本当に怖い△3二飛車戦法 第四回大和証券杯 ▲丸山忠久?△久保利明

第四回大和証券杯丸山忠久?△久保利明

事前に戦型予想をしてから将棋観戦に臨むのだが、この日は当てたかった。ネット棋戦、早指しとなれば久保プロのこの戦型は予想できたはずだ。△3二飛車戦法は、今泉さんが開発して升田賞を受賞している戦法。ただし対策が進んだようで最近は見られていなかった。私は初手に26歩をつく将棋なので、後手の面倒くさい変化を回避できている(その分、損をしている変化を沢山抱えている)のだが、居飛車党で三大ゲンナリは「4手目角交換からの筋違い」、「後手なのに無理やり石田流」、そして三つ目がこの「△3二飛車戦法」ではないかと思う。

そういう意味で、この日曜日(6/20)は居飛車党にとって脅威の一日だった。まず、日曜のお昼のひとときを昼寝へと誘うNHK杯では西尾プロが、後手無理やり石田流で、アマであればどう転んだかわからないような乱戦に持ち込み、「日曜日の夜のドルチェ(誰も呼んでいない)」こと大和杯では久保二冠が△3二飛車を投入。もしこれで久保二冠が勝つようなことがあれば、たちまち24では後手石田流と2手目3二飛車の出現率がぐっと上がるだろうと。

そういう意味では、先手の丸山プロは全国の居飛車党の期待を一身にうけての勝負だったのだが・・・。

序盤早々に先手の丸山プロは9筋の位を取る。後手としては受けることが出来ないらしい。具体的には飛車を91の地点に打ち込む筋があるためだ。この辺り、NHK杯の筋違い角の筋とセットでみると、同じ三間飛車で9筋の攻防であってもかたや振り飛車側が端を狙う筋、かたや居飛車が、ということで面白い。

振り飛車が端を受けた場合に具体的に咎める手順としては「第49期王位戦 第2局」が詳しく、羽生プロの受けた手を先手の深浦プロが粉砕している。(情報ありがとうございました!spciaさん)

後手は端歩を受けられないので、美濃には囲いにくい。逆に言えば、先手はこの端歩をついて後手の穴熊を強要している意味があるので、具体的な手順・構想はわからないが、この穴熊は何が何でも咎めたいところだ。

現代将棋における穴熊戦というのは本当に繊細な手順を要求されるというのはこの将棋をみても感じた。左金よりも1筋の歩や攻めの銀の運用を優先させたところは先手後手の堅さの相対性をみたものなのだろう。△14歩という手は終局まで殆ど意味が無かったように思うのだが、水面下での角の捌きを見せる意味で必要な税金ということか。

先手の端角から、角交換となり本格的な戦いに突入した。後手はもう囲うつもりがなく、互角に捌ければよいと思っている。33銀というのはつまりはそういう手であり、先手の97角は飛車先を押さえようという意味があったように理解したのだが、強く31角とぶつけたのだった。通常の将棋ではあまりみない手順だが、振り飛車の左金の顔もたっており、互角の捌きでよいという方針に則った手ではある。

交換した角を打ち合った後、先手が飛車を寄った手が良さそうであり、先手が馬を作ったあたりでは先手がリードしたのではないかと思う。ただし玉の堅さが大差であり、特に先手玉は通常の囲いではないので、危険度の計測に非常に気を使う展開。54手目、△23歩に対して先手の丸山プロはずばっと馬を切った。

折角の馬を切って攻めるということは相当良いということなのだろうか?と思っていたが、後で振り返ってみると、ここで踏み込むしか勝負どころがなくなるとみたのかもしれない。互角の捌きあいで良し、とみている久保プロにとっては望むところ。73手目の局面は、先手の金銀が、後手の飛車桂馬と交換になっており先手は竜を作っている。手番は後手。堅さも後手。ということで後手が良さそうだ。特に金銀を沢山もっている穴熊の耐久度というのは恐ろしいものがあり、手駒が桂馬と香車と角だけの2枚穴熊ならばまだしも、というところか。

しかし観戦中の私としては、冒頭に書いたように常に居飛車を応援しており、馬を切った時点からこの局面に至ってもまだ居飛車やれるとみていた。ここからまったり受け切れるのではないかと。死ぬまで受けて勝とうと。

74手目で久保プロの放った△5五歩が良い手だった。▲同竜に△8八角。見ているときはあまり意味が分からなかったが、この手順が本局におけるMOM(Move of the match)だろう。感想戦でも触れられなかったので私の想像に過ぎないが、例えば先手が入玉(できるかどうかはわからないが)を目指して31飛車から33竜と33の金を取るような手順を考えた場合、76手目の△8八角の局面から先手は飛車を打って金を取る。対する後手は角を99に成って香車を取り、次に89の桂馬を取る。

この時に前述の74手目の△5五歩の効果が現れる。この△89馬と桂馬を取った手が6七の金に当るのだった。3三の金が上部を押さえる駒になるのであれば、先手玉が逃げ切ることは出来ない。(そもそも1?5筋は先手の歩が残っているので逃げ切れないという話もあるが)。この後丸山プロは5五の竜を用いて攻め合いに転ずるが、勝負を賭けたというよりは首を差し出したに近く、5五の竜がいなくなってからはあっという間に先手玉が寄ってしまった。

投了図は後手圧勝の姿。本譜を振り返ると、後手の穴熊を先手が強要しておきながら、後手からの3筋強襲があり、先手玉が固くないままに戦いが始まり、堅さを生かした互角の捌きで後手が良し、となるのであれば振り飛車党でなくても後手番で3二飛車戦法を指したくなるというものだ。

居飛車党の皆様におかれましては、これから暫くの間、△3二飛車の嵐が治まるまでの間、初手は▲7六歩を控えたほうが良いかもしれない・・・というのは冗談だが、そのうち冗談ではなくなるかもしれない。それくらい△3二飛車戦法というのは、アマの持ち時間の短い将棋にとっては脅威である。


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