)。今泉健司さんは、あの恐ろしい合格ルールである三段リーグ参入試験を通って再チャレンジを果たしている。(加来博洋さんもチャレンジしているが不合格)。

どちらもプロレベルの実力を持ちつつもやや力戦に強みをもつ共通点があり、加来博洋さんは独特な右玉調の受け将棋と強い終盤力を有し、今泉健司さんは升田賞を受賞した「△3二飛戦法」の開発者であり、振り飛車を得意とする。

この二人の対戦ということで相振り飛車になったようだが、棋譜は見ていないが、独特な定跡型ではない相振り飛車の可能性も高いのではないか。力戦調のMY定跡好きとしては是非後ほど拝見したいと考えている。

元奨の真実、などで拝見した内容から今後の行く末を他人事ながらに気にしてしまったりもしたが、将棋愛を失わずに、よりパリッとしたご様子の写真が出ており、勝手に安心した。

今泉健司さん、本当におめでとうございます!

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三度相振り飛車、打ち歩詰め状態、裏アマCOM戦 第33期朝日アマチュア将棋名人戦第2局・第3局

第33期朝日アマチュア将棋名人戦・三番勝負第2局(2010年5月30日)
早咲誠和(挑戦者)vs△清水上徹(朝日アマ名人)


この将棋は序盤のやりとりが面白かった。先手の早咲挑戦者が石田流を宣言した。対する後手の選択肢としては、相振り飛車か居飛車。居飛車が多いはずの早咲挑戦者が石田流ということは、相振り飛車に決め打ちしてきた可能性がある。特に第一局を思えば、先手・後手どちらの手番でも相振り飛車の用意があるということだろう。…と清水上朝日アマ名人が考えたのだろうか、居飛車に構えた。

このあたりは、双方振り飛車党の時によくあるやり取りのようにも思う。5手目の96歩が清水上さんの居飛車を誘っている。もし後手が居飛車にすれば、この端は緩手になる可能性があるからだ。

先手の構えは野暮ったい。96の歩、75の位、銀・角・飛車という位置関係、手数をかけている全てが利いていない可能性がある。

後手は具体的に良くする手順がありそうな気がしたが、シンプルな構えから72飛車と寄る後手。85の歩がタダだが、取れば毒まんじゅう、65歩と突かれて後手が良くなるのだろう。57の歩に紐がついていないこと、および67の空間が気になる感じだ。

そこから千日手模様になるが、後手番の清水上さんが気合で打開した。先手は仕方なく仕掛けを気にしながらの美濃囲いよりも寧ろ、ということだろうか、シンプルに48銀で囲いを完成させた。(前述の通り気になる57の地点に利かせつつ、囲いも終了という一石二鳥の手だ)。

後手の構想は五筋位取り。折角の晴れ舞台、研究で負けるのも相手の土俵で力を発揮出来ないのも勿体無い、力と力のぶつかり合いを暗黙の了解として構築されたような双方の陣形だった。

後手の五筋位取りは勝ちやすさ・勝ちにくさということではよく分からない部分はあるが、少なくとも9筋の歩、7筋の位を相手にせずに戦いが起これば後手に利するものとなりそうなので、良い考えだと思われた。

どこまでも落ち着いている手厚い後手に対し,指し手がない先手は左金を繰り出していく。52手目、後手が44銀とし、6筋が手薄になったときに先手は開戦するが、後手の清水上さんはノータイムで53銀と逆モーション。

誘いの隙を見せて、攻めさせて反撃するというカウンター作戦だった。開戦後の最初の攻撃が一段落した70手目に指された55銀が良さそうな手だった。

逃げることも取ることも出来ない先手は馬を殺す手順を選んだが、派手に交換された75手目の局面、これはどちらが良いのだろうか?駒割は飛車角交換で、やや後手が持ち駒の活躍は図れそう。玉の堅さは先手の方が堅いが後手玉よりも迫りやすい印象なので互角だろうか。しかし、ここで手番があるのが大きく、後手が指しやすいのではないかと私はリアルタイム中継時にツイッターで呟いた。

具体的には69飛車や79飛車を意識したものだが、66の金が宙ぶらりんな感じなのが気持ち悪いし、49の金も、この囲い特有の弱点であり、後手が勝ちやすいのではないかと考えたのだった。

76手目、清水上さんが選んだのは15歩。そしてこの手が結果論的には緩手であったように思う。昨日の95歩といい、端歩のタイミングが微妙にずれており、本調子ではなかったのかもしれないし、序盤で翻弄された目に見えない疲れが感覚を狂わせていたのかもしれない。

とはいえ、一目桂馬香車を拾って27の地点を狙って…という手は私クラスでも見えるのだが、より得をしようとするあたりが強さの証拠ではある。

81手目は早咲さんが力を発揮した場面。攻防の55角があり、一気に分からなくなったように感じられた。55角に対して、飛車を切るのは同金で金が手順に逃げられて、かつ64の歩を支えられるので悔しくて指せない。

58銀を決めてから64金が勝負手だが11の香車を取られて馬が出来た場面では既に大変な雰囲気。91手目、61銀が入ったところでは逆転したのではないか?と私は呟いた。そこで繰り出された92手目の47銀成りが鋭い手。先手は逃げたのだが、これは取る手はなかったのだろうか?とれば何となく先手が一手勝ってそうな気がするのだが…面倒臭いので読んでないが。

同銀に後手の手段として考えられるのは歩成か飛車成か46香車ぐらい?どれも先手ぎりぎり受けきりそうな雰囲気があるのだが。本譜はぼろっと銀を取られて、同金に39銀と打たれて、18に逃げた後に66の金を補充されては辛い。

そこからも紆余曲折あったが、47銀成りが通った(そして66の金を取る手が玉の逃げ道を塞いでいる)のが勝因のように思われた。ともかくこれで、1?1のタイとなり午後の第三局へとタイトルの行方は持ち越された。




第33期朝日アマチュア将棋名人戦・三番勝負第3局(2010年5月30日)
清水上徹(朝日アマ名人) ? 早咲誠和(挑戦者)


振り駒の結果、清水上名人が先手となった。また中飛車を指すのだろうか?石田流だろうか?と見ていると中飛車。昨日も途中までは難しいながらもやれる将棋だったので、そのリベンジということではないか?と私は考えた。

個人的には先手中飛車に対して、「角道を塞がずに2筋の歩を伸ばす」将棋が好きなのだが、本局もそれにはならなかった。或いは最新対策で面白くない変化があるのかもしれないし、棋風として早咲さんが好まないのかもしれない。

40手目、角交換した局面では、これであれば先手も後手もどちらもやれる、と私は考えた。シンプルな美濃囲いかつ双方の攻め駒も無理のない形なので、一方的にはならずに、面白い攻め合いがみれるのではないかと。

素人目には32に打ちそうな角を、66に打ち据える先手の清水上さん。後手の飛車が22にいると菅井流と呼ばれる、何度も飛車のコビンラインを狙う指し方が最近あるようだが、生角を手放して戦果が上がらないのであれば一目勿体無いように思われた。

そして再び銀冠へ。手数をかけて固くなる印象がないので、その分の手数を攻撃陣に掛けたいのは私が居飛車党だろうか。このあたりは専門家の意見を聞かないとわからないが、対する早咲挑戦者の動きが居飛車党らしく機敏で素晴らしかった。

一歩タダ取りされて、最初から選択肢にあった▲88飛車▲32角が指された。であれば、上記の感想がやはり頭をよぎるのだが…。歩切れで1歩損、相手は歩を二つもっている、というのはかなり辛い状況だ。昔四間飛車vs居飛車穴熊で34の歩を取らせて穴熊に囲う将棋があったが、あの羽生名人ですらその歩損に泣いて負けたような記憶がある。

具体的な指し手は分からないのだが、この状況を活用して自ら攻めるのではなく、攻めさせて勝つ、手を殺して勝つ、というような展開はないのだろうか?と考えていたが、90分の持ち時間、秒読みでそういう将棋は勝ちにくいので考えないものなのだろう。そういうわけで、後手は果敢に先手を攻め立てる。入玉が見えそうな先手陣をあれやこれやで薄くして迎えたのが116手目の局面。これで前に利く駒が入れば先手玉は詰む。しかしそれがどこにも落ちていない。

昔の真剣師であれば5枚目の香車を取り出す場面なのだが、あいにくそれも出来ない。流石にこれは後手が勝つのだろう、細い攻めを強引に通す早咲さんのことだから、どうにかするのだろう、と見ていたのだが、なんとこの状況が終局まで続いたのだった。

最後まで打ち歩詰めの筋が解けることなく、清水上朝日アマ名人もその筋を意識した指し回しを行い、最後は見事な長手数手数の詰みに討ち取った(らしい。私は最期まで読んでないが、44龍と金を補充する手があるので詰みそうだ)。

さて、それではこの将棋の終盤、縛ったつもりが打歩詰みで後手の勝ちなのか?といえばどうやらそうでもないらしい。http://twitter.com/#/list/shogiwatch/shogiに流れていたアマ強豪?とプロと観戦記者の終局後のつぶやきを拝見していたのだが、下図119手目35馬の瞬間に39金という手があった。

100530ama3.jpg
25桂馬、同飛車成りだと詰むが同飛車不成で詰まない、という局面がここから終局まで続いたが、この局面で強く39金があったようだ。確かにそれで受けが無さそう。


これを発見したのはGPS将棋というソフトであるとのことで、その他のソフトは打ち歩詰めを認識せずに25桂馬、同飛車成りで後手の勝ち、という判断をしたとのこと。このあたりは、現在将棋世界で連載しているコンピュータ将棋の特集において、丁度語られたばかりの話だったので何とも言えない気分になった。

コンピュータ将棋が、アマトップを凌駕しつつあるのではないかと言われる昨今、アマの頂点を極めんとする朝日アマ名人戦の最終局において、コンピュータ将棋が課題とする局面が登場し、そしてあるソフトはそのハードルを超えられず、アマトップである挑戦者はその筋を着手タイミングでは発見出来ず(恐らく感想戦や或いは対局中に気づいたのではなかろうか)、GPS将棋という第20回コンピュータ将棋選手権で3位!(優勝ではない3位!という意味の感嘆符)のソフトが気づいたということが、単なる偶然ではないと思うのは、意味のないところに意味を読み取る人間の進化において生じた性(さが)によるものだろうか。



新・アマ将棋日本一になる法新・アマ将棋日本一になる法
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天野 高志清水上 徹

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パーソナリティを知るとよく楽しめる、ということがあるので、指す将棋ファンの実力向上よりも観る将棋ファンの愉しみの領域をアマ方面にまで伸ばす意味での啓蒙書、というイメージかも知れません。

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Tag : 早咲誠和 清水上徹 相振り飛車

地獄突き 第33期朝日アマ名人戦三番勝負第1局 ▲清水上 徹vs△早咲 誠和

第33期朝日アマ名人戦三番勝負第1局 ▲清水上 徹vs△早咲 誠和

http://homepage1.nifty.com/amaren/netchukei/20100529asahiama_1.html

先手の清水上名人が中飛車に構えると後手の早咲挑戦者は相振りを採用した。序盤の駒組みは後手のほうが自然で、後手を持ちたいと思った。上からくる相手に対して銀冠というのは当たりが強いような気がしなくもない。少なくとも美濃よりは堅いのだが、駒組みに手が掛かるために、相手が本譜のようにシンプルに囲って攻められると銀冠の堅さが活きないような印象がある。

ただし後手の構えもそれなりに難しい。前期のB1、行方プロが対鈴木大戦で絶品の指し回しを見せたが、あのときは33桂馬は早めに飛んでいただろうか?あの将棋は2筋の歩も伸びていて、後手の模様が良かった記憶がある。そういう意味では25歩型を防いでいるだけでも本譜の先手の主張は通っているのかもしれない。

40手目の35歩には驚いたが大一番らしいこの対局にかけた想いが伝わってくるような手だった。ただしこれで後手からの打開は難しくなり、とはいえ先手からの攻め手はもっと見えない。どうするのだろうと見ていたときに指された手が49手目、驚きの▲15歩だった。

飛車の横利きが消えた瞬間のワンチャンス、確かに先手の左翼は攻めにならない、作戦負け模様だが、自玉側の端から攻めるというのは非常手段に思えた。

ただし55手目、ほぼ無条件で桂馬を取りきれるのであれば相当。このあたりは下手なりに受けが好きな私としては先手を持ってみたかった。木村一基プロも先手をもって勝ってくれるのではなかろうか。

ここからは延々と後手の攻め、先手の受け。完全に受けきるか入玉するしか勝ち目のなさそうな先手だが、覚悟と方針を決めてしまえば、わかりやすいといえばわかりやすい。

64手目の25歩は一目良さそうな手だった。49の傷と金銀の連係に将来的に影響を及ぼす、腰の入った一手。私レベルであれば、49の傷をみて、△16香車、▲同香、△36飛、▲同銀、△49角で27に銀を引かれる等で攻めが切れて、うーむ困った…となりそうなところだが、△25歩はぐぐっと力の溜めがある手だった。

対する先手清水上アマ名人の38歩は49角の筋を先受け緩和したような意味があるだろうか。26の銀や36の金が引くスペースを用意している感じもする。

71手目の26銀打ちで遂に先手が受けきったとは言わないまでも、後手の攻めに一息入った。77手目、先手が24の地点に馬を作ったあたりでは後手の攻めが頓挫したように私は思った。そう思った次の手が、加藤一二三九段がいうところの「これで攻めが繋がる見込みがたちました」という手だった。

個人的にはこの手の良さが分からない。前述の25歩は私レベルでも理解出来たが、この87角の意味は何だろうか。所謂B面攻撃と呼ばれるものだが、先手の攻め駒はそもそも9?7筋には居ないのでなんとなく空振り感があるのだが、じっくり桂馬香車を取っておけば負けはなく、飛車の苛められ具合の違いで後手が良い、ということなのだろうか。

私が先手を持っていた場合、87角に対する次の手としては21歩成が見える。同飛車と取らせて14の香車を取る。或いは76の地点を受けるような手、それらを本線・組み合わせ方を考えたいところだが、清水上アマ名人は95歩。恐らくは受けてもきりがないので反撃の味を持たせておきたいということだろうか。

ただし後の展開をみると、この手が疑問手だった可能性はある。本譜89手目までの展開を思うと、桂馬を取らせずに14の香車を取り切ることのできる21歩成や、無条件に77の桂馬をとられることによって生じた飛車いじめ、しかも9筋を逆襲されて逃げるのであれば、勿体無いやり取りだったと思われる。

後手に左翼の桂馬香車を取りきられて、ここで後手の負けは無くなった。相入玉があるかどうか?という展開になったが、後手早咲挑戦者の攻めが的確だった。9筋で得た香車を22の歩の裏側で使われたあたりではすでに先手に勝ち目はなく、後はどのように後手がまとめるか?という状況。

決め手は35銀。この手で先手玉の退路は絶たれ、程なく先手の清水上アマ名人が投了した。

5月30日日曜日(この記事がアップされる日だ)、朝八時半から第二局が行われ、2局を清水上アマ名人が勝てば、第三局が続けて行なわれる。(第二局第三局

かなりの作戦負け模様から上手くペースを掴んだ清水上アマ名人だったが、曲線的な戦いゆえに通常の将棋感覚が機能せずに苦労した印象であり、次は気分を替えて第三局に持ち込んで欲しい。(どちらかに肩入れしているわけではなく、面白い対局を沢山みたい、ということです)。



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お二人、及びその他アマ名人になったトッププロの人物伝、エピソードが満載の書籍。これを読んでアマ名人になれるとか、実力が上がる、という類の本ではないですが、トップアマの素顔横顔に興味があるのであれば、読んで損はないと想います。

私のお気に入りは天野高志さんの章です。何ともユーモラスな文章で失礼ですが、笑ってしまいます。

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