最終コーナー 第69期C級1組順位戦第8回戦

天才たちが濃縮されたC1クラスもそろそろ佳境に。最終コーナー手前で失速するものあり、スタートで出遅れたがいつの間にか好位につけているものあり、先攻逃げきりを図るものあり、という具合。

この8回戦では、ふたつ大きな出来事といえる対局結果があった。
昇級戦線、昇級ラインはどうやら、1敗までに絞られた。例年のことではあるが、C1の昇級ラインはとてもハードルが高く、1敗でも順位が悪いと届かないことが多く、それに泣かされたのが、今期初のA級に上がるかもしれない、屋敷伸之プロ。

Aクラスの才能を持つものでも、苦戦しうるのがこのクラスの恐ろしさである。

以下、昇級に絡む対局のみ、簡単に触れておく。

小林 裕士六段(7勝1敗)○?●北島 忠雄六段(3勝5敗)…17時12分☆
田村 康介六段(7勝1敗)○?●森 けい二九段(2勝6敗)…17時22分

最初に終わった2局は東西の早見えの二人、小林裕士プロと、田村康介プロだった。片方が早指しだと、相手も持ち時間の残し方としてペースを合わせる傾向にあるので、比較的早く終わることも多いのだがこの日もそのような風にして夕食休憩前に終わった。

小林北島戦は一手損中座飛車になり、先手の作戦が見慣れぬものだが、研究だろうか、あっという間に先手が良くなった。

田村森戦は後手四間飛車に対して、先手が居飛穴。あとはプロらしい居飛穴の完勝となった。


小林 健二九段(5勝3敗)○?●宮田 敦史六段(6勝2敗)…20時26分☆

一歩後退したのは宮田敦史プロ。前局では、順位戦らしからぬ危ういが面白い魅せる将棋で勝ったが本局は、危うい受けが成立していなかった。

浦野 真彦七段(2勝6敗)●?○豊島 将之六段(6勝2敗)…21時53分☆

スタートで出遅れた若武者豊島将之プロは来期でのダニーとの同時昇級の目処がついた、という感じだろうか。


村山 慈明五段(7勝1敗)○?●近藤 正和六段(2勝6敗)…22時19分
私が今期イチオシの村山慈明プロも1敗を死守。順位が悪いのでこのままゴールしても頭ハネまであるが、上位に残るのがタムリン・小林裕と安定感を欠く二人なので多いに期待出来る。

ここの将棋も面白かったのだが、近藤正和プロの良くないときの将棋に見られる激しい・奇抜な手順でおそらく負けるのだろうなあと思ってしまった。勝つ時の筋の良さとのギャップが面白い。


田中 魁秀九段(3勝5敗)○?●広瀬 章人王位(7勝1敗)…22時58分☆

ここは必見。田中魁秀プロが不思議な序盤から勝ち切った。田中魁秀プロは毎期、必ずと言っていいほど若手実力者を屠っているが、この将棋も右玉風味というか、実際は左玉なのだが、上手風味で、強引と思われた双方の玉側の端から攻撃開始して上手く攻めをつないで自玉は広すぎて安泰、というところで広瀬章人王位が投了となった。

これで全勝が消えて、1敗に5名並ぶ混戦となった。



真田 圭一七段(5勝3敗)●?○佐々木 慎五段(7勝1敗)…23時5分

佐々木プロも1敗をキープ。作戦勝ち模様からそのまま押し切ったようにみえた。この後手の、桂馬を跳ねずに銀冠の二手手前の状態の高美濃が美しかった。

この将棋は佐々木慎五段の生涯ベストアルバムが発売されれば収録されるであろう一局。


その結果、以下のような成績に。


[C級1組成績一覧] ( )内は順位、*は降級点

【7勝1敗】広瀬(5)、小林裕(10)、田村(12)、村山(19)、佐々木(29*)
【6勝2敗】宮田敦(6)、豊島(26)
【5勝3敗】真田(9)、小林健(13)、平藤(16)、高崎(27)、大平(31*)
【4勝4敗】片上(4)、脇(8)、富岡(15)、千葉(18)、加藤(25)、金井(28)、中田功(30*)
【3勝5敗】長沼(7)、北島(11)、日浦(20)、田中魁(21*)
【2勝6敗】内藤(1)、森けい(2)、近藤(14)、勝又(17*)、高野(23*)、浦野(24)、西川慶(32*)
【1勝7敗】塚田(3)、福崎(22)


広瀬章人王位に土が付いて、全勝が居なくなった。1敗勢は宮田敦史プロが脱落して5名。9回戦で、小林裕プロが宮田敦史プロと、田村康介プロが大平武洋プロと当たっており、どちらも如何にも負けそう。

そうすると当初の私の予想通りに広瀬-村山ラインでの昇級となるのだが。


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「何分多く貰えたら後手番でいいですか?」問題 第69期C級1組4回戦

申し訳ないが興味のある将棋だけ取り上げることとする。本日は中飛車が多いのが目立った。さながら中飛車祭り、という風情。穴熊の将棋が二つあったが、順位戦の穴熊を夏場に見る気はしないので割愛する。

第69期C級1組4回戦

▲金井 恒太五段?△平藤 眞吾六段
後手2手目△3二飛戦法からの升田式石田流となった。序盤、先手が1筋の端歩に二手掛けたところでは形勢はともあれ振り飛車持ち。こうなるならば毎日3二飛車戦法を指したいと思う。

ただしそこからお互いに難しくなり千日手となった。ツイッター上で観戦記者の諏訪景子さんに伺った情報だが、平藤プロがC1に上がった期はなんと「10局中4局(5回)千日手」だったとのこと!(その期の順位表はこちら

後手番で右玉を多用することから、納得できる話で、これは右玉党としてはその期の棋譜を調べる一手だろう。

指し直し局は後手の金井プロがゴキゲン、先手が左美濃からの穴熊に。何度も書いているが、相手に穴熊がなく手詰まり模様で穴熊に組み替えるというのは私は良い作戦だと思っている。後手番が時間も勝っていて千日手に持ち込んで先手番で勝ちきるのが有力であるのと似たような意味がある。

そういう意味で、本譜は勝負師としての実戦的なところを平藤プロが見せつけた。攻めの良形と言われる先手の銀飛車桂馬の形にしても、相対的に後手に良い形を得られては意味が無いが、本譜のような展開であれば、私もそうしたいところ。

もう一回千日手にしても良いですよというぐらいの心の余裕から平藤プロが先攻したところでは穴熊の強みが活きる状況で後手に為す術はなかった。寄せ始めると突如鋭い平藤流が炸裂し、平藤プロの3勝目となった。

脇プロと平藤プロは私が手本にしたい二人のプロ。一方は短期決戦型、もう一方は千日手を厭わない息の長い将棋と、それぞれに正反対な棋風だが、寄せは敬服せざるを得ない鋭さを持っている。


▲中田 功七段?△西川 慶二七段     
先手5筋位取り中飛車vs後手急戦から、なにやら恐ろしい進展をしたのがこの将棋。後手の構えは消極的で私は好きではない。先日のA級、郷田-藤井戦のような雰囲気もあったが、後手の西川プロが銀取りを放置して激しくなった。パッと見、振り飛車が捌けた印象で横の寄せ合いには美濃が強そうに見える。よって先手持ちだ。

そこからの寄せは先崎プロをして掛け算の寄せと言わしめた中田プロの切れ味の鋭さが出て圧勝。西川パパに誤算があったか?

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▲田村 康介六段?△高崎 一生五段
超速▲3七銀型vsゴキゲン中飛車に。後手の5筋交換の手に乗って銀を盛り上がる戦い方を田村プロが採用した。

アマ的には指しこなせないように思うが、そこからの指し回しは何となく対振り飛車右玉の味わいで私には馴染み深いものとなった。形勢も当然先手持ち。63手目の角よりも歩を可愛がる手が田村プロらしい強気の一着で形勢に差をもたらした。

丁寧な玉頭戦が持ち味の高崎プロだが、流石に自玉の周りに金駒がなければやりようがない。馬を引きつけて粘ろうとする手にも飛車取りを放置して寄せのあみを絞る。

プロらしい寄せでリードを保ち全勝をキープした。元々は能力上位の男。後はやる気の問題で全勝のうちは大丈夫だろう。


▲広瀬 章人王位?△近藤 正和六段
こちらも超速▲3七銀型vsゴキゲン中飛車に。その中でも先手が最も軽くて早そうな仕掛けを見せた。近藤プロもこういう軽快な展開は好きそうで両者力を出しそうな展開。どちらが良いかは分からない。

熊って良し、急戦も鋭い広瀬プロだが、本譜も素晴らしかった。中盤までに香得を生かしつつ、手番を握り続ける。・・・はずが途中でおかしくなった。62手目あたり。狙いの桂馬を打ったがそっぽに成るしかないようではおかしい。

しかしその後近藤プロに寄せ間違いが出て再度逆転、広瀬王位が全勝をキープした。近藤プロの将棋を見ていると、丁寧な絶品な指し回しの時と、ちょっと激しすぎるように思われる順を見せる時とあるが、本譜は後者の味が飛車交換の場面以外それほど無かった。

広瀬プロの終盤の寄せの早さの前に屈した格好か。


▲北島 忠雄六段?△脇 謙二八段
北島先生が、対振り飛車右玉に!これは必見。序盤の手順については色々思うところはある。対中飛車には私は5八金とするし、8筋の伸ばしは若干損だと思う。

後手の反撃は常套手段であり、先手の構想が問われる展開となっ。…のだが、私が右玉をやったときに負けるパターンそのもの、という感じで見ているのが辛かった。

広いはずの右玉が狭く、後手玉が広い状態から、終盤の寄せが強すぎる脇プロらしい見切りが出て勝負アリ。右玉側のどこが具体的に悪かったか?というのは私なりに感じるものがあったが、右玉党の企業秘密ということで割愛したい。


▲福崎 文吾九段?△真田 圭一七段
序盤から王手飛車がかかりまくる先手向かい飛車の乱戦に。後手が誘ったようだが、アマでも一部のマニアが好みそうな形で、金が懸かっているプロとしては何かしらの成算がなければ指さないだろう。

しかしお互いに竜を作りあった後は、後手のほうが窮屈に思われ、それほど作戦が炸裂した印象は受けないが力将棋で強いほうが勝つ展開か。…と思ったら千日手に。恐ろしいことに23時49分の成立だった。

指し直し局は後手番だった真田が先手となり、持ち時間も16分多いという理想的な形。指し直し局も熱戦だったが終始先手持ちな形勢が続いた。

この手の角交換振り飛車でどちらも持つ私としては、そして対振り飛車に右玉を使う私としては、早めの左桂の捌きというのは比較的多用する手段であり、この日の田村プロ同様に「桂損上手の定跡なり」とばかりに良い手だったと思う。

福崎プロは頑張ったが4連敗。



▲内藤 國雄九段?△加藤 一二三九段  横歩取り△3三角型
古豪同士の対戦は若々しい横歩取りに。やらしい話、私は横歩は指さないので見るのに気持ちが入らないが面白い戦いになっている。それよりも内藤先生の痩せっぷりに驚いた。

お互いに奇手を放ち合う熱戦で形勢がどうだったのかは駒がごちゃついていてよく分からなかったが内藤先生が勝った。老いてますます健在とはこのふたりのことを言うのだろう。


▲小林 裕士六段?△富岡 英作八段   後手1手損角換わり
私の愛する棋士の一人、小林裕プロが得意とする一手損、ただし本日は先手番。後手の富岡プロの序盤の△9四歩が意味深。意味深すぎて良く分からないが後でじっくりかんがえてみたい。

棒銀を金矢倉で迎え撃ち、突き違いの歩から銀立ち矢倉に構える先手。後手も雁木の発展系のような不思議な囲いでじりじりとした駒組み合戦が続く。この展開は両者不満なしも小林プロが得意としているところだと思う。

…と思ったのだが先手の小林プロの負け。早速の取りこぼしになった。ざっとみた感じでは、五筋で銀を後退させられて相手の銀が5五の地点を制圧し、八筋の継ぎ歩が入ったあたりでは△5九角の狙いがあってツラい気がする。

そこから暴れてみたが、大した成果は得られず、反対に後手からは桂跳ね以降攻めが続くので気持ち的に指し継げなくなったのだろう。


▲森 けい二九段?△片上 大輔六段
森九段の相掛かり。ヒネリ飛車か?と思ったらまさかの早繰り銀。これは私が大好きな中原流だ。後手が正しく応じると苦しいということで廃れたが、それでも先手は奔放な指し回しが続くことになるので、往年の魔術をみせてくれるかどうか?に期待したい。

と金がどんどん生まれる展開になり、しかも後手玉は手付かずとなって片上プロ勝勢。ひと暴れみれるかと思ったが、冷静にみると序盤で隙無く組み上げたあたりからは後手が良かったように思う。

相掛かり中原流は私の好きな戦法だっただけに少し寂しいが、プロレベルで登場しなくなった理由も分かった一局だった。


▲長沼 洋七段?△塚田 泰明九段
序盤の駆け引きがまずは第1の鑑賞ポイント。振りませんか?どうしようかな?でも振りません、ということで相居飛車。そこからもベテランらしい老獪な序盤で、力将棋に。後手は銀矢倉というか雁木というか。先手は1筋の一手分遅れているが先攻した。後手銀矢倉側からの早い反撃は無さそうなので、先手がペースをつかんだように思うがどうか。

この将棋も二転三転した印象。相居飛車で角筋受け難しというのと、桂馬を取り切る手順というのは良くなったようでなかなか難しい、という典型だったようにも思う。

結果は長沼プロの勝ち。常にC1でトップ争いをしていた塚田プロだが今期は当たりが強すぎるし、紙一重の勝負で毎回せり負けているように思われ、本調子ではないのかもしれない。


▲勝又 清和六段?△宮田 敦史六段
がっぷり四つの相矢倉か?と思いきや後手の宮田プロがなんと右玉に。角交換をしない右玉はどうだろうか、と思う時期が私にもあったが、例の大石だったか島本vs清水の清水右玉を見てから気を変えてなんでも右玉にしている。結構勝率も悪くないです。

本譜も後手は清水流に近い。ただし先手の構想はなるほど流石の飛車浮きと、四枚での堅城構築。まだ勝負は先だがどちらの主張も通った展開となっているように思う。・・・と思ったら千日手に!これもひとつの広瀬旋風だろう。

持ち時間は先手を得た宮田プロのほうが1時間も多い。これも後手番で千日手にする大きなメリットだろう。作戦勝ちして、無理に勝ちに行かず、時間を使わせて有利な状況で先手番を得る。

指し直し局は後手一手損、先手早繰り銀vs後手四間飛車となった。駒組みの後、後手が先攻することとなり、その後も先手からの反撃が難しいので、攻めさえ続けば後手勝ち、という風に思われたが飛車まで守りに投入している先手陣がなかなか崩れない。

決め手は銀を一枚捨てて王手銀取りで後手の攻め駒を除去する手順。やがて勝又プロは打ち疲れて投了となった。具体的な決め手は分からないが、宮田プロがその詰将棋解析能力を受けに全投入した印象のある一局だった。


▲村山 慈明五段?△高野 秀行五段
オレのジメイが高野プロの飛車先突き越し中飛車と対戦。佐藤康光プロの変態向飛車と合わせて私のレパートリーの戦型だが、それほど幸せになった覚えは無い。

力戦で組みやすしとなめられている可能性はあるのでしっかり勝ち切りたいところ。ただし先手は角が使えておらず、通常の矢倉急戦、矢倉中飛車を食らった形に近く、しかも先手陣の条件が悪いので先手辛いかもしれない。

後は後手陣が薄いのでどれぐらい反撃がきついか、後手が攻めあぐねるか?に懸かっているようにも思う。ジメイ、ピンチ。

しかし後手がその後攻めあぐねる前に更に反撃がキツい形となり、先手から飛車交換を強要することが可能となった。壁銀もあり、あとは程なく高野プロの投了となった。

慈明プロにはまだ昇級のチャンスがある。


▲豊島 将之五段?△田中 魁秀九段
本日のベストバウト。ナマクラ流で若手や実力者をなで斬りにする魁秀プロだが本日も駒落ち上手風味の指し回しを見せている。この将棋だけで今月の500円の元は取った。ここをメインに今晩は観戦したいと思う。

ツイッター上でつぶやくと、野月プロ曰く、C1で昇級したときに唯一付けられた黒星が田中魁秀プロにやられたものとのこと。その期から調べると出るわ出るわ、若手、中堅実力者を屠る田中魁秀プロの名局の数々。

田中魁秀プロの将棋を見ていると、力が豪腕という風にあるわけではないのだが、駒の効率と筋の良さで最小限の力で柔よく剛を制す、とばかりに倒していく面白さがある。

本局も如何にも駒落ち上手風の装いから一気に強襲し、豊島プロを投了寸前まで追い込んでいたところをみて床に就いたのが21時半頃。

先程起きると将棋は終わっていた。

結果は…豊島プロの勝ち。嬉しいような、残念なような気分だ。

どこでどうなったのかといえば、ぎりぎりの寄せを見せた田中魁秀プロが間違った…というよりもそれより早い手を豊島プロが見出したということだろう。渋く▲5八歩と受けた場面で、後手が△6七歩と垂らせば後手有望だったとのことだが本当なのかどうか?については専門誌(紙)を待ちたいところ。

ちなみに田中魁秀先生が野月プロをふっ飛ばした棋譜はこちら、片上プロを49手!でふっ飛ばしたのはこちらです(笑)

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この結果、全勝は広瀬王位、田村六段の二人となった。一敗で続くのは9名。戦前の予想で小林・田村という豪腕タイプは取りこぼしが多いので1敗勢で順位が上のプロにはチャンスがあると書いたが早速小林プロがこけていた。

田村プロはその早見え早さしからも分かるとおり、才能はあるが早さし故の安定感の無さが課題。鈴木大介プロがA級にあがったのは持ち時間をしっかり使うようになったのが一因だろう。

田村プロも全勝のうちは程々に時間を使うだろうから、勝ち続けている間は安定しているのではないかと思われ、広瀬・田村の全勝ゴールまであるかもしれない。ただし田村プロは順位が12位と悪いので、1つ負けると頭ハネになる。上位の片上プロをはじめとする一敗陣は依然有力な昇級候補だろう。

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本日は千日手が三つあった。広瀬王位が誕生して最初の順位戦一斉対局だった。私の妄想の域をでない話だが、先日書いたように、後手の最善が千日手となると将棋の性質が変わる可能性がある。

田丸プロの最近のブログで、昔の将棋は打開できない局面が多く序盤で千日手になることが多かった、という風に書かれていたが、今後千日手が増えるとしても過去のそれとは意味合いが違うはずだ。

後手が作戦勝ちして、時間も多く余っている。ただし勝ちきるとなると別問題で、先手からの打開が難しいことだけはハッキリしている。そういう時の千日手が勝負将棋であればあるほどに増えるのではないか。

持ち時間の差はハンデになりうる。何分の持ち時間の差があれば後手を持ってもいいですか?という楽しみのための問いが過去なされた記憶があるが、今後プロは実戦の中でそれを問われることになる。

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ベテランの底力 / アンチ穴熊戦法 第69期C級1組3回戦

▲宮田敦(2-0)?△浦野(1-1)
詰め将棋作家同士かたや、コンピュータ並みの詰め将棋の解析能力を誇るスーパーあつし君こと宮田プロ、かたや詰め将棋作家として名高い浦野プロによる対戦。解くか解かれるか?というそっち方面の方にはたまらない一戦か。

後手の浦野プロが阪田流向かい飛車に構え、先手の宮田プロが7筋に位を取る。その位を確保する銀がブラであることに目をつけて、裏のプロが激しく動く。宮田プロが前局でも見せた積極的だが危うそうな受けを見せているが49手目の局面は色々な駒が当っていてじっくり読まなければその後の方針が立てにくい。まさに詰め将棋作家好みの展開だろうか。宮田プロが自身の着手にスーパーあつし君を賭けた瞬間だ。

終局が19時台だった。結果的には先手の危うそうに見えた受けがやはり危うかった、ということだろう。対振り飛車右玉の失敗例でたまにあるのだが、文字通りの先手陣空中分解、ということになった。

宮田プロがたまに見せる、終盤の豪腕を頼みにしすぎた序盤の荒っぽさが裏目に出たと思う。この敗戦は正直痛い。ただし、最後の詰ませ方は如何にも詰将棋作家、という感じで浦野プロの矜持をみれたので満足。

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▲真田(2-0)?△田中魁(1-1)
後手が、4手目に角道を塞ぐ、例の名人戦第四局コース・・・になるかと思ったらよくある相居飛車後手銀冠になった。真田プロが激しく行く順(角と銀歩の交換になる)を回避し、後手の4五の歩を目標にする攻めを見せた。馬を作って先手満足だろう。

そこからの田中プロの粘りが素晴らしかった。筋の良い田中魁秀プロは、駒落ちの上手のような手段で迫る。効率よく効率よく辛抱して、徐々に差が詰まっていく。前期の対村山慈明プロ戦のような指し回し。

先手の真田プロが成算のないままに寄せに行って一息つかざるを得なかった時に形勢の逆転が確認され、そのまま勝ち切った。強い!

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△小林裕(2-0)?▲近藤(1-1)
先手近藤プロから千日手となり、先後入替で後手ゴキゲン中飛車となった。対する小林裕プロは▲3七銀急戦を選択。力戦・豪腕のイメージが強い小林プロだが、そういう局面に持ち込むまでの序盤戦術もかなり上手い。どっちが良いのか分からないが、機敏な突き捨てから急戦を仕掛けた小林裕プロに対し、たまに出る近藤プロの強気の応酬で過去見たことの無い戦いとなっている。

こういう戦いになれば、小林裕プロの土俵であるし、近藤プロの乱暴な指し回しが出た時の勝率は多分高くない(何時ぞやの飯島戦のような)気がするので小林裕プロの勝ちかな?と思っていたのだが。

と金を作ったあたりではもしかすると、後手は苦しい、尋常な手段では届かないと見ていたのかもしれない。近藤プロの指し回しは最後まで過激で、角を端に捨てて相手の角を抜くような筋も出たが、派手なだけのオドカシに過ぎなかった。

というわけで、力戦の雄、小林裕プロの完勝。

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△田村(2-0)?▲加藤(1-1)
早指し超特急のたむりんこと田村プロと、長考派の重戦車加藤一二三プロの対戦。後手の田村プロが相居飛車模様から陽動三間飛車とした。最初から三間飛車決め打ちという気もするのだが・・・。加藤先生らしい如何にもな攻めで、これはオールドファンがたまらない戦いとなっている。57手目、夕食休憩の局面では相変わらず銀が捌けていないが、桂馬と香車が捌け、4筋に活を入れる4五歩の味がよく、応援も含めて先手の加藤プロを持ちたいと思う。

ここからの応酬は、見事だった。振り飛車の振り飛車らしい捌きと、加藤先生らしい手厚い手順が対抗型急戦における常道をしめしていた。プロの芸の応酬であり、穴熊など現代的な将棋を指す印象のある若手プロたちもしっかりと修行時代に急戦調の将棋の真髄が叩き込まれていることがわかる。

そして本局は加藤急戦の宿命のように綺麗に捌いた振り飛車が優勢になり、食いつき、勝利したのだった。

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▲平藤(2-0)?△小林健(1-1)
角交換四間飛車から先手の平藤プロに誤算があったのだろうか。ボナンザもびっくりの角切りがあって、そこからは終始辛かったように思う。角には角を、の受けにウッカリされたのだろうか。夕休前に小林プロの勝ちとなった。

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▲金井(2-0)?△森けい(0-2)
連続昇級を目指す金井プロは、魔術師森プロとの対戦。後手の三間飛車に対してガチガチの居飛車穴熊を選択した。森プロが押さえ込みを図り、金井プロが打開を目指す・・・という応酬で、夕休時点の局面は後手の三歩得vs先手の桂馬得(歩切れ)。玉の堅さは大差だが、上手くやれば美味しく焼きあがるかもしれない。

上記は夕方の感想。そして今は翌日の朝の四時。これは見事な穴熊の姿焼きだった。序盤できっかけをつかみ損なった先手が必死に手を出すが穴熊の中からの爪はマタギの服をかすめるだけで、なかなか喰らいつけない。

どこまでいっても駒の損得のないやりとり、サッパリした攻め、ということで、失礼ながら負けて元々ぐらいな薄い玉なので気楽な商売。後手としては楽な展開。途中押し返される局面もあったが、再度入玉が確定して、それでも投げきれずに金井プロが指すが、結局負け。

居飛穴は基本的には常に指し切りの不安を抱えており、研究の深さや開発された手筋の豊富さでどうにかなっているというところがあるが、本局は最初の作りというか、攻めの燃料である歩を三枚渡して、桂馬1枚だけ持ったところがケチの付け所だったように思う。魔術師森雞二、強い!

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△北島(1-1)?▲佐々木(1-1)
先手の佐々木プロが5筋位取り中飛車から早々に穴熊に。後手は比較的無策に思える陣立て。これで勝てれば話は早いが駒組み段階では先手の作戦勝ちと思われる。

これは先手の佐々木プロが穴熊の遠さを活かして完勝。ずっと後手が辛かったように思う。



△村山(1-1)?▲西川慶(1-1)
私が今季のジメイは一味違う!と書いた瞬間に先手の角換わり腰掛け銀で負けた村山プロ。私が疫病神なのかもしれないと正直ショックを受けた。

本局は相矢倉。ただしどちらも飛車先不突き。お互いに着々と攻撃陣を整えどちらが得しているか?は私にはわからなかったが、戦闘開始となった時点で後手が指しやすそうに見えた。先手は竜を無理やり作ったが戦力不足は否めない。

ここは上記感想を書いたすぐ後に終わった。村山慈明プロの完勝。

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△豊島(1-1)?▲高崎(1-1)
若手実力者同士、早くも1敗している同士の対局。もう負けられないので双方の秘奥義が見られるかもしれない。戦型は先手の高崎プロが石田流、対する後手、研究家の豊島プロが銀冠。後手の銀冠への組み方が面白く、この辺は関西の研究なのかもしれない。そして高崎プロの3七に角を持ってくる構想も面白い。

43手目の局面ですでに激しい。後手が駒得しそうだが、右金の分、後手が苦労しそうな気がする。

この将棋は仕掛け段階で先手が良かったようだ。振り飛車によくありがちな互角に捌ければ良し、という具合。それが駒得のワカレなのでなおさら、というもの。

高崎一生プロの振り飛車の味というのはその玉頭戦における丁寧さにあると、前期を見ていて思ったのだが、本局もまさにそういう展開となった。美濃で玉のコビンを開けていくのは怖いと思うのだが、それを苦としないので本局の手順を選んだのだろう。

どっちが負けてもまさかの、だが連続昇級まであると言われていた豊島プロ、まさかの負け越しとなった。

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▲片上(1-1)?△福崎(0-2)
ここは後手角交換四間飛車となった。ただしその後の進行は昔の中飛車風味。2筋の歩の関係と玉の堅さで実戦的には先手が勝ちやすそうだが、私はこのぐらいであれば後手を持っても面白いと感じる。割と無策な角交換振り飛車で穴熊に組まれる方なので…。

ただし悪くなると一遍に悪くなるので福崎先生がどこまで辛抱強くさせるか?に掛かっている気もするが、最近気長に指しているところをみたことがないので難しいか?

上記は夕方の感想。途中は後手も苦しいながらもやる気の出る展開だったが、互角よりもちょっと悪いぐらいでも玉形の違いでどうにかなる、という居飛穴らしい展開に。後手の美濃の金がうわずってから、シンプルに飛車を打ち合ってすでに後手に勝ちは無いということで、福崎プロの投了となった。

順位の良い片上大輔プロは、最悪3敗、2敗であれば当確ぐらいの条件の良さであり、残りの相手も鬼勝負というほどのところはないと思うので、取りこぼしがなければ上がれるのではないか。

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△長沼(1-1)?▲富岡(0-2)
先手の三間飛車穴熊に対して後手が5筋位取りに。これは全く分からない。後手が右玉であれば後手持ちたい…というような類型でもなく、多分後手が空中分解するような気がするのだが。穴熊にまとめやすいもまとめにくいもないので楽だが、こういう囲いは常に未知の展開を、自陣の受けとして読み続ける必要があり、神経を使いそうだ。

この将棋も面白かった。やはりアマチュア、観るファン的には相穴熊じゃないほうが格段に面白いなと思う。しかし負けてはプロとしては元も子もないのだった。途中の長沼陣の美しさは感動的ですらあり、ここから全盛期の大山康晴名人に指し継いでもらったらどんな指し方をするのだろうか?とワクワクするものがあった。

ケチのつけ始めは、シンプルに飛車交換されたあたりだろうか。あそこから悪くなった。解説コメントにあったような筋が実現して長沼プロが勝てば相当に面白かったのだが。



△千葉(1-1)?▲高野(0-2)
後手千葉プロが△3三角戦法から中飛車に構えた。普通にゴキゲン中飛車にするよりも、変化・紛れが少ないということなのだろう。反面、飛車先をスムーズに替えられるデメリットがどのぐらい大きいか。

先手は2筋交換は権利として後々まで取っておこうという考え。こう指しても大丈夫でしょうという先手の誘いのスキに、後手が乗じて角を手放して一歩を取りに行った手の成否が本局の運命を分けそうだ。

ちなみに私の経験としては、相手が穴熊であれば、この一歩得というのはかなり有効になるがそれ以外の戦型ではなかなか難しい気がする。本局は上手く指していたように思うが、後手が大さばきした局面では、先手が良さそうに思う。

腰の重い、辛抱強い棋風の千葉プロに対して、軽く仕掛けた玉頭の歩が悪く、先手の高野プロが形勢を損ねたようだ。上記の、夕食休憩前後の私の形勢判断が正しいかどうかはわからないが、それなりに先手もやれるように思ったのだが…。



中田功(1-1)?▲塚田(0-2)
後手が中田プロなので三間飛車はまあ当然。後手三間飛車には穴熊で楽勝、というのがコンセンサスだと思うが、塚田プロは棋風的なものか、あまり居飛穴を好まない様な印象もある。そしてシンプルな右銀の急戦に出たのだった。

44手目の局面までみたが、後手の次の狙いは△2二歩からの大さばきだろうか。先手はこの手番を活かして良い手を指し続けることができるかどうか。

これは対抗型の急戦調ならではの面白さがあった。最後の最後まで駒の損得も、形勢もバランスを保ち続けるプロならではの将棋で、どんなに奔放なようであってもリズムを外さない舞いのようであり、楽しめた。

最後、塚田プロが頓死してしまったのは残念だが、急戦らしいキビキビした戦いを見せてくれたことに感謝したい。



▲大平(1-1)?△内藤(0-2)
そういえば、加藤一二三田村戦も後手陽動三間飛車だったが、ここも同じ。似たような早指しコンビが偶然にも似たような将棋を指し、そして似たような時間に勝っていた。…と思ったら先後が違った。こちらの陽動振り飛車はベテラン側が指していた。

この将棋は何とも先手に覇気のない、老人から攻めて来て下さいというような具合でみていてげんなりしてしまった。途中内藤先生が指せるような局面では、思わず嬉しくなってしまったが、取れそうな銀を取り切れずにおかしくなった。

そこからは、棋力よりも気力の違いが出た、という具合に大平プロが勝った。



△勝又(0-2)?▲日浦(0-2)
後手1手損角換わりで、先手が棒銀フェイクの早繰り銀という私が気になっている手順に。これには銀立ち矢倉が良いようで、本譜の後手の手順はかなり参考になる。

4七の地点にと金を作られた時点で後手が良さそうだ。…と思ったのだがよく見ると先手の金得。それを補う意味でのと金と考えると60手目の局面では手番が先手、玉形も先手、駒の損得もやや先手ということで先手が指せるようだ。

そこからの応酬もよくわからなかったが、最後まで先手がリードを保ってそのまま日浦プロが待望の一勝目を上げた。勝又プロは三連敗。


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全体を通して思ったのは、穴熊はあったものの、相穴熊がなかったなあということ。負けてしまったが、長沼プロの将棋は是非見ていただきたい。

また、加藤一二三田中魁秀、森雞二、内藤國雄というベテランの先生方が、若手・実力者を相手にして相当な力を発揮されていたのが面白かった。

上記の結果により昇級戦線は以下のようになった。

3-0:田村康介、小林裕士
2-0:広瀬章人、脇謙二
2-1:片上大輔、宮田敦史、真田圭一他、計14名

トップを走る二人がそれほど安定感のあるタイプではないので取りこぼすことを考えると安定型で順位が上の棋士にチャンスがあるように思う。

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