一手損康光流 2011年01月09日第60回NHK杯三回戦第五局 ▲羽生善治-△勝又清和

勝又清和教授が羽生善治名人に挑戦する一局。たしかこれで二戦目。一戦目も一手損か何かでかなり善戦されていたような記憶があるが、例によって私の曖昧な記憶なので保証はしません…。

2011年01月09日第60回NHK杯三回戦第五局 ▲羽生善治-△勝又清和

本局も一手損。一手損といえば、私はかなり初期の頃から、何故棒銀に見せかけて後手に1筋を受けさせてから3筋に転戦する私がいうところの「棒銀フェイクの早繰り銀」をやらないのだろう?と言い続けていたのだが、最近のプロの一手損においてはこれが主流の一つになりつつある。

この端を受けさせて3筋に転戦する指し方はアマでは比較的メジャーであり、私もよく24などで遭遇してどうしたもんかね、一手損の上に端まで受けたのに無視されて合計二手損ですか…とげんなりしていたものだった。

そこで現れたのが本譜の佐藤康光流、苺囲いである。このへんの詳しい手順は「将棋世界2011年02月号」の勝又清和教授の連載「一手損のパラレルワールド」に詳しい。(この号だけ買えば、一手損ワールドの心得が学べるという非常に素晴らしい出来栄え)。

佐藤康光流のこの先手の方針に対する対策というのは、一言でいえば二手損を苺囲いでフォローし、左右両方から攻撃する体勢を築く、ということにある。

右玉の玉頭から攻める構想を見せた佐藤康光プロならではの自由で柔軟な考え方に基づくもので、この囲い?でどうにかなるのであれば、後手は△7一、△8二という二手を省略できているので、十分戦えるといえよう。

ただし佐藤康光プロも最初に用いた将棋では相当に先手が良さそうで、最終盤での逆転だった。その他の例としてはC1の勝又清和vs村山慈明戦、同じく勝又清和vs小林裕士戦ぐらいしか知らない。多分、この三局が代表局であり、なんと驚くべきことに後手が全部勝っている。

本局はそれらを下敷きにしたような展開だった。

双方飽和状態になったのは43手目。後手が仕掛けて開戦となるわけだが、何も懸かっていない将棋を指すアマであり、対振り飛車右玉の似非使い手としては、9筋の突き捨てをどこかで入れておきたかった。

勿論指しすぎになるリスクはあるものの、何も懸かっていないので当然味付けは濃い目、である。

本譜は銀交換後の53手目、▲3一角が結構煩かった。余して勝ち、という気もしなくもないが相手が天下の羽生善治名人ということで、かなり恐ろしい。本局は僅かな駒得の後手が良かった可能性はあるが、玉形の違いが大きいので実戦的には難しいところ。

そこから徐々に羽生善治名人が形勢の差を縮め、遂に逆転したか?と思われるのは109手目付近。終盤に入り、駒の損得が関係ない状況になりつつあるように思われた。

115手目の桂打ちも素晴らしく勉強になる一手。後手が竜の効きを封じるしかないのであれば桂馬が死なずに先手の攻めとしては継続の目処が立った瞬間だ。

中盤のねじり合いはかなり後手にも分があるように思われたが、玉形の悪さ、飛車打ちに弱いという点を上手く咎められたように思う。右玉系の将棋においては、やはり飛車をもたれると辛いということだろうか。

用いる戦法的にとても勉強になった一局だった。


佐藤康光の一手損角換わり (佐藤康光の将棋シリーズ)佐藤康光の一手損角換わり (佐藤康光の将棋シリーズ)
(2010/08/25)
佐藤 康光

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