脇システム、GPS新手現る!第72期順位戦A級1回戦▲三浦 弘行八段vs△屋敷 伸之九段

元棋聖同士の対決。どちらも若くしてプロとなり、割と穴馬的な勝ち上がり方でタイトルを奪取したという共通点がある。

また、棋聖というのはどちらかというと、短期決戦であり、競馬でいうとマイルよりも少し短い1400メートルという印象を私はもっている。競馬が分からない人用に別の例えを考えているのだがうまく浮かばない。野球でいうと9回までではなく7回まで、という感じだろうか。野球も競馬もわからない人向けには…次までの宿題とさせてください。

どちらも若いころは軽快な将棋を指していたように思う。棋聖奪取の原動力は相掛かり。特に屋敷さんの相掛かりは、その当時から私はとても好きで愛用していました。(使う機会が限られてたんですがね)。

中原先生が相掛かりを多用するようになったのは、屋敷流の奔放さとの対戦、高橋道雄先生の地道流の腰の重い矢倉がそれぞれに少しづつきっかけになっているような気がします。(ソースなし)。

屋敷さんといえば、近年断酒からもともとの才能を発揮するようになり、そして矢倉を中心とする腰の重い棋風に転換されました。博打打ちのような目をつぶってえいやという斬り合いではなく、プロ好みの如何にもプロらしい棋風に。

三浦さんも狭く深く掘り下げる研究家となり、本局でも登場した脇システムの大家として有名です。前期も、羽生三冠のA級唯一の黒星をつけたのも脇システムでした。

屋敷さんが矢倉の後手番をもつということは、この脇システムへの用意がありますよ、ということだとは思っていましたが、いきなり午前中の時間帯にすごいものが出ました。いわゆるGPS新手、です。

そういえば電王戦の最終局で屋敷さんはこの将棋の解説をニコファーレで行っていたんですよね。終始明るい解説で、悲壮感がなくて正直ほっとしたことを覚えています。

また、次の電王戦があったら出ますか?という問いには、こちらも即答で喜んで!という具合。あれには驚きましたが、プロアマなども含めて、こういうことには快く応じてくれる、そんな印象が屋敷先生にはあります。

将棋界の七不思議、じゃないですが将棋棋士のなかで特定の方々はなぜか必要以上にバッシングのようなものを受けることがあります。

例えば三浦弘行さんもそんなことがありましたし(あれは仕方ないかな?w)、名人になったのに丸山さんもひどい言われようのころがありました。そしてこの屋敷伸之プロもそんな時代が、しかも若いころにあったように思います。

屋敷さんが勉強をしなくなったのは、そういうところも多少は影響していたりしないのでしょうか。なんというか、あの若さでああいう言われようというのは見ていて気の毒になったものです。また、C1での長きにわたる停滞もその要因ではあったと思いますが。。

結局将棋の組み立てを抜本的にかえざるをえなかったC1の停滞があったゆえの今のA級であることを思うと、将棋の奥深さを感じます。

コンピュータ将棋の登場によって、長期的に見て勝ちやすいかどうか?という観点がクローズアップされてきている気がしますが、昔からプロ棋士の間でも「勝ちやすい」「実践的には勝ちにくい」というような表現がありましたが、より勝ちやすい方向へと屋敷将棋も変化していったのでしょう。

前期の谷川戦の相穴熊などはまさにそういうものを感じさせる、うってつけの例だと私は思いました。


そういう屋敷伸之プロが、このGPS将棋の新手を用いたというところに、私はその成算を感じずにいられないわけですが、一方で前期A級での後手番は全敗、という屋敷さんの気になるデータもあります。そういう状況を打破するために、ややリスクのある手段を取ったという可能性がないわけではないでしょうけど、私は事前研究がたっぷり含まれた新手なのだと理解しています。

今はお昼休憩時間ですが、今から感想戦の様子が楽しみです。

脇システムで両者が相手玉側の端歩をつきこす形。先手の開戦から後手が7筋突き捨てて銀を8四に出た局面で、そこまで軽快に指していた三浦さんが38分使って昼食休憩。電王戦からの諸々を思うと本当に、出来過ぎな展開ですよね。

三浦さんとしても、GPS将棋との対戦はあとでいろいろと振り返っているはずです。それこそ、あの将棋の展開に不満をもっていた棋士の質問に対して「対局者が一番考えているんです」ということで、明快な読み筋、水面下の選択肢を将棋世界でも明示されていました。

プロ棋戦での登場は予想したでしょうが、まさかA級の開幕戦、ここで対峙するとは・・・というのが正直な心境ではないでしょうか。しかも開幕からここまで0勝3敗という成績。もし本局も破れてしまうと、GPS敗戦ショックがないとは言い切れなくなってしまいます。

この局面で指すべき手は?と問われれば、GPSを相手にして指したのと同じように、歩を逃がす▲7四歩しかないように私は思います。

その先の先手の方針がGPS戦と同じように、入玉含みでの後手の攻めごまを責めるような展開なのか、あるいは攻め合いに持ち込むのか。対人間であることも含めて、攻め合いだと思いますが、双方の手順としては、GPS戦を下敷きにしたものになるのでしょう。

すなわち、先手が歩を逃げて、後手は銀を出る。ここまでは一緒。ここで先手が攻めに転じるか、後手の角を一旦は追うか。本筋は角の動きを問う手だと思うが、それを深掘りすればするほど、対GPS戦の幻影が・・・という。

三浦弘行プロにとっては、あの将棋の本当の意味での決着をつける場面がこのA級の開幕戦で、ついにやってきた、ということだろう。

もしこれに負けると。開幕から今季4連敗、0-4、A級開幕戦先手番で黒星スタート、往復ビンタではないものの、いわくつきの手順での連敗・・・ということになる。

昼食休憩前に長く考えて休憩入りした三浦プロだが、13時半の時点でも長考を続けている。

(ここから先は、将棋が終わってからの感想になる予定です)。

結果から書くと、先手の完勝だった。感想戦コメントをみると、屋敷伸之はやはりGPS将棋のあの将棋を参考にして採用した作戦だったようだ。後手の攻め味がある状態なので更に威力がましているかと思ったが三浦弘行の対応が完璧だった。

GPS将棋との対戦で、どこかで端を攻める展開にしないと…という感想を残していたと思うが、まさに本譜は先手からの端攻めが厳しかった。端攻めにより、先手の攻めの銀が7筋方面から6筋へとすりより、成銀となったことで左右挟撃の形を築いた。

最終盤、飛車をとられる形になったので気持ち悪いか?と思ったのだが、後手の序盤で打った三筋の歩が残っており、受けに適する駒がないために先手の攻めが切れることがなかった。

序盤の構想から終盤の仕上げまで、総てにおいて三浦弘行が上回っていた、そういう将棋だった。あのGPS戦での戦いの経験値が存分に生きた、まさに対局者が一番読んでいるんです、ということを示したような将棋だったように思う。

これで三浦弘行プロは今季初勝利にして、順位戦は白星スタート。GPS将棋との戦いの影は最高の形で払拭されたと見ていいだろう。



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(2010/12/23)
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第三回電王戦で最も人間が能力を発揮する条件は?(その2)

昨日の第三回電王戦で最も人間が能力を発揮する条件は?(その1)の続きです


■3.対戦ソフトの情報
ほぼ同一バージョンのソフトの提供、ハードはドスパラ提供。というのが望ましいですが、それが無理な場合は、Floodgeteで過去行われた対戦の棋譜、は提供されるべきかなと思います。そして、ある程度の棋風というか傾向分析を、将棋観戦記者なりライターが事前に週刊将棋、あるいは将棋世界でレポートする。

これは人間に甘すぎるという批判もありそうですが、単純に興行を盛り上げるためには必要でしょう。閑散期でネタに困る時期に週刊将棋では競合大学vsコンピュータ将棋、というような特集を組むことがありましたが、それに近い発想です。

興行的にも盛り上がります。どんな試合でも普通はそれ用の特集が組まれるわけですから。この辺は競馬とかプロレスに学ぶところが大いにあると思います。第二回電王戦まではPVなどは充実していましたが、読み物系のはもっと行けるはずです。



■4.対局時間
最近、GPS将棋を入手したという大平武洋プロがブログに面白いことを書いていたんですよね。人間はどの条件でやっても有利ってことはないだろう、強いてあげるとすれば切れ負けだって。

確かにGPS将棋がコンピュータ将棋選手権で劇的な逆転負けを喫したのは、時間切れ負けでしたし、ポナンザが将棋倶楽部24で負けたのも2つはオペミスというか時間切れ負けでした。

ただ興行的にも勝負的にも微妙なのでこれはお父さん、おススメしません…。

では何時間がいいのか?というと、前回が4時間(秒読み1分)で、人間はほぼ時間切迫していました。順位戦適性がある人が出てくる前提であれば、持ち時間は長ければ長いほどいいはずです。

難しいのは中継時間というか、興行的な側面ですね。長くなりすぎるとさすがに解説者も辛そう。

ただし視聴者は全然平気だと思うんですよ。ニコ生でよくゲームプレイを流すやつがあって、ゲームは全くわからないんですがよく見るんです。

あれとかは30時間とかぶっ通しで、しかも深夜とかにやってるんですよね。なので、時間は長くしましょう。四時間で負けたので五時間か六時間がいいと思います。

六時間になると、集中力が途切れる問題がまた出てきますが、それでも六時間を推せる理由としては、やっぱり制度はいろいろ変わりましたが、将棋棋士、プロ将棋指しの人生は基本的には順位戦に懸かっているからです。

順位戦に命を懸けている、順位戦で勝ち上がったものだけが名人に挑戦し、名人になる資格を持つのがプロ棋士です。それと完璧に同じ条件がいいと私は思います。

10時始まりの6時間。昼食・夕食休憩あり。

対局環境・条件を本割であるところの順位戦にぴったり合わせる。これです。これでこそ、プロ棋士が輝く。深夜になろうが、指し直しで早朝になろうが関係ありません。ぜひこれでお願いします。



順位戦といえばその熱い戦いの日々を記した先崎学のこれ、ですよね。
棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3棋士が数学者になる時 千駄ヶ谷市場3
(2013/05/23)
先崎 学

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内容紹介
私は声を発した。
「詰んでただろ」
木村がきっと私を睨んだ。
「どこでですか」
「香を取るところ」
しばし木村の目が泳いだ。「どこですか」。
投了直後で興奮しており、図が頭の中で作れないのだ。
私はていねいに、先の変化を説明した。ふたりは同時に悲鳴のような声を出した。
(本文より)

特別な才能を持った選ばれた人間が、強いプレッシャーと戦い続けながら一手一手に魂を込め続ける棋士たちの日常。
高度な技術と強い執念がないまぜになった対局室には、今日も新しいドラマが生まれる。
先崎学が将棋そのものというテーマに真正面から挑んだ「千駄ヶ谷市場」シリーズ、ついに最終巻。


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ならではの戦いの数々でBONANZA優勝!第23回コンピュータ将棋選手権

第二回電王戦で三浦弘行を破ったGPS将棋の金子知適氏が対局後のインタビューでこのように言いました。

「コンピュータ将棋選手権で連覇したチームが殆ど無いように、まだ棋力向上の余地はある」と。

そして第23回コンピュータ将棋選手権はその通りになりました。

ほぼ勝利を手中に収めていた?GPS将棋がなんと時間切れ負けという劇的な幕切れ。

その結果、1位Bonanza 2位ponanza 3位GPS将棋 4位激指 5位NineDayFever、6位ツツカナ、7位習甦、8位YSS、となりました。

しかも最終戦まで全敗だったYSSが習甦に最終戦で決勝初勝利を収めていましたが、もしここで習甦が勝っていたら、ponanzaが奇跡の初優勝だったとのこと。(参照)。

それほどまでに上位陣の実力は伯仲している、ということです。

再び金子知適氏の言葉を引用させていただきますが、一回勝負での結果をもってその実力が反映されているとは考えられないわけで繰り返していくことでこの順位が入れ替わる可能性も十分にあるわけです。

以下、簡単に決勝戦の様子を振り返りますが、最初に簡単に総括すると、人間同士、或いは人間対コンピュータ将棋とは全く違った異質な戦いが多かったように思います。

また、これまでのコンピュータ将棋選手権と大きく異るのは人間との実力差がある程度正確に把握されて始めての大会だったのでそういう目線で見ることが出来ました。

出来ましたが、コンピュータ将棋は決して完璧ではない。それでもその上であれだけ強い。まさに若かりし頃の羽生善治プロを観ているような気分になります。

そしてこのコンピュータ将棋を見ていて思うのは、人間・コンピュータかかわらず、まだ将棋を高めることが出来るのだろう、ということです。

囲碁の世界では史上最強の棋士は?という話のなかで現代の棋士ではなく、昔の棋士の名があがるということをきいたことがあります。

将棋においても、定跡の発達はあるものの、将棋無双・将棋図巧等、現存する長手数の詰将棋の完成度を見る限りにおいてはその中終盤力や構成力は現代に劣るものではありません。

人間のクリエイティビティとコンピュータ将棋の計算能力をベースにした定跡の完成度を高める作業、新手筋の発見、異感覚の取り入れ…などにより人間・コンピュータ将棋の双方に、さらなる発展が期待できるような喜ばしい予感をおぼえました。

以下、決勝の様子です。基本的にはBonanzaの戦いについて記します。

【第3回戦まで】
3連勝を決めたのはBonanzaとGPS将棋。BonanzaはNDF、YSS、ツツカナに勝利。GPS将棋は習甦、ツツカナ、YSSに。

ツツカナ、YSS、習甦はこの時点で脱落してしまった。

Bonanzaの初戦NDF戦は山崎隆之ですらやらないような超謎力戦。攻めの銀を3七に残したまま、しかも飛車もニートのまま、玉頭方面から敵陣を制圧するという謎将棋だった。

二回戦目のYSS戦は序盤は矢倉の本格的な展開だったが中盤の分かれからはまた謎のコンピュータ将棋同士らしい戦いに。攻めたはずが攻めごまを責められる展開で辛そうだったが、玉が中段に泳いでからはコンピュータ将棋特有の震えない寄せで辛勝。

三回戦のツツカナ戦は後手番でノーマル振り飛車。ツツカナは左美濃に構えるもののやや定跡形から外れる進行。後手は四間から中飛車に振りなおして、伸びすぎの5筋を咎めにいく展開。

この将棋も中盤からいきなりのノーガードでの打ち合いになり分かれは後手のBonanza有利。一目良さそう。ただしここからのツツカナの粘りがまさに船江恒平戦で見せたツツカナらしいものでした。これを見ていて人間では勝てんなーと思うと共に、何人か人間のベテランの先生、特に鬼籍に入っている先生方の名前を思い浮かべたのでした。主には振り飛車党の先生たちですが。

80手目ぐらいで人間なら勝ちやろーと思う将棋が終わったのが160手台、そんな将棋でした。


【4回戦、5回戦】

3連勝で迎えた4・5回戦、遂に全勝者が消えます。1敗で切り抜けたのは激指、ponanza、GPS将棋。Bonanzaはポナンザと習甦に連敗してしまいます。

四回戦のponanzaとBonanzaの対決は、先手ponanzaで正調の角換わりに。先手ponanzaの早い玉上がりが既に人間にとっては異質なのですがコンピュータ将棋はそこをスルーして粛々と進めます。それに呼応するように4二玉ではなく、4一玉と進めたボナンザに対して、おそらくponanzaはこれを得意技にしている?と思われる、桂馬の単跳ねでいきなり仕掛けます。(コンピュータ将棋は本当にこういう攻めが多いですね…)。

4二玉であれば桂馬の利きに対する受けゴマが多いのですがこの一手で銀を上に逃げるしかないようではキツイです。3三の地点に無限オカワリが実現して先手のponanzaがペースを握ります。

65手目、気持ちのよい手ですね。
ponanza65teme.png

死ぬほど攻めまくるんですが、やややりすぎて息切れというか、逆転していたのですが、なぜかBonanzaが攻めに転じずに受けて無理を通す形となり、ponanzaの勝ちとなりました。

この勝負は振り返ってみればかなりの意味をもつ将棋で、ここをすんなり勝っていればBonanzaは普通に優勝していた…かもしれません。また、ここのponanzaの勝ちがあったからこそ、最終戦でponanza優勝の可能性もあったわけです。

五回戦については、その時点で優勝に最も近かった「激指とGPSの戦い」について触れます。

この将棋は個人的には凄く面白かったです。先手激指が相掛かりを所望して後手のGPS将棋が応じます。しかしなんだか後手のほうが先手のような手順で攻めます。この攻めは…そう、中原誠先生のアレです!

なんどかこのブログに私は書いていますが、中原先生のこの相掛かりを私は本当に愛していました。今でも大好きです。ただし、人間であればこういう攻めを後手で取ることはしないように思います。ちょっと図々しいよな…と空気を読むというか、大局観・全体観で知っている・感じ取るからです。コンピュータ将棋はある意味KYですねw

41手目までの進行は中原流相掛かりにおいてはかなりメジャーな手順です。定跡をなぞったのではないのだとしたら、コンピュータ将棋がプロにある部分では近づいているであろうことを示しています。独力で考えて似たような展開をたどっているのであれば。

で、例によってこの将棋、プロでも実戦譜があるんです。類似局面が。これは勝又教授が当日のUstreamでも話していましたが、中原流相掛かりフリークであれば、この手順はあるだろうなーと思う、かなりメジャーな手順です。それこそ清水市代先生の将棋でも出現していてオカシクないですね。

大野八一雄 vs 中川大輔 1997-06-03 王将戦

これがプロ棋戦で出現している局面。先手が中原流相掛かりです。(大野先生も相掛かり好きでしたね。)
oononakagawaaigakari.png

で、こちらが昨日出現した局面。(を先後逆にしたもの)
gekisasigpssengogyaku.png

手番の違いで玉が5二に上がれていないので、後々飛車を渡してストレートに王手が入ったために先手の中原流相掛かりを受けている激指がよくなりました。この将棋もコンピュータ将棋の特性を示していますね。(ただしこの将棋も後手が勝ち切るまでに192手まで掛かってますが…)。


【6回戦、7回戦】
ここで優勝の目が残っていたのは、一敗の激指、ponanza、GPS将棋、そして2敗のBonanzaでした。どれか一つは連勝するでしょう、という勝又教授の御言葉もあり、まさにその通りBonanzaが連勝して優勝したわけですが、最後の勝負がGPS将棋勝勢での時間切れ、だったわけです。

まずはBonanzaが最終戦に望みを託した「決勝 6回戦 Bonanza - 激指」から見てみます。

ボナンザ先手でゴキゲン中飛車が出現します。正直、二次予選の感想でも書きましたが激指だけ居飛車ではなく振り飛車の出現率が高いのでその一点において、優勝候補にしにくいと思っていました。

定跡としてはかなり旧型の作戦に進みます。先手の金が7八だったことも理由ですが、二つ位を後手番で取るのはやはり負担になる、ということで人間ではあまり見られなくなった作戦でもあります。

先手は、後手の立石流っぽい展開に対するセオリーで組み上げ、打開を図る後手の銀交換に乗じて穴熊に組み上げます。交換した銀を8八に打ちつけてハッチを閉めるという手順はアマ強豪がやりそうな手でニヤリとしてしまいました。ここでも幾つかの名前が浮かびましたw

後手は5筋で歩損が確定しており、打開の糸口がないので先手の作戦勝ちは間違いないでしょう。後は等価交換の作業を進めるだけで先手のBonanzaがあっさり勝ちました。二次予選以降を通じて最もあっさり負けた将棋ではないでしょうか?

ゴキゲン中飛車が優秀ではない、というつもりはないのですがコンピュータ将棋を観ているとやはり振り飛車は勝つのに大変苦労する将棋なのだな、と思わされます。

そして七回戦最終戦、「決勝 7回戦 Bonanza - GPS将棋」は、Bonanza先手で正調の相矢倉になります。

馬を作られてBonanzaやや苦しいか?というところから困ったときの穴熊w

コンピュータ将棋もなかなかの実戦主義ですね。そしてこの将棋、その実戦主義が結実するわけです。ここから勝ってるのに時間切れ負けした、というのは既に大きく流れているので割愛します。上記URLから手順を追ってみてください。

私が思ったのは、昔のトップアマのタイトル戦っぽいな。ということです。敗勢の将棋を必死に粘り続けて詰めろがとけた瞬間に…など、幾つかの有名な将棋を思い出しました。

将棋の性質としては如何にもコンピュータ将棋、という具合でしたがそこから生まれるドラマ、与えられた感動はプロ将棋よりもむしろアマのタイトル戦のようなものでした。

プロ将棋も面白いし、アマ将棋も勿論楽しい。そしてコンピュータ将棋も人間からみれば理解不能な手順が出てきたりしますが、面白いし感動するのだな、ということを改めて確認することが出来ました。

願わくば、次回はニコ生でちゃんとした放送がみたいですし、是非今回ベスト5に入ったコンピュータ将棋の面々とプロの、特にトッププロに近いところの面々との第三回電王戦が観たいなぁ、と心から思った3日間でした。

関係者の皆様、そしてBonanza&開発者の保木邦仁さん、お疲れ様でした!


こちら、Kindle版です。4/26発売!
羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる (中公文庫)羽生善治と現代 - だれにも見えない未来をつくる (中公文庫)
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25年前の塚田泰明の攻め筋(GPS将棋の評価)&GPS将棋インストール方法

さて、ながながと引っ張ってますが、掲題について。

Bonanzaでやろうかな・・・と思ったのですが、せっかくなのでGPS将棋でやることにしました。

GPS将棋のインストールについても簡単に触れておきますね。

GPS将棋のダウンロードページの最新版をDLする。

現時点ではこちら→gpsfish-20121102.1.1-win32.exe

インストールが終わったら、このGPS将棋をグラフィカルに操作するための「将棋処」をインストールする。

現時点最新版はこちら→http://www.geocities.jp/shogidokoro/download.html

ダウンロードしたら将棋所を開いて、「対局→エンジン管理」でGPS将棋を選ぶ。(GPSをダウンロードした際に出来たフォルダの中にあるものを選ぶ)。

この最小限の説明で分かる人はこの説明が無くてもインストール出来る気がしますがw

********************************

で、塚田泰明先生の「攻めっ気100%」に載っていたこれにてやや先手切れ筋、という局面が以下になります。
後手が△3四金!と力強くあがったところ。
GPS130502.png
なんだか三浦弘行八段の指した手でこういうゴツい手がありましたよね・・・。

これにて先手の攻めは切れているだろう、という。一目切れているような気はします。塚田田中戦よりは受け重視。GPS三浦戦に近い印象でしかも三浦さんの作戦よりも銀が少なくとも活用されていて先手の角が6八なのもポイントのような気がしますね。

今回思ったんですが、コンピューター将棋を用いて研究するというのは、ある意味全く別の作業なので将棋の実力を高める…ということにはならない気がしますね…。今度別の記事で書きますがこれは全く別の人間が別の作業としてやらないと、かえって将棋の実力を損ねるんじゃないのか?という気もするのですが、私の感性が古すぎる可能性もあります…。

コンピュータ、GPS将棋にはこの局面を三分三〇秒検討してもらいました。ただし私のPCがDELLのノートパソコンなのでどの程度のものなのかはわかりません。。(まだGPS将棋と対戦すらしてません、する気もしないという説もありますがw)。

以下、三分三〇秒考えてもらった結果です。手順の手前の[]の数字が評価値になります。

[209] ▲同銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△6四歩(63)▲3五金打△同銀(34)▲同角(46)△3四銀打▲4三歩成(44)△3五銀(34)▲4八飛(28)△4四歩打

[278] ▲同銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△6四歩(63)▲3五金打△4五銀打▲3四金(35)△同銀(45)▲3五銀打△同銀(34)▲同角(46)△3四銀打▲2六角(35)△6五歩(64)▲同歩(66)△同桂(73)▲6六銀(77)△6四角(42)▲1八飛(28)

[184] ▲4八飛(28)△6四角(42)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△同角(64)▲同飛(48)△6四角打▲8六角打△同角(64)▲同歩(87)△6四角打▲3六飛(46)△1九角成(64)▲7一角打△3五歩打▲8二角成(71)△3六歩(35)

[149] ▲4八飛(28)△6四角(42)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△同角(64)▲同飛(48)△2八角打▲3六飛(46)△1九角成(28)▲7一角打△5二飛(82)▲3五歩打△2五銀(34)▲4三金打△3六銀(25)▲3四歩(35)△同銀(33)▲5二金(43)△2九馬(19)

[211] ▲6五歩(66)△4六歩打▲4三歩成(44)△同金(32)▲4六銀(35)△6五桂(73)▲6六銀(77)△6四角(42)▲5五歩(56)△4六銀(45)▲同角(68)△3五銀打▲6八角(46)△3二飛(82)▲4八飛(28)△4四銀(33)▲2四歩(25)△同歩(23)

[211] ▲6五歩(66)△4六歩打▲4三歩成(44)△同金(32)▲4六銀(35)△6五桂(73)▲6六銀(77)△6四角(42)▲5五歩(56)△4六銀(45)▲同角(68)△3五銀打▲6八角(46)△3二飛(82)▲4八飛(28)△4四銀(33)▲2四歩(25)△同歩(23)
[76] ▲4八飛(28)△8五桂(73)▲3四銀(35)△同銀(33)▲8六銀(77)△6四角(42)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△3七歩成(36)▲同桂(29)△同角成(64)▲4五飛(48)△同銀(34)▲5一角成(24)△8一飛(82)

[111] ▲同銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△6四歩(63)▲6八角(46)△8五桂(73)▲8六銀(77)△4四銀(33)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△同角(42)▲同飛(28)

[143] ▲4八飛(28)△8五桂(73)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4三金打△6四角(42)▲4六角(68)△同角(64)▲3二金(43)△同玉(31)▲4六飛(48)△3五銀打▲4三金打△2二玉(32)▲7三角打

[143] ▲4八飛(28)△8五桂(73)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4三金打△6四角(42)▲4六角(68)△同角(64)▲3二金(43)△同玉(31)▲4六飛(48)△3五銀打▲4三金打△2二玉(32)▲7三角打

[201] ▲5五歩(56)△4四銀(33)▲同銀(35)△同金(34)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△3三銀打▲6八角(24)△8五桂(73)▲5四歩(55)△同銀(45)

[201] ▲5五歩(56)△4四銀(33)▲同銀(35)△同金(34)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△3三銀打▲6八角(24)△8五桂(73)▲5四歩(55)△同銀(45)

これ以外にも読み筋がありました。時間毎に考えた結果がばばーっと出て来ました。上から長く考えた順になっています。一秒とかで三手分ぐらい読んだもの等も含まれているのでどのように深く読んでいくのか?がわかってなかなかおもしろいですね、これは。

正直、第一・第二候補に選ばれた手順に違和感を覚えないか?といえば凄く違和感があるんですが、ポイントはどの手順においても、先手の評価値がプラスである、ということ。

これは、以前私がサイコロの目にたとえた話に近いのですが、コンピューター将棋がベタ読みしていって、その出現する局面、読み筋が大方プラスということはその局面は指しやすい、と見てもいいのではないか?ということです。

具体的にどうするかわからないし、一目細そう、一目ありえなそう、という局面から次から次に人間がやられていった・・・というのが、将棋倶楽部24でのポナンザ・ボンクラーズによる前哨戦、ニコ生による勝てたら百万円企画、そして電王戦でした。

ということで初見で見きれるか?というとこの攻め筋は初見では見切れないような気がします。じゃあこの攻め筋がプロ棋戦でまた出現するのか?といえばそれは良くわかりません。ゴキゲン中飛車の超急戦におけるコンピューター将棋の指した手が凄い!というのもありましたが、あれも結局プロ棋戦では出現していません。

ただし、プロ棋戦においても既にコンピューター将棋を研究パートナーとした手順が出現している可能性はかなり高いんだろうな、という気はします。その場合の選ばれる基準としては人間からみて指し手の違和感のなさ、がまずはあるのではないかなと。

人間の将棋というのは一つの手、一つの局面だけで作られるのではなく、序盤・中盤・終盤を通じてその人の在り方、思想というものが織り込まれて構築されるものだからです。そこが人間将棋の魅力であり、対コンピューター将棋のときの弱点にもなりうる(のは佐藤慎一プロが敗戦の弁として述べていましたね)。

個人的には昔の塚田先生や谷川先生、或いは晩年の中原誠名人のこういう軽い突き捨てからの攻めというのはとても好きだったので、似たような構想がプロ棋戦にまた出現すると、色々な意味で盛り上がるんじゃないかな?と思っていますが…。

本日発売ですね。amazon…じゃなくてもいいので実店舗の書店で是非お買い求めください。

将棋世界 2013年 06月号 [雑誌]将棋世界 2013年 06月号 [雑誌]
(2013/05/02)
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続:25年前の塚田泰明の攻め筋に対するBonanzaの評価

昨日の「25年前の塚田泰明の攻め筋に対するBonanzaの評価」の続きです。

第三図
塚田3図

塚田さん曰く(図の局面で)△7五歩は、田中さんらしい攻め合いを狙う一手だが、局後の検討では(それに代えて)△5三銀と引いて、以下▲4六歩△4四銀右▲4五歩△同銀▲4四歩に△3四金とぶつければ先手がやや切れ筋だ、という結論だった。

しかし、この変化は先手もそんなに悪くない気がする。駒に勢いがあるからだ。

という話でしたのでその局面を並べてみました。

…がまたもや時間がないのでその話は後回しにします…(後回しにするほど重大な局面ではないのですが…)。

最後にこの自戦記がどのようにして終わっているか?を紹介して次に引っ張りますね…。

(前略)本局は全体を通じて私の指し手に勢いがあって、それが勝利を呼んだと思う。特に第1図から▲3五歩△同歩▲2六銀の仕掛けは印象に残る。

あの仕掛けは前例があったわけではなく、対局中にも自信があって決断したわけではない。ただ受け身になってはいけない、という思いがこの仕掛けを生んだ。

結果的にこの仕掛けはある程度の成功を収め、本局以後、この仕掛けが結構ポピュラーにプロの実戦に表れるようになった。




とあります。


繰り返しますが、「結果的にこの仕掛けはある程度の成功を収め、本局以後、この仕掛けが結構ポピュラーにプロの実戦に表れるようになった。」らしいのです。これは今は消滅してしまった攻め筋、今のプロの目からみると一目軽い、ということですから何かしらの具体的な防衛策が講じられて、なくなったのだろうと思います。

感想戦で示された手順は、少なくとも先手が金銀交換で先攻しているのでハッキリ切れ筋でなければいいんじゃないか、ということを当時の塚田さんは言っています。

この辺り、どうなのか?というのは将棋世界のイメージと読みのなんとか、という例の定番連載で是非聞いて貰いたいところですね。

細い攻めをつなげる渡辺明竜王が「随分と細い攻めをつなげるもんですね」と感心していたように、かなり細い展開にはなりますが、もしかしたらこの攻め筋がまた表舞台に立つ日が来るかもしれませんね。

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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

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