なぜ羽生さんはNHK杯決勝で無理やり矢倉を用いたのか?(への回答)

http://shogiwatch.blog63.fc2.com/blog-entry-1927.html
にコメントをもらったので、別記事にて。


>一つだけ「負けるつもりがあったわけではないのでしょうが、本格的な将棋で相手また間合いを吸収されることを避けたんじゃないか?」が気になりました。いくつか質問したいです。

という質問でした。いや、ただ何となく書いただけなんです・・・というのが正直なところです、すいませんw
でも、なぜあの決勝の場であの作戦を用いたんでしょうね?本当に不思議です。専門誌のインタビューなどで語られるかもしれません。


>1. 羽生さんには過去にもそういう傾向が見られたのでしょうか。

過去、後手番で2手目にいろいろな手を試したということはあります。そういう意味では何らかの趣向があったとは思います。逃げたというニュアンスよりは、最新形で渡辺明の研究にハマるよりは、力将棋というか深く研究していないところで専守防衛の作戦をとってみて、時間も短いし逆転のチャンスが訪れるのではないか?と見ていたんでしょうかね。わからないですが。


>2. 過去の記事でむしろ「羽生さんが対局を通じて相手の間合いを吸収し、見定めて以降、圧倒的優位を築く」という傾向を指摘されていたような気がします。もし、渡辺さんとの関係でその逆になっているとすれば、それはどういうことでしょうか。(先を行くものと、後から来るものの関係? あるいは、たんに個人と個人の力量の関係? それとも??)

弊ブログを非常にしっかり読んでいただいているようで恐縮です。羽生さんが間合いを意識しているなあと思ったのは、ニコ生での川上量生会長との対談で、コンピュータ将棋の実力について問われて、「何度も指していくとどういう棋風なのか、どういう特徴があるのかが分かるようになる。コンピュータにもそういう個性のようなものがあるのか?は興味のあるところ」と答えているところです。

渡辺明についてもどうようの理解が進んでいるとすれば、何かしら渡辺明という棋士についての対策のようなもの、対策じゃないにしても対応方法についてもあるはずです。それがありつつの今回の作戦ということであれば、そろそろベテランとしての私、というような昔の大山先生や中原先生のようなモデルチェンジを少しずつ意識し始めているのかもしれません。完全に何かを変える、ということではないにしても、中原先生が「行書から草書へ」と言っていたような変化が徐々に加わっていくのかもしれません。

渡辺明というよりは、今後の自身の在り方、というような。また後手番の苦しさがかなり明らかになってきたということを踏まえると最初から専守防衛、千日手狙いというような作戦は今後増えるような気もしています。多少の犠牲を伴いつつも主導権を得ようとする作戦の苦戦が徐々に明らかになっているので、そういう意味では無理やり矢倉に何かしらの期待を持っている・いた、というか。


>3. 「手の内を見せない」ことで先のより重要な勝負にかける、という考えは分からなくはないのですが、
>(1) NHK杯の5連覇ってのはそんなに重要度の低いものなんでしょうか。
>(2) それよりなにより、そんな姑息なことを考え出した時点で、相手との関係において負けになっている、という気がしないでもありません。王者たろうという人が、そんなこと考えるものなのでしょうか。

こちらも2に付随しますが、今後を考える上ではどの対局でもなく、最強の相手と舞台で試すことに意義がある、と考えたのかもしれませんね。私は棋譜を見ただけで放送は見てないので全くわからないのですが。。手の内を見せないというよりは、新しいものを試した、という意味のほうが強いかもしれません。こういう負け方になるとどうしても騒ぎ立てられてしまうので、第一人者は大変だなと思うわけですが、そういう意味でもこの作戦を採った勇気はすごいなと思いました。

ちょっと不思議なのは、3つも2段目に歩を打った鬼辛抱ですね。ああなると確実に勝てない気がするんですが、打開すると勝てないと見たからの自重とは思いつつもちょっと普段は見ないような展開でした。確かに辛抱してついていく展開というのはあるわけですが、こういう屈服系の辛抱はあまりないような気もしたので。

回答になっているかどうかわかりませんが、ひとまず回答とさせていただきます。




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「攻め好きの方、お待たせしました」

主導権が握りやすく、破壊力のある戦法を伝授する「すぐ勝てるシリーズ」第3弾!!今回のテーマは急戦矢倉です。

この戦法は矢倉戦の出だしから、定跡を外して急戦を仕掛けます。飛角銀桂がどんどん前に出る将棋で、相手が受け方を間違えれば、立ちどころに大優勢となる、シリーズのコンセプトにもぴったりの戦法といえます。
著者はこれが処女作となる及川拓馬五段。幅広い序盤の知識と深い研究で知られるオールラウンドプレイヤーで、その甘いマスクと丁寧な解説は広く将棋ファンに知られています。

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NHK杯▲渡辺明二冠vs羽生善治三冠、後手の無理やり矢倉から25連勝ならず。

さて、NHK杯。テレビで見てないんですが、渡辺明二冠のブログやTwitterや将棋ブログ界隈を見ているとどうやら渡辺明二冠が初優勝したようです。

それもほぼ圧勝に近かったと。これは完全に渡辺明時代の幕明けですね。遂にワタナベアキラ号、牡28歳、馬体重-5キロ、騎手めぐみ。遂に本格化しました。元々最終コーナー回ってからの伸びのある末脚には定評があったんですが、まだ若い頃はチャカつくわけではないにしてもちょっとよそ見するところがあったんですよね。夏休みに毎日棒アイス1本食べたりとかw

基本は自分でペースを握っての軽い逃げか先行なんですが、特に後手番で横歩取りによる逃げを中心にしていたのが、△8四歩からついて行く展開も学んだのが大きかったんでしょうね。

やはりクラスがあがって重賞レースで古馬と当たるようになってからは、逃げ一辺倒では勝てないと見たんでしょう。騎手の伊那めぐみも馬の特性をよく理解していてね、手綱も鞭も殆ど使わない…ように見えてちゃんとつかってるんだな、これが。使ってることが馬にバレちゃうと馬のほうが拗ねるから、そのへんを自然体で無意識のうちに理解して体現してるよね。

今回は最強の敵、ハブヨシハル七冠馬が思いっきり負かそうというよりはやや消極的な作戦に出ましたね。正直戦型が無理やり矢倉だと聞いて「これは先手の勝率七割だろうな」とTwitterでつぶやきました。多分、冗談抜きでこの戦型での重賞クラスの馬の先手勝率はこのぐらいあると思うんですよ。

で、途中図を見ましたが後手陣の歪みっぷりがすごかったですね。道中の不利があったんでしょうが二筋、五筋、そして七筋と3つのコーナーで二段目に歩を打たされてる。ここまで展開のあやはあったとはいえ、後方に追いやられてはマクる可能性も少ないですよね。

最後は決め手級の▲5六角という攻防の角があり、勝負あり。ハブヨシハル号は負けるつもりがあったわけではないのでしょうが、本格的な将棋で相手にまた間合いを吸収されることを避けたんじゃないか?というような印象を受けましたね。ここから三冠vs四冠での七冠戦争が始まる可能性があるから。あるというより高いんじゃないでしょうかね。

事実は小説より奇なりといいますが、私がこんなあらすじ書いたら絶対に笑われちゃうよなあという展開ですよね。今年の夏競馬は本当にアツくなりそうです。やっぱり競馬っていいですね!

(以上、棋譜をみてないので誤魔化し誤魔化し、競馬にたとえて書いてみましたw)


毎月16日発売なんですね。

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二人の天才、羽生善治三冠と渡辺明二冠。(夏に四冠vs三冠での直接対決あるで!)

いやー羽生善治渡辺明。現時点最強の二人。一頃の羽生善治谷川浩司のように世代交代をかけた局面をプロ棋界が今まさに迎えようとしている。

NHK杯という早指し棋戦で羽生善治三冠は25連勝して決勝に勝ち上がった。恐ろしいことである。これで優勝すると五期連続、通算11期ということになる。棋界全体のレベルは上がっているはずなのに、なぜこんなことが起こるのだろうか?

七冠を羽生善治に制覇された時、森下卓は全棋士にとって屈辱である、というコメントを残しているが、もはやそのような言葉が残されることすらなく、羽生善治すげー…ドカベンか!ぐらいのものである。

決勝戦で対峙するのは、前週の準決勝で鈴木大介の四間飛車を居飛車穴熊で完勝した渡辺明二冠。現在棋王戦にリーチを掛けており、羽生世代最強の面々を相手にして、深い序盤研究と完璧な事前の対策をベースに抜群の手の見え方+大局観に見切りの良さを組み合わせて、持ち時間に余裕をもった戦いを行い、先後問わず圧勝している。

NHK杯は録画なので既に結果が出てるのかもしれないが、この将棋は絶対に放映時間で視たい一戦だろう。


昨日のNHK杯、後手番の羽生善治ゴキゲン中飛車をとり、先手番の郷田真隆が3七銀の超速を取る。後手は曲線的に応じるが先手良しで迎えた最終盤に、強烈な手順が繰り出される。

http://www.youtube.com/watch?gl=JP&hl=ja&client=mv-google&v=YPKB06NI_rY&nomobile=1

この動画、消されるかもしれないが、一応URL載せておきます。序盤から見ていないので分からないが、敵陣の一段目に打った金が甘い手で、逆転模様となっている。

ただ将棋は大抵が、長い時間有利だったほうが勝つようにできている。それを逆転できるのは、コンピューター将棋と羽生善治ぐらいだろうか。

まだぎりぎり寄らないのではないか?ぎりぎりそれで勝ちじゃないか?というような将棋で後手の羽生善治が強烈な寄せを見せる。

竜を切って角か銀を玉のおしりに引っ掛ける、という手は私レベルでも見える。解説の先崎学プロが一目で言ったように、大抵は弱い駒から使おうとするので、銀を掛けて同玉から詰み…というのは通常の思考。

それは羽生善治三冠も読んだのだろう。そして上に抜けていくのが見えたので違う読みをしていく。銀か角で引っ掛けて上に逃げていく手が見えるので桂馬で追って…ぎりぎり6四の地点で逃げ切られる。

故に…ということで強烈な△8六銀というタダ捨て。同歩は金打ちで簡単に詰むから同玉だが、今度は6四の地点に逃げると△7二桂があるという寸法。ピッタリこれで詰みだ。

ネット上での評判では羽生善治三冠の表情に注目が集まっていたが、割りと元々表情が大きいタイプだと思う。ただ、この銀捨てを観た時の郷田真隆棋王の顔が私は忘れられない。

解説の先崎学プロが、元々天才だと思っていたが本当にこれは天才の手だ、と四段時代であれば言えなかったであろう言葉を思わず漏らしてしまう。同様の感慨を違った言葉で心の中で思ったかもしれない、そんな郷田真隆棋王の表情だった。

テレビ将棋ということで最後まで指したが、通常の対局であればその場面で投げたかもしれない。詰みの局面まで一手に二〇秒掛けてすすめられる手順のなかで、郷田真隆プロは何を思ったのだろう。

+++++++++++++++++++++++++++

そして同日、こちらは実際に対局されていた棋王戦。こちらでも郷田真隆プロが登場した。先手番で矢倉。トッププロであれば確実にキープしたい勝利だったが、結果は負け。しかもかなり形勢の差が開いた投了図だった。

加藤流に対して新趣向を見せた渡辺明プロ。50手目までは研究の範疇だろう。感想コメントを見る限りだと、そこからの数手で後手に形勢が傾いていた可能性がある。

62手目の8五飛で後手の攻めゴマは何の代償もなく捌け、先手の攻めが一歩遅れた感じ。

66手目の△9四桂打ちがプロ驚きの一手で、感想コメントが記されていないのでどういう意図なのかは分からないが、銀損を許容する手なのでもっと考えてもいいところだと思う。

こういう手を研究でなく、その場の大局観で指せたのであれば、相当渡辺明二冠は充実している。

70手目の△4三銀。銀損だけれども、後手はその銀を9八という受けただけのところに置いている。後手からの時限爆弾はセットされているので、あとは変な攻撃を食らわずに、一番いいタイミングで時限爆弾を爆発させるだけ、ということだった。

78手目の△2四歩も憎たらしい程に落ち着いている。先手に指す手はないので完璧に自陣を整備して次こそ攻めますよ、という手。先手は攻撃してみるものの、ほぼ頓挫した形で後手の総攻撃がいよいよ開始される。

先手の攻めゴマを重くするだけ重くしてからの△5五歩が恐ろしい手。結局先手から後手のし掛けた時限爆弾を解除しようとして爆発したのがセットから30手経過した92手目だった。

投了図は中押し勝ち、という感じ。解説の北浜健介プロが途中先手が良くなっていたのではないか?と語っていたところの詳細は、専門誌で確認しようと思う。


二人の天才が同日に、郷田真隆という正統派の将棋を相手にして、どちらも後手番で、それぞれの棋風・特徴を見せつける形で勝ったという不思議な因縁を感じさせるような日曜日だった。

この二人が順調に棋王と名人を奪取した場合、四冠と三冠と二人でタイトルを分け合うことになる。そして夏の棋聖戦、第84期棋聖戦で二人が対峙する可能性がある。(渡辺明二冠の次の相手が糸谷哲郎プロなのが凄く悩ましいところなんですが…

第84期棋聖戦決勝トーナメント

四冠と三冠の直接対決からどちらがどうなるのか?というのはどういう結果になっても非常に面白いと思う。是非見てみたい気がするが、現時点の様子を見る限りでは、我々は二人目の七冠王をみることが出来る日も来るのではないか?とそんな気すらしてしまうのだがどうなるだろう。


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渡辺明、二冠返り咲き!第62期王将戦第五局▲佐藤康光vs△渡辺明

渡辺明という棋士を後に振り返った時、どういう立ち位置にあったとされるのかまだ分からないが、1つだけ確実なのは、「羽生世代をしばき倒すために生まれてきた男」ということだろう。

言葉的には不謹慎かもしれないが、その勝ち方から私が感じるのはそういう印象だ。それほどまでに強く、そしてふてぶてしいという言葉が用いられることもあるが堂々とした立ち居振る舞いと、指し回し。

今回の王将戦にはかなり重要な意味があると私はみていて、それはこの羽生世代の棋士の中ではもっとも豪腕タイプの佐藤康光との対戦成績が一番悪かったはずで、過去のタイトル戦でも棋聖戦で奪取できず、というのがあったり、初期の竜王戦でも連敗スタートだったこともある。

それが徐々に番勝負での負け数を減らし今回は遂に1敗しかしなかったのだからかなり成長したというか、対佐藤康光という戦い方が身についたような雰囲気を感じる。

今期王将戦5局までの渡辺明プロの指し回しを総括すると、佐藤康光プロの創意工夫を空振りに終わらせるような展開を上手くつくっていたといえる。第五局もまた、そういう印象を受けた。

先手佐藤康光プロの作戦は森下システムだった。これが衰退した理由は雀刺しが強力ということだったがどこかに佐藤康光プロの工夫があるはず、と見ていると指されたのが35手目の▲4六角だった。

この手は正直に書くと良い手とは思えなかった。先手で手損してしかも狙われそうな位置。私が渡辺明プロ並の実力を持っていれば、これでちゃんと対応すれば悪くなるはずがないな、と思うだろう。

矢倉棒銀が佐藤康光プロの構想だったが、一歩損して角が危険な場所にいて戦果としてはどうだったのだろうか。

封じ手の局面ぐらいからは後手渡辺明プロの反撃タイム。角を追いやってから端桂でなんとなく後手の模様が良さそうに思える。(ただプロの解説では8六歩という防御手が指摘されていたようだ。)

67手目の▲4六金が強い手で後手としては悪くない交換のように思える。守りの銀ではあるが金との交換であれば良いだろう。

71手目の▲3七桂は援軍を出す意味で仕方ないが、後手の攻めの桂馬と比べて文字通り一歩遅れている。先手の主張というか拠り所は、後手の角の働きが悪いことと、後手の攻めの銀が立遅れてること、そして飛車が八筋ではなく九筋であること、なのだがこのへんが後に、上手く活用されていくこととなるのだった…。

まず先手の攻めに対する応手で角がさばける。そして手番をとってから昼食休憩後の再開手の△3七角が私好みの一着。これが先に入って馬が出来るのであれば、やはり後手がいいと思う。しかし意外?なのは本譜で先手が指せると佐藤康光プロはみていた、という感想が残っている。

対局中に作動していたGPS将棋Twitterの呟きを観る限りではこのへんでは既にGPSは後手が有利だと判定していた。この事実だけを論拠に、既にトッププロレベルの実力がある、とはいえないが、興味深いところではある。

角打ちに対する逃げ場所が悪く本譜の展開でぎりぎり先手玉が寄っている。92手目の局面を佐藤康光プロは良しと判断して進めていたらしい。それが本譜で指せると見ていた、という意味。角打ちが80手目。そしてこの飛車を取られてから△5九飛が92手目。12手。

ニコ生の解説者として来ていた行方尚史プロが語っていたエピソードで、対コンピューター将棋の講座を開発者側が開いてくれたらしい。そこで「コンピューター将棋は30手読みますからプロの皆さんは30手以上先の局面で良くなるようにこころがけてください」といったそうだ。行方尚史はそのコンピューター将棋の開発者の言葉にやや憤慨した雰囲気。

ニコ生の画面には「無理www」「それはむりwww」というような言葉が飛び交ったそうである。そりゃあ人間はそんなに読めるわけがないよ、というニコ生視聴者。

ところが次の行方尚史プロの言葉で一気に場の雰囲気が変わる。行方尚史「そんなのプロだったら当たり前に読んでますよ…」と一言。

「プロスゲー!!!」という驚きのコメントでうめつくされる画面。という展開だったらしい。

しかしちょうど偶然にもトッププロ同士の対局でそのシチュエーションが訪れた。80手目に読んだ91手目の局面。良いと思って進めた結果、実際にはどうだったのか。というと、良くなかった。これがたまたまなのか。

もしかすると開発者が言いたかったのは、「30手平均で基本的には全選択肢をなめ尽くして、その中から最も数値の高い手順をとりますので、人間はその先に良くなる変化を選ぶと勝てますよ」ということなのかもしれない。

シンプルにはそれはほぼ神の領域と言っていいような気がするのだが。神は将棋を解明しない。しかし人間の指し手に対する回答は完璧に準備する。というような。今から本当に電王戦が楽しみである。

************************

これで渡辺明二冠返り咲きである。竜王と王将。竜王将。棋王戦も今週末に控えているがここも奪取すると三冠。竜王王将棋王で竜棋王将。なんかソーシャルゲームのキャラがどんどん進化していくみたいな感じですね。


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羽生善治挑戦者に!降格は高橋道雄&橋本崇載。第71期順位戦A級最終局

第71期順位戦A級最終局が昨日行われた。結果としては、羽生善治三冠が挑戦者となり、降格は高橋道雄九段&橋本崇載八段となった。

降級者も挑戦者も決まっていない最終局だったが、正直若干盛り上がりに欠けたようにも思う。その責任?の多くは橋本崇載プロにあった…と考えたのだが、プロの解説には、ハッシープロは特に悪手を指したわけではない、と解説されていたようなので羽生善治三冠が上手かった、という当たり前のオチになるのだろうか。

ハッシーの敗着は相手が羽生善治だったこと、という言葉まで飛び出したらしい…。


ただこの将棋が、特に先手にチャンスなく、一番早く、圧倒的な差で終わったために一辺に挑戦者と降級者が決まってしまったので、盛り下がったのは事実だと思う。たとえ同じ結果だとしても、その他の対局の結果を思うと、ここが一番最後に終わるべき将棋だったのだ。

ハッシープロは正統派の本格的な将棋であることが特徴であり強みだったはずだが、一線級の相手とあたることになった今期においてのみ、振り飛車を主軸、しかもノーマル振り飛車を多く投入した結果、勝率5割未満の作戦を一線級の相手にとり続けた結果、全棋戦通じての勝率は三割台で終わってしまった。

勿論、相手は強かったが、負けた相手の中には、今までであれば勝っていたであろう相手も結構含まれていた用に思う。それだけA級であることの重圧が大きいというのを間接的に物語っているとも言えるが。

将棋としては先手の橋本崇載プロが、中飛車をとり、34手目の羽生善治プロの力強い金上がりでほぼ終わっていた。ただし玉が薄い将棋なので決め方が難しいと思っていたが、ここからの構想が鮮やか過ぎて本当に独り別世界にいるなと感じた。

ニコ生の解説では先手の凝り固まった駒に触れるような展開を予想していたがそうではなく、全くその辺には触れずに、二枚の角で睨み倒すような戦い方だった。

ある意味、チェスのような、チェスの戦い方を知っている人間がそれを将棋に転用したような勝ち方だった。合気道などの空気投げ、に等しい勝ち方であり、不思議な味わいがあるので是非見て貰いたい将棋ではある。


次に終わったのが、どちらも関係ない渡辺明郷田真隆の対戦。これは素晴らしかった。郷田真隆という棋士が後にその功績を振り返られた時に必ずそこに加わるであろう、一局だった。

渡辺明はその準備がある局面において無駄に時間を使うことをしない。その結果スッポ抜けることもあるのだが、羽生世代の強さ・恐ろしさを分かっているからこそ、時間配分ではやや意図的に先行しているところがある。

この辺りは、糸谷哲郎が超早指しであることと似ていて、要は自分のペースで指していくことの重要性を示しているように思う。

将棋は相矢倉の最新型、ただし途中で郷田真隆が工夫をして見慣れない展開に。そして注目の局面は79手目▲3三歩。それに対する郷田真隆の大長考からの△2二玉。先手が細いながらも攻め立てているし、なによりあの渡辺明なのだから、先手が良いのだろう、という信頼感。だが、違った。

今後研究される局面であり、専門的なところには触れないが、郷田真隆があの三時間を超える長考でしっかりその後の勝ちを読み切り、その通りに勝ち切ったということに大げさに言えば、歴史的な価値があるし、まだ残ってる棋王戦の展開にすら影響をあたえると思う。

勝負どころで長考できる棋士の強さ・怖さを渡辺明は思い知ったはずで、それが番勝負にどういう影響をあたえるのか。終局時の残り時間は郷田真隆が一二分、渡辺明は一時間一五分だった。これで良しとするしかないと思うが、この一時間を惜しいと思うと羽生世代の時間ペースで勝負が進むことになりそうで難しい。


A級順位戦の恒例行事としては、深浦康市プロの一期降格にあるが、今期は残留となった。しかし最終戦は負け。A級の深浦康市プロを見ていると、そのガッツが空回りすることが多いように思われる。佐藤康光との本局もまたそういう印象を持った。

渡辺明であれば確実にスルーしたであろう局面にいちゃもんをつけにいって、結果的にそこから苦しくなった。なんでもない局面での1歩損はアマでも堪えるものだが、トッププロとなれば尚更だ。結局こういう落ち着き方をするのであれば、序盤で相手の言い分を聞いてあげても良かったような気がする。

ただこの残留で一皮剥ける、ではないが精神的な余裕が出て、見送ることが増えるような気もしている。本局は見どころは序盤、だろうか。

この将棋と残りの二局の結果を見る前に私は就寝した。羽生挑戦が決定し、ハッシー降級。後独りは?というところだったが、形勢判断で、高橋道雄プロであることが分かったからだ。降級可能性のある三人が全員負けて、そして順位が一番悪い高橋道雄プロが落ちるであろう、と呟いてから寝た。

その高橋道雄プロと三浦弘行プロの対局は先手の横歩取らずからの中原囲い。高橋道雄先生が得意とされている形だ。ただこの作戦の印象としては、飛車がよく左右に行き来する感じで、ひと目歩の上からの攻めなので細い。というもの。

こういう将棋を上手く指すのは圧倒的に中原誠先生で、あの大局観と手の見え方は尋常ではなかったと思う。A級で中原流の相掛かりでコロコロと羽生世代を倒していたのが懐かしい。

後手は仕方ない待機作戦を取ったが、先手の攻めが細く、しっかり受けられて後手の優勢となった。なったはずだったが、最終盤ではなんと高橋道雄プロに勝ちがあったのだった。この将棋は、屋敷谷川戦が終了したあとも続いていたので、この局面をリアルタイムで見ていた人たちは大変興奮したことだろう。

谷川浩司九段が落ちるのかどうか。ということがここ数年A級の裏話題になっている。米長邦雄中原誠の時代からすると確実に選手寿命が一〇年縮んたということだ。谷川浩司先生には少しでも長く現役を続けて貰いたいところだが会長職との兼務となると研究の時間がとれないだろうし悩ましいところだ。

そして屋敷伸之vs谷川浩司は後手のゴキゲン中飛車から相穴熊。一番後手のリスクを取らない展開ではあるが、先手がしっかり勝ちにいった戦型ともいえ、先手側からみると、郵貯の定期、のような安定的にリスクを取らずに、勝ちにった作戦。

長く指せば指すほど、先手がよくなっていくような将棋で、中盤あたりは後手の手段もかなり多いように感じたのだが、先手の応手が適格で徐々に後手の劣勢が明らかとなった。73手目の▲2九飛がとても良い手で、ニコ生の中村先生が一目で当てていた。流石不思議流。

結果、屋敷伸之プロはA級では先手番をすべて勝ち、後手番を全て負けることとなった。これがトッププロの現実なのだろう。

昨晩は偶然にも体調があまりよくなく、久しぶりにシラフで順位戦を遅くまで見ることが出来たがやはり将棋って、順位戦っていいですね。



升田幸三の孤独升田幸三の孤独
(2013/02/23)
河口 俊彦

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発売日: 2013/2/23
升田幸三・米長邦雄・芹澤博文・花村元司・郷田真隆・藤井猛…
天才達には、その才気が溢れるゆえの孤独がある。
選ばれたものだけが辿り着く栄光と葛藤を描く「盤上の人生 盤外の勝負」シリーズ第2弾。

前著「盤上の人生 盤外の勝負」が覇道を歩んだ棋士を描いたのに対し、本書は異能派の棋士が多く取り上げられている。
彼らを語る老師の筆はひたすらに優しい。破滅主義的な危うさを漂わせつつも自らの才を恃みに生き、その才に殉じた数々の姿こそもっとも棋士らしいものであると語っているかのようである。
米長邦雄の追悼文を巻末に掲載。













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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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