「棋は対話なり」を体現する戸辺将棋 プレイバック 戸辺誠 第67期C級2組順位戦

第68期全勝で上がった戸辺誠プロ。その性格からして、将棋界の将来を担う一人であることは間違いない。トーナメントプロとしての指し将棋の強さ、将棋界発展のための将棋教室・普及活動への取り組み姿勢、その両方による総合点において、若手では群を抜いており、(あまり好きな言葉ではないが)人間力が秀でていることが、盤上でプラスに働かないはずがない。

無双・図巧を全問解くことが、羽生世代前後の実力向上のきっかけだったが、それは将棋への直向さ・根気を養うところがあった。そういう意味では、トーナメントプロとしての実績を残しながら、普及に努めるというのは、将棋への愛を試されているといえばいいだろうか。何度もくりかえして恐縮だが、親御さんの育て方が素晴らしかったのだと、戸辺プロのブログでの言葉を見ているといつも思う。


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今期の昇級の将棋は、C1の振り返りにおいて比較的厚めに触れたので、前期C2からの昇級の10局について、以下に記す。

第67期C級2組順位戦の昇級者は大平・田村・戸辺の三人。大平と田村が三十路オーバーでの昇級で、いわゆるC1かB2での頭打ち感が出てくることが予測される。現に今期の大平は2?8で驚きの降級点。田村もじつりきの高さは伺わせるものの、超特急故に取りこぼしが出て6?4に終わった。

それに対して、戸辺は22歳でのC1昇級。58期?67期の10年でC2からの昇級者を見てみたが、58期の堀口一が25歳、59期の小林裕が24歳、60期の松尾が22歳、61期の渡辺が18歳、62期の山崎が23歳、宮田が22歳、千葉が25歳、63期の飯島が25歳、64期の阿久津・橋本が23歳、65期の片上が25歳、広瀬が20歳、66期の村山が23歳、といったところなので、22歳での昇級は出世の予感を感じさせる。(それにしてもやはり渡辺が驚くべき早さであることがわかる)。22才でのC1が早いということは今期のB2は当然ながらもっと凄いということだ。

来期はB2の層の厚さの前で真価を試されるが、最近の一線級との対戦成績から考えても充分勝負になろう。

■1戦目:佐藤紳戦…勝ち
初戦はC2の番人…になるつもりは本人は無いだろうが、そしていつか順番は巡ってくるだろうが、しばらくはC2で好成績を残し続けそうな佐藤紳プロが相手だった。それにしても佐藤プロは今でも十分にカッコ良いが、四段上がりたての頃は自称どころか確りとジャニーズ系だった。「ハゲとは結果ではなく、過程である」と言ったのは誰だったか忘れてしまったが、その言葉に従えば、素晴らしい対処だと思う。禿げてなお、美しく、大人の色気が漂う。最近始められたブログの面白さも、読者を意識したエンターテイメントとして完全に仕上がっており、毎回唸りながら・笑いながら拝読している。

戦型は先手戸辺ということで、石田流。丁度、戸辺が三段だった頃に、鈴木大介が戦型予告にて棋聖戦で佐藤康と戦い、戸辺三段をイメージして戦った、というコメントを残しており、その頃から私の心には戸辺という名前が残っていた。今でいうと丁度、久保?菅井というところか。

後手の△85歩に対して、先手がなかなか76飛車と上がらない。水面下の変化で乱戦の含みもあったが、持久戦を思わせる立ち上がりとなった。手詰まりになると死ぬ石田流としては、後手の自然な駒組みに対して、なかば強引と思われる角の投入にて打開を図ったが、これまた自然に応じられていかんともし難い状況となった。

困ったときの銀冠とばかりに両者銀冠を組み上げるが、4筋の位の関係で後手の佐藤が指しやすさを維持していると思われた。ただし佐藤は時間がない。63手目のコメント時点で既に1.5時間の差がついていた。ほころぶと一気に食いつかれる対石田流の辛いところが現れている。

指しやすそうな局面で、自玉頭から開戦した佐藤紳の構想がどうだったか?角の利きが玉のコビンに通っている先手が望む展開になった気がする。本譜の展開では9筋に掛けた3手と8筋に掛けた2手が全くの無駄になっているのが気に入らない。先手の飛車を楽にしての88角辺りからは振り飛車ペースになったように思う。


■2戦目:佐藤天戦…負け
同年代のライバル、佐藤天との対決。昇段前後の評価としては、どうだろうか、戸辺が低かった訳では勿論無いが、佐藤天については常に大器の噂があったように思う。本局は先手佐藤で丸山ワクチンに進む。後手が55歩を保留して、二枚銀などの嫌らしい変化の無い手順で進めたことをみて、先手の銀が56に来る。次に67に引きつけて堅さ負けしない、ということだ。

そうされると面白くないとみた後手は44銀と進める。後手の腰掛け銀に対して早々にぶつける筋というのは角換わりではよくあるが、この形での4筋と3筋の位の良し悪しがよく分からない。一目、先手の桂馬が使えないのでどうかと思ったが、本譜の手順で馬が出来れば、後手の左銀と角の働きが、二枚投入した割には乏しく、また先手の玉形のほうが良いので先手満足だろう。

その後の展開は、自然に指して先手が優位を拡大して終わった。C1全勝の時のような、序盤の細やかさに欠けた一局だったかもしれない。今の戸辺プロであれば、あの銀打ちは指さないだろう。銀を活かすために角まで投入したシーンはさながら、プライベート・ライアンのようだった。(一兵卒を救うために一部隊が投入されるという意味です…)。


■3戦目:室岡戦…勝ち
研究家である室岡との対戦は戸辺先手で千日手となった。先手石田流に対し、後手が序盤すぐに角交換して両成りの角を打ち、先手が76に角を打つ将棋だった。そこから一転して持久戦模様となり、後手が飛車先をついていない関係で、先手からの攻めの手がかりに乏しく、千日手になったものだった。

ほぼ持ち時間に差のない状態で始まった指し直し局はまたもや序盤から趣向を凝らす室岡に対して、細かい駆け引きがあり、結局なんと戸辺の居飛車となった。戸辺の居飛車はかなり珍しいような気がする。矢倉模様に進み、後手の戸辺プロの駒組みのほうが自然に思われた。指し口としては丸山か行方か?というような堂々とした指し回し。飛車先を角で受けての三手角の矢倉といえば伝わるだろうか。

室岡プロはカニカニ銀のような戦法を採るが、打開の機会を失い作戦負け模様に。粘りの効かない陣形のまま、安全確実な後手の歩みの前に為す術も無く大差での室岡プロ投了となった。


■4戦目:松本戦…勝ち
対振り飛車には急戦策を用いる印象が強い松本プロとの対戦。松本プロはプロ入り後に10連勝した印象が強いのだがもう中堅どころの棋士となっている。後手戸辺プロのゴキゲンに対して松本プロが採ったのは78金型だった。角交換なく進み、後手が3筋と5筋に位を取る定跡に進む。先手石田流、後手ゴキゲンの振り飛車党であれば、かなり嬉しい形なのではないだろうか?と個人的には考えている。

先手の主張点としては、現代将棋における対ひねり飛車というのは受け手側も対抗手段が多いのでやれる、ということだろうか。先手の方が先に駒組みの飽和点を迎え、先手なので当然攻める。矢内あたりであればまだ手待ちするのだろうか?とふと頭をよぎった。

本局の戸辺プロの指し回しは非常に繊細であり、彼の持ち味、68期全勝の原動力である細やかさが遺憾なく発揮されている。飛車角が窮屈なところから、と金を作られる代償に、角金交換を行い、成り駒がヒタヒタと迫る前に玉のコビンを睨む角を攻撃の起点としての攻めを構想するのだろうか?と眺めていると86手目、じっと46歩。この一歩補充が良い手だった。

先手の松本プロはこの歩成りを受けることは飛車が窮屈になるので出来ない。二筋と遠いところに飛車を転戦させる。歩成りでと金を作るのはヒタヒタ競争で負けるが?と思っていると、戸辺プロは満を持して56歩と角道を通す。歩成り・歩成りという安全確実な攻めが見込まれることとなった。

先手は飛車の顔を立てるために遠いところだが実利である桂馬を取るが、振り飛車側からいえば、捌けてナンボの駒なのでどうぞどうぞ、というところだろう。その後の36歩もそつがない手であり、見習いたい手の代表ではないだろうか。

先手の74桂馬は打たされた形。成り駒を寄せていくのは局面がサッパリしてしまうので未だしも73の銀をどかしてから、という手だが、桂馬を後手に持たれると角の直射が本格的な脅威となる。分かってはいるがそれ以外に手段はないので仕方なく、というものだ。

とはいえ、先手が銀を持ったのでゆっくりしていると角筋をずらすような手段がありそうなところ。戸辺プロはスピードアップを図る意味で57に歩を成り、形を見出してから、待望のコビン攻めを本格化させる。角筋受けにくしとはよく言ったもので、先手から反撃する機会は最早無い。後は受けきるか攻めきられるか?という勝負になり、藤井流のガジガジを思わせる77への攻撃と、久保を思わせる絶妙の捌きのコンビネーションで、一気に先手陣が崩壊した。

本局は、この期の戸辺将棋におけるベストバウトと言っても過言ではない。序盤の駒組み、中盤の細やかな指し回し、緩みの無い寄せどれも素晴らしかった。振り飛車党であれば、これだけでご飯三杯、という将棋だと思うので是非並べて頂きたい。


■5戦目:藤倉戦…勝ち
振り飛車党同士の対戦。相振りはよく分からないのだが、後手の戸辺プロが穴熊、先手の藤倉プロが美濃に囲う。この穴熊の形は藤井プロ開発のもののような気もする(参考:相振り飛車を指しこなす本〈1〉 (最強将棋21))し、戸辺プロ御用達の何でも三間飛車戸辺流相振りなんでも三間飛車 (マイコミ将棋BOOKS)のような気もするが居飛車党なのでよく分からない。駒組み完了後のやりとりは歩得という意味でも、手得という意味でも、後手が圧倒的に満足な展開。

その二つにより、また、地球の裏側からジャンプする桂馬+右四間ならぬ左四間?の攻めがあっては先手陣がもたない、という気がする。後手が84歩型なのが、急ごしらえ感はあるものの、当面は取っ掛かりがなく、何かの時に83銀などと埋めると戦意喪失して先手が自らくびれる、という展開までイメージする場面が62手目の局面だ。

先手のそこからの手順はいわゆる入玉行進曲。土方が五稜郭に逃げても幸せにはなれない、としたものだが、他に手段がない。そういえば藤倉プロの前期の相振りも似たような展開が何局かあったような気がする。駒組み後に割と素人目にもわかりやすい程度に形勢を損なうことが多かった印象。

繊細な指し回しに特徴のある戸辺将棋だが、入玉相手の穴熊というのは、その特徴を攻めにおいて活かしきりやすい状況だと思う。入玉させずに確実に攻めを続ければゴールできる、という展開。素人だと王手は追う手で泥仕合化するかもしれないが、流石に逃さない。私が右玉で対振り飛車穴熊を相手にした時の失敗例のような将棋で、藤倉側を自分が持っているような気がして、これが長時間の将棋だと思うと…と、魂が削られるような気持ちになってしまった。

戸辺プロ完勝で4勝目。4?1での折り返しでこのあたりで昇級を意識しはじめたのではないか?


■6戦目:中村亮戦…勝ち
振り飛車党同士の対戦。先手の戸辺が様子見の端歩を突く。振り飛車党同士だとどうしても探り合いになる。「どうしますか?」「相振りにしますか?」「いやそっちが居飛車やってよ、対抗型にしようよ」「いや対抗型やりたいならそっちが居飛車もってよ」「えー…」「仕方ないな、じゃあ居飛車持つよ」「えっ!居飛車やれっていうから居飛車にしたんだけど!」「ちょっと!キミが『えー…』っていうからこっちが居飛車にしたんだよ?」「…相矢倉かよ」ということが稀に起こるわけだが、本局はすんなりやり取りがなされて、先手の戸辺プロが居飛車をもった。

玉側の端の位を取ったのが先手の主張点であり、後手はその位が活きないような展開にして実質手番を握って攻勢を取りたいところ、と思うのが普通でその気持ちが、中村亮プロに単騎の銀を走らせたのだろう。

戸辺プロは持久戦狙い。端歩と穴熊の関係が奇妙に見えるかもしれないが、相穴熊になれば活きる位だし、相手が美濃だったら狭い。銀冠であれば端の凹みは未だしもだが、組み上がりまでに気を使う展開だし、横の将棋になったときに薄い。いずれにせよ後手が苦労して良くすることを強いられる展開なのだ。

穴熊は現代将棋においては必須科目であり、88角と引けることを含みにした組み上げはどの対振り飛車においても現れる。最近だと対ゴキゲンの穴熊でも水面下ではよく出てくる含みだ。

32手目、中村亮プロは銀を撤退させ、苦渋の二手損に甘んじる。これにて作戦負けが決定した瞬間だろう。ただし、その二手損を玉の駒組みを代償にして帳消しとしたのが面白い構想。確かに端の位を取られた美濃は窒息しそうな狭さなので、7筋に玉をおいて銀を上がらないほうが息苦しさはない。もっとも堅くはないので、どこかでそのツケが回ってくる可能性はある。それは承知の上で、わかりやすい攻めを狙った。

石田流の陣形からの3筋の攻めというのは兎に角わかりやすい。ただし居飛車側が穴熊なので互角の捌きではかれこれの玉形の差で悪いはず。どのように後手が攻めてくるのか?と慎重に読みを入れる戸辺プロ。互角の捌きで良いところでも僅かでも得をしよう、ということで、このあたりが現代将棋におけるイビアナの感覚だ。田中虎ちゃんの時代のノー天気なイビアナとは訳が違う。女流プロでイビアナがあまり出ない理由はこのあたりにある。何も考えない振り穴と、何も考えないイビアナでは圧倒的に後者が負けやすい(相穴熊戦という意味ではない)のは、角道、77の地点の関係だ。

現代将棋におけるイビアナは77の地点が最重要課題であり、常についてまわる問題なのだった。(前述の88角も77への攻撃に対する緩和の手段だ)。

本譜はそういう意味では、序盤に訪れた77の地点への危機は去り、角道も通っており、互角にさばければ先手良しということで先手が指しやすいはずだ。ただしそれをどのように具体的な良さに繋げるか?というところに、その棋士のセンスが現れる。私は戸辺プロの応手を注目して35手目以降の手順を眺めた。

44手目までの手順は、駒得を拡大する、ならぬ手得を拡大するものだった。棋理でいけば、先手が悪いはずはない。そして後手は不本意ながらも平美濃に囲うしか手がなかった。6手の損が駒組みに生きれば銀冠ぐらいは出来ていた気もするが、石田流の左翼との相性が宜しくないという意味もある。

攻めると負ける中村が玉を固めて作戦負けを緩和しようとするが、香車があがって巣篭もりの準備をした瞬間に完全形を構築した先手が満を持して攻撃を開始する。島朗であれば57手目をみて投了するかもしれないぐらいにうんざりするかれこれの美しさの違いだ。もっとも本譜も戦いが始まった瞬間に勝負が決まった。この将棋にも戸辺という将棋指しの特徴がよく現れていると思う。

相手の意図を汲む手順といえば伝わるだろうか。相手の構想を読むという感じではなく、もう少し柔軟な感じがするのだ。本局もそういう良さが序盤の端歩から全て出ている。順位戦という時間の長い将棋で、中押し勝ちが多いのは戸辺将棋の特徴だろう。攻め勝つとか受けて勝つではなく、相手の意図を汲んだ上で、やりたいように組ませているにも関わらず、既に先の選択肢においては戸辺が指しやすいものしかない、という印象。

以前の記事で、例えばコンピュータ将棋に勝つには水平線効果を活かして、、というようなことを書いたのだが、もしかすると戸辺将棋がそのヒントになるのかもしれないと私は考えている。

話は大きく逸れたが、これで5?1となった。


■7戦目:藤原戦…勝ち
先手藤原が丸山ワクチン。ワクチンは根治療法ではなく、妥協の手段でしかない、というのが振り飛車側からの見解だろう。漫然と組んでドーンと開戦する昔ならばいざ知らず、繊細さを要求される現代将棋においては、先の選択肢が全て振り飛車指し易し、となっている可能性がある戦型だと思う。

このあたり、佐藤康光の不振とも関連しているような気がしており、序盤研究・定跡将棋の跋扈ということではなく(そうであれば村山慈明はもっと活躍しているはずだ)、手順ではない機微のとらまえかた、みたいなものがかなり重要になっているということなのではないか。豪腕タイプが牛若丸に捻られる、柔よく剛を制すというイメージ。

藤原は佐藤康光が最初にやったと思われる構想を試す。即ち片銀冠阻止の駒組みだ。こういう強い主張のある駒組みと戸辺将棋というのは対局にあるという意味で面白い対戦だと思う。現代将棋は、こういう強い主張で一手勝ちを目指す居飛車党に牽引されてここまで発展してきた。藤井システムというのも、ある意味、地平線の彼方では振り飛車と居飛車というのが繋がっている、地球は丸いことを証明したようなものであり、基本的には居飛車思想による振り飛車である。

しかし戸辺将棋に代表される振り飛車の究極思想というのは、全ての手が悪手である(可能性がある)、ということを示しているような気がする。

私の勝手読みばかり書いてしまったが、そういうつもりになって是非この将棋を、24歩と後手が指すまでの手順を並べて欲しい。大上段の居飛車の動きが空振っている印象を受けるのではないだろうか。良くなってからの戸辺将棋は従来の王道本筋の淀みの無いものであり、粘って勝つ、受けて勝つというものとはちがう。

本局も序盤で模様が良くなり、中盤で拡大し、終盤では速度勝ちするという完勝譜だった。

(戸辺プロの対局数としては本局は7戦目だが抜け番1を含むので)この8回戦において競争相手の大平田村が揃って黒星ということもあり、昇級戦線は一気に混戦模様となる。順番としては1敗勢が中村太(16)、大平(18)、戸辺(20)、佐藤天(21)、村中(26)、村田顕(40)、2敗先頭が田村(7)というもの。(カッコの中の数字は当時の順位)。

相手関係を見ずにだが、いま見てもこの中から大平と田村が上がるとは、、、という気がしなくもない。この期の佐藤天は鬼勝負に勝ち、勝てる相手に3発食らうというもので、ここで上がれなかったのは本当に大きいと思う。


■8戦目:島本戦…勝ち
先手戸辺の石田流。対する島本は棒金で臨む。私としては馴染みのある戦い方で、振り飛車最先端の男がどういう風に対処するのか興味深く見守った。
77桂馬が比較的早いのに驚いたが、シンプルに玉頭方面に転戦して、確かに後手の金銀が王様を一人で放置して遊びに行っているような風情。角は王の守りではなく、むしろ玉が角を守っている印象すらある。

この玉頭側に飛車を転じてからの戸辺の指し回しは見事の一言。居飛車党でもご飯三杯な棋譜であろう。素人が棒金で負けるときの苦い思い出すら吹き飛ばすような爽快な手順の連続。この将棋を見る前は棒金は私のレパートリーに含まれていたのだが、(尤も私の手順では基本的には石田流に遭遇はしないのだが)、今後は石田流に対して棒金を指すことはないだろうと思う。


■9戦目:金井戦…負け
二番手でラス前を迎えた戸辺だがここに試練が待ち受けていた。相手は前期C1に上がったオーケストラ金井。或いはウィーン金井だろうか。兎に角上品な顔立ち、所作振る舞いであり、戸辺同様に親御さんの教育が素晴らしかった印象。こういうタイプは必ず伸びて行く。努力しつづける力を才能の一部として見る場合、その他の才能構成要素よりも長期で見た時には明らかに重要である。きらめく才能はキャピタルゲインであり、努力する力はインカムゲインである、といえば伝わるだろうか。

戸辺プロ後手番でゴキゲン中飛車。金井プロは78金から深く玉を囲うことを見せた。この本譜の展開は、通常であれば「馬は作らせるが何故か先手の勝率が悪い形」になるはずだったのだろうか?本局は珍しく戸辺が自ら趣向を凝らしに行った。昇級のプレッシャーではないだろうが、一目左翼が美しくない。

先手は馬を作れたことに満足して飛車先を謝る。後手はその代償に左銀の活用を図る。49金と右金の運用を留保しているのがポイントで、古くは立石流の時代から角交換振り飛車、特に飛車先逆襲型にはこの右金の動きが重要になる。

後手の61飛車には優劣は別としても後手が苦心している様子が伺える。悪くはないのだろうが、こうなれば2筋の関係は振り飛車側の優位点としての価値は若干下がり、局面を打開していく権利(義務)は後手に回っている。苦労して馬付き4枚囲いの先手を打ち破る必要が生じている。勿論繰り返すが悪くはないだろうが、具体的に良くしていくことの大変さは限りなく大きい局面だと思う。

しかしその苦労を乗り越えて指しやすさを得た戸辺の構想が見事だった。六筋の構築を下段飛車がフォローし、構築完了後に再び二筋に飛車を振り直し、攻撃を再開する。金井の疑問手もあり、遂に七筋の位まで奪回して、ここからどのようにして優位を拡大するか?というところまできたのだった。

いつもの展開としては、序盤に優位を築き、中盤で良さを拡大し、終盤は鋭く決めるのだが、本局は序盤の作りが違う。それが影響しているのかどうかが分かるほど私の棋力は高くないのだが、ぎりぎりの勝ち将棋だったのだが、勝ち手順の選択肢はとても少なかったような印象を受けた。

私は青野照市プロの急戦将棋が好きなのだが、自分で将棋をリードしていくような将棋というのは、微差を保って勝つスリルはあるものの、少しでもつまずくと負けになってしまう。戸辺将棋と比べると、強引すぎるのかもしれないと思うようになってきた。自分で将棋を作りに行くタイプである郷田や佐藤の年間初負け越しを見た後だから尚更なのかもしれないが。

順位の悪い戸辺はこの負けで二番手から一気に五番手に後退した。この時の敗戦の痛手が、C1での全勝昇級に繋がっているのではないかと思う。


■10戦目:伊奈戦…勝ち
昇級を決めた一戦。他力で迎える最終戦というのはどういう気分なのだろうか。結局自力の高崎プロが有吉先生に負けて昇級を逃すのだが、この期の有吉先生は本当にすごかった。何しろ矢倉の最新型で佐藤天彦を、ゴキゲンの最新型で高崎一生を打ち破っているのだから。

伊奈との最終戦は先手戸辺の中飛車が千日手になるのだが、戦型は後手の47銀速攻だった。(居飛車が後手なので63銀だが)。中盤の何とも言えない局面でお互いのやり直したいという気持ちが重なったかのような千日手。後手の伊奈としては時間を使いすぎた割に良くならなかったというのもあるだろうし、先手番を貰えるのであれば、同じ対ゴキゲンでも違うとしたものだろう。

指し直し局は、先手の伊奈が相手の振り飛車を見越した玉上がり。そのちょっとした駆け引きでゴキゲンが無くなった(馬を作る手順が受からない)ため、四間飛車に構える。四間飛車ならば当然、とばかりにイビアナを目指す伊奈。穴熊が分かっている戸辺。この将棋はいつも面白いと私は思うのだが、明示するのは居飛車が先なのだが、振り飛車の香車が先に上がる。このあたりにイビアナと振り穴の違いが出ていると思う。要は角の位置、77の地点ということだ。

45手目、68銀の形は実戦的だが私は好まない類のものだ。そこからのねじり合いは、勝負将棋らしい熱のこもったものだが、相穴熊と相振りは私の好みではないので割愛させていただく。



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上記の通りこの67期のC2において、戸辺誠プロは8勝2敗にてC1に昇級した。この翌期、C1からB2への全勝昇級を決め、年間で42 戦 32 勝 10 敗 (0.762)という優秀な成績を残し、将棋大賞において新人賞を受賞した。32の勝ち星のなかには、森内・丸山・三浦というA級棋士、及び久保・羽生というタイトルホルダーとの対戦を含む。

特筆すべきは、前期最終戦の対羽生戦だろう。昇段を決めていたのでCクラスの棋士ではなく、また低段者でもないのだが、低段者に連勝を続ける羽生善治に、20代前半時点で勝ったのは渡辺明以来ではないだろうか。木村が年齢を重ねているが低段者だった頃に羽生に勝利したことと、戸辺が年齢は若いが段位が上がってから羽生に勝利したことは、裏表のようであり、これからの戸辺の活躍を暗示していると思う。

69期のB2は、対戦相手が強いが、ここから上はくじ運云々ではなく、全て強豪だけの世界なので仕方がないところ。とはいえこの中でも苦戦するどころかむしろ、戸辺将棋が牛若丸よろしく豪腕強者を翻弄する様を魅せてくれるのではないか。

戸辺誠六段、今期のご活躍を期待しておりますので是非引き続き頑張ってください!


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相手の指し手に対する柔軟な応手はその研究が深いからこそ、のもの。上記で紹介したように、同じ専門家同士による持ち時間の長い順位戦という戦いの中で、圧倒的な中押し勝ちを前期(C1)、前々期(上記C2)で何度も収めている戸辺将棋の真髄が上記書籍にて学ぶことが出来ると思います。

関連するタグ 羽生善治 渡辺明 佐藤康光

テーマ : オセロ&将棋&囲碁&チェス
ジャンル : ゲーム

プレイバック糸谷哲郎 第65期C級2組順位戦の全局。

毎月500円払っているのに週末に中継がないと寂しいものだ。というわけで、好きな棋士の1期分まるまる振り返るという特集?を開始してみる。

将棋倶楽部24をほろ酔いで指し、勝ち、そして今からレーティング対局を指すには危ない感じなのでプロの将棋を並べる、、いわゆる至福の時ですね。

特集創刊記事の初回は糸谷哲郎を選んだ。私が好きな若手NO1で、彼の将棋世界での対振り飛車右玉戦法の短期連載講座が大変面白く、右玉を指すようになった次第。

第65期のC2は糸谷のデビュー期で、同期順位戦デビューの面々は高崎一生、遠山雄亮、糸谷哲郎、中村太地がいる。


関西新鋭棋士実戦集

マイコミ将棋books
豊島将之 /糸谷哲郎 毎日コミュニケーションズ

1,380円 (税込 1,449 円) 送料無料

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
近年関西には、将来を期待される若手棋士が続々と登場しています。本書では、その中でも特に評価の高い3人の将棋を、詳しい変化とともに解説してあります。それぞれの将棋には、序盤で自分のペースに持ち込む指し方とか、苦しいときの粘り方など、勝利するために必要な要素がたくさん詰まっています。一局の中でポイントとなる局面については変化を詳しく載せましたので、そのエッセンスを吸収してほしいと思います。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 豊島将之四段(深夜の大熱戦―対村中秀史四段戦/早指しの熱戦―対飯島英治五段戦/力を出しきった一局―対山崎隆之七段戦/憧れの棋士との対戦―対谷川浩司九段戦)/第2章 糸谷哲郎五段(角換わりの会心譜―対橋本崇載七段戦/ねじりあいを制した角換わり局―対阿部隆八段戦/1手損角換わり棒銀対右玉―対西尾明四段戦/第37期新人王決勝第2局―対横山泰明四段戦)/第3章 村田智弘五段(相穴熊の攻防―対杉本昌隆六段戦/自分らしい将棋―対南芳一九段戦/居飛車穴熊の攻略―対浦野真彦七段戦/15連勝目の一局―対西川慶二七段戦)




1回戦 対局日:2006/06/20  先手:堀口 弘治七段 後手:糸谷 哲郎四段

順位戦デビュー戦は、知っている人は知っている戦慄の将棋だった。戦型は後手糸谷の一手損に先手早繰り銀。堀口の新手が空振りで、中盤で糸谷ど必勝となる。そこからも震えずに早指しでガンガン飛ばし、やや攻めあぐねて訪れた局面が71手目の王手馬取り。この見落としで、一発で負けにしたのだった。

プロの棋戦で、これほど思いっきり単純な王手馬取りが決まったことは多分見たことがない。遠い利きといえば遠い利きだが、それにしてもありえない。その後、詰みまで指すところも何も分からない周りの棋士にとっては不気味の一言だろう。(本人はネット中継を意識して指したとのことだった)。

ただし、面白いもので、この将棋が糸谷の大物振りを更に印象付けることになった。丁度、長島茂雄が、デビュー戦で金本と対戦して3打席3三振に終わったようなものである。しかし、これで驚いては甘かった。我々の想像以上に怪物だった糸谷は、後年これよりもあり得ない反則をすることになる。



2回戦 対局日:2006/07/25 先手:糸谷 哲郎四段 後手:佐藤 紳哉五段

戦慄の順位戦デビューから約1ヶ月後。今後は糸谷先手で、相手は頭髪が少ないほうの佐藤。ただし昔の髪の毛があった時よりも、今のほうが好印象だと思う。それにしてもデビュー当時はサラサラヘアーだった気がするが、あっという間に無くなった。

端的にプロ将棋の厳しさを物語っているようでもあるし、単なる遺伝かもしれない。

戦型はノーマル角換わりで、後手番の佐藤紳が3筋に位を取り、先手の攻めの桂馬跳ねを封じる将棋だった。ただし、初戦の堀口戦同様に、後手が無理をしている形で、相手の疑問手に対して正確な咎めを導き出せる糸谷の良さが出た将棋だった。

投了図は圧勝だろう。C2の中では安定的に勝っている佐藤紳哉に対して3時間残した圧勝で、その実力の片鱗を既に表した、とその当時は思ったのだが、今振り返ると、手の見え方が尋常ではなく、勝つ時は鬼神のような勝ち方をする、ただし相手も棋士の生活が掛かっている長い将棋だと技が掛かりにくく、よって取りこぼしも少なくない、剣道でいうところの大上段に構えた将棋なのだった。



第3回戦 対局日:2006/08/29 先手:糸谷 哲郎四段 後手:淡路 仁茂九段

淡路不倒流が、ツノ銀中飛車風味から右玉風味に変化した、ナマクラ流の将棋。攻めの手をやらせたら、延々と続きそうな糸谷に対して胸を貸す形だ。糸谷はガチガチの銀冠に構え、5筋からの逆襲を見せる。

こうなると左右分断の後手が良い理屈はなく、ひたすら先手糸谷のミス待ち将棋となった。途中、糸谷の間合いをはかる手はあったが、意を決して攻め立てると、既に後手に為す術はなく、あっという間に投了に追い込まれた。

糸谷、またもや圧勝である。今振り返っても気持ちの良い勝ち方ではあるが、後手が無策過ぎたということなのも気づく。


第4回戦 対局日:2006/09/12 先手:大内 延介九段 後手:糸谷 哲郎四段

遂に登場、糸谷の右玉である。先手大内の中飛車に、ほぼ私がやる定跡手順で右玉に組む。先手は穴熊に組むが、対右玉における穴熊は、相性的に良くないのだが、本局でもその相性の悪さが祟る。

細かい手の善悪は差し控えるが、対穴熊における右玉の思想が存分に出ている将棋だ。私レベルでも、こういった、穴熊の無理攻めを丁寧にいなして姿焼きになることは多々有り、経験のない振り飛車党がとりあえず薄い玉だからと穴熊に囲うと痛い目にあること請け合いだ。

ただし、右玉はどこまでいっても右玉なので、受けの力が必要なのは言うまでもない。



第5回戦 対局日:2006/10/03 先手:糸谷 哲郎四段 後手:川上 猛六段

この時点の枕詞は『今年度勝率ランキングトップを走り、順位戦でも3勝1敗の「怪物」』だった。初戦も勝ち将棋だっただけに、実質4?0と思っていたことが懐かしく思い出される。

大内を粉砕した右玉を、川上が望んだように見えた一戦で、川上は後手ノーマル四間飛車に構える。この当時はプロ棋戦においてもノーマル四間飛車が後手番では指されていたように思う。

糸谷の右玉にひたすら待つ川上。基本的に、私は対振りの右玉はどこまでいってもハッタリ戦法だと思っている。相手がじっくり構えていれば、そして穴熊でなければ、自然に不自然な右玉は指し手が苦しくなってくる。

本局はまさにそういう将棋だった。じりじりと包囲網を絞るようなモーヤンの戦い方が百戦錬磨の勝負師らしいものだった。

糸谷は初戦に続き、大敗を喫した。勝ちっぷり、負けっぷりの良さ両方が魅力ともいえるし、荒い将棋ともいえる。この対局も3時間程度しか使っていなかった。



6回戦 対局日:2006/11/07 先手:島本 亮四段 後手:糸谷 哲郎四段

それほど活躍していない島本との対戦。先手島本はノーマル四間飛車。明らかに糸谷の右玉を屠ろうと画策しているように見えたが、糸谷は普通に囲う。このあたりから、正確には川上猛プロに負けてから、右玉を多用することを控えたように思われる。

私も正直、早指しでなければ指す気がしない戦法だ。

てっきり穴熊に囲うのかと思いきや、急戦、しかも加藤ピンもびっくりの棒銀だった。この棒銀を指すのは、この当時ですら高野と飯塚と加藤一二三ぐらいではなかろうか。

しかしそこから仕掛けるのではなく、糸谷ナマクラ流の出現となる。先手で具体的な良さを追求したい島本は必死に手段を講じるが、角交換になり、そこから双方陣形再構築が進むと、そこに出現したのは、後手の矢倉と先手の木村美濃だった。即ち、堅さでは後手優位。

かれこれの陣形の差があり、しかも振り飛車からは打開の術がない。要はなんやかんやで手だけ続けば良い状況で、それは糸谷が最も得意とする展開だ。

そこから先の手順は見ていて呆れるほど、糸谷が上手に、思い切り良く決めた。良くなると変にもつれさせずに勝ちきる技術・展開が、アマチュアからみて糸谷の将棋を強く感じる要因だと思う。



7回戦 対局日:2006/12/12  先手:糸谷 哲郎四段 後手:佐藤 和俊四段

今では振り飛車党の中で二番手集団のトップを走る佐藤和俊との対戦。この当時の佐藤和の活躍っぷりは覚えていないが、将棋世界の若手紹介特集に出ていたような気がするのだが。或いは力戦振り飛車を指す棋士の紹介記事だったかもしれない。

戦型は佐藤の四間飛車に対して糸谷の右玉となった。私の手順と若干異なる部分があり、糸谷のこの右玉はよっぽど力が無いと指しこなせない形だと思う。

この将棋もプロが右玉を待ち構えれば、そう簡単には良くならないという典型で、指していると自然にバラされて攻め合いにならずにただただ負けてゆく・・・という右玉の失敗例そのものだった。これ以降、糸谷の右玉はあまり姿を見せなくなった。



8回戦 対局日:2007/01/09 先手:田村 康介六段 後手:糸谷 哲郎四段

早指し王田村との対戦。結果から書くと、それほど両者早指しでもなく、消費時間でいうと田村1時間5分、糸谷3時間だった。

戦型は、先手田村の石田流。糸谷の対策は左美濃+飛車浮きだった。普通の指し方だ。流石に石田流に対しては、右玉には組めない。対石田流は、特殊な将棋で、対戦相手は延々と受けの手を強いられることになる。ただし右玉が指せる糸谷の受けの力は間違いがない。

早指しで飛ばす田村に対し、こまめに時間を使うのはこういう将棋は一辺に悪くなるかジリジリと良くなるか、というものなので、そのケアと思われる。この将棋で分かったのは、意図的に早指しにしているわけでもなく、普通に指して3時間ということなのだろうということ。

子どもが無意識に指して、結果早指しであることと同じようなものなのだ。読むことは読むが、見える手を指す、という将棋センスがあるが故の早見え早指しということか。将棋世界での順位戦予想におけるハッシー曰く、(意訳すると)独特かつ優れた将棋センスとのことだったと思う。



9回戦 対局日:2007/02/06 先手:伊奈 祐介五段 後手:糸谷 哲郎四段

渡辺明義兄との対戦。最近はあまり見ない、後手端歩位取りの一手損振り飛車に。プロでは最近見ないが、アマチュアでは未だに使える戦法だと私は見ているのだが。

本局でもそうだが、糸谷の将棋は敏しょう性に優れている。ちょっとでも隙があれば、攻め立てることを常に考えている将棋だ。その攻め筋がイモ筋だろうが強引だろうが、怖い展開だろうが、とりあえず攻めとして成立している気配があればそれを嗅ぎわけて、推し進める。

そして、渡辺義兄の持ち味はこの粘り強さだ。容易に倒れない棋風で、若干苦しいぐらいから力を発揮する棋風とみている。本譜も、先手としては面白くない局面から美濃のコビン攻め一本で盛り返す。

この将棋は長い中盤から、終盤の攻防に見ごたえがあり、もし会員の方は是非見て欲しいと思う。両者の良さが存分に出た将棋である。



10回戦 対局日:2007/03/06 先手:糸谷 哲郎四段 後手:藤原 直哉六段

最終戦は藤原プロと。藤原プロは谷川・井上の兄弟弟子でみんな揃って居飛車党である。後手の藤原は出だし振り飛車風の無理やり矢倉に組む。

この将棋にも糸谷の将棋の弱点が現れていると思う。手が見えすぎるが故に、そして続けば勝てることを知っているが故に、自ら攻めに出て、そこに早指し故の洩れが必ず出てくる。

本局も中盤の糸谷の仕掛け後、突如として将棋は終わってしまった。この辺に一種の老獪さが出てくると、順位戦でも相当勝ちそう(今でも相当勝っているが)なのだが。本局に負けて、糸谷は順位戦1期目を6?4で終えたのだった。


2006年度の通算成績は42 戦 31 勝 11 敗 (0.738)で、新人王も獲得した充実の年となったが、「通算成績に比較して、順位戦が奮わない」というのは2006年以降も続くこととなる。

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