昨日の携帯中継をみて思うこと。二人の振り飛車党(西尾明vs鈴木大介、野月浩貴vs小倉久史)

昨日の携帯中継は面白かった。居飛車党としては悔しい?気持ちもあるが、二人の振り飛車党がらしい戦い方で共に勝利していた。

鈴木大介プロは後手番で角交換振り飛車を選択。序盤角を投入した西尾明プロが良さそうにみえた。1-3筋で手を作って駒得を果たす。鈴木大介プロは駒得よりも駒の効率を重視する方針で序盤の苦戦を乗り切り、馬を自陣に引きつけ、そして局面をスローダウンさせた。

両者ともに駒得だが3筋の先手の攻め駒が重く、先手が実戦的には大変、という見解だったようだ。

トドメは斬り合いからの一段金で先手西尾明プロの攻め駒の力を弱めて、しかもその残りの攻め駒を素抜きする保険を掛けた局面を作り上げた。

そうしてから、華麗に詰みあげるというまさに鈴木大介らしさ全開の将棋だった。

もう一局は小倉久史プロの三間飛車に先手の野月浩貴プロが居飛車穴熊に。先手が端歩を受けたことがアヤとなり、後手が攻めに攻めまくる。

そうしていても居飛車穴熊が深い、ということが多いが、本局は後手の完勝だった。攻めを決断した小倉プロのコメントにシビれた。

どういうところから攻めを決断したのか?というところを聞いて、コンピュータ将棋が人間を超えるためには、ここを越えなければいけないのだなと思った。

端歩の突き合いがあるから右金の運用が立ち遅れており、攻めが成立するのではないか?という経験に基づいた仮説。そしてそれが実現したのが本局だった。

勿論、先手の野月浩貴プロも単純に不利を受け入れたわけではなく、先に一応狙いの筋・展開があったがそれが通らないほど後手の小倉久史プロの攻めが的確だった。攻め始めてからはずーっと攻めの手だけが続いた印象。野月浩貴プロの玉の遠さを生かした反撃の狙い筋が入らないぐらいの攻めだった。

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コンピューター将棋は西尾明vs鈴木大介戦における、3筋の攻め駒の重さと駒得をどのように見るのだろうか。こちらは何となく、先手良しとしてなんやかんやと攻めを繋げてしまう気がする。或いは受けきりを目指すかもしれない。

そして野月浩貴vs小倉久史戦では、小倉プロが決行した攻め筋をどう評価するのだろうか?コンピューター将棋だったら決行しようとしただろうか?それは無いように思う。攻め始めたところからコンピューター将棋に指し継がせたらどうなったか。といえば上手く指したような気もする。

収束していく局面や、人間に対する応手という意味で言うと相当に性能を発揮しそうなコンピューター将棋だが、この日の二つの将棋のような序盤の機微はやはりまだ及ばないということを再確認した気がする。

佐藤慎一プロが昨日更新したブログの中で、「コンピュータ将棋は点の読み、人間は線の読み」というようなことを書いていたが、まさにそういうことなのだろう。

「直感精読」という言葉もあるが、久保利明プロが座右の銘と最近している「前後裁断」という言葉のように、プロの中でも一局面一局面を初めて見るものとしてその場面での最善を常に考えていく、手なりで進めない、というような言葉が語られることもある。

このへんは優劣はつけがたいところではあるが、終盤の詰将棋においてコンピュータ将棋が人間を凌駕したように、いつかこの線の読みにおいてもそうなる日が来るのだろうと思うと、これについては正直私はワクワクしてしまう。

今回の電王戦の結果がどうなるとしても、人工知能的な意味合いでは既に最初の二局をみた限りでは人間の知性に及ばないところと凌駕したところの間の深い谷、については自分なりの理解ができたように思う。ここから先はジャンケン、ではないものの、勝負の側面がより強いというかそこしか無いだろう。

今後、コンピューター将棋が機械学習と評価関数のように新たなブレイクスルーでこの日の小倉久史プロのような決断が出来る日が来るとしたら、それは本当にワクワクするような出来事だと思う。

いつの日か無数の点がつながることで意思のある線を引けるようになる日がくればそれはそれで楽しいと思う。


島研ノート 心の鍛え方島研ノート 心の鍛え方
(2013/03/29)
島 朗

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内容紹介
著者は「島研」を主宰し、羽生善治森内俊之佐藤康光という三人の名棋士の成長を十代の時からつぶさに見守ってきた。
著者は語る。「羽生善治という存在を中心として、佐藤康光森内俊之の追いかけ、追いつきそして並走し、また抜きつ抜かれつの、長い戦いの中で見せる棋士の弱さや脆さを、みんなが鍛錬の中で身につけた全人的強さで克服していく過程こそが、私が長年圧巻の思いで見続けている物語なのである」。
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定説への挑戦 第60回NHK杯一回戦第十二局 勝又清和六段vs西尾明五段

定説への挑戦 第60回NHK杯一回戦第十二局 勝又清和六段vs西尾明五段

どちらもツイッターにアカウントを持っている棋士同士の対決。先日のC1の順位戦に引き続いてのツイッタラー対決となった。例によってNHK杯の棋譜再現サイトでの棋譜確認のみです。(ちなみに、このサイトは放映当日の12時5分ぐらいまでには棋譜が上がっているので終了後に見返すのに最適だと思います。)

後手の西尾プロは居飛車党だと思っていたのだが違うのだろうか。四手目でいきなり見せてくれました、後手石田流。これは「佐藤康光の石田流破り」などでも後手良くないと言われており、プロでは殆ど見ない…といいたいが一作日のB2では違う形ではあるものの、石田流が出ていたので何かしら理由があるのかもしれない。

先手の対策は二つあって▲5六歩か、▲2五歩。(▲6八玉もある)。「佐藤康光の石田流破り」では▲2五歩の変化が推奨されている。本譜は、これもある、という▲6八玉だった。

そして九手目の局面、部分的には久保流と呼ばれる、急戦の形に似ているが、違うところは先手なのに居飛車の飛車先が伸びていないこと(その代わり玉が上がっている)、振り飛車が後手なので居玉であることがあるだろうか。居飛車党のアマとしては、是非先手に圧勝してもらいたい将棋だ。でなければ後手番の石田流が蔓延することとなる。

10手目の9四歩はかなり挑発的な一着。馬を作られも怖くないですよ?作りに来ないのですか?という手だ。「語りはロジカル、指し手はラジカル」なプロフェッサー勝又。この挑発に見事に乗って乱戦となった。普通に考えれば先手が馬を作って良いはず。しかし単なる挑発だと思われた後手の端歩突きには意味があった。それは、筋違いに打った角筋を活かしての香車を取る筋。筋違いでは常に狙いになる手ではある。

香車の交換が行われた局面では、素人としての見立てでは相当。序盤で趣向を凝らしたい人間としては後手の意思の通し方に感激した。得た香車を狙いをつけた三筋に据えて、しつこくしつこく迫る。将棋倶楽部24でこういう対戦者がいると萎えるかアツくなることは間違い無い。

49手目の局面は、手番が後手、玉の堅さは難しいが銀冠風味の先手だろうか、駒の損得は後手の香車と歩が先手の金と交換になっていて、ただし先手は馬を作っているのでどちらが良いか難しいところ。後手の要望で、馬角交換を求めたあたり、馬が消えれば後手相当だろうと思ったのだが、交換後に移った手番で指した先手の手は普通だったが厳しかった。

普通に見える手で攻めて先手先手になるというのは相当に指し易いということ。71手目、歩の裏に香車を打ったあたりからは先手が良さそう。居玉の悪さを咎められている。アマとして学ぶべきはプロフェッサー勝又の75手目と77手目だろう。こういう局面では簡単に精算せずに足していく、重く重く重ねて行く、ということだ。先日の女流王位の清水甲斐戦の終盤でもこういう足す手が推奨されていた。

そこからは、居玉のために粘りが利かず、NHK杯ゆえに手数は続いたものの、後手に勝ち目は無かった。今49手目の局面を眺めている。ここで後手に有効な手がなかったかどうか。もし無かったのであれば、意欲的な後手の作戦は無理だったということになる。そしてビール二本で酔った私の頭では、次の▲5五香車が見えるのみで、五〇手目に指すべき後手のては見えなかった。

そして、西尾プロのツイッターでの呟き「最近学んだこと。玉が固いほうが勝ちやすい&後手から積極的に動くのは無理筋になりやすい。今さら何言ってるんだと突っ込まれそうですが(笑)身にしみて感じてる次第です。」というのは恐らく本局のことを言っているのではないか、と勝手に推測した次第。(違っていたらスミマセン)。

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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

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