将棋界の一番「怖い」日。。第71期C級2組最終戦。1敗勢が3名昇級!降級点は…。

A級順位戦が一番「長い」日だとすれば、C2の最終戦は一番「怖い」日だろう。降級点という、3つもらうともれなくフリークラス行のチケットをもらえる点数がある。

その割り当て数は9人分ある。昇級が3名に対して、9名分。いつだったか調べたのだが、C2の平均年齢がどんどん下がっている。若くなっている。

要は、この降級点というのは将棋界という野生の王国における淘汰の仕組みである。弱いものが食われる。その中には老いたものが比較的含まれる、ということだ。

20年以上将棋をみている人間として思うのは本当に将棋棋士のトーナメントプロとしての待遇を維持するのが年々大変になっているな、ということだ。

そしてこれは日本の縮図でもある。我々が将棋界を憂うとき、哂うとき、それは我々自身を憂い、哂っているということでもある。

一昔前のC1やC2はまだよかった。青春の苦悩、上がれる才能を持つのに上がれない人間の苦悩とそれを突き抜けたときの歓びを感じることができた。屋敷や先崎。森下。

数えればきりがない天才たちがCクラスで苦労していた。でもそれはのちに大輪を咲かすための糧となっていたはずだ。

だが、今は違う。

将来の名人候補はいつかはあがっていけるが、もしかすると次世代の新戦法や新構想の発信者になるかもしれない人たちが、上がれないのではなく、落ちるのだ。

或いは落ちる恐怖におののき、その本来持っていたであろうクリエイティビティを発揮できずに、縮こまってしまう。そういう雰囲気を今のC2には感じる。

三段リーグからプロ入りしても単純には喜べない。なぜなら、そこからまた第二の三段リーグともいえる、C2クラスが始まるのだから。

C2クラスの平均年齢が下がった結果、もちろんC2のレベルは上がった。4名の天才が入り、3名が抜ける。降級点3つ持ちのロートルや不幸者が落ち、クラスのレベルが煮詰まり濃縮し、より高くなっていく。

日本の若者が苦心・苦労しているのとまったく同じ構図がここにはある。

こういう現状を踏まえたうえで、昇級・降級のレースをみると、より一層理解できるはずだ。

まずは昇級候補。この高レベルなC2のなかで、1敗しかしてない棋士が4名もいる。阪口を除く3名の平均年齢は20歳。

2敗未満のメンツの年齢をみると最年長が矢倉の38歳。もちろん、才能ある人間は上のクラスに抜けていくとはいえ、その若さに私は改めて驚いた。

これを書いてるのは当日の朝、だがおそらく菅井・澤田・斎藤があがるのではないか?とみているが。。

そして降級点。

こちらは9点に対して確定が3点。西川パパ、伊奈、川上。川上はこれで降級となる。まだ40歳だ。

残りの6点を14人で回避の争いを行うこととなるが、4名の20代以下を含む。(高見、牧野、長岡、藤森)。

そういえば、余談になるが、先日のA級順位戦のニコ生解説で、勝負の前に震えるかどうか?という話を解説者4名でしていた。

その時に、豊川先生が、長岡プロの前で「C2で一度だけ降級点を取りそうになったときがあったが、その時は1か月ぐらい体調が悪かった。回避したら治ったけど」という話をしていて痺れた。

長岡プロは降級点をとるかとらないかではなく、降級するかどうか?の勝負を数日後に控えていたわけで、ニコ生の粗い画像を通じても、その顔色が変わったのがわかった。

見ていて忍びない気持ちになったが、それが勝ち負けだけですべてが決まる、将棋の世界なのだった。

佐藤深夜先生が機転を利かせて、話題を変えたのをみて彼の優しさを知った。二人は米長邦雄の葬儀で遅れたC2の対局を、二人っきりで指した仲?なのだった。長岡は喪服?黒ネクタイ?で勝負に臨んだが、正直に書くとひどい将棋だったのを覚えている。

降級点が確定している、あるいはとる可能性がある棋士をみると、すでに1点以上もらっている人が散見される。運の要素がほとんどない(対戦相手、先後のクジ運ぐらい?)将棋の世界では、いつかどこかでその実力の適正なところに、自身の立ち位置が収れんしていく。そしてその収れんまでの時間というのは、それほど長いものではない。

もっといえば、三段リーグの成績と順位戦の成績の相関関係というのがある。三段リーグでの活躍ぶりをみれば、順位戦での活躍もわかる、というものだ。

戦法・戦型のトレンドはあるものの、それがどのように変わっても一定の活躍をするには実力が必要ということなのだろう。波が来た時にうまくとらえて、そうではないときには自暴自棄にならずにこらえる・・・という意味では、その戦い方・姿勢に私が学ぶところも大きい。

と、ここまでが対局開始直後に書いたものになります。ここから先は、全局・・・は難しいので、好きな将棋、昇級に絡んだ将棋、だけを取り上げる予定。降級点については結果のみを記したいと思う。



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まずは昇級だが、結論だけ書くと1敗勢のうち、菅井竜也阪口悟斎藤慎太郎の三名がキープしての昇段となった。斎藤慎太郎は佐々木勇気と並ぶ逸材であることは小さい頃から言われていたが三段リーグで常に良い成績を残したもののなかなか上がれなかったが、ちゃんと帳尻は合うものだ。

また、斎藤慎太郎はいわゆるしょうゆ顔(今言わないの?w)のイケメンでもあり、その性格も素晴らしく、将棋のタイプも魅力的なので、見た目的にも佐々木勇気と人気を今後二分しそうな勢いである。菅井竜也はそのプライスタイルというか、闘志むき出しの感じがたまらなく素敵で、そのガッツがなくなるまでは延々と活躍しそうな雰囲気がある。

阪口悟プロは、奥さんが喜んでるんじゃあないでしょうかw 今期は特に振り飛車党同士の対戦が多く、そしてその相振り飛車において、一日の長を示した、という印象です。

早々に勝負を決めたのは、菅井竜也プロ。夕方前に昇段を決めて、そのまま関西に戻り、解説会に登場するというかっこ良さだった。このバイタリティーが菅井竜也プロの持ち味を示している。

戦型は先手中飛車に後手が5筋を突く形で乱戦模様。こういう将棋は菅井竜也がもっとも得意とするところだ。ヒラメ戦法で出てくるような筋が炸裂して、先手の菅井竜也プロが圧勝した。

阪口悟プロは相振り飛車の後手番で西川ジュニアと対戦。シンプルな美濃囲いから相手の三筋を凹ませて優勢を築いた。今期は本当に相振り飛車での勝利が多かった。△4六歩という筋が炸裂して先手陣は持たなかった。ここも圧勝に近い。

私のもう一人の?アイドル、斎藤慎太郎プロは中座プロと横歩取りの戦いで先手番。本家の8五飛車にやや不思議な作戦(相中原囲い?)で対抗したが1-3筋への集中攻撃が続く形となり、優勢となった。

斎藤慎太郎の将棋は強いと思う。佐々木勇気の粗削りさと瞬間みせるセンス、みたいな感じではなく、作戦に最新さよりも古風さを感じさせつつ、中終盤の強さ、特に中盤のねじり合いの強さがありつつ、序盤の無難さがあるというか。終盤型はもっと序盤が独特な事が多いようにおもうが、それがない終盤タイプ。

もう一人の一敗だった澤田プロは先手番だったが苦しくして千日手王の永瀬に無理せず千日手に持ち込まれた時には時間が2時間ぐらい違った。

指し直し局は永瀬の先手で手損からの先手ゴキゲン中飛車。澤田の取った作戦がやや独特で、序盤早々に先手が良くなったような将棋だった。澤田はこういう意味で終盤型らしい将棋だと思う。

1敗勢から3名は上がるだろうなと思っていたが、前年に引き続き、ハイレベルな戦いが続いた。その煽りを受けたのが、降級点争いだった。熾烈の一言。

石川、松本、小倉、瀬川、上野、遠山、川上、西川慶、伊奈の9名で、松本・遠山・伊奈が2点目。上野と川上がフリークラス降級。

ギリギリしのいだメンツとしては、長岡、藤森だろうか。藤森はやはりこういう運の良さを持っているというか、居飛車穴熊をちゃんと完璧に指しこなせる、というのはやはり大きい。序盤でかなり安心できる展開だったように思う。長岡はニコ生での例のやりとりをみていたので、震えずにしのいだのは素晴らしいと思う。

ネットでも発言・活躍している棋士にとって、こういう時は辛いと思うが、嫌にならずに頑張って欲しいと思う。特に瀬川さんはTwitterで、将棋をやめたい、ぐらいのことを書かれていて衝撃を受けたが、勝手に補足すると、こんなに不甲斐ない将棋を指すようであれば、将棋をやめたほうがいい、というような精進が必須であるということの裏表の覚悟を示すような、一言だったのだろうと思う。

最後に、教授こと勝又清和プロのTwitterの言葉を紹介して終わりとしたい。

へとへとに疲れた。腰が猛烈に痛い。寝たいが頭が冴えて眠れない。棋士としての寿命は延びたが、寿命は縮んだなあと実感する。それでも棋士として対局が出来ることが嬉しい。うれしい。おやすみなさい。

https://twitter.com/katsumata/status/309001646929752064





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(2013/01/23)
山崎 隆之

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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

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