四冠への挑戦権獲得 第84期棋聖戦挑決▲渡辺明vs△郷田真隆

第84期棋聖戦挑決▲渡辺明vs△郷田真隆渡辺明三冠の勝利に終わりました。

これで夏の棋聖を奪取すると過半数の四冠王に輝くことになります。名実ともに棋界の頂点に君臨することになるでしょう。(名人位はまだですが序列一位の竜王位をもってますし)。

これでもし万が一?羽生善治三冠が名人位を奪取していれば、夏に四冠王対三冠王という棋界の頂点に君臨する二人が全タイトルを賭けて戦うというオモシロ展開なんですけどね。(全タイトルを賭けるわけじゃないですねw

以下、簡単に振り返ってみます。

先手渡辺明三冠で角換わりを志向します。基本的に郷田真隆先生は避けないタイプなので準備が無駄にならないということでこの二人でこの先後だと比較的矢倉よりも角換わりのほうが多いような気がしていますが気のせいでしょうか。

後手番が基本的には何かしらの工夫を用意しておく必要があり、今回の郷田真隆プロが用意していたのだが、これがどうだったか。

以下の図、42手目の△3五歩が工夫の一着。



待ちの手である先手の香車上がりへの当たりがキツイ…かもしれない。

よく右玉を相手にした時にこういう攻めを玉側の桂頭に目掛けて行うことがあるが、どのみち突き捨てたかった歩なのでよっぽど条件が良くないと成功しない印象がある。

どうするのかな?と見ていたら、自分でチョッカイを出しておきながら、攻めの銀を自陣に引きつけて先手に馬を作らせる・・・という驚愕の構想。

無条件に馬を作らせた、と見せかけて郷田真隆プロは7-9筋で反撃に転じる。ただし、やたらと軽い印象を受ける。

渡辺明三冠は角換わりの後手番も得意としているが、絶妙のタイミングで、ぎりぎりの突き捨てが入ったりして強烈な攻めが、玉頭から始まってそのまま攻めきる、という印象がある。それとは対照的な軽さだった。

後手の攻めが一段落してから先手は作らせてもらった馬を足がかりとして自然に拠点を築く。

66手目の局面をコンピューター将棋に評価させれば殆どのソフトが先手を持つのではないだろうか。


そこからの優位の拡大方法に注目したが、個人的に感心したのは73手目の▲9七歩。飛車を殺せそうなんだけど、そこに慌てずにじっと歩を打つ。こういう心の余裕があるといいんでしょうが、アマレベルだと一目香車を打ちたくなるところで勉強になりました。

後手の無理気味の開戦からの現況なので無理をする必要はない、ということなのでしょう。あくまでもじっくりといく。後手がちょっかい出してきたらちゃんと丁寧に応じる。その合間をみてじっくり後手陣に侵攻する。その々でした。

107手目で桂馬のふんどしが決まって流石に先手が良さそう。ここでまた後手の反撃がありましたが、遂に113手目金を取った手が飛車取りとなる局面をつくり、先手の優位が確定しました。

122手目の局面。


ここはかなり悩ましいです。色々な手があり、具体的には分からなくても一目先手が良さそうというのはアマでも分かるところ。しかし、具体的に勝利に結びつけるにはどうしたらよいか?というのは分からない。

ここで持ち時間が30分以上残っているのが渡辺明三冠の強さですね。こうやって対コンピューター将棋であってもこういう具体的にはわからないけど人間勝ちでは?という局面を作って本譜のように華麗に決めてくれるのではないか?という何の根拠もない確信を私は持っていますw

この局面で有力に見える手は有段者レベルであれば10個もないと思います。その正確な組み合わせができるかどうか?どこまでそれらの組み合わせの先を読めるのか?がその人の棋力を表します。プロ棋士の中でも個性やセンス、実力に差異がありますので、そのへんもひとつの鑑賞点だと思います。

ここから渡辺明三冠は見事に美しく、数学の問題を解くように明快な回答を盤上に示します。負けを悟った郷田真隆プロは、その意図を把握し最も美しい手順を用意します。そして余韻の残る局面で投了。これが人間将棋の魅力です。


さてこれで渡辺明三冠は四冠王への挑戦権を得ました。漫画のようなシナリオの片方は実現しました。あとは羽生善治三冠が2連敗している名人戦で名人位を奪取すれば、四冠王対三冠王という夢の様な対戦が実現するのです…。もし実現したら、私は棋聖戦を見に行こうと思っています。

はい、勿論記者パスポートがあるので無料で前夜祭から参加できるはずです。インタビューも出来るでしょう。懸念点としては、記者パスポートが自作であるということぐらいでしょうかね・・・。という冗談はさておき、本当に面白い展開になってきました。

観る将棋ファン冥利に尽きる展開ですね。いまから6月4日(火)、棋聖戦第一局が待ち遠しいです!><


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(2011/08/19)
西尾 明

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Tag : 羽生善治 渡辺明 郷田真隆 角換わり腰掛銀