スペシャリスト 第51期王位戦第3局 ▲広瀬章人-△深浦康市

1?1のタイで迎えた、若武者の真価が問われる第三局。先手番で何を指すのか?が注目された。三度穴熊を予想する声と、そろそろ居飛車ではないか?という声で二分されていたように思う。

私は少々穴熊脳になっていたようで、穴熊を予想したが、当初は「負けるまではとりあえず穴熊」というものであり、広瀬プロももしかするとそういうつもりだったのかもしれない。

第51期王位戦第3局 ▲広瀬章人-△深浦康市

戦型選択の権利は後手の深浦プロに移ったが、深浦王位はビックリの△3三角戦法を採用した。対局後の深浦プロの話では、予定だったという。

この戦型の勝率が悪いわけではなく、むしろ昨年?に後手が勝ち越した原動力になっているとのこと。ただし戦法としての広がりがあまり無いために、指しにくい…というような話を週刊将棋の年末恒例の特集記事21万手スペシャル?(名前失念)で読んだように思う。

後手はそこから向かい飛車に。先手はこの戦型になると無条件で端の位を取れる。そこから後手は穴熊に組み、先手は四枚左美濃に構えた。深浦王位は後手番ということで相手に攻めてもらって迎撃、来なきゃいくで?と焦らせての暴発を狙う構想で、後手の穴熊は端歩の圧力を減らす意味もあり、一段飛車、金銀の配置も専守防衛、迎撃スタイル。

△3三角戦法に対して先手が端の位を取ると後手は穴熊にせざるを得ないので、深浦王位が誘って広瀬プロが与えた穴熊だった。これを専門的には誘い受けというのでしょうか?どこの専門か分かりませんが・・・。

悠然と手を進める先手に対してちょっかいを出したのは後手だった。駒損上等の、二筋を破るだけの単調だが実戦的な△2五桂ポン。後手の時限爆弾はこの歩がと金に変わるときに爆発する。それまでに先手に手を作れますか?と聞いているわけだ。

ただし控え室曰くこの時限爆弾は爆発しない(時間が掛かりすぎる)ということだった。

私のつたない棋力では、よくあるのが歩切れの相手に桂馬を渡して、こっちは1歩得という、純粋な桂馬と歩の交換というのは直ぐに形勢に差がつかないことが多いように思う。桂馬という駒が活用の機会が限られており、その力を発揮するまでは死蔵されているようなイメージだ。

封じ手の局面で広瀬プロは2時間を越える長考の後に手を封じたが、ここが勝負どころ、うまくすれば駒得を具体的な良さに繋げられるだろうと考えてのことではないか。

封じ手の場面で考えられるのは飛車を逃げるか、或いは交換を催促する手で、広瀬プロは後者を選択した。

少し進んで62手目の局面。
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ここではどちらが指しやすいだろうか。手番は先手。駒割は桂馬と歩の交換だがと金と馬があるので判断は難しい。互角か?そして、玉の堅さは4枚囲いは先手だが後手は左右分断形だが穴熊。一段飛車も堅い。

よって形勢不明ながらも、後手の開戦が桂ポンの駒損単純攻撃だったことを思えば上出来かもしれない。

この局面で広瀬プロが才能を見せる。63手目▲2五桂がそれだ。意味は飛車にどけてください、と言っている。後手のバランス型の穴熊をコントロールしているのは実はあの2一の一段飛車であり、守りを乱して大駒の打ちどころを作ろうとしている。元々桂馬得なので利く妙手だった。

横からの攻め合いになったとき、横方向のスピードはほぼ一緒。ただし後手玉には上からの攻めも待ち受けているのでこのあたりでは桂馬のタダ捨てを機に、形勢は依然不明だが先手が少し局面をリードする事になったように思う。

しかし局面が進んでみると控室はどうやら後手持ちの雰囲気。正確なところは専門誌(紙)で確認したいと思うが、広瀬プロが相手に攻めさせて自陣の四枚の金銀を攻め駒に変えた手順が上手かった。

先手の駒台に駒が貯まると桂の上に歩、歩の上に銀という仮設建設の後手陣は心許ない。食いついていないようで食いついているという穴熊を知り尽くした広瀬の三年殺しが決まったというのが分かったのは99手目の局面。

後手は銀と金があるが酷い掘っ建て小屋で補修のしようがなく、振り飛車穴熊を知り尽くした男が、その弱点を突いて見事に勝ち切った。

先程感想戦のコメントをみてみたが、2五桂馬のタダ捨てから攻めた先手だが少し慌て気味の攻めだったようだ。対する後手も2九飛車成りでは2八飛車成りのほうが良かったという深浦王位の感想があった。

2五桂馬を境に、戦いのスピードがあがったような本譜だが、双方攻撃力が乏しかったので、どちらも決めに行かずにもう少しゆっくり行ったほうが良かったということなのかもしれない。

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タイトル戦は挑戦者がリードする方が盛り上がるので広瀬プロにはこの調子でがんばってほしい。そういえば今週の週刊将棋をみて、新井田基信氏の最初で最後の対プロ公式戦の対戦相手が深浦康市プロだったことを知った。そして深浦康市王位の弟子には札幌出身で新井田基信氏の教えを受けたものもいるという。

特にオチのない話ではあるが書き留めておく。

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■追記
先ほど、戸辺誠プロのツイッター上での呟きが参考になったので紹介しておくと戸辺プロ曰く「王位戦。△77桂成で△52金なら後手有望と思ったけどどうなんでしょう。今日ヒロ氏に聞いてみます。終盤強いっていいですねー、笑」とのこと。

控え室で言われていた桂馬と銀を交換してから△5二銀で叱りつける、という順も相当に有力だと思う(それでも後手が良さそう)だが、交換せずに△5二金というのが如何にもプロっぽくカッコいい。

先手は桂馬から銀を逃がすと△4四角の痛打があるために銀を逃げることが出来ないのだった。

関連するタグ 将棋 穴熊 広瀬章人 深浦康市 3三桂戦法 左美濃

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