12月1日(金)の結果

この日はトップ棋士が沢山登場しました。

順位戦A級 ▲広瀬章人vs△屋敷伸之
角換わり、後手の早繰り銀。先に二歩得ることが出来たのと、先手玉が居玉、そこからの反撃の手順で桂馬を損した…というかんじで全体的に先手が無策だったように見えました。なんとなく広瀬さんの突き抜け無さは序盤巧者ではないところにあるように思えますが、それでもA級なのではやり中終盤がずば抜けて強いのがやはり重要なんですかね。。後手屋敷さんの快勝譜と思います。

順位戦A級 ▲深浦康市vs△行方尚史
深浦さんの雁木は予想してましたが、まさかの相雁木。ただし深浦さんに一日の長があり夕食休憩前後では先手がよくなっていました。その後かなりもつれますが、人間同士にありがちな良かった時間の長かったほうが勝つという展開に。深浦さんはこれで星を五分に戻し、行方さんはちょっとキツくなったかもしれません。


棋王戦 挑決T ▲三浦弘行vs△永瀬拓矢
角換わりから後手の早繰り銀模様に先手が手厚く構える作戦。この将棋、よくわかりませんでした。なんとなく先手が作戦勝ちかな?多少指しやすいのかな?というところから知らない内に後手が指せるようになっていました。形勢の差がそれほどでもなく、指し方の方針が良くも悪くも後手のほうがシンプルだったのが功を奏した、という感じでしょうか。

棋王戦 挑決T ▲佐藤天彦vs△黒沢怜生
角交換振り飛車。いやーここはアツかったですね。対抗型の醍醐味というか、レーティング差とかあんまり関係ないんですよね、ここまで来ると。黒沢さんの序盤の用意が行き届いていた印象で、飛車が向かい合う形で単純な押し引きなので少し間違ったほうが悪くなり、今回はそれが名人の方jに出て、そこからミスなく有利を拡大していきました。

名人はどちらかというと悪くなってからの粘りや、悪くなりそうなところからの踏みとどまりに特徴がありますが、こういう対抗型でしっかり対処されるとどうにもならないですよね、さすがに。よくある38角からの馬を作ったところでは勝勢までないにしても、形勢差よりもかなり逆転のしにくい局面であるといえます。

黒沢さん、ダークホースになれるか?ただ永瀬さんは元振り飛車党なので相手にするとちょっと嫌かもしれませんね。竜王戦ドリームならぬ棋王戦ドリームなるか?

テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 屋敷伸之 行方尚史 深浦康市 永瀬拓矢 佐藤天彦 広瀬章人 三浦弘行 黒沢怜生

豊島独走?深浦進化論 第76期A級順位戦▲豊島将之八段vs△深浦康市九段

最近の深浦康市九段に注目している。

比較的中堅よりも年上の層で、最近の雁木調の将棋に追従している人は少ない気がする。羽生さんはやってますかね。

そんななか、かなり早い段階、たぶん夏ぐらいには既に雁木を取り入れていたのが深浦康市九段。先手でも後手でも組みやすいというのもあるだろうが、かなり多く雁木を指している。 17年度としての成績はそれほど特出したものではないが、夏以降に限っていえば、この雁木調の将棋を指しこなし、勝ちまくってる印象がある。

本局は順位戦ということで先後が決まっているのでお互いに準備があったはずで当然豊島将之八段もそのへんの作戦を前提に、本局の序盤を採用したのだと思う。

26手目△43金右がひとつの分岐点で、雁木と思われて先手の急戦調をみて手厚く一旦は受け止める方針。先手は銀を68に上がっている関係上、これ以上堅くならないので攻めるしかない。この辺の駆け引きは本局の見所の一つだった。(ただ、端歩の形を除けば類型は幾つかあるとのこと)。

この辺をみて私は以下のようにツイッターで呟いた。




そこからの豊島将之九段の指し回しがなんというか相当に過激だった。後手からの角交換にたいして同銀ではなく77同桂馬とした手、桂馬を跳ねてから71角と打った手、極めつけは51手目の▲33銀だった。後手のと金を放置して駒がいっぱい利いている33の地点に銀をぶち込んだ。言い方は悪いが、アマチュアっぽい直線的な手順だと思う。

ただ過激な一手だったが進んでみると穏便な局面に戻っていて、嫌な変化を回避するための過激さだったのかもしれない。

そして一旦収まってから後手待望の反撃。8筋を突き捨ててからの桂馬打ち△9四桂が厳しく、ここではやはり微差かもしれないが後手が良いと思う。

61手目、▲83銀と飛車取りに打った手に対して、深浦九段は32に飛車を逃げる。攻めに活用する含みのある一手。そこから先手の94の桂馬をむしり取った銀(94同歩で取れる銀)が終局(111手目!)まで残ったのがこの将棋の恐ろしさを示している。111手目まで……。

どこかで取り返す順があるはずと思ったがその余裕がなかった。その理由の一つは、67手目▲45桂に対して飛車を取り合う順を選んだことにあるかもしれない。ここは一旦は飛車を浮いて33歩で叩かれるのを避けておく、という手も有力だった。

飛車をとりあって53の地点に成桂を作られた73手目の局面では後手が相当忙しそうにみえる。この桂成りが詰めろというのが痛い気がする。ここでは先手が良くなっていてもおかしくないと感じた。後手の深浦九段は△39飛と王手にうち、詰めろの手順をひとまず回避。先手の豊島八段が桂馬を投入したことで局面が少し落ち着いたようにみえる。

しかし△42歩と受けて、▲33歩と叩かれてみると先手と後手の囲いの差が目立つ。後手にはもはや94の銀を取る余裕がない時点でその分、先手が良くなったのかもしれない。そこからジリジリと攻められて苦しくなった後手が84手目に△86角勝負手を放つが、豊島八段が冷静に▲81飛車なりと面倒をみて勝負あり、ということだった模様。

最後まで残った94の銀不成が先手玉の詰みを逃れている手順もあり、豊島八段がただ1人無敗の5連勝となった。

最近の豊島将之八段の将棋は強いというより恐ろしさを感じる。序盤の深い研究と鋭い踏み込みで圧勝することも多いが、本局や先日の対渡辺竜王の将棋のように局面に含みをもたせずにある程度まで決めきってしまって、そこで実戦的に勝ちやすそうな展開にもっていくという二段構えのような印象。

コンピュータソフトの影響、ということではないのかもしれないが、谷川が終盤を高速化し、羽生世代が序盤を整備して一応の人類の高みに登った後、停滞ではないがその流れの中で培われてきたコンセンサスのようなものに対してソフトがもたらした革新があり、その感覚を自身の将棋に取り入れたプロ棋士が何人かいると思うが、豊島将之の最近の将棋を見ていると確実にその中の1人であり、もっとも最先端の大局観というか将棋感覚を持っているのだな、と思わされる。

羽生・広瀬・久保と二敗で追いかける3人がいて、そのうちの二人との対局を後半に控えている豊島八段だが、このまま挑戦者になる勢いを感じさせる勝利だった。

深浦九段は負けてしまったものの、新しく取り入れた雁木調の作戦がかなり馴染んでいることを再確認した。三名降級という厳しい今期だが、キツイ面子をクリアしての2-3での折り返しは上出来ではないにしても残留可能性でいうとそれなりにあるような気がするがどうなるか?

深浦康市(amazon検索結果)
プロへの道 将棋を覚えた少年がプロになり羽生善治からタイトルを /日本将棋連盟/深浦康市 / 深浦康市 / 【中古】afb

テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 深浦康市 豊島将之

右四間で圧勝。 第76期順位戦A級行方尚史八段vs渡辺明竜王

昨日行われたA級は渡辺明竜王の圧勝だった。

戦型は行方さん先手ということで後手が追従すれば矢倉になる。後手の渡辺明竜王は藤井聡太四段が得意にしている右四間の形に。これで藤井聡太は森内さんをNHK杯で破り、またアベマTVの非公式戦でも行方さんを撃破している。よって行方さんとしては経験のある形で備えがなかったわけではないのだと思うが…。

27手目の飛車先を交換した時点で既に先手の得がなくなっている可能性がある、というのが将棋ソフトが強くなった現代の感覚。飛車先の歩の交換に得がある…というのはもはや古い感覚になっている。

本譜は得た一歩を活かす意味で後手の右桂の桂頭攻めを先手が敢行したが、危険だった。後手は先手の言い分を聞いた形にはなったが、先手のお陰で7筋の歩が切れたのが大きい。後手の構えが完成しているのに対し、先手玉は矢倉に入城できるめどがたっていない。

37手目にして既に先手に敗着とは言わないまでも後手ペースになる一手が出る。▲79角。これで後手の右四間の炸裂が確定した。85桂と跳ねた手にどのように応じても66の地点への利きが足りてないので本譜のように角金交換にはなるが後手の攻めが続く形となった。

結果論にはなるが、76銀と立つか、68銀しかなかったようにおもうし、それが駄目なら序盤の構想として相当最初に遡る必要がある。少なくとも数局みた限りでは後手番が勝ちやすい、あるいは攻め立てる展開にはなりやすいので先手番としては面白くない気がする。

52手目の39銀で一丁上がり、というかんじ。後手は77への叩き、6筋への歩、2筋への飛車の転回…など攻めに困らないし、陣形も金が離れていることすら飛車の打ち込みに強くなっていて手の施しようがない。

矢倉が終わった…かどうかは分からないが、こういう将棋をみていると、昔からアマチュアのための作戦、みたいなニュアンスのあった諸戦法が実は相当に優秀だったことがわかる。原始中飛車や石田流、右四間飛車…など。

渡辺明竜王は現代の最新の戦法や感覚についていけていない…と言っていたが、余裕のある自虐だったようで、元々細い攻めをつなげる技術は素晴らしいので穴熊的なものからこういう激しい作戦にシフトしたほうがよいのでは?と思った。

どのみち勝率もここから七割には今期は戻らないだろうし、野球でいえば多少失点があったとしても打ち合いの試合のほうが面白い、と無責任に考えました笑。

右四間飛車(amazon検索結果)


テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 渡辺明 行方尚史

久保利明王将、相穴熊の激闘を制す 第76期順位戦A級6回戦

第76期順位戦A級6回戦、久保利明王将(2勝2敗)と屋敷伸之九段(1勝3敗)は相穴熊の激闘を久保利明王将が制した。

後手の久保が中飛車、それに対して先手の屋敷は持久戦模様に。双方四枚の金銀で穴熊を構築したため細い攻めを繋ぐことに苦心する細かい手の続く展開に。中盤まではどちらが良いのかわからない押し合いが続いた。

100手目あたりではなんとなく先手が良さそうな感じだったがここで上手く久保さんが一手先に受ける大山流の指し回しを見せて自陣に馬を引き付けたところでは、厳密な形勢はまだ先手が良いかもしれないが、後手の元気が出てくる雰囲気になっている。
人間同士の戦いではこういう雰囲気こそが重要な気がする。自陣に馬を引き付けさせない為の手が100手目あたりからの先手の手順として何かなかったのか?が気になる。

95手目の75歩は序盤の後手の構想ミスを咎める意味では指したい手。同銀は必然。98手目の84歩もただ受けただけの手で後手は嬉しくない。


この局面で何かなかったか。

ここでは控え室の推奨は64歩だった。角を支える歩でと金攻めの土台となる一手。ただ後手にじっとと金を58に逃げられて逆に先手が忙しくなる可能性もありそう。

代えて、単純に将来馬を71に引かせないためだけの手ではあるが27歩と馬の行き先を打診する手はなかったか?同馬ならば飛車でと金を取れる。
ただ67の地点から相当食いつかれそうだし、角と成桂を自ら後手の馬に釘刺しにさせてしまうので怖いかもしれない…。

99手目からの一連の手順、後手の久保さんが幻惑的というか、馬を自陣に引き付けることができる展開に持ち込んだのが上手かった。

テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

羽生棋聖激戦を制す!(第76期順位戦A級6回戦▲羽生善治vs△三浦弘行)

第76期順位戦A級6回戦、▲羽生善治vs△三浦弘行は角換わりの最新形になりました。

序盤は先日の中村太地が王座を奪取した王座戦の第三局(後手が羽生さんで勝ったのは後手だった)と同じ進行となった。が手を変えたのは後手の三浦さんだった。ただ、48手目の△73角は素人でも相当に打ちにくい角に見える。

先手だけ銀を手持ちにして手段がなさそうな局面、後手の三浦さんは9筋に手を付ける。がこれも素人目にはよくある歩で止める手筋があり、ちょっと指しにくい。先手はその得た一手で2筋を詰めて満足かと思ったが詰めた2筋に▲27香車と利きを足したのにはびっくりした。これも素人目にはちょっと指しにくい気がした。

後手にと金が出来た局面がひとつの分岐点で、三浦さんの応手は普通に見えたが78手目、金を見捨てる85飛車があったようだ。85飛車以下、62銀成に同角と取れるのがミソで、本譜では結局角が目標になってしまい飛車が攻めに使えなくなったので、たしかにそのほうがよかったかもしれない。

本譜は普通に見えたが後手の攻めの土台である95の角を取った金でいじめられて逆に後手が忙しくなってしまった。先手は4筋に逃げ出した中段玉が右玉のような感じになって一段飛車とのバランスもよく案外堅かった。

後手が39銀の割り打ちの含みをなくす歩の叩きをした手が悪く、その後は先手が指しやすくなった模様。人間は読みのなかで数学的な判断ではなく文系の、流れや物語のようなものを感じながら指すことが出来ることが魅力でもあり弱点でもあるが、特に私はあまり読まずにこういう時はこう指すものだ、という感じで確かめもせずに指すことが多いが、それだと含みがなくなってしまう事も多い。

本局は素人目にはこうでしょ、という感覚とは違う手が多く指されたような気もした。金銀交換になる割り打ちはタイミングの是非はあるものの、たいてい逃さないのがアマの感覚だと思う。プロは相手の手を殺す、相手の思い通りにさせない手が多いので含みの多い局面が延々と続く印象がある。

復帰後好調な三浦弘行九段だったが羽生さんは全体を通してみると快勝といえる勝利を納めた。順位戦で先手番をきちんと勝ち切るのが重要で、羽生棋聖はひとまず二番手の位置をキープした。豊島将之との直接対決が済んでいるのでこのまま逃げ切られる可能性も高いがどうなるか?

テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 羽生善治 三浦弘行