甲斐智美、またもや男性棋士を撃破!

いやー甲斐智美女流プロ、強すぎですね。

女流の中では里見香奈三冠と合わせて二強としていいと思うんですが、対男性棋士ということでの勝ちっぷりを観る限りだと、里見さんよりも上だなと。これは実力的なものもありますが、経験値というか、ちゃんとここまで積み重ねてきたものがあるのだろうなという気がします。

圧倒的に正確な終盤力を軸にして、序盤中盤のペース配分がかっちりハマった時にはかなりの好勝負をみせてくれることは分かっていましたが、ここまで来ると、いままでの女流棋士が勝っていたような失礼な言い方ですが出会い頭ということではなく、実力として勝っているということなので、今後も安定的に勝つのではないでしょうか。

具体的にどのへんの男性棋士とであれば勝てるのか?ということをこれは真剣に見てみたいなと思ってしまいましたので、以下妄想です。まーなんていうかベイズ推定っていうの?あれです。(というか単なる当て推量ですw)

某所の女流棋士のレーティングで甲斐智美女流プロは1789点。男性プロ総体としては2000点ぐらい。200点以上違うと勝率としては8割強いほうが勝つと考えていいと思います。

この男性棋士を分解すると160人ぐらいの棋士がいて、その中での平均値というか三段からプロになった人の初期値が1500点。その初期値というのは順位でいうと100/160人という感じです。

この初期値のあたりとの対戦勝率としては確実に五割を下回ると思います。(この前は深浦さんに勝ちましたが、あれは序盤で深浦さんが少し無理をして、選択肢が多すぎない状態でぎりぎりの優位が続く…という甲斐さんの勝ちパターンでした。甲斐さんはご自身で自分はちょっとおっとりしたところがあって、序盤で少し形勢を損ねていることが多い…と発言されていたことがあるような気がしますが、序盤でしっかり先攻するとそのまま押し切ってしまうぐらいの末脚があるんです)。

1500点以下の60人を更に分解すると、130番ぐらいのところに総体としてのアマチュアというのが存在します。ちょうど1400点ぐらい。なのでここをしきい値として、30人と30人に分けることができると思います。

100-130位ぐらいのところとは大体勝率四割以上はあるのではないでしょうか。そして、130-160位のところに対しては、おそらく五割以上あると思います。

ちなみに先日勝った相手、上村四段は100-130位のところに位置していて、上野プロは130-160位の中に含まれています。もちろん、この数字がその棋士の総てを示しているわけではありませんが、一つの考察として有効な部分もあると思います。

白黒はっきり結果が出てしまう残酷な世界ですし、負けた男性棋士の方々の気持ちを思うと書かないほうがいいようなネタだなという気もするのですが、好奇心がそれらにまさってしまったので、書いてみました。

ただ、実力としては紙一重の積み重ねとしてのレーティングだとも思うので、数字が見せるほどの差はなく、甲斐さんが今後対戦する際にも圧倒的に五割を上回る期待勝率があるというわけではないと思います。

次に甲斐さんが対戦する男性棋士は金沢孝史プロ。レーティングがちょうど1400を割るか割らないかぐらいですので、甲斐さんの期待勝率としては五割とみていいかなと。ちなみに金沢さんの今年の成績は1-6。唯一の勝ち星は上野プロから上げたものです。

甲斐さんの場合は、持ち時間が長くなればなるほど実力を発揮するタイプですし、反対に金沢プロは早指しのほうが実力を発揮するタイプなので、棋戦相性というか距離適性としても、甲斐さんの勝利可能性はかなり高いと見ています。あとは戦型と先後でしょうね。


将棋の天才たち

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甲斐さんが、深浦さんに勝った!

いやーこれは本当に凄いことです。

瀬川さんがアマ時代に久保さんに勝った時、あるいは屋敷さんに相穴熊で遠藤さんが勝った時以来の快挙でしょうか。

しかも持ち時間四時間と、決して短くない王位戦の予選で。

昨日の私の呟きを振り返ってもらえればとも思うのですが、戦前からやるんしゃないか?という雰囲気はあったんですよね。

組み合わせの妙というか、相性というか。深浦さんはタイプ的に甲斐さんの良い所を引き出してくれる気がします。

なんというか、姑息に力を出させない展開ではなく、序盤で競馬でいう所のスローペースというか、ついていきやすい流れになるのではないかなと。

上村プロを破った将棋でもそうなのですが、割と手が少なめで、激しく行きにくい展開だと、甲斐さんの丁寧さが活きる。

まさに本譜はそういう展開になりました。非常に丁寧な美しい手順で無理なく局面を進めて行きます。

対する深浦さんは、凄いイレ込んでる雰囲気の手順。銀の進出や角の早めの投入にその気配が窺われました。

少し先手が良いだろうな…という局面が序盤で実現します。そして、そこからの手の少ない中での、きめ細やかな、まさにおもてなしの手順。

性差別的な発言かもしれませんが、非常に女性らしい美しさを感じました。よく、一昔前の女流将棋は、我が道を行く…とか称されましたが、全くそれとは異なる、柔らかな応接。

合気道のように、徐々に相手の無理を自身の有利に結びつけて行く様子が観られました。

ここで、私は失礼なことをつぶやきます。曰く、ここで、戸辺さんにバトンタッチすれば勝つ。…。

…。

失礼過ぎました。失礼しました…。

でも、男性プロで石田流を指し慣れてる人が指せば、如何に相手が深浦さんといえども、先手が勝つだろう局面が登場したのです。

そこから先の手順も本当に完璧でした。序盤で作った端の関係を活かして銀をぶっこんで詰み…とか、他の男性プロでここまでちゃんと指せたかどうか…と思わせるほどのギリギリかつピッタリな勝ち方でした。

間違いなく女流の力は上がっています。それも一人二人ではなく、この前あの里見さんに勝った香川さんやその他の新興勢力も含めて、全体としてレベルアップしていることを、今回の勝負で再認識した次第です。

いやー深浦さん相手に勝つ人間なんて、地球上に千人居ないですからね…。五百人もいない。下手すると百人ぐらいしか居ないわけで。。

本当に凄いことです。そして、勝ったあとの甲斐さんのコメントがまた素晴らしい。たいち君もそうですけど、こういう精神の在り方が自然に構築されている…というのは、こういう棋士を有することが出来ているということは、それだけで将棋界にとっては得難いことだと、しみじみ思いました。

今後、女流との対戦はこれを機によりアツくなっていくことでしょう。

Tag : 深浦康市 甲斐智美

振り子の行方 第24期女流王位戦第5局▲里見香奈女流王位vs△甲斐智美挑戦者

2勝2敗で迎えた振り飛車党同士の最終局。振り駒勝負は大きい。そして先手を引いた里見女流王位が居飛車を選択。後手はゴキゲン中飛車に。序盤の展開は第三局と同じで、第三局は序盤でかなり差のついた将棋に思われたが終わってみればなかなかの熱戦だった。

本局はどちらかが新構想を用意しているところで、男性プロだと勝っているほうが手を変えることが多いような気がするが、本局は後手が待ち構えていた。

第24期女流王位戦第5局▲里見香奈女流王位vs△甲斐智美挑戦者

その後、激しい応酬があった。結論からいえば、第三局の敗戦を大きな糧とする形で甲斐挑戦者がタイトル奪取という実を得ることとなった。

これは、私レベル同士でこの局面を迎えたら8割後手が勝つだろう、という局面が出現した。どちらかといえば、里見女流王位の選んだ道筋だったがすでに甲斐の準備の前ではどのような手順をとってもすでに苦しかった可能性がある。

これは八割方、後手の勝ちだろうという局面は66手目△4九飛打ちのあたり。後手の飛車は振り飛車の飛車なので守りごま、あるいは切るための駒だ。それが一段目にいる。先手の成金は遠い。4五の桂馬は取れそうで取れない。

後手の玉は不安定とはいえ、美濃は無傷。後手の攻撃陣はさばけていて駒得で、先手の主張点がほぼない局面だ。

先手が無理にでも手を作りに行くしかない場面だが、甲斐さんというのはおっとりした序盤と対照的に安定的な中盤の駒の運用には定評がある。特に最近では男性棋士の上村プロを相穴熊で破った将棋が微差を保ったままゴールした素晴らしい将棋だった。

あの将棋が甲斐さんのエンジンに火をつけたようにさえ思う。上村と甲斐は奨励会同期らしい。激戦の三段リーグを勝ち抜いた上村に勝ったことは大きな自信になったはずだ。

甲斐女流は鋭く才能のある手を繰り出すというよりは60点から80点の間の手でじっくりと局面を進めていく。終盤力は折り紙つきなので、それでも十分にお釣りがくる。慌てるのは周りばかり。一番読んでいるのは対局者なのだ。

終盤、△6三金と上がった手は、男性プロ棋士には違和感があったようだ。代わりに横山プロにしめされていた△6二金という手は美濃・左美濃からの進展形として覚えておくべき形だと思う。(鈴木大介先生などが示していた手順は甲斐さんが指す手順ではない気はするが、勿論有力だろう)。

この手を危ないとみるのは職業将棋指しとしては本能的なものなのだろう。成算の立たないところでは極力安全策をとる。それはどの職業においても特にリスクコントロールが重要なポジションにおいては当然のところだろう。

おっとりしているように見えてしかし、そこに踏み込む精神の強さを持っているのが甲斐さんなのだ。単にそこの感度が鈍い・・・のではなく、こういう手順について、感度がいい意味で心に響かないタイプなのかもしれない。

怖さを克服して踏み込むことで勝ち得るという場合もあるし、あるいは生来持って生まれた「ビビらなさ」が功を奏することもある。甲斐さんは典型的な後者のタイプ。物腰の優雅さ、上品さに騙されてはいけない。相当肝の座った胆力のある方なのだろう。

終盤の玉捌きも素晴らしかった。如何にも甲斐さんらしい少し丁寧に受けに回って良くしていく、あるいは悪くし過ぎないという指し回し。最終盤はちょっと差が開いた形で里美さんの投了となった。

聞くところによると、里見香奈女流はこれまでタイトル挑戦/防衛に14度連続で成功しているらしい。初タイトル挑戦では矢内理絵子女流にセーラー服姿で負けたように記憶しているが、その後は負けなし。

そういう相手に、三番勝負ではなく五番勝負で勝ったというのは本当に大きい。(この話はツイッター上でフォローさせていただいている方の呟きで私も確かに…と思った話です)。

負けた里美さんも振り飛車だけではなく居飛車に芸風を広げつつあるところでタイトル戦。しかも奨励会との掛け持ち、五冠というハードスケジュール。色々なものが積み重なっているなかでのものなので仕方ないところもある。

甲斐さんが、第三局の負けをこのタイトル奪取につなげたように、この敗戦・失位を活かして更に大きなものを得ることができるはずだ。

甲斐智美新女流王位、奪取おめでとうございます~!


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(2013/06/26)
屋敷 伸之

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内容紹介
藤井猛九段が創案し、升田幸三賞も受賞した「角交換四間飛車」。駒組みが容易で攻め筋は明快。振り飛車党の愛用者が日に日に増えている中、この戦法に手を焼いている居飛車党の方も増えていると思います。

そこで、救世主となるのがこの一冊。
「本書は、悩める居飛車党のために書いた『角交換四間飛車破り』である」(まえがきより)

この本には屋敷九段お墨付きの角交換四間飛車対策がぎっしり詰まっています。
▲2四歩交換、▲3六歩型、▲4六歩型、▲5六歩型、穴熊。
どれを選ぶかはあなた次第。これだけの武器を授けてくれるのなら、もはや角交換四間飛車恐るるに足らず!

本書を読めばにわか仕込みの角交換四間飛車はすべてカモにできるはず。
すべての居飛車党必読の一冊です。

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Tag : 甲斐智美 里見香奈 上村亘

激戦。甲斐女流強し。第24期女流王位戦第4局▲甲斐智美vs△里見香奈

第24期女流王位戦第4局▲甲斐智美vs△里見香奈

カド番で迎えた第四局。先手は甲斐智美プロ。からの相振り飛車。

里見香奈女流王位の相振り飛車の後手番は課題を抱えている…というのが奨励会入会前の私の認識でしたがそれがどう進化したのか?というと、進化しているようです。私の棋力ではわかりませんが、室岡プロの解説でかなり序盤に後手やや良しというコメントが出ていました。

序盤で呆気無くと金が出来て、先手の攻め駒側の桂馬と香車を難なく拾う後手。普通はこれで後手良しと見るものでしょう。

しかし後手の玉形がそれほど良くなく、拾わせているうちに馬を作ったところでは難しかったというのですから、本当に将棋は難しい。

ポイントは、先手がひるまずに飛車をぶんまわして後手に受けさせた60手近辺でしょうね。これで先手の甲斐智美プロは馬を作ることが出来ました。

ただ後手の飛車をとれそうなところで結局取れなかったあたり、飛車角交換になってしまったあたりではまた後手が盛り返していた模様。

91手目の角打ちで飛車ゲットを確定させた局面で先手の有利が確定したように私はみていたが、そこで玉を6二に上がらずに、△6七成香とすれば、後手が良かったという感想が残されている。

このあとの攻防も非常に見応えのあるもので、形勢のバランスをとりながら延々と続いていく。

先手が8八に歩を打てた局面では流石に先手が良さそうだと思うが、里見香奈女流王位が執念ぶかく辛抱強く指していく。

女流棋戦で…とかくと、じゃあその女流プロより強いアマチュアはどれだけいるのか?という話ではあるけれども、ただ単に手数が伸びていく将棋というのが以前はたまに見られたし、そしてそれで逆転してしまうということもあった。

しかし今回のは両者の棋風がうまく出て、形勢のバランスが保たれながら200手手前まで将棋が続いたので見ていて楽しかった。多分、観戦していたファンの意見は同じようなものだと思う。

持ち時間がないが有利な甲斐智美プロのちょっと慎重すぎるようにも思える着実な指し手と、持ち時間はあるが手がかりの少ないなかであれやこれやと手を作っていく師匠譲りの?勝負師的な側面がみれて面白かった。

コンピュータ将棋で解析したわけではないが、先手が良い局面が最後まで維持されていたのだとしたら、甲斐智美さんの長くなっても逼迫した持ち時間のなかでの使い方は正しかったということになる。

この前の上村プロとの相穴熊戦でも微差で良くなってからの安定的な指し回しが素晴らしかったが本局も甲斐智美さんの良さが存分にでた好局だったように思う。

2-2で最終局にもつれたが、最後も二人の個性が盤上で発揮されることがかなり期待出来そうなそういう一局だった。


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(2010/07/21)
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謎の作戦が流行? 第71期名人戦第4局 森内名人vs羽生三冠(二日目)&第24期女流王位戦第3局 里見vs甲斐

名人戦初日の序盤の手順に相当驚いた方も多かったと思います。相手の手の内を知り尽くしているプロ同士で、しかも双方居飛車等で、このオープニングがタイトル戦で出るとは・・・という。

アマ、私のような弱いアマのレベルであれば、特に持ち時間が短かったり、駒を並べる手つきをみて(失礼ながらもイケるかな?)というときは、この飛車先決めきる作戦を使うことがあります。

アマの場合は少なく見積もっても50%以上は振り飛車党で両刀使いまで含めると8割、主作戦が振り飛車という人は適当に見積もると6割5分ぐらいあると思われます。

先手番をもって、後手の人が振り飛車の場合は、余計な選択肢を与えない目的で飛車先を決めてしまう、というのはかなり有効な作戦である、というのは前々から私は書いているところだったりします。

飛車先決めるだけで、いくつかの後手番の作戦は消えます。それこそ、普通のオープニングだと、定跡本で2-3冊分の手順が水面下に控えてるわけです。これはだるい。しかも相手はそれだけ、その定跡のなかの超細かいところの一部分だけをすごーく掘り下げていたり。

個人的な話ですが、初手▲7六歩に対して2手目が△3二飛だったら大体やる気が20%ぐらい減りますね。それぐらい嫌なわけです。

ただこれは日曜大工ならぬ日曜のお昼のひと時のうたた寝のための睡眠導入剤としての将棋観戦を愉しむファンとしては、そういう志の低い作戦を、勉強範囲を限定するためにやむなく使うわけですが、まさかそういうオープニングがプロのタイトル戦で出るとは思っていなかったです。(もちろんその用いられている理由・思想は全然違うわけですが)

それが出ました。しかも2日連続です。なんと女流王位戦の里見さんも先手番で飛車先を決めて、そして後手番の甲斐さんがそれに反応して居飛車を選択することで、似たような序盤が出現しました。

ちょうどツイッターでやりとりさせていただいている某氏も角交換振り飛車、新藤井システムを得意戦法にしていらっしゃるそうですが、その場合に、この飛車先を決められる展開がおもしろくないと。この展開になると相居飛車の角換わりを志向するとおっしゃっていました。

後手番が純粋な振り飛車党だと向かい飛車、という選択肢もあるように思いますが、盤面を広くみて、というかあらゆる選択肢でという意味では△2二銀とするのが最前のような気は私もします。

実際に私が飛車先を決めたときに遭遇するのも圧倒的にこの△2二銀が多いです。専門的というかマニアックになるので端折りますが、飛車先決められてから無理やり角交換型の振り飛車にするのはちょっと後手側としては面白くない意味があります。

ということで、どちらも後手側は△2二銀としました。

ここから先手の作戦が分岐しました。飛車先決めちゃう派としてはかなり勉強になる将棋が、しかもタイトル戦で観れるというのはいいことですね。

名人戦の森内名人はいかにもらしい、じっくりした戦型を目指す▲6六歩からの早囲いでした。そしてまだこれを書いてる段階では勝負は中盤を迎えているところですが、先手のもくろみというか、狙いはうまく進行している。

いわば、この名人戦第四局は脇システムっぽいですが後手の飛車先だけが伸びていない分、攻撃力が弱い、という印象を受けます。


一方、里見さんは角換わり調を志向。こっちのほうが、私は普段の戦いでよく見かけます。角換わり系の将棋で先後の作戦をまとめてる人って最近多くないですか?少なくとも私はそうです。特にここ数年は、振り飛車も角交換型が特に増えたので、相居飛車・対抗系とわず、ですね。

先手の里見さんは五筋の歩を突いて行きます。角交換には5筋は突くな、とはいうものの、この筋を突いていくプロ棋士は結構多い印象があります。最近だと特に行方さんとかでしょうか。

里見さんの意図はすぐに明らかになります。飛車を五筋に転じての飛車と銀でのシンプルな攻撃。もともと中飛車を指す方なので、応用手筋も多いでしょう。

こういう将棋をみていても、現代将棋というのは居飛車と振り飛車の垣根が低くなったというか、境界線が角交換というアンチ穴熊の基本思想が出てきてから曖昧になりつつあるなあと再認識します。

そしてその居飛車と振り飛車の垣根を取り払った、しかも二度も取り払った藤井猛プロこそが、そのフロンティアであることは間違いないですね。

後手の甲斐さんはスロースターター。タイトル戦に登場してくるタイプでは以前の矢内さんも若干スロースターターという印象があります。女流の場合は攻めっ気が強い棋士が多いので、少し待ち受けるぐらいで無理攻めをとがめる展開が多いというか、終盤力でのまくり勝負になりやすいのでしょうかね。

本局も後手の銀が6二の地点で立ち遅れています。個人的には相居飛車でこの銀がここに延々と居続けるのは飛車との関係で相当気持ち悪いです。

しかし甲斐女流は気にせずに玉の囲いを優先します。確かに五筋の力関係は先手優位ですが固めてしまえばということもありますし、中飛車特有の筋として、飛車の斜め後ろ、7一の地点に角をぶっこむ手が常に含みとしてあるので、6二に銀がいるほうが凹むことによる長期的なリスクはあるものの、短期的に攻めつぶされるリスクはないですね。

ここからの展開としては、先手は右金の運用をどうするのか。そしていつから攻めるのか、というのが一つのポイントです。シンプルには、銀交換に持ち込んで、角銀歩を手持ちにして、飛車との連携で攻め倒す・・・という感じ。こうなるのであれば、攻め好きの人はもって楽しい作戦ですね。

私も受け将棋ではありますが右玉というのは常に中飛車的展開を含みとしてもっているので、こういう将棋は後手よりも先手を持ちたい気がします。アマ同士だと持ち時間との兼ね合いもあり、飛車(&金)を渡すタイミングさえ気をつければ、割と楽しいイメージが。

というわけで、どちらの将棋も先手が楽しそうですね。

で、あればですが、アマの将棋においては、先手は常に初手▲2六歩でいいんじゃないか?という話が浮上してきます。私の基本的な手順はすべて2六歩からはじまるんですが、にわかにクローズアップされるかも?

整理すると。

飛車先を決めてからの後手の選択肢としては、

1.振り飛車
これは先手居飛車党であればどの振り飛車にされてもケアできるはずです。できなければ、初手7六歩でもケアできてないはずなので、どのみち安心して飛車先決めましょうw

2.居飛車角交換系
これは里見さんが女流王位戦で見せた作戦。アマの場合はこの展開のほうが多いはずなので、深く研究するならこっちをお勧めします。普段角換わり系の作戦を採る人であれば、応用範囲が広いはず。

3.居飛車矢倉系
これは私としてはあまり掘り下げていなかったのですが、今回の名人戦の進行をみると相当有力ですね。藤井矢倉は飛車先決める形でしたが、なんとなく勝ちづらい印象がありましたが、もう一度思想と手順を復習してみたくなりました。

これも将来的には角交換が待っている将棋です。展開としては脇システムの応用形になりそうです。

と思うと、プロの最新定跡を追うよりも、費用対効果が高いような気がしませんか?振り飛車党が局面限定して棋力を高めていく・・・というのに近いアプローチが居飛車でも可能になるとすれば、飛車先固定の戦型から覚えていく、というのは有力な選択肢の一つとして、あるような気がします。

やたらと、勝手な戦型考察で長くなりましたので、将棋については専門誌でご確認していただくとして、以下はなるべくあっさりと将棋の結果について触れたいと思います。

どちらの将棋も、持ち駒となった、角の運用がポイントとなった。名人戦は歩の突き捨てから先手の飛車に引っ掛ける形でうつ△3九角という手が生じた。手に乗って森内名人は飛車を五筋に転回し、後手は馬をつくった。

似たような形・・・とは言わないものの、きしくもどちらの将棋も飛車が2筋から5筋に転回されることとなった。私の将棋ではそこまで5筋に転戦する形にならないのだが、プロならではの何かしらの理由があるのだと思う。

どちらの将棋でも、後手が馬を作るか作ろうとしたが、その戦果は乏しく、先手が五筋に構えた主力の飛車の力を生かして形勢差を拡大していくこととなった。

まだこれを書いている時点では、どちらの将棋も終わっていないが、どちらの将棋も夕方16時半ごろの局面では勝勢に近い優勢だと思われる。

こうなると、先手番の有利というのはいかに大きいのか?という気がしてくる。相居飛車におけるこの2五歩を決める手順というのは、先手番の得を減らす、やや作戦的には損である、と言われていた。アマチュアでは局面を限定する意味で用いられることがあったが、プロでもあるいは主流になっていく可能性があるのだろうか。

今後の出現率には注目したいところですね。

初手2六歩に対して、後手が相掛かりを受けたくない場合は、二手目に△3四歩を突くことになる。あっさり出現する局面ではある。5手目までは変えようのない手順で、六手目に銀を上がるか、角道をふさいで振り飛車にするか、ぐらいの選択肢しかない。

今回のタイトル戦二局の様子を見る限りでは、△2二銀に対して先手は矢倉模様でも角換わり調でもどちらでも戦えることが示された。個人的には細々とやっていたMY定跡周辺が充実する歓びと同時に、また定跡のお勉強が必要になるのだろうか?という恐怖が半々・・・という感じですね。。

名人戦は夕方に出た▲6五角がMVPという具合の手で後手に粘る手段はありませんでした。もしかしたら羽生さんはすでに形勢を悲観していてあっさり決まる手順を選択した可能性があります。飛車を取りに行った手にそういう印象を受けました。

女流王位戦は里見香奈女流王位が勝ちました。△5六歩の垂れ歩が良い手だったようですが、そのあとの△2七角が疑問で二筋の歩が活用することが出来て先手がハッキリよくなったようです。

どちらの将棋も、飛車は五筋に転じましたが、二筋の歩の活用を図ることで優位を築いたという点が如何にも居飛車らしい将棋だったなと思いました。



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(2013/05/23)
戸辺 誠、中村 太地 他

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内容紹介
将来の大棋士たちが描く、現代将棋の最新地図完成!!

戸辺誠、中村太地、村山慈明、永瀬拓矢。この4人が一堂に会し、現代将棋のテーマ局面について、詳細に、過激に語った一冊です。
第1章「現代将棋の急所編」では渡辺、羽生を初めとする現代将棋の最高峰の攻防について若手4棋士が語ります。
第2章「それぞれのテーマ局面編」ではゴキゲン中飛車VS超速▲3七銀、石田流、角交換四間飛車など、最先端の定跡について、研究の突端部分を惜しみなく披露します。
第3章「3棋士に聞きたい局面編」では4棋士が自らの実戦の中から疑問に思っている局面を提示し、他の3棋士が応えるという形式で対話します。

どのページをめくっても4棋士の個性があふれており、同じ局面についての意見でもここまで違うものかと感動を覚えます。読み物としても楽しめ、定跡書としても役立つ、これまでにない将棋書籍です。

ぜひ手にとって、新感覚の将棋論を堪能してください。

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