第18期銀河戦 決勝T 準決勝第1局 ▲佐藤康光vs△中村太地

先手佐藤プロで相矢倉に。後手番の中村プロは元振り飛車党で今は居飛車をメインに指すようだが、かなり上手に指しこなしている。本棋戦でもオール居飛車ではないだろうか、前局の対橋本プロ戦も見事な指し回しだった。

本局もテーマをもって臨んだようで、12手目の3二銀で現代矢倉の最前線を思わせる出だしとなった。いわゆる既存のノーマル矢倉は過去の蓄積が深すぎて広すぎるので、ゼロから学ぶのには躊躇するものがあるが、この展開はそれに比べるとまだ未解決か、狭いので転向組にはやりやすい意味があるのだろう。この左美濃・早囲い系は大きく区分するといわゆる藤井流として良さそうな駒組み。(最も藤井プロは後手番では指さないわけだが)。

角を手順に捌かせると面白くない先手は本譜のように角を飛び出して先手飛車を睨んで金銀を盛り上げていく指し方となる。

この指し方、かなり強い人は別にして、先手番としてはそんなに楽しくないというか、指しこなすのが難しいと思うので後手としては全然優勢ではないのものの、気分だけは良い気がする。本当に気分だけで、形勢はむしろ棋理としては先手が良いとは思うが。

良く分からないのが先手陣の堅さ具合。この端が狭く桂馬が跳ねており、銀が上ずったような銀立ち矢倉?というのは堅いのかどうかというのはいつも悩む。ただし飛車・角・桂馬だけとはいえ先攻できたことは間違いないので多分先手が良い。

67手目、直ぐに見える後手からの攻めもないのでずばっと角を切ったのが佐藤康光プロらしい強力の攻め。続く構想として5筋で一歩もったのはいいとして、5筋の銀取りを放置しての端攻めには驚いた。

飛車が成り込まれると相当危ないように見えても金や飛車など後ろに利く駒さえ与えなければOKということで、確かにそれらを与える機会はしばらく無さそうだが、これでいいなら話は早い。

続いて81手目、香車も棄てての▲3三歩。この時点での形勢判断は、玉の堅さは当然先手、手番も先手、駒の損得は先手のザ・角損。既に局面は終盤ということだ。攻めが続けば玉の堅さが大差なので、先手が勝てそう。

89手目の▲4一銀が勝利打点の味。この手に金を逃げることは出来ない。ぱっと見えるのは逃げても角打って玉逃げて2三に馬作られると3三桂成?飛車成という感じ。後手に飛車や金が渡る日は一生来ないので、飛車に成られても怖くない。

溜まった攻め駒で反撃を試みる後手だが、金or飛車がない時点でどこまで行っても…という状況に変化はなく、最後は二枚の強力な大駒の力で先手の佐藤康光プロが寄せ切って終局となった。

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本譜は相居飛車・相矢倉らしい攻防というか先手の攻撃、特に捨駒、手抜きが印象に残る一戦だった。佐藤康光が先手を持つとこのようにしてタコ殴りの展開があるのだなあと改めて感心した次第。

矢倉も最近ではスピードアップが図られて、新二十四手ですら悠長な具合になってきたように思われるが今後の矢倉における流行に注目していきたい。

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第69期順位戦A級2回戦 ▲三浦弘行八段-△渡辺明竜王

今期調子がイマイチな二人の対戦。三浦プロは7?12。ただし5つの黒星は対羽生戦によるもので、それを除けば7?7。除く意味がないので7?12は7?12なのだが。

対する渡辺竜王は一頃の神がかった勝ちっぷりが失われて元の冬将軍に戻ったのか7?6。悪くはない。悪くはないが、周りが勝手に竜王にもとめている成績ではない。後手番戦法に苦労している印象で、マタギのように先手の角換わり腰掛け銀を討ち取っていた前期とは打って変わって、指す将棋が無いといった苦労が見られる。

第69期順位戦A級2回戦 ▲三浦弘行八段-△渡辺明竜王

そんな後手番戦法に苦心している渡辺竜王が選択したのはノーマル角換わり。そして棒銀からの早繰り銀へのシフト。これは私が個人的に棒銀フェイクの早繰り銀と呼んでいるものであり、先日の順位戦において日浦プロが先手番で似たような思想を用いて勝又プロを破っていた。

後手一手損に対して、先手がこの手法を用いると端歩の分もあって相当に得な気がするのだが、先手番で用いる人は少ない。それは銀立ち矢倉が優秀だから、ということのようだ。

一手損の後手番の場合、元々の手損が解消されるだけで手得するわけではないのでその優秀さは薄れるが、ノーマル角換わりの場合、端歩の関係が影響しない戦いになれば手得の意味がある。居玉が嫌いな竜王にとっては、得した一手分、玉を囲えるので、一手損角換わりよりは比較的指す気になるということだろう。

将棋はやはり後手の棒銀フェイクの早繰り銀vs先手の銀立ち矢倉となる。実は似たような戦い方を「棋聖戦本戦1回戦、小林(裕)六段戦。」において行っている。(私の感想はこちら「渡辺明の角換わり棒銀」)。この将棋では与えられた盤面図を見る限りでは、先手の9筋の一手が無駄手化しているので成功しているだろう。

しかし本局は途中で竜王側がそれほど面白くないと私は感じた。端を受けて、角を投入して一歩を拾いに行った辺りの手順の味としては粘りに行っている、ぐらいの印象。

先手の銀立ち矢倉は金銀の連係が良く、一段高いところに築城されているので普通の矢倉よりも当たりが強そうなものの、先に桂馬の筋から逃げている銀という意味もあり、玉の居室が広々した印象で息苦しさがない。

59手目の局面。
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先手の陣形の美しさ、次の7七角が実現した局面を思い浮かべて▲5九角としたこの瞬間は相当に気持ちが良い。将棋を指すものとしての喜びを感じる瞬間、といえばいいだろうか。

ここ数手の先手は王者の銀立ち矢倉の完成、王者の行進といった堂々な手が続いているのに対し、後手の手は卑屈なとりあえず囲っておきましょうという2二玉、桂馬の攻撃と角筋に気づいての撤退につぐ撤退で、竜王の指す手ではない。奴隷のような手、ではないが、王様が通る時に道端で伏せるような身分の人間が指す手だ。

居飛車の後手番が苦労しているというのは分かるし、手が見えすぎる渡辺竜王だから尚更に苦労が見えてしまうというのもあるかもしれないが、それでも必要以上に悲観しているような、凝らし過ぎておかしくなっているような印象を受ける手順だった。

そこから挽回したように見える場面もあったが、何しろ先手陣は鉄壁で、角二枚を主力としたぼちぼち攻めが炸裂した。見どころがないとは言わないが、将棋の作りが悪すぎたというか、手損の将棋で端での一手得もなくなり、さらに手損して勝てるほどA級の将棋は甘くない、ということだろう。

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今期の挑戦者は久保二冠か渡辺竜王だろうと思っていたが、どちらも苦戦しそうなA級の序盤戦である。連勝は今のところ、谷川・森内という永世名人資格をもつ二人。流石のひと言である。

高橋先生が連敗。さすがに今期は一気にハードルが上がっているので苦戦はやむを得ない。

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