力戦振り飛車の対抗型 第69期順位戦A級5回戦 ▲渡辺明竜王-△藤井猛九段

元竜王と現竜王の対決。噂では竜王研究会なるものも開催されているらしい。戦型は後手藤井猛プロの角道オープン四間飛車になった。

第69期順位戦A級5回戦 ▲渡辺明竜王-△藤井猛九段

後手が自ら角交換をして、おもむろに左銀を上がっていくのはなんとも野暮ったい手順だが、先手の陣形を制限しているという意味でやる価値があると藤井プロは見ている。

対する渡辺竜王は悠然と九筋の位を取る。この形は後手が穴熊にすることも多く、まずは後手の囲いを見たいというのが一つ、相穴熊になったとしても端の位は活きるであろう、というのがもう一つの理由だろうか。

28手目の△5五角が早くも序盤での勝負手。王座戦の時もそうだったが、やや無理があるような作戦から早めに角打ちに命運を託す、というのが多かったように思う。

対する渡辺竜王の受け方が直感的にはやりにくい気がしたが、正解だったようだ。対振り飛車右玉使いとしては見慣れているはずの先手の右翼の金銀桂馬の位置関係だが、玉が8八に収まっているとあっては、金が離れすぎていて怖く感じるものだが、流石に竜王の感覚は素晴らしい。

飛車交換後、手順に駒得を果たす先手だが、後手からみれば手順に玉を固めた意味もある。先手が金銀二枚の囲いに対して形は悪いが後手は金銀三枚の囲い。

そして先手の右翼をと金と馬と得た香車で攻める後手。このあたりは相当だと感じ、私は棋理では先手が良くても実戦的には後手がやりやすいように見える、と呟いた。

しかしまたもやここから先の方針において、渡辺竜王ならではの鋭さが出るのだった。後手の玉頭を狙う桂馬と香車を設置して竜で遠くから玉を睨み、一気にスパートして後手玉が寄っていた。

63手目の▲6一角は部分的にはこういう力戦振り飛車の変な囲い(金美濃?)ではよく出てくる形。経験的にこうなればほぼ寄り、というのが分かっていて桂馬と香車を拾ったところでは狙い筋として常にあったのだろう。

投了図は大差。この局面だけみると後手から角交換して銀を4四まで上がって、後手から二筋を伸ばして、桂馬跳ねて飛車を二筋に振り直して。そこまでして普通に飛車交換されて先手悪くない、というのがあまりに後手にとって損だったように思われる。

王座戦挑戦時に思った「藤井プロは後手番で何を指すのだろうか?」という問題は、他の振り飛車党と合わせて今後も継続的に問われるような気がする。

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これでA級で一勝しかしていないのは藤井猛プロのみとなった。順位の関係もあり、相当に辛い。二勝陣の最後尾には同じく振り飛車党の久保二冠の姿が見える。B1でも鈴木大介プロ、杉本昌隆プロという振り飛車党が後方を走っている。定跡化が進んだ結果、遂に後手番で振り飛車を指す居飛車党も少なくなってきた。

今期のプロ棋戦における先後の勝率差、そして来季のそれ、については注目したいところだ。


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