王位戦 挑決リーグ最終局の感想。

2017年5月22日に行われた、王位戦 挑決リーグの最終局はどれも熱戦でした。

個人的には、澤田真吾vs佐々木勇気になるのかな?と思っていましたが、菅井竜也さんが見事4-1の成績をおさめました。佐々木勇気には負けたものの、居飛車一線級を相手に4つ勝つというのは本当に凄いことです。特に最終局の対渡辺明戦はこの戦型、この囲い(への迫り方)を知り尽くしているなあ…と思いました。

佐々木勇気は、最終局、丸山忠久さんの一手損に敗れました。パッと見た感じではかなり優勢なのかな?と思いましたが、そうでもなかったのか、決めきれなかったのか。千日手局では丸山忠久さんの伝家の宝刀に最近流行りの構想で挑みましたが敗退。その結果、菅井竜也さんの白組勝ち抜きとなりました。

対する紅組の勝ち抜き者である澤田真吾さんですが、なんと全勝。最終局が大一番で、もし負けるとプレーオフでしたがきっちり勝ちきりました。というか、この最新型の角換わり、あの最近の名人戦から形は少しづつ違うものの、穴熊にした先手に対して後手の右玉が勝っているんですよね。木村一基さんのイビアナはかなり攻めてる感じがしたのですが、ねじり合いを澤田真吾さんが制しました。

佐藤天彦名人対Ponanza戦が土曜日にありましたが、Ponanzaの圧勝でした。アマ同士であってもある程度棋力が離れると穴熊への怖さがないと思うのですが(私は特にウォーズの切れ負けで、相手が格下のときに穴熊にされるのは逆に嬉しいです)、ジリ貧に陥ったときの穴熊特有の選択肢の少なさ、を感じました。

超トッププロが対峙して、あのような中押し負けを食らうということは、普通に考えて大駒落ちぐらいのハンデがある気がします。(対コンピュータでは)棒銀や早繰り銀のようなシンプルな作戦はあまり上手くいかない一方で、(コンピュータが発案した)桂馬の単騎跳ねが上手く行くなど、コンピュータ登場から色々と常識が変わりつつありますね。

アマチュアでも本当に角換わりが増えた印象です。勿論形はあの金が一路、従来型よりも玉から離れた形です。数年前から見かけましたが、今年に入ってからは相当増えました。私は相変わらず右玉ばかりやっています。

羽生善治のメガ進化!? 大山康晴は何故振り飛車党に転向したか?

将棋連盟の新しいサイトがいろいろな意味で話題になっていますが、昔と違って作っておしまい…ではなく、常に変化し続けるものなのでどんどん良くなっていくことを期待します。

特に記事を充実させていくオウンドメディアマーケティングの手法を採っているので、そこが続けば相当いい感じになるとおもいます。将棋の戦法でいえば横歩取りの最新型か、居角左美濃みたいな手法です。

さて、掲題の件ですが。

羽生善治先生が、ちょっと大変そうです。最近タイトル取られたり、連敗したり、タイトル防衛してもギリギリだったり・・・があります。

「そろそろピークでしょうといわれて20年、羽生善治で~す」がキャッチフレーズの羽生先生ですが(嘘)、流石に50歳ぐらいになってくると物理的にいろいろあると思います。生物(なまもの)ですから、多少の経年劣化は避けられません。


偉大なる大山康晴先生は死ぬまでA級というとんでもない化物でしたが、その大山康晴が振り飛車党に転向したのは、タイトルを全部後輩の升田先生に取られたのがきっかけ・・・というのを読んだ記憶があります。

今ほど序盤定跡が体系化されていないこともあり、経験値の差で勝とう・・・という意味があります。序盤五分でごちゃごちゃすれば中終盤のちからが違うし、受けが好き&上手だからどうにかなる・・・という話です。


羽生さんが衰えたらどうするのだろうか?という話を何人かの高段者やプロの方に聞く機会が結構あります。あ、勿論脳みそのなかで・・・です。リアルな話ではありません!><

そこでやはり言われることが多かったのが、「変化球投げ始めるのではないか?」という話でした。真っ向勝負、直球で三振にねじ伏せるような将棋、研究どっぷりの将棋でドハマリするのを避ける意味で、力将棋や振り飛車にするのではないか?ということです。

正直、その話を聞いた時には、いやーしかしきょうびの振り飛車は辛いだけだからそれはないんじゃない?と思いました。勿論最近でも、青嶋プロのような若手の強い人が振り飛車で勝つ例はあるものの、変化して楽して勝ってる感じではなくむしろ強いから勝ってる感じでした。


しかし最近になってようやく意味がわかりました。そして羽生善治はついに熟年離婚・・・じゃなくて熟年期に入ったとみていいだろうと思います。

ヒントは永瀬さんとの棋聖戦の最終局と、木村一基さんとの王位戦第六局にありました。

棋聖戦の最終局では、古い形を少しアレンジして使って上手く勝ちました。永瀬さんは相手の序盤戦術を読み尽くして、どういう戦型でくるか?をかなり網羅的に用意しているらしいのですが、それには確実に含まれていないであろう、矢倉急戦で圧勝したのです。

そして先日行われた王位戦第六局でも似たようなことがありました。序盤からかなりヒネった展開で、いつの間にか右玉にして結果的には先手にとって打開が難しい形にし、うまく隙を咎めつつ、途中うっかりする筋もあり圧勝しました。

トッププロ同士で、後手番の右玉がここまで圧勝するシーンをみたことが正直ありませんが、水面下のやりとり、無限の選択肢のなかでうまく誘導した羽生さんの熟練の技と対人センサーというか幻惑によるものでしょう。

まるで武道の達人のおじいちゃんが、フワフワと動いているだけなのに相手が魅入られたように投げ飛ばされている…という居合術のような。

羽生世代の人たちのなかで、もう少し早く我道を行くようになった棋士たちがいます。例えば佐藤康光先生は変態流…というか、独特な作戦に喜びを見出し、丸山忠久先生は、どんだけ角換わりすきなの?!という感じに後手番では一手損角換わりを多用するようになりました。

羽生さんは序盤作戦にあまり個性がないタイプで、どんな作戦もそつなくこなすところもあり、それゆえに振り飛車を多投するイメージは持てなかったのですが、最近の力将棋への誘導をみてナルホドなぁ・・・と感心している次第です。


ようはその序盤戦術の巧みさ、豊富さを上手く活かして、相手の用意のない方へない方へと誘うのです。振り飛車の場合、序盤が体系化されすぎているのと、居飛車穴熊にされると辛い&されやすい(避けるすべが基本的には無い)ということで難しいですが、居飛車定跡であまり流行っていない形、特に具体的にダメな順があるわけでもない形・・・というのがどうやら結構あるみたいです。

羽生の頭脳という本がありましたが、多分羽生さんの頭のなかにはそういう未解決課題局面のようなものが一杯あったり、事前の準備のなかでも、そういう局面をある程度用意している可能性が高いのではないでしょうか。

糸谷さんが一手損角換わりをやって、なぜかごちゃごちゃしてるうちに勝ってしまう・・・(ただし羽生さんを除く)というのを、もうすこし洗練した感じでしょうか。

ただ、毎回それをやるかというと、多分今回や前回のように、ギリギリ追い込まれた時に、研究一発でやられるリスクを回避する意味でやる・・・ぐらいだと思います。

ということで、王位戦の第七局は振り駒勝負になりますが、もし羽生さんが後手番になった場合、また似たような力将棋や珍しい形への誘導が見られるのではないか?と思っています。


もともとが勝負師タイプだと思うので、その辺の駆け引きを全面にだした羽生将棋というのも、かなり面白いのではないでしょうか。うさぎおじさん、怖いです!><

王位戦第二局。先手羽生王位の完勝と、広瀬挑戦者の決意

ちょっと良い所なく負けてしまった広瀬さんですが今年に入ってから、少し調子が落ちている感じでしょうか。

負けた相手が弱かった・・・とはいいませんが、好調期であれば全部勝っていてもおかしくないような気もする相手関係でした。

最近王座戦での挑戦をきめた佐藤天彦さんとは対称的です。やはりプロの世界は紙一重なのでしょうね・・・。


広瀬さんの挑戦前の全文インタビューがこちらに記載されてます。
https://book.mynavi.jp/shogi/detail_summary/id=40711

角換わりに注力しているっぽいですね。王位戦のリーグでも後手番で勝ってます。

そういう意味でも今回の王位戦では一度は後手番の角換わりをやるつもりだったのでしょう。

しかし羽生王位の手待ちが上手かったですね。穴熊に囲わせて、しかし反撃の手がかりとなる桂馬の活用が見えない状態で先手が先攻しました。

角換わりの後手番で穴熊というのは実利があるようでいて、手持ちの駒が多くなる傾向があるのと端歩の突き合いもあるためにそれほど固くないです。

本局はバランス型に構えた羽生さんが先攻してそのまま攻めた押してしまった感じです。最終盤も難解な寄せ合いと言うよりは羽生さんに一手違いを見切られていたような。


インタビューから少し引用します。

将棋ファンにとっては割りと一般的な話で、しかしよくよく考えるとやっぱり不思議な話として、棋士と棋戦の相性というのがあります。特定の棋戦における強さが他の棋戦と比べると段違い・・・みたいな例。

特に初タイトルを獲った棋戦との相性の良さを発揮する棋士というのが結構いるように思います。棋士の実力というのは本当に紙一重なので、だからこそ逆にメンタルの部分が大きいのか、あるいは持ち時間の適正なのかわかりませんが面白いですよね。

以下のとおり、広瀬さん自身も王位戦との相性の良さは自身感じているようです。

>(王位戦には相性のよさを感じるところはありますか?という質問に対して)
>「それはありますね。タイトルを取られてからも、なんだかんだで王位リーグには毎年参加していますし。もちろんほかの棋戦も頑張ってはいるのですが」


あと、私はいつも言っているところで(多分多くの将棋ファンもそう思ってるだろうなと思うのですが)、羽生さんの強さについては以下のように言っています。

>「いろいろな世代の人を相手にして、対局中に相手のことをよく観察しているといいますか、その人の将棋の癖みたいなものを見抜いているような気がします。(後略)」


羽生さんには学究的な部分や、色々な顔がありますが、勝負師としての羽生さんは対人関係というか、相手関係で間合いを図るというか、相手の本質を理解してるからこその対応というのがあるような気がします。

この辺は麻雀の雀鬼と呼ばれる桜井章一さんと交流がある理由というか、場をコントロールするオーラというかそういうものが常人離れしているというか・・・。

ツイッターでは私は、この王位戦の最初の二局の結果をみて、オール振り穴で行ったほうが良かったんじゃないか?と無責任に書いたんですが、そこは当然本人が一番考えている所で、以下のように振り穴について語っています。

>「振り飛車穴熊はやはりなかなか……主に羽生さんにやられすぎていて(笑)。やはりプロ間で流行らないだけあって、作戦として少し損をしているというのは認めざるを得ないところもあります。それを経験値でカバーしていたのですが、周りの方も慣れてきて、これ一本では厳しいかなと」

羽生さんの目が慣れてきた・・・というのは対広瀬さんという部分もありますが、対広瀬さんの振り穴というところも大きいのでしょうね。

広瀬将棋の魅力は角や馬の性能を活かして、他の人が思わないような射程距離で攻撃展開してくるところでしょうか。広瀬さんが活躍するときというのは、角や馬が活躍することが多かったように思います。最近はわかりませんが以前はそうでした。ミドルレンジからの強烈なシュート、それを得点に結びつけるようなキックの強さがありました。

ただ、自身が弱点として語ってしまっていますが、縦の将棋と横の将棋の違いというか、鈴木大介先生がよく言いますが、居飛車の一手違いの将棋と、余す振り飛車というのは本質的に違うと。

王位戦の初戦ではなんとなくごまかされた感じで、二戦目では慎重に行こうとしてタコ殴りにあってしまいました。次の先手番で普通の将棋、できれば角換わりの先手番として勝ち切ってほしいなと。序盤に難があるわけではないものの、終盤力を活かせる展開にしてもらえないとやはり辛いですね。そう考えると、経験値の違いを活かした戦いを羽生さんが見せている・・・というところもあるでしょうか。

ただ、中原先生が大山振り飛車を打ち破れずに振ってみたら・・・みたいな例もあるので、ボールカウントの良い所で、どこか振り穴を投入して勝ちきれると気分いいんですけどね笑。

羽生王位ブレイク。第55期王位戦第4局 木村一基八段vs羽生善治王位

いやー後手番で持将棋にして木村さんの流れか?と思ったんですが、ダメでしたね。

封じ手局面では先手が良さそうまではいかなくても先攻出来そうだったのですが、二日目の展開をみると、しっかり6四歩が突き捨てるところまで行っていて、木村さんの引っ張り込む性質を見極めた羽生さんらしい勝負術というか、よく脚質を理解した進め方だなあと思いました。試合巧者ですよねえ。最近のハブさんは特にそんな感じ。

試合巧者といっても、変な意味ではなく、脚質が自在だからこそ相手の得意のぎりぎりを狙うことができるという。

七八手目のあたりではすでに後手のほうが固くて攻めてる。九筋の関係も含めてかなり後手番としては悪くない感じになっています。攻めの銀が先手の守りの金と交換になっていて、角は取られているものの捌けたともいえるし、なにより玉が堅い。先手からの有望な攻め筋はなく・・・ということで、どうしてこうなった?という感じですね。

その後も後手の攻めの桂馬がずっと使えてないこともあり、難しかったですが羽生さんが押し切りました。押切もえですね。。

というか、今日の新人王戦で、菅井vs増田という好取り組みがあります。見逃せません!!

木村先攻なるか? 第55期王位戦第4局 木村一基八段vs羽生善治王位

またもや久しぶりになってしまいましたが、今、時間が出来たので少しだけ。

やはりこの二人の戦いだと相矢倉がメインになりますよね。そして封じ手の局面では先手がかなりやる気のする感じがしますがどうなんでしょうか?

木村先生といえば受けが強いので後手番から下手に攻めるのではなく、むしろ攻めてもらうぐらいで、攻めて貰った後の反撃をきつくするようなタメを感じるところもありますし、せめてもらう前提でがっちり受けようとしている後手、という感じもありますが、相矢倉で先攻できる、しかも64歩で角のすぐに使うところがない、というのは先手が理論上は少し指しやすくてもおかしくないと思います。

ここで勝つと木村先生は前局持将棋にした甲斐がある展開ですが、どうなるか?

封じ手は開戦の一手になると思いますが、後手の反撃なく攻め切れるかどうか。

将棋観戦記のプロフィール

将棋観戦

Author:将棋観戦
「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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