電王戦の裏で人間らしさ 第40期棋王戦予選 加來博洋vs窪田義行

電王戦第二局と同じ日にこの対局があった。密かに?Twitter上では対局開始前からこの組み合わせに騒然として、もしかすると電王戦の第二局よりも面白いかもしれない…と言われていた。

観る将棋ファンであれば必ず抑えておきたいのがこの二人。窪田義行プロは花村門下の棋士でその言動の面白さと将棋の作りの面白さの両方で有名。才能的には小学生名人になっているぐらいなので相当なはずだが、その棋風は全く自由奔放。プロ棋士やファンからは窪田ワールドと呼ばれている。

振り飛車党で序盤の多少の不利は苦とせずに自陣がゆがめば歪むほどに力を発揮するタイプ。昔気質の振り飛車のDNAがかなり残ったタイプで、未だに先手番の藤井システムを用いることがあるのはこの人とあと一人二人ぐらいしかプロ棋界には残っていない。他の棋士たちは居飛車穴熊に駆逐されてしまった。そういう棋士です。

そして対する加來博洋さんはアマチュアトップクラスの棋士で、元奨励会員。三段リーグでの成績も悪くなく実力はプロ平均値以上あると考えて良いと思われる。こちらも得意戦法は右玉であり徳俵で踏みとどまる棋風というか、普通にみると必敗と思われるような将棋をいくつもひっくり返すことで有名。

大逆転につぐ大逆転で新人王戦の決勝まで進み、しかもその決勝でも大逆転をみせてアマチュア初の新人王まであと一歩という活躍を見せた。

そんな二人の対戦なので、面白くないはずがない、というわけです。

戦型は加來博洋さんが先手で相振り飛車…だったはずが27手目に玉が何故か6八に上がる。角が77、飛車が88にいて、玉が68。この時点で頭がクラクラしますが、右玉党が対振り飛車で左玉をやろうとするとこうなるものなのだろうか。

その後すぐに、何事もなかったかのように6七の地点に玉があがる。29手目で玉が三段目にあがる将棋というのは恐らく最速ではなかろうか…。

その後、後手玉がアナグマになった時点で先手が勝ちにくいと思ったのだが、まんまと相手の術中にはまっていたのは後手のほうだった。玉の堅さは上回るものの、後手の攻めが細く、むしろ先手にとって有望な局面が出現していたというのだから驚くしかない。

最後は綺麗に必至をかけて、先手玉に詰みがなく加來博洋さんの勝ちとなった。これでプロ編入試験まであと一勝とした。


プロ編入試験とは「公式戦で10勝以上かつ勝率6割5分以上の成績を挙げれば受験できる。四段の棋士5人と対戦して3勝すれば合格し、フリークラス棋士となれる」というもの。

これはかなりアツいです・・・。もちろん私は加來博洋さんにプロになってもらいたいです!

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携帯中継の感想(2011年5月2日)

リハビリ的に、簡単に。


吉田正和vs武田俊平アマ:竜王戦6組
日曜日(1日前)に行われた豊島将之vs丸山忠久戦と同じ展開に。歩得を活かしつつ、手損を緩和する意味ではこの右玉というのはアリかもしれない。

角換わりの右玉と比べて後手玉が固くならない=穴熊にならない、のが主張点だろう。ゆっくりじっくりと後手を貧乏にして危なげのない勝ち方だった。投了場面は大差。

アマのトップでようやく五割、というプロの世界のレベルの高さをみせつけた。武田俊平の夏は、終わった。(夏じゃないが)。



三浦弘行vs羽生善治:王位戦 挑決リーグ
後手の羽生善治の五筋位取り中飛車に先手の三浦弘行が二枚銀。あくまで自然な後手の駒組に対して、この戦型特有の玉の薄さが先手は気になる。金銀三枚の上ずりは、対石田流における棒金的な勝ちにくさを感じる。

後手の左側の駒が全部さばけて、振り飛車党としては理想的な展開だった。



窪田義行vs佐藤康光:王位戦 挑決リーグ
異能派の戦いは、まさに異次元だった。

先手番を引いた窪田義行が、端歩を突いて後手番作戦である3三角戦法を先手番で。窪田義行はこのように、後手の作戦を先手番で用いることが多いが、ある意味振り飛車の在り方、棋風との合致という意味ではかなり有力な作戦だ。

アマチュアは見習うべき作戦なのだが、往々にして後手番作戦を取ろうとすると、相手がいえ、先手番どうぞ、と譲ってくるのがアマの世界ではあるが…。

石田流の対抗型のような展開になったが、佐藤康光は相変わらずの豪腕作戦。金を7二に持って行って一流の振り飛車党に普通に勝ちきるのは多分プロ棋界広しといえども、この人ぐらいではないだろうか。

序盤早々に駒柱ができて、激しい展開になった46手目時点では▲飛香△金銀でどっちが駒得なのかわからないのだが、玉の安定度で勝ちやすさとしては後手の佐藤康光が勝ちやすそうな雰囲気。

やや居飛車が良さそうなところから出るのは窪田義行おなじみの粘りだったが、相手が佐藤康光では流石に間違えなかった。攻めることだけを考えれば良い佐藤康光がハードパンチを続けて投了図は大差となった。

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以下、新刊棋書の紹介。

将棋倶楽部24で角道を止める振り飛車が出てくると、流石に警戒します。このぐらいの点数になってからその作戦を用いる人というのはかなり「鍛え」が入っている人が多いので。

将棋をアマで楽しんでいくには、角道を止めた振り飛車、そして出来れば美濃、というのが一番カッコイイようなきがします。させない私にとってのとなりの芝生、なのかもしれませんが。。

特に矢倉流中飛車は知らない人にはどハマりしますので、是非お試しください。


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棋王戦挑決トーナメント 渡辺明vs糸谷哲郎 窪田義行vs広瀬章人

今週は週の前半が携帯中継だけで他のネット中継がなかったので掲題の対局について少しだけ。

渡辺明vs糸谷哲郎
これは序盤の駆け引きが面白かった。私もよくやるのだが、「後で結局合流するのだが、不思議な手順」のようなものを糸谷哲郎プロが見せた。

出だしの数手だけみれば、完全に一手損の後手飛車先不突きからの右四間飛車?と思うところ。その次はこれはもしかして中座飛車?と思わせて、実は相掛かりの浮き飛車を強要した、という。

このような駆け引きが序盤の僅か10手以内のところで起きたのが面白かった。

途中、力戦調・早指しで糸谷プロが時折見せるウッカリがあって残念だったが、その前に竜王側にもややウッカリした手があったのでおあいこか?

荒削りで、しかし7割勝つ、というあたりが山崎隆之プロ同様だがこの魅力を保ちつつ安定感を出すことができるかどうか?が今後タイトル挑戦まで突き抜けられるかどうか?安定的にタイトル戦に絡めるかどうか?の分かれ目だろう。


窪田義行vs広瀬章人
こちらは窪田プロがとりあえず言い分を通した序盤。将棋ペンクラブログの方が語られていたエピソードとして、兄弟子が「窪田は序盤が下手すぎるから教えたほうが」といったところ、師匠の花村元司プロが、「それは窪田の持ち味を殺す」と答えたというのは師匠の名伯楽っぷりを示すエピソードだ。

結局窪田義行プロが活躍し始めたのは序盤はある程度狭いが、中盤以降は力戦調・双方形が崩れた状況になりがちな戦型を用い始めたからだった。

本局も3三角戦法ならぬ端歩を突いてからの7七角戦法からの向かい飛車となった。

最も心に残った手は、40手目だったと思うが、広瀬プロが攻めもありそう、銀冠にする手もありそう、というところで長考し、一手で自陣が締まる△5二銀を指したところ。

形を崩したところで力を発揮する窪田プロに乱さずに待つ、色々攻め手がありそうなところでじっと我慢する、そして相手からの攻めも色々ありそうなところで、攻められても大丈夫とみた、そういう一手だった。

これで広瀬章人王位は、渡辺明竜王vs窪田義行プロの敗者復活戦決勝側との挑決変則勝負(敗者復活側は二勝必要で、広瀬章人王位は1つ勝てばOK)。

個人的には、渡辺明竜王に勝ち上がってもらって、二冠目を狙う二人の、勝ち負けをしっかりつけたうえで久保棋王への挑戦…という展開を期待したい。



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窪田義行プロの活躍でこの本の売れ行きも好調なのではないでしょうか。

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振り飛車党の居飛車 第60回NHK杯二回戦第四局 窪田義行vs堀口一史座

例によって棋譜だけみた。

先手の窪田プロが序盤で端歩を突き、後手番となる。振り飛車党ではたまにみる戦略だが、その中でも窪田プロが最もこの手を見せるように思う。

そこから後手番戦法である3三角戦法ならぬ7七角戦法に進む。

後手の何に反応したのかは分からないが、窪田義行プロが居飛車を明示した。確かに3三角戦法は居飛車でも振り飛車でも指せるものだが、窪田義行プロの居飛車はあまり記憶にない。

窪田プロの構想は腰掛け銀だった。角換わり腰掛け銀と違うのは守りの形。また、序盤の二度の角交換のやりとりでかなり手得している。

アマの角換わり腰掛け銀では本譜のように玉を6八に置いたまま開戦する将棋が割とあるように思うが、プロの将棋において先制のメリットと玉形の弱さがどのように影響するか?が鑑賞点。

先手が先攻したいのであれば、確かに玉をここに置いたままで行くしか無い。ここから何手掛けようが桂馬を跳ねてしまっているのでそれほど堅くならないし、固める過程で割り打ち・角打ちの隙が生じる。

38手目、後手の堀口一プロが穴熊を見せる。穴熊嫌いな私だが、相居飛車で相手に穴熊がなければ、展開によっては遠さを生かした穴熊にすることはやぶさかではない。本譜もそういう意味では後手の穴熊への組み換えは当然だと思う。

穴熊を見せられれば先手は攻めざるを得ない。ただし先手のみ手が進みすぎている問題点が浮き彫りとなった。後手の7三の歩が動いていないこと、先手が4五の位を取っていることにより、攻める場所がないのだった。

4五の位は取ると攻めにくい。角換わりのスペシャリスト、丸山プロなどは4六歩型で▲4五銀とガッチャン銀よろしくぶつける手を見せることはあるぐらいだ。逆に言えば4五の位が後手の穴熊を誘発している意味がある。

先手はひとまず角で後手を牽制するが、攻めるところがない。飛車先を交換しようと角を引いたところで後手の堀口一史座プロが機敏に動いた。

46手目の△3五歩がそれ。先手が角を手放しているので自玉頭方面からの反撃を見せる。続く50手目の△2二玉が私も感心した力強い手。B面攻撃にゴールキーパーもオーバーラップするような雰囲気の手だった。

具体的には本譜のように3三の地点で受け止めることが目的だろう。かくして先手は先攻に失敗し、後手のB面攻撃に反発する形で戦いが進む。攻めてもいつの間にか粘ってる窪田プロらしい展開だろうか。

72手目の局面。
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手番は先手、玉の堅さも先手、駒割は飛車銀交換で後手の駒得。先手の攻めが続くかどうか?という局面。


特に先手の玉の脇腹が開いているために、●九飛車の両取りでの受けが常にあるため、先手からの攻めが難しい。

88手目の局面では駒の損得は角銀交換で先手がやや駒損であることよりも、(窪田プロらしいが)自玉の守りに殆どの駒が投入され、攻め駒の銀が遊び、まともな攻め駒が飛車しかないということが辛い。

その後も将棋は続くが、後手の入玉を遮るすべがなく、先手の投了となった。


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最近、振り飛車党がそれぞれに居飛車を指す場面が増えたが、振り飛車党の居飛車というのは一種異感覚があり、見ていて面白い。そしてその不思議な感覚というのが、振り飛車のときのその棋士の特徴を表していることが多いように思う。

藤井猛プロの序盤構想とガジガジ攻め、杉本プロの鈍い大金槌のような重量感のある寄せ、横山プロの丁寧な、粘りっこい中盤などが思い浮かぶ。

本譜も窪田プロらしさは出ていたと思うが、その感覚とマッチしない展開だったようだ。ただし3三角戦法を多用する窪田プロだけに、そこからの居飛車というのは今後も見られるように思う。

奇襲戦法全般のお勧め棋書

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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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