脇システム、GPS新手現る!第72期順位戦A級1回戦▲三浦 弘行八段vs△屋敷 伸之九段

元棋聖同士の対決。どちらも若くしてプロとなり、割と穴馬的な勝ち上がり方でタイトルを奪取したという共通点がある。

また、棋聖というのはどちらかというと、短期決戦であり、競馬でいうとマイルよりも少し短い1400メートルという印象を私はもっている。競馬が分からない人用に別の例えを考えているのだがうまく浮かばない。野球でいうと9回までではなく7回まで、という感じだろうか。野球も競馬もわからない人向けには…次までの宿題とさせてください。

どちらも若いころは軽快な将棋を指していたように思う。棋聖奪取の原動力は相掛かり。特に屋敷さんの相掛かりは、その当時から私はとても好きで愛用していました。(使う機会が限られてたんですがね)。

中原先生が相掛かりを多用するようになったのは、屋敷流の奔放さとの対戦、高橋道雄先生の地道流の腰の重い矢倉がそれぞれに少しづつきっかけになっているような気がします。(ソースなし)。

屋敷さんといえば、近年断酒からもともとの才能を発揮するようになり、そして矢倉を中心とする腰の重い棋風に転換されました。博打打ちのような目をつぶってえいやという斬り合いではなく、プロ好みの如何にもプロらしい棋風に。

三浦さんも狭く深く掘り下げる研究家となり、本局でも登場した脇システムの大家として有名です。前期も、羽生三冠のA級唯一の黒星をつけたのも脇システムでした。

屋敷さんが矢倉の後手番をもつということは、この脇システムへの用意がありますよ、ということだとは思っていましたが、いきなり午前中の時間帯にすごいものが出ました。いわゆるGPS新手、です。

そういえば電王戦の最終局で屋敷さんはこの将棋の解説をニコファーレで行っていたんですよね。終始明るい解説で、悲壮感がなくて正直ほっとしたことを覚えています。

また、次の電王戦があったら出ますか?という問いには、こちらも即答で喜んで!という具合。あれには驚きましたが、プロアマなども含めて、こういうことには快く応じてくれる、そんな印象が屋敷先生にはあります。

将棋界の七不思議、じゃないですが将棋棋士のなかで特定の方々はなぜか必要以上にバッシングのようなものを受けることがあります。

例えば三浦弘行さんもそんなことがありましたし(あれは仕方ないかな?w)、名人になったのに丸山さんもひどい言われようのころがありました。そしてこの屋敷伸之プロもそんな時代が、しかも若いころにあったように思います。

屋敷さんが勉強をしなくなったのは、そういうところも多少は影響していたりしないのでしょうか。なんというか、あの若さでああいう言われようというのは見ていて気の毒になったものです。また、C1での長きにわたる停滞もその要因ではあったと思いますが。。

結局将棋の組み立てを抜本的にかえざるをえなかったC1の停滞があったゆえの今のA級であることを思うと、将棋の奥深さを感じます。

コンピュータ将棋の登場によって、長期的に見て勝ちやすいかどうか?という観点がクローズアップされてきている気がしますが、昔からプロ棋士の間でも「勝ちやすい」「実践的には勝ちにくい」というような表現がありましたが、より勝ちやすい方向へと屋敷将棋も変化していったのでしょう。

前期の谷川戦の相穴熊などはまさにそういうものを感じさせる、うってつけの例だと私は思いました。


そういう屋敷伸之プロが、このGPS将棋の新手を用いたというところに、私はその成算を感じずにいられないわけですが、一方で前期A級での後手番は全敗、という屋敷さんの気になるデータもあります。そういう状況を打破するために、ややリスクのある手段を取ったという可能性がないわけではないでしょうけど、私は事前研究がたっぷり含まれた新手なのだと理解しています。

今はお昼休憩時間ですが、今から感想戦の様子が楽しみです。

脇システムで両者が相手玉側の端歩をつきこす形。先手の開戦から後手が7筋突き捨てて銀を8四に出た局面で、そこまで軽快に指していた三浦さんが38分使って昼食休憩。電王戦からの諸々を思うと本当に、出来過ぎな展開ですよね。

三浦さんとしても、GPS将棋との対戦はあとでいろいろと振り返っているはずです。それこそ、あの将棋の展開に不満をもっていた棋士の質問に対して「対局者が一番考えているんです」ということで、明快な読み筋、水面下の選択肢を将棋世界でも明示されていました。

プロ棋戦での登場は予想したでしょうが、まさかA級の開幕戦、ここで対峙するとは・・・というのが正直な心境ではないでしょうか。しかも開幕からここまで0勝3敗という成績。もし本局も破れてしまうと、GPS敗戦ショックがないとは言い切れなくなってしまいます。

この局面で指すべき手は?と問われれば、GPSを相手にして指したのと同じように、歩を逃がす▲7四歩しかないように私は思います。

その先の先手の方針がGPS戦と同じように、入玉含みでの後手の攻めごまを責めるような展開なのか、あるいは攻め合いに持ち込むのか。対人間であることも含めて、攻め合いだと思いますが、双方の手順としては、GPS戦を下敷きにしたものになるのでしょう。

すなわち、先手が歩を逃げて、後手は銀を出る。ここまでは一緒。ここで先手が攻めに転じるか、後手の角を一旦は追うか。本筋は角の動きを問う手だと思うが、それを深掘りすればするほど、対GPS戦の幻影が・・・という。

三浦弘行プロにとっては、あの将棋の本当の意味での決着をつける場面がこのA級の開幕戦で、ついにやってきた、ということだろう。

もしこれに負けると。開幕から今季4連敗、0-4、A級開幕戦先手番で黒星スタート、往復ビンタではないものの、いわくつきの手順での連敗・・・ということになる。

昼食休憩前に長く考えて休憩入りした三浦プロだが、13時半の時点でも長考を続けている。

(ここから先は、将棋が終わってからの感想になる予定です)。

結果から書くと、先手の完勝だった。感想戦コメントをみると、屋敷伸之はやはりGPS将棋のあの将棋を参考にして採用した作戦だったようだ。後手の攻め味がある状態なので更に威力がましているかと思ったが三浦弘行の対応が完璧だった。

GPS将棋との対戦で、どこかで端を攻める展開にしないと…という感想を残していたと思うが、まさに本譜は先手からの端攻めが厳しかった。端攻めにより、先手の攻めの銀が7筋方面から6筋へとすりより、成銀となったことで左右挟撃の形を築いた。

最終盤、飛車をとられる形になったので気持ち悪いか?と思ったのだが、後手の序盤で打った三筋の歩が残っており、受けに適する駒がないために先手の攻めが切れることがなかった。

序盤の構想から終盤の仕上げまで、総てにおいて三浦弘行が上回っていた、そういう将棋だった。あのGPS戦での戦いの経験値が存分に生きた、まさに対局者が一番読んでいるんです、ということを示したような将棋だったように思う。

これで三浦弘行プロは今季初勝利にして、順位戦は白星スタート。GPS将棋との戦いの影は最高の形で払拭されたと見ていいだろう。



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(2010/12/23)
屋敷 伸之

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電王戦最終局を「GPS将棋の探索木」で読んでみた。

探索木とは?


これ→「将棋電王戦2(先手: 三浦八段, 後手: GPS将棋) 探索木表示」です。


これを読むと、GPS将棋が「考えうるマトモな手」を「文字通りシラミ潰し」に読んでいることが分かりますね…。

そして三浦弘行プロはやっぱり流石だな、と思ったのは「△8四金と打たれて案外難しかった」と対局直後の、感想戦もしてない時点で立会人の田丸昇さんに返事していた点でしょうか。(私の記憶が正しければその時点で言っています。違ったらごめんね!w)

この探索木というのは、一種のチャート図ですね。相手の指した手に対して、いくつかの選択肢を掘り下げていって、その中で考えうる最も良い手を選択する・・・という行為の軌跡を可視化したものです。

これを投了図から遡って観てみたのですが、三浦弘行八段が言うとおり、「もしかすると悪くなった、あるいは思ったほど先手の得が活きていない局面」というのは56手目の△8四金まで遡るかもしれないのです。

ツイッター上でとあるサスライの高段者と思しき方が、可愛らしい表現を使いつつも本質を突いていたので紹介しますね。

昨日の将棋、▲83金ではなく▲84歩で良かったのではというコメントもあったようやが、そういう次元じゃないだろうなぁ。
もっと前の40~60手くらいのところで勝負がつくような超高レベルの将棋だったと思う。
https://twitter.com/du_bon_temps/status/325801708817113088



具体的には、個人的には成立しているとは思えんが、△75歩▲同歩△84銀の仕掛け。これが仮に成立しているのであれば▲68角と後手の早い△14歩をとがめにいった構想そのものが悪かったことになり、定跡の領域に立ち入ることになる。
https://twitter.com/du_bon_temps/status/325802371387101184



37の銀が立ち遅れているため、それが形勢に直結してしまったというのはわしのようなうんちっちでもわかるので、40~60手あたりの間で37銀を好条件で働かせる展開があったか。かなり研究しがいがあるちょー面白い棋譜やと思うのう
https://twitter.com/du_bon_temps/status/325803300207349760



これを機に将棋の序盤の常識
プロとコンピュータ開発者が少しでもええから良い方向に発展してくれればええなあと思い、実際そうなる可能性が高いと思わせてくれるモンですた。
https://twitter.com/du_bon_temps/status/325804235239333888




プロ棋士の感想としては「今回の三浦弘行八段はいつもの調子ではなかった」というのがあるわけですが、仮にGPS将棋の探索木が正しいとしたら、序盤の先手の構想(後手の△1四歩を棒銀の傷とみて、角を▲6八にバックしたこと)が悪い、という可能性すらあるわけです。

この局面↓ですね。


ただ昼食休憩後、53手目の(個人的には第一感だったんですが…)▲7六銀が悪かったという気もします。▲6八角が主犯だとしたら、▲7六銀が共犯者ですねw 

この二手が、後手GPS将棋の細い攻めを通してしまった、3七の地点の銀の活用を失わせてしまった・・・というのが今振り返ってみての私の感想です。

そこから先のGPS将棋の探索木を見ていると、ちょっと勝てないんじゃないかな?と思いました。

もちろん、プロが違う意見であることは当然ありえますが、確率の世界ではないと言われていた将棋の世界も、もしかしたら結構確率の世界じゃないかな?という気がします。(プロは指運という言葉で表現しているのでそういう理解をされてるのかなという気もしますが…)。

というのも、プロなり高段者なり有段者が考えうる手ってのは基本的に似てる訳です。あとはその組み合わせに過ぎない。基本的には。

極論、手の組み合わせとして「落とし穴が少ない(負けにくい)局面」「勝ちだけど勝つ方法が一つしかない」という場合に、どちらも詰みまで研究されていない限りは、「サイコロ振って1・2・3のどれが出ても勝ちなのか?(勝ちやすい)」 or 「サイコロ振って1を出さなきゃいけない(一つしか勝ちがない)」と似ているのではないか?という。

いわば、今までのプロの将棋というのは「ちゃんと1を出しつづけるための修行」をしてきたんだと思うんですよね。そしてその精度を高めていった。

ただ今回のコンピュータ将棋との戦い、特に船江戦と三浦戦を見ていると、コンピュータ将棋はひたすらに1が出ないのを待っているというか、1が出なくなるまで局面を引き延ばせるんじゃないかな、という印象を受けました。

(要するに大山康晴の将棋観ですよね。「最後にミスしたほうが負ける」という。)

プロでも手厚い将棋とか、一直線の将棋とか棋士によって指し口が違うわけですが、結局「勝率」の高い棋士というのは基本的に玉が堅くて、手厚くて、終盤が強い棋士なんですよね。

と思うと、コンピュータを活用した勉強方法で、もしかしたら将棋はもう少し変わるかもしれない。特に後手番戦法において。

「後手番の苦しさ」ってのは延々と言われていて、それを解消してきたのは新戦法だったわけです。これまでは。ゴキゲンだったり、中座飛車だったり、藤井システムだったり。

でもそういうことではなくて、もう少し先まで掘り下げて、先手がサイコロを振り続けて1を出し続けるのをいつかミスる局面までうまく引き延ばす・・・みたいな戦略がもっと主流になってくるような気がしました。

そういう意味では、(私は好きですけど)一手損角換わりは新戦法的なアプローチのような気がしますのでこういう作戦ではなく、長く生き残っている戦型こそにブレイクスルーがあるような気もしています。

もしかしたらそれが四間飛車(穴熊)かもしれない。ぐらいに。・・・それはないかな?w

でもプロ間での最近の横歩取りの定跡の進化を見ていると、まさに上記のような雰囲気を感じますね。コンピュータソフトを活用した研究がとても活きそうなのは、矢倉・横歩取り・角換わりでしょうか。

そうなると、(横歩取りが大丈夫な限りは)二手目が飛車先でも角道でもどっちでも将棋は成立することになるので、将棋というゲームの楽しさもまだまだ続きそうですよね。

あっ・・・えーと、振り飛車は・・・。

振り飛車が絶滅するのか?生き延びるのか?もまた、コンピュータと菅井君、永瀬君次第じゃないかな?という気はしますw

で、唐突にまた最終局に戻るんですけど。(ちゃんと上記の話と関連してますよ!)

40手目のGPS将棋の読み筋を見てほしいんですよね。

-7475FU(3)+7675FU-7384GI+7574FU-8475GI,3636923k
-7384GI(5)+6665FU-6453KA+3726GI-8173KE,19917131k
-9394FU(37)+6665FU-6431KA+3726GI-6364FU,16619735k
-2231OU(123)+1917KY-7475FU+7675FU-6475KA,29732133k
-7362GI(174)+1917KY-6273GI+6665FU-6442KA,3037993k
others(201)-8586FU+7786GI-7384GI+6846KA,105088k
-8262HI(318)+2818HI-6437UM+2937KE-0027GI,3153405k
-6453KA(361)+3726GI-7475FU+7675FU-5375KA,3149889k
-6431KA(429)+3726GI-7475FU+7675FU-3164KA,3342141k


こんなかんじ↑です。()の中の数字が評価値、後手からみて先の変化で最も点数が高い順(カッコの中の数字が小さい順)で並んでいます。

要は39手目に先手が角を▲6八に引いた時点で、これが一番マシ、ということで△7五歩と仕掛けてるわけです。(7475FU(3)がそれです。7四の歩を7五に動かす、という意味)

人間で言えば勝負手ですよね。一目「軽そう」と感じます。で、おそらくはもう少しじっくりした手を指して、結果的に▲6八角の罪を軽くしてしまう(成立させてしまう)。

そして三浦八段は昼食休憩後の53手目に▲7六銀と指してしまいます。(おそらく最善手だった▲6五銀を指さずに)。

ここでGPS将棋の評価値がマイナス(後手ややよし)に転じています。

(ただし、▲6五銀を指したとしても評価値はゼロ、互角に戻る、と読んでいるようですが。)

ここまでの前提はGPS将棋の読み筋の正しさ、です。ですが、これが正しくなくても自身の評価基準に基づいて、かなりシビアに読んでいるなぁ、という印象を私は受けました。


そして「56手目の△8四金」でやや後手の模様が良いと判断しています。


攻め倒すための軽い仕掛けではなく、柔道や相撲で少し相手の体勢を崩しに行く小技、みたいな手があの△7五歩という軽い手の意味だったと。そしてこの金打ち。この金を打てる将棋指しはプロアマ問わずどのぐらいいるでしょう?


-0084KI(-240)+6665FU-6482KA+6857KA-8474KI,8023123k

 +6665FU(-240)-6482KA+6857KA-8474KI+0075FU,687217k
 +8878OU(-262)-4445FU+1615FU-1415FU+0013FU,539168k
 +7665GI(-328)-6482KA+6846KA-8246KA+3746GI,2643918k
 +6857KA(-367)-8474KI+7665GI-7465KI+6665FU,605130k
 others(-378)+6879KA-9394FU+7665GI-6482KA,104427k
 +1917KY(-412)-6482KA+2818HI-8474KI+1615FU,513808k
 +9796FU(-419)-8474KI+7665GI-7465KI+6665FU,640835k
 +6846KA(-454)-7274HI+4664KA-6364FU+0052KA,628114k
 +9998KY(-527)-9394FU+7665GI-6482KA+6846KA,533698k
 +3746GI(-547)-6482KA+6665FU-7274HI+0075FU,709533k
 +2524FU(-561)-3324GI+6665FU-6482KA+0025FU,417270k

ちょうどこれは三浦八段が、「意外に思わしくない」と気づいた局面です。

コンピュータは54手目、△7二飛と指した時点で後手が少し面白くなった(-89点)と判断したようです。

そしてこれが正しければ、という前提付きですが、もしこれが正しければ、前述のツイッターで述べられていた方が仰っていたように、もっと前の局面、先手が角を引いたところか、あるいは少なくとも▲7六銀打ちとした局面までは戻るわけです。

勝負として観たとき、この対局がどうだったのか?は置いておきますが、もし脇システムの研究として三浦弘行八段がこのGPS将棋を使っていたら(いけば)、違った世界が見えていた(くる)かもしれません。

すごく「上から目線」で書くと、もしかするとプロ棋士が後手番で苦しさを感じている理由は、ギリギリを追及できてないからかも・・・しれません。(すいません、言い過ぎかと自分でも思ってますが・・・)

渡辺明三冠のいくつかの居飛車後手番での新構想というのが、アマチュアからすると「う、うん・・・」という具合なんですよね。確かに盲点かもしれないけど、手の組み合わせとして全くあり得ないものではないので。

観ればハイハイ、10個ぐらいあるうちの一つですよね。みたいな。(すごく失礼な言い方ですが…)。

そういうのが、コンピュータ将棋を研究時に使うことによって、どのプロも準備できる可能性があるのかなと思いました。(ここが一番言いたかったところです、無礼な上記発言はお許しください・・)。

その場合は、「感覚の維持・向上のための実戦」と、「終盤力維持・強化のための必至問題・詰将棋」、そして「コンピュータ将棋を使った研究」というのがかなりバラバラの要素になる気がしています。

それこそ、それぞれにトレーナーなり練習パートナーをつける、というようなよりシビアな世界。

こんな探索木をみるだけでこんなに妄想が広がるなんて本当に将棋って素敵ですよね。今日ちょうど、将棋順位戦の対戦表(の画像版)が速報としてアップされていたんですが、これを眺めるだけで本当に3日ぐらい経ってしまう程度には、将棋を愛しています。

研究パートナーとしてのコンピュータ将棋を使いこなしつつ、実戦での圧倒的な指し回しと終盤力を有する棋士、というのが次世代の頂点に君臨するのでしょうね・・・ということで私の妄想を〆させていただきますw


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(2012/06/26)
金井 恒太

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絶体絶命?!第二回電王戦最終局▲三浦弘行vs△GPS将棋

第二回電王戦最終局▲三浦弘行vs△GPS将棋の結果について。

先手三浦弘行で、矢倉脇システムに。三浦弘行プロの得意戦法である。限定された局面を究極まで掘り下げる三浦弘行プロの特徴が最大限に活かせる戦型だ。

GPS将棋は定跡通りに指していたが途中で人間であれば怖いと思う1筋の端歩を自分から突いた。人間であれば棒銀の当たりがきつくなるので指しにくいところだが怖がらずになのか、分からずになのかは不明。



先手は角交換を回避して6八に戻して棒銀を目指す。GPS将棋はそれをみて突如歩の突き捨てから攻撃を開始する。脇システムからこの後手の攻め。プロがみれば一目無理攻め。GPS将棋は、先手の攻めごまが働くまでに時間があるので普通に攻め合いにはならないと見ているのかもしれない。


74手目の局面では、もはや攻め合いになることはありえない状況だ。先手の二枚銀は上部開拓のために四段目に並んでいる。後手の飛車と角は先手からいじめられそうに見える。


ぱっと見は先手がこのまま入玉を決めそうな感じがする。時間があれば、先手が入玉して勝ちそう。しかし一手でも緩めばGPS将棋は的確にその計算能力をもって咎めにくる。まさに三浦弘行八段は自分との戦いになっている。

…ここまでが15時台に更新した内容のサマリー。しかしここから様相が一変したのだった。

78手目、△6六金が先手の押さえ込みの網を内側から破る手だった。控え室のプロはこの手があるから別の手順を考えていたようで、この手をみて先手の苦戦を意識し始めたようだ。

84手目、△8九歩成りで後手GPSの優位が確定したように見える。先手は歩切れ、後手の飛車が8筋に直通している。手番は先手だが受けの手を指さざるを得ない。そして玉の堅さは大差。駒の損得はあるものの、こうなると後手の攻めが細くても続けば良いという話なので、東大駒場キャンパスのiMacたちが活躍する展開となっている。

この手を境に、一気に形勢が開いた。今17時5分だが、持ち時間も大差、局面は絶体絶命に見える。

コンピューター将棋、特にGPS将棋が何百台もの端末を統べてこの勝負に取り組んでいる以上、人間が把握できる不利というのは既にコンピューター将棋の勝利を宣言しているようなものだ。

ニコ生上での解説も徐々に熱を失っていく様をリアルタイムで感じている。逆にこのような時間にこそゲストが必要だったかもしれない。

屋敷伸之先生は紳士/真摯なので、どのような局面になっても言葉として匙を投げることはないのだが、それでもプロレベルでなくても、既に辛い局面に見える。

しかも、塚田泰明戦とは異なり、入玉の手がかりすらないのだ。

しかし、将棋の形勢云々にかかわらず、なぜこんなにも私はこの対局に感動しているのだろうか。それは三浦弘行プロが状況関係なく、最善手を考えて時間ぎりぎりまで考えている姿を見ているからだ。

この将棋の評価がどういうものになるのかはわからない。しかし、三浦弘行プロが時間をぎりぎりまで投入して最善を尽くそうとする姿に私は感動する。

人間同士でも同様に最善を尽くしているはずだが、それが見えなかった。コンピューター将棋との対戦という形をとることで、勝負にかける人間の美しさを知ることが出来た。

それこそが、今回の将棋電王戦の意義だろう。ほぼ唯一にして最大の意義であるように思う。

今18時。三浦弘行プロの残り時間は9分。投了の時間は近づいている…。



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(2012/09/29)
瀧澤 武信、松原 仁 他

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遺志を継ぐ弔合戦?第二回電王戦最終局▲三浦弘行vs△GPS将棋

第二回電王戦最終局▲三浦弘行vs△GPS将棋の途中経過について少し書きます。

先手三浦弘行で、事前の予想どおりやはり矢倉となった。そして三浦弘行プロの得意戦法である、脇システムへと進む。限定された局面を究極まで掘り下げる三浦弘行プロの特徴が最大限に活かせる戦型。トッププロもこの三浦弘行脇システムに幾人もやられている。

後手も追従するが人間であれば怖いと思う1筋の端歩を自分から突いた。人間であれば棒銀の当たりがきつくなるので指しにくいところ。



その端歩をみて、三浦弘行は角をバックする。棒銀の準備だ。




GPS将棋はそれをみて突如歩の突き捨てから攻撃を開始する。人間は一目で無理筋と判断する手順だが、深く好意的に理解するならば、やや無理気味の攻めでも後手番で玉が固くて先手の攻めごまが出遅れていれば、手になる・・・と判断したのだろう。

この日の解説は屋敷伸之。解説は安定の矢内理絵子。途中ゲストで出てきた声優の岡本信彦の将棋好きっぷりがガチ。3月のライオンのニコ生をタイムシフト視聴した時に知った方なのだが、イケメンボイスで、電王戦のニコファーレ開場のアナウンスを務めている方だ。

この人がどのぐらいガチか?というとどうやら子供の頃、研修会に所属していたらしいw そして棋力は驚きのアマ三段。普通に強いアマ三段だと思われる。将棋連盟の千駄ヶ谷の道場で三段なのでなかなかの実力だろう。

脇システムからこの後手の攻め。プロがみれば一目無理筋。無理攻め。ただし、先手の攻めごまが働くまでに時間があるので普通に攻め合いにはならない。ただし後手の攻めは受け止めることができるだろう。

コンピューター将棋の弱点は1四歩の危険度に気付けないこと。そして先手の陣形・攻めごまの配置をみてこれでイケると判断したことだろうか。

このイケるの判断の何が間違いだったのか?の具体的な解はおそらく、三浦弘行八段によって盤上に示されるであろう。

すなわち本譜の展開、押さえ込みだ。

コンピューター将棋はこういう模様を張る展開、入玉含みの展開というのは正確に把握できないようだ。そこで私が思ったのは、昔の棋士だったらもしかしてベテランの味わいで寄せ付けないのではないか、ということ。田中魁秀先生の顔がまず第一に思い浮かんだ。あとは、剱持松二先生のアマキラーっぷりがこういうコンピューター将棋の弱点を的確に突くのではないか…。

現在、14時50分68手目の局面だが、もはや攻め合いになることはありえない状況だ。先手陣の駒、金銀は6-8筋の4段目でゾーンプレスをかけている。


ぱっと見は先手がこのまま入玉を決めそうな感じがする。ただしGPS将棋が序盤で交換で得た金を8筋に投入したのは入玉防止を意図したわけではないだろうが結果的に先手の押し込みに対してバランスをとる手となっている。

時間があれば、先手が入玉して勝ちそう。しかし一手でも緩めばGPS将棋は的確にその計算能力をもって咎めにくる。まさに三浦弘行八段は自分との戦いになっている。

ここでふと思うのは、初戦から最終局まで、船江恒平プロの将棋以外は人間側が入玉含みの展開だったこと。そしてそのどれもがほぼ勝ちに等しい、それが言い過ぎならば、今後何巡もこの電王戦なりコンピューター将棋との戦いが続けば確実に入玉で勝つことが可能ではないかと思わせるものだった。

この最終局のニコ生を見ていると、米長邦雄の姿と言葉が何度も出てくる。

今になって思えば、この三浦弘行の対局まできてようやく、その米長邦雄の言葉が私にもすこし意味がわかりかけてきた気がする。

はじめから入玉を狙うのではなく、プロとして泰然とした態度で指し進めて、相手が終盤力を頼みに攻めてきたら、相手の人外の目の悪さ(遠くが見えない)ことを利用して、上手(うわて)のような手順で戦う。

米長邦雄曰く「羽生渡辺であっても、ちょっとカッコイイところを見せてやろうとしたら、危ない。コンピューター将棋のことを理解して指せば負けることはないと思うんですよね」とのことだったが、まさに三浦弘行八段が今、盤上でそれを実現させている。

さすがはタイトル経験者。さすがはA級棋士である。震えることなく、最も激しい作戦を採り、途中の手順でも最強の手を指した。そしてコンピューター将棋が金を変なところに打った瞬間、押さえ込みからの入玉を遠くに見据える。

これは既に先手が相当良さそうだ。人間、引き分けに持ち込める可能性が大、だと思うのだが。。



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三浦弘行の名局!羽生三冠がハマった!A級7回戦▲三浦弘行八段-△羽生善治三冠

いやーこれは嬉しい。どっちのファンというわけでもないのだが、対戦成績で著しく分が悪かった三浦弘行プロが、羽生善治三冠という難敵に勝ったのだ。

三浦弘行。思えば羽生善治七冠時代に最初に奪取したのが若き三浦弘行だった。狭い局面に誘導してその変化を極限まで掘り下げることに持ち味がある三浦弘行プロ。用いる作戦は脇システムや、右四間飛車、対振り飛車のミレニアム、横歩取りでも8五飛車ではない作戦を持っていた。

本局も序盤の作戦がガチガチに研究されたであろう、脇システムだった。角交換してから端を破って…というのが基本思想であり、いわゆる単純棒銀、原始棒銀に似た味を持つ。57手目の▲1五銀が実現したときに、私は三浦弘行プロを応援したくなった。

私がたまに指す作戦に似た展開がここまでにあったからだ。ポイントはこの銀がさばけるかどうか。飛車を捨てるか相手の駒と交換になっても攻めが続くかどうか。そのあたり。行ったっきりになるので反動がきつい。そして有利だとしてもその差はとても僅かで、しかも勝ちまでの道のりはとても険しく、狭い。

しかしそういう局面こそを愛する棋士というのがいる。昔で言えば山田道美先生や、青野照市先生があげられるだろう。そして私はそういう棋士が好きだ。振り飛車ではあるが、藤井猛プロの作戦もそういうぎりぎりの味わいがあるので人気がある。私も居飛車党だが藤井猛先生の将棋が好きなのはそのへんが理由だ。

65手目の局面での消費時間の差が大きい。先手30分、後手3時間。この研究による消費時間の貯金が後半の展開に関係しているように思う。羽生善治三冠は前半に脳みそのスタミナを相当消費している。一方対する三浦弘行プロはここから中盤の難所でじっくり時間を使い攻めに入るわけだが、ごく狭い道のりの彼方に、おぼろげながらも本譜のような道筋を見出していたはずだ。

そしてその道は羽生善治三冠には見えていなかった。これは二人の才能の違いではなく、研究の土台があり、実戦という真剣勝負のなかで結実した成果だろう。このあたりで私は本局は三浦弘行全集のようなものがでるとすれば、名局として取り上げられるであろうことを予感し、Twitterでそのようにつぶやいていた。

97手目。飛車を与えてまで攻め立てた先手の三浦弘行プロだったが、遂にここで反撃に対して受けの手を指す。この手をみてプロでなくても嫌な雰囲気を感じるはずだ。後手の反撃の狼煙をみて、攻める手がなく受けに回ったのだから。

通常こうなると流れ的にも、実際の形勢的にも先手の攻めが切れていることが多い。しかしそうではなかった。羽生善治三冠ですらこれで反撃になると踏んでいたし、控え室は羽生善治信用力も相まって匙を投げた様子。しかし繰り返すがそうではなかったのだった。

羽生善治三冠がハマった瞬間は109手目の▲4八香車。普段は載せない局面図だが一枚だけ…。
写真 (4)

これで羽生善治三冠が悩んだ。ここまでの流れ、序盤の作戦で消費時間に大きく差がついてからようやく追い上げてきたところで、淡々と応じられてその後のこの香車。ここで正解手があるが羽生善治がそれを逃した。逃したとはいえ、次善手でも勝ちであろうという雰囲気の控え室だったが。

しかし違ったのだ。この4八香がMVP候補だろう。この香車から繋がった長手数の逆襲があったのだった。上記の図面では四筋にあった先手玉、もともとは2筋にあったものが追いやられたものだ。そしてこの玉が、香車の働きで9筋まで追われるのだ。

そしてそれにより端にお互いの玉が対峙することで逆王手の筋が頻出する最終盤となり、結局先手の玉は詰まずに三浦弘行が難敵を下した。

正直、私は龍がすっと先手玉に忍び寄ってきた上記図面前あたりの局面でこれはもうだめだな…と思って見てなかったのだが、朝起きて驚きの展開だったので急いでこの感想を書いた次第。

最近はリアルタイムで終局まで見れることが殆どないのだが、この将棋だけは是非見たかったし観るべきだった。とても残念であると同時に、コラムでの解説でもサービス精神旺盛な、そしてコンピュータとの対戦という普通は避けたいであろう勝負を「A級の誰かがでなくてはいけない」という責任感で引き受けた漢のかっこ良さをみせてもらった気がする。

三浦弘行の良さはその極限まで突き詰めていく姿勢にある。羽生世代の最強棋士達にも共通するが、このぐらいの年になってもそれが変わらないというのは本当に凄いことで、ただ三浦弘行の場合はその姿勢の遊びの無さが逆に弱点になっていたようなところもあるのではないか。

それがここ最近のニコ生などでのキャラの面白さの取り上げられっぷりなどからも、本人の心境に変化が出た、ではないだろうが、いい意味でのケレン味というか、勝負師としての側面が少しだけ今までよりも強くなったのかもしれない。

羽生善治に勝つにはその棋士としての在り方を少しでも進化・変化させないと駄目、というのは羽生善治のライバル全員が見せてきたところである。佐藤康光は序盤の独特な思想を特化したし、森内俊之は序盤作戦の緻密さに加えて対羽生善治センサーを搭載した感がある。渡辺明は△8四歩に活路を見出した。

そういう意味では、三浦弘行がここから羽生善治、そして羽生世代に対等以上の成績を残していくのではないか、という気がしている。

このへんは、三浦弘行だけではなく、行方尚史にも言えることで、この団塊ジュニア世代というのは正直ひ弱い印象があったのだが、ようやく本格化してきたのではないか。今年の注目はずばりこの団塊ジュニア世代の行方尚史と三浦弘行だろう。この二人が対羽生世代においてどのぐらいの成績を残すかで、棋界の勢力地図は変わってくるような気がする。



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