穴熊の実戦的な勝ちやすさ 第四回大和証券杯女流最強戦 ▲甲斐智美-△鈴木環那

女流棋士では珍しく?居飛穴をメインに対抗型で戦う鈴木環那女流が甲斐二冠と対戦。先手の甲斐女流が石田流を志向したことから、居飛穴には組みづらいように思われ、特に女流棋士の対石田流の作戦があまり行き届いていない印象があるのでどのような序盤戦術を用いるか?に注目した。

居飛穴は無いと見ていたが、居飛穴に組む鈴木女流。しかも遠さを活かすだけの穴熊で自ら強襲したのには驚いた。棋理としては振り飛車が良さそうなワカレだが、実戦的には分からないところ。

途中までは飛車を打ち合ってハッチを閉める一手が入っていない分、先手が良さそうだったが、途中から縺れる。振り飛車が攻め間違うと、受けながら金銀が玉に寄っていき硬くなっていくのが穴熊の恐ろしさ。

必勝とは言わないまでも、居飛車側が随分と勝ちやすくなった局面はあったように思う。
最後のほうは終盤力の違いでごまかされた感があるものの、同じ程度の終盤力であれば、居飛車が勝つ、というのはこの前の中井女流の居飛穴を見れば分かるところ。そういう居飛車党がある程度揃わないと、女流棋士会における振り飛車偏重が是正されることはないので、是非鈴木環那女流にはがんばってほしいと思う。

確か先月号のNHK杯テキストで、元々は引っ込み思案で人前では喋れない人間だったが、それを払拭し、女流としてのお仕事を全うするために、アナウンサー学校?に通って、他の元々喋りが天分、みたいな人間に混じって頑張った、という話に心を打たれた。

今の喋りの上手さからは想像も出来ない話だが、そういうガッツがある人間であれば、ここからの精進で居飛車党の出世頭になる日も遠くないと思うがどうだろうか?


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(2010/11/16)
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上記のエピソードは確かこの号の鈴木環那女流連載エッセイに載っていました。

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居飛車党同士の助け合い 第4期マイナビ女子オープン本戦T ▲鈴木環那?△早水千紗

女流棋士には振り飛車党が多い。男性棋士の振り飛車党は居飛車をやらせても上手いことが多いが、女流棋士の場合は、本当にそれ一本というケースが多いように思う(勝手な憶測)。

理由としては投入した勉強時間が少ないものの、一点集中で振り飛車を学んでそのまま突破した、ということかもしれないし、或いは仕込んだお父さんが振り飛車党だったか。(ただし渡辺竜王のお父さんは振り飛車党だったような気がしているので、この予測は誤りの可能性は高い)。

居飛車は覚えることが多いのに対して、振り飛車は少ない(ように思う)。女子と男子ではその将棋に投入する時間数の違いで、もしかすると網羅的に学びきれない居飛車では突き抜けられないのに対し、一点集中型+終盤力でどうにかなる振り飛車党が増える、という構図なのかなと考えている。

しかし本局は居飛車党同士の戦いだ。

後手の早水女流は結構激しい将棋を指すはずだなと、対局前に私は呟いた。あまり詳しくはないのだが、まだ将棋連盟でCD-ROM版の棋譜を販売していたころに気になる手順で検索すると、ぽつぽつ見かけた記憶がある女流が、この早水さんとか、石橋さんだった。棋理としてはどうか分からないが、独自の戦法・戦術に相手を引っ張り込んで戦うタイプなのかなという理解。

対する鈴木環那女流は、正直その棋風については良く知らない。それよりもアシスタントや将棋番組やイベントでの仕切りの上手さ、等での活躍のほうが記憶に残っている。指した将棋で覚えているのは北浜係長との目隠し将棋、だろうか。(youtubeかニコ動で見た)。まともな将棋でいえば、室田伊緒女流との対戦で、居飛穴からタコ殴りにしたものがあったように思う。(マイナビの予選だったか?)。

本局は序盤から後手の駒組みが怪しかった。プンプン匂う…。

第4期マイナビ女子オープン本戦T ▲鈴木環那?△早水千紗


この序盤は筆舌に尽くしがたい ものがある。私もMY定跡で凝らすほうなので多分早水女流に経験がある形なのだろうと思うが、パッと見危うい。しかしじっくりどっしり構える先手の協力?もあり、遠大な構想が完成し、後手がはっきり良くなった。

その時点で両者1.5時間ずつ残している。3時間の持ち時間があり、残り1.5時間。ここでじっくりと詰みまでではないにしろ、ある程度の見通しを立てれば後手不敗の体勢を築くことが出来たように思うのだが、あっさりと先手のこれしかない、という攻め筋に今度は後手が協力する。

まだ後手番がやれそうに見えるのは私が右玉で似たような不幸な目にあっているからだろうか。玉の堅さは先手、駒割りも銀香交換で先手、手番も先手。確かに先手がやれそうに見えるが、後手には馬とと金があり、入玉の望みがある。

そこからのやりとりで先手は歩を全てつぎ込み、駒得を拡大した。ただし、歩切れ。この辺がアヤになりそうに感じる。歩切れを突いての後手の反撃でまたもや怪しい。結果的に歩切れにしてまで攻め立てたものの、戦果がつりあっていないということだ。

先手が良い局面では先手が後手に協力して形勢を縺れさせ、後手が良い局面では後手が先手に協力して縺れさせ・・・という風に見えた。このシーソーゲームの手順で、どちらかが腰を落として考えればまた違ったものになっていたのではないか?という気もする。

縺れてからも一勝負!というのは将棋の面白いところではあるけれども、そのもつれ方にもよる。勿論本人達はもつれさせたくてこうなったわけじゃないことも分かってるし、私自身が指す時だってそうだ。

でも3時間あって、あれぐらい良くなって、そこからここまでこうなるか?という気がしなくもない。(或いは私の実力が足りないだけで元々が難しい将棋だったという可能性も勿論ある)。

最後まだ頑張れそうな局面で僻地のと金に二手費やしたあたりで、先手の良さが拡大したように思われ、最後は大差になってしまった。

++++++++++++++++++++++++++

岡目八目、自分でやると驚くほど上手く行かないのは将棋に関わらず全ての物事において言えることだ。ただ、だからこそ、次元の違いを魅せつけてくれるプロの芸の価値があるとも言える。

MY定跡を用いる人間の一人として、この将棋は早水千紗女流に是非勝ちきって欲しかったし、序盤のやりとりで先手が良くなる手順があったようにも思うので、鈴木環那女流には今度は食わないように序盤の整理、結論づけを行っておいてもらいたいと思う。




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