今期のジメイは一味違う 第69期順位戦C級1組1回戦

第69期順位戦C級1組1回戦 

▲浦野 真彦七段-△福崎 文吾九段:15時42分終局
これは福崎先生の作戦の空中分解というか。一人で転んだ感があった。33角戦法からめいっぱい頑張ったところを的確に反撃された。福崎先生は順位戦で時間を使わなく(使えなく)なってしまったのはそういえばいつからなのだろうか?

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▲内藤 國雄九段 - △田村 康介六段:16時17分終局
先手の相掛かり浮き飛車は飛車が目標になって悪いというのが現時点の公式見解だと思う。しかしクラシカルな形は内藤プロに馴染む。後手の田村プロはこういう将棋の経験は死ぬほどあるのだろう、随所に手練であることを感じさせる指し回しだったと思う。

まずは44に角を打つ筋がこの形の急所なのだが、それをみせつつ、自玉の片銀冠を完成させる。そしてその角を封じる45歩にはその隙を突いた角打ち。桂馬の交換でカラ跳ねにしておき端から攻め立てる方針。全てが将棋の進化を思わせるものだった。「やあやあ我こそは」とやっていた時代においては軽快だった内藤将棋も、21世紀のマッハの前には為す術がなかった。田村プロの完勝だと思う。

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▲近藤 正和六段-△日浦 市郎八段:19時31分終局
初手56歩に対して、日浦プロが居飛車党ではあるが、或いは故に三間飛車に構えた。相振り飛車、特に中飛車党にとってはこの形は必修科目だ。なぜならば、この形で先手の得を生かさなければ、中飛車党として先手で指す戦法がなくなる(=過去あったように端歩をつくしかなくなる)からだ。よってそれぞれに自身の定跡・方針を持っており、近藤プロの場合は、相手の穴熊が見えた瞬間の角交換がそれだったようだ。

その後の不安定な玉形での攻めは藤井プロなど、作戦家の振り飛車党に共通する、ぎりぎりの得を求めた動きであり、対穴熊においては特に有効だったと私は思う。私は対振り飛車穴熊に右玉を用いるので、味的には相振り飛車の薄い玉で駒損でも先攻してガンガン攻めるというのは経験として持っているのだが、はっきりいって同レベルであれば攻めているほうが有利。特に(角が玉に向かっていないので)相居飛車よりも攻撃力の劣る相振り飛車の場合は顕著である。

局面の見切りが早い日浦プロがすぐに投了されたが、投了図以下、やはり先手の攻めが後手よりも早く、そして続くということだろう。

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▲広瀬 章人五段-△北島 忠雄六段:20時17分
因縁の対決?が初戦で実現した。前期広瀬プロが上がれなかった理由は、勝ち将棋の最後の最後で犯した手順前後によるところが大きい。喩えるならば、職人が高いところからハシゴで降りてきて最後の一段を踏み誤って死んだような負け方だった。広瀬プロご本人のブログにも気負いなく書かれていたので、どういうリベンジを果たすかに注目した。

戦型は先手中飛車からの木村美濃。少し珍しい感じ。後手の中央志向にあわせたものか、あるいは前期因縁の対決と何らか関係しているかもしれないが、恐らく前者だろう。この将棋は序盤の駒組みで勝負あった、というところ。急戦調の構えで行けずに先手だけ伸展性があり、その完成形を構築されてしまっては、プロの将棋では勝ち目がないだろう。後手からの攻め手がなく、9筋のあの単純な仕掛けで手にされてしまっては辛すぎる。その後も特に山場なく終わった。広瀬プロ寄り切り勝利、といったところだろうか。

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▲千葉 幸生五段-△田中 魁秀九段:20時52分
一手損からの後手の趣向。控え室は皆驚いたということだが、もっと酷いMY定跡を持っている私としては後手の田中魁秀プロの気持ちは分かりたい。しかし一手損して角を打ち直す手順、その角の効いてなさには少し驚きたい気分もある。先手の基本に忠実な印象のある千葉プロの優等生的な攻めの前に為す術がなかった印象。それにしても千葉プロは見事に四間飛車党から転身を図りつつあるのだなあと改めて感心した。

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▲小林 裕士六段-△高野 秀行五段:21時18分
私が好きな小林裕プロととても性格の優しそうな、そしてそれが勝負事にはプラスかどうかわからない故に好感度アップの高野プロの対決。相矢倉からのなんと後手、阿久津流に!この戦型も私が大好きな将棋なので、力強い将棋である小林プロがどのように振舞うか?に注目した。結果は小林プロの勝ち。ただしこれは投了図をみてもわかるが例外中の例外というか、小林プロならではの勝ち方というか。

力強い将棋、と一言でいうのは簡単だが、こういう局面に必ずあるというのは盤面に個性を記すという意味において、本当のプロだと思う。

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▲森 けい二九段-△加藤 一二三九段:21時28分終局
古豪同士の開幕戦となった。クラシカルなひねり飛車の戦いになるのだが、後手が不器用に?片銀冠を目指した展開が鑑賞ポイントか。一方のベテランはその持ち味を維持し続け、他方、変化がないと思われた方のベテランが最新型の思想を取り入れている、そのコーディネイト具合に感動した次第。将棋は、最新型の味を取り入れた側の完勝となった。

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▲中田 功七段-△平藤 眞吾六段:21時42分
先手中田プロ、ということで初手中飛車の明示。後手はその場合相振り飛車が有効ということで平藤プロは飛車を振る。元々右玉をやる人なので振り飛車も指しこなすのであろう。この将棋で思ったのは、美濃囲いが相振り飛車であってもやはり有力である、ということ。

特にアマチュアの場合は、駒組みのシンプルさというのは重要だと思う。ただし、先手から仕掛けた割には後手のほうがその利益を享受しているような印象をうけた開戦場面だが、悪さを自認しての攻撃開始だったのかもしれない。平藤プロの△13香車が落ち着いた、素人でもマネのできる学びの一手であり、一手掛けた以上の成果が確実に生じる「ゆうちょ定期預金」のような手。

そこからは得た香車を軸にした構想での先攻が気持ち良い。竜との上下挟撃なるか?という場面が続くが、先手の中田プロも崩れない。美濃の命の銀が動かずに玉の強さだけで受け凌ぐ展開はスリリングで一見の価値がある。後手が一息ついてからは先手のターン。ここからの先手のラッシュも凄かった。

本局は相振りが嫌いな人にも是非見てほしい。これほどきびきびした、相居飛車に似た攻め合いの将棋というのはとても珍しいと思う。本譜は先手が筋良く迫ったが、▲75桂馬からの露骨な攻めがあったようだ。最後は平藤プロらしい切れ味(右玉をやる方だが途中のらりくらりとしつつも終盤突然鋭い踏み込みを見せる)を見せてくれた。

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▲大平 武洋五段?△豊島 将之五段:22時50分終局
先崎プロの以前の将棋世界での連載や、いつぞやのプロアマ10秒将棋5番勝負?において他のプロがみた大平将棋についての記述をうろ覚えだが覚えている。一言でいうと「大きな将棋」というような表現だった気がする。早指し、早投げの印象がある大平プロだが、スケールの大きい将棋を指す。印象的には見た目も将棋も村中プロに被る気がするのだがどうだろうか?

対する豊島プロは誰もが認める将来のタイトルホルダー候補。十年後、その獲得歴の中に名人竜王があると予想しても誰も驚かない実力の持ち主。クラスが上がっての1期目だが昇級候補にあげられるなど、周囲の期待は高い。

戦型は中座飛車の松尾新手からの変化。過去の実戦例をなぞるが、分岐した際に指した先手の手に、大平将棋の大きさが現れていたと思う。或いは研究だったかもしれないが、羽生ですら素通りしたその手の味を私は堪能した。中座飛車は良く分からないのだが、一目面白い手で、左翼右翼どちらを崩すかという意味で言うとこの手のほうが堅いのではないか。プロの評価は分からないが、私としては本局のMVPに推したい。

この手を境に(と思う)、後手は苦戦を強いられる。終盤の強い将棋であり、悪くなってからの粘り強さにも定評のある豊島がそこから粘着力のある手順で局面を混沌とさせていく。しかし、そこからも大平はらしさを発揮し、控え室のプロの評価としての「大きく見える」というのは大平(の将棋)を示しているのだと思う。

これで対豊島の順位戦、2?0とのこと。強いところに強い将棋で勝つことが、その実力を認められる理由なのだろう。

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▲塚田 泰明九段?△宮田 敦史五段:23時20分終局
塚田先手で得意としている相掛かりに進む。これは新塚田スペシャルならぬ塚田スペシャル3号というところだろうか。中原玉の低くて堅くて広い陣形と、塚田プロの攻めの強さのコンビネーションは相当な脅威だと思う。また、相手はどちらかといえば終盤型の宮田プロ。序盤で優位を築けば、ここ数年ハイレベルなC1で常に昇級争いに絡んでいる塚田としては大きな一勝になろう。

途中までは先手が軽快に攻め立てていたと思う。浮き飛車の相掛かりには角が有効なのだということを後手の指し回しに教えられたが、それでも塚田プロが上手く立ち回って飛車交換ぐらいまでは、先手が良かった気がする。ざっとしか並べていないので良く分からないのだが、しかし確かに中盤のどこかでスーパーあつし君が、「計算の世界」での能力の高さを発揮したように思う。

両者の持ち味が出た戦いで、特に宮田プロの今期は相当やりそうな雰囲気を感じた。前期は得意の能力が発揮されるタイミングが少し挽回できない局面からだったように思われたが、本局の指し回しを見る限りでは中盤あたりでも無理な体勢から上手投げをかますような勝ち方だったのではないか。

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▲西川 慶二七段?△富岡 英作八段:0時14分終局
先手の手順により、後手番ながらに石田流に組めることになったために、富岡プロがそれを実行した。先手の西川プロの駒組みは最新形のような気がする。対中飛車・三間飛車における穴熊の組み方としては色々あったが結局この形、歩をつかずに銀で受け止めておく、というのが一番無難ということのようで、個人的には驚きがある。一昔前ではありえなかったような気がするのだが、それがなぜか?について掘り下げるのはまた別の機会にしたいと思う。

本譜は相当に先手イビアナとしては気持ちの良い展開で、対石田流にイビアナを用いる人は一度は見ておくほうがよいと思う。個人的には後手の富岡プロが石田流への不慣れ(もし多投してるのであればスミマセン・・・)があったように感じた。

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▲真田 圭一七段?△長沼 洋七段:0時29分終局
ここは浅い観るファンには少し分かりにくい?かもしれないが、実力者同士の対戦。阿久津プロも認めるパンチ力を誇る真田プロと、駒取り坊主の異名を取り、別の意味の力強さ、スタミナのある強さをもつ長沼プロの一戦。

後手長沼プロの作戦は一手損四間飛車。ゴキゲン中飛車回避からのこの展開はよくあるが本局は後手が誘った形。私も角交換振り飛車を用いる人間として、この先手の「玉頭方面の位を取り、後手陣の伸展性を失わせる」という作戦は有効だと思う。

続いて4筋の位も取ったのは意欲的。あとで苦労する可能性はあるが、これで勝つ場合は中押し勝ちが予想されるところ。・・・と思っていると早速その位を目標にする形で戦いが始まった。

しかし四筋の応酬における真田プロの▲47銀はなんともプロらしい一着。アマでは一目形で67銀と指しそうなところだ。そこからのやりとりはどちらが得したのかよく分からない。

よく分からないが、歩切れながら、36桂馬を先着した先手が面白そうな気がする。攻め駒の捌け具合は互角だが銀を得たという実利の差がある。その後、打った桂馬を44に跳ねる手も気持ちが良い。

その後、83手目の局面は何故か駒の損得が無くなっている。私の酔った頭では計算できない形勢の差であり、金銀の集結具合では後手を持ちたいが、後手からの攻めが見えないところは先手に軍配があがる。

無責任な?メンバーの控え室は後手良しを断言していたが、攻めの分かりやすさを考えるとそうも言えなかったのかもしれない。難しいながらも攻めが続いて最後は真田プロのパンチ力の強さが発揮された。

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▲佐々木 慎五段?△脇 謙二八段:0時40分終局
序盤マニアにはタマラない出だしではないだろうか。振り飛車党のジレンマがここに現れている。アマだと比較的ある展開のような気がする。私も序盤戦術で頭がオカシくなっていた頃、こういうオープニングを迎えたことが結構あった。

そして興味深いのはこの序盤における先手の勝率だろう。これは速報版の会員登録している人だけの愉しみにしておこう。序盤の趣向から結局相振り飛車に。

先手が37に歩を指した局面、断言するのは将棋の神様だけだと思うがこの一手で先手の利は帳消しになったのではないか。このやりとりをみただけでも、美濃囲いの優秀さ、相対的な良さというのを再認識した次第。

手得で24に角を据えた40手目では後手満足過ぎる。ただし、この気分の良さを形勢の良さに繋げるのが難しいところなので、脇プロがどのように指し進めるのかに注目した。

後手が好調に攻めて脇プロのペース。脇プロといえば、序盤の幾つかの戦法において有名なために観るファンには序盤型のように思われているかもしれないが、その強さの根源は実は圧倒的な終盤力にあるのではないかと思っている。

特に、序盤戦術の殆どが終盤力がなければ指しこなせないようなものばかりなことや、前期の順位戦においてスーパーあつし君に終盤で読み勝ちしたことからも分かるのではないか。

本局は序盤の良さを微差で維持したまま終盤に突入していると思う。112手の局面では、後手の香車と飛車が、先手の金と交換になっている。ただし、玉形の差があるので、後手の攻めが続けば勝てるのだろう、という状況。

このあたりの展開、私は対振り飛車に右玉を持つ関係で先手側のような状況を持って迎えたことがなんどもある。あと数手稼げればコチラの勝ちは確実なのだが、しかしその数手は稼げずに、相手陣は手付かずの低い美濃。相手の少ないコマ数で手が続き続ける。

こういう展開になったときは私レベルだと3:7の率で負ける。3が私のほうだ。本局もそのようにして後手が勝ちきった。

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▲金井 恒太五段?△高崎 一生五段:0時52分終局
昇級したての2名の対決。先日のB1もそうだったが、完全ランダムなクジのほうがランダムに見えないという好例かと思う。どちらにとっても大きな一戦で、勝てば昇級まで、負ければ降級点まであろう。戦型は後手高崎の坂田流だった。アマ的には一番楽しめた戦型だと思う。

向かい飛車の本を出しているから、というわけではないだろうが最近流行りの坂田流。そして44金!がかなりのアグレッシブさ。素直に歩の交換が実現して、ひとまずは後手の気分が良い。金井プロは2・3筋については相手の言いなりになりつつ、玉側でポイント稼ぐ狙いだ。

高崎は積極性を崩さずに銀まで4段目に繰り出す。或いは63に引いての美濃囲い強化の含みもあるだろう。中飛車や坂田流など力戦形の振り飛車に対して、7筋の位を取るのは将来のための貯金としては安全確実な運用手段であり、位取りの将棋は難しいと言われるが、これらの戦型における位取りはやって損がないと思う。私も力戦中飛車側を持つときに一番嫌なのは角交換で偏った陣形での穴熊よりも寧ろ位取りだ。

すぐに攻めると思われた坂田流側だが、手損で金を玉側に寄せてから漸く開戦する。ただしこの開戦は一目無理筋で、丁寧な振り飛車を指す印象の高崎プロにしては粗い気がした。とはいえ、このままだとジリ貧とみた已むを得ずの開戦なのかもしれない。飛車を見捨てたところも同様で、通常の手段では容易ならずとみた勝負手。

本局は金井将棋の良さが出ている。金井プロの将棋は鋭い切れ味や唸る構想というもので局面をリードするのではなく、丁寧な指し回し、安定的な、堅実な、そつのない、誤りの無い手の積み重ねで構成されている。将棋がミスをした方が負けるゲームだとするとそこから遠くに離れるための指し回し。金井将棋は致命的なミスをすることのない、誠実な演奏により美しいハーモニーを奏でる。

その金井プロの指が前期C2の後半でもつれたのは昇級のプレッシャーによるものだが、もつれつつも完奏したという事実が金井プロを一回り大きくさせているはず。開幕前の予想では相手がきついので降級点まであると私は書いたが、戸辺プロのように白星を重ねるようだと、C1の昇級ラインはぐっと上がることになるだろう。

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▲勝又 清和六段?△片上 大輔六段:1時3分終局
twitterer(ついったらー)対決となった本局。最近では比較的珍しい本格的な矢倉となった。

片上プロは四段になったのはとても早いというわけではないが、そのユニークな存在性を仲間内でやっかまれて?全力でぶつかられた…ということはないでしょうか?(適当に書いてます、スミマセン…)。17歳での三段昇段は遅くはなく、そして三段リーグの成績も5割7分を超えている。順位戦トータルの勝率はなんとジャスト7割であり、C1の昇級パターンである、前期順位を上げての今期には期するものがあるだろう。

序盤のところ、定跡だとは思うものの、私は個人的に後手の95歩85歩の形が好きではない。どちらかが4段目にいる将棋のほうが好きで、この形をもって指しこなす自信はあまりない。プロならではの定跡のような気がしている。そういう意味で、37銀という手は新井田さんいうところのアマでも参考になる「実戦的好手」だと思う。8筋9筋の形状の関係で、例えば15同歩以下、先手の攻めに付き合っていると一生受け続ける可能性があるためだ。

通常、相居飛車において相手の桂馬を25の地点から取り切る将棋というのは、実戦的に勝ちにくいことが多いのだが、こういう前線に成り駒がいて、角の利きにより飛車が戻ってくるのを防いでいる場合は逆に勝ちやすい気がする。急いで寄せなくても相手から迫る手がないのでボチボチ行くか、あるいは入玉行進曲、と金製作所、という展開もある・・・と思っていると勝又プロの継続手段が巧みであり、後手の辛抱が続いた。

懸案だった8筋9筋の形を手筋の桂馬?歩を使った手筋?95の桂馬と矢倉最頻出単語のような手筋を続ける後手。73の桂馬を跳ねた局面までの手順は桂馬好き(私のことです)にはタマラナイ手順だ。かれこれの桂馬の位置関係だけで形勢判断してしまいたくなる局面で、先手の攻め駒が中盤の折衝の結果、敵陣からそれたところにいるのも後手が良さそうな理由のひとつ。

ただし後手の攻めも小駒メインなので細い。終盤はよく分からなかったが、細いながらも攻めが続いた後手の片上プロが寄せきった。最後の最後に詰み筋で18の成銀まで役に立つあたり、序盤の作戦が正しかったことを証明していると思う。途中、先手に攻撃のターンとなった局面で、飛車を打つ筋があったようだが、それでも後手勝ちだったと思う。

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▲小林 健二九段?△村山 慈明五段:1時24分終局
最後まで残ったのがこの対局。「村山慈明プロは力戦に弱い、頑張ったらどうにかしてくれるんじゃないか?」という訳ではないだろうが、前期ぐらいからやたらと頑張られる将棋が多いように思うのは気のせいだろうか。しかし今期私はジメイプロを昇級候補にあげている。今期上がれなければ一生上がれないぐらいの気合で臨んで欲しいところ。死ぬほど当たりが良いというわけでもないが、これから長く将棋で飯を食っていくのであれば、先輩実力者たちに打ち克って欲しいところ。

戦型は相矢倉から先手コバケンプロのMY定跡に進む。飛車を2筋からはずらさない意思を感じさせるが、19に持ってきたときに角筋に入るのは一緒のような気もするので善悪は不明。私は対振り飛車右玉をやるので分かるのだが、端に飛車を持ってきた時の28の傷が怖いので正直アマにはこの形は指しこなせないと思う。これであれば下段の香に力あり、の形のほうが飛車は渡すが良いような気がする。…と思えばなんとビックリ19角。今度は18の地点が傷になるのでこの香車は死ぬまで動かせない。

これで先手が良いとは思えないが、もしかすると冒頭の言葉がコバケンプロの頭の中にあったのではないか…と勘ぐりたくなる手順だ。先手からの早い攻めがない後手はじっくりと力を溜めて、33の地点で桂馬を補給して、満を持して攻撃を開始する。その様子をみると突如先手玉が遁走し始める。このあたりの手順は意味がわからない。やはり冒頭の言葉が今度は私の頭をよぎる。

予め逃げた玉に対する端攻めは効率が悪いが、少なくとも形勢が悪いということはないだろう。後は通常形ではないので、知識ではなく力を問われる戦いになっているというだけだ。82手目については、これだけでも観て欲しい手だと思う。善悪や手の意味は分からなくても、この1手に賭ける村山プロの想いが伝わってくるだろう。私はこの手を本局のMVPに推したい。

漸く先手の飛車が戦艦大和よろしく遅ればせながら動こうとした瞬間、後手のジメイプロが繰り出した△27歩がウィニングショットだと思う。この一手で先手の悪形を具体的に咎めに行っている。そこからはコバケン流の頭金まで指す頑張りが見られるが、後手が優勢を保っていたのではないか。そして何よりも、あの31桂馬が働いて詰みあがったのをみて、私は素直に感動した。

将棋をみて感動するというのは、タイトル戦であってもそれほどないのだが、本局についてはこの日のベストバウトとして異論が出ることはないだろう。今期は真田・脇・塚田との対戦が山場になりそうだと見ているが、本局のような戦いを見せて欲しいし、見せてくれると確信している。


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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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