第38期女流名人位戦第4局、里見香奈女流名人が3-1で防衛!

第38期女流名人位戦五番勝負第4局は後手里見香奈女流名人の四間飛車となった。

対する先手の戦型に注目したが、珍しくイビアナだった。これは面白くなった。

序盤の展開は一歩手持ちにした先手は満足だろう。銀冠に組み上げた後手の里見香奈女流名人も、後手振り飛車なのでこんなもんだろうか。

中盤、60手目の指し手は意味不明。たまに清水市代プロが見せるような、強いからこそ指せる手というところもある。

お互い、牽制しあった駆け引きが続き、後手はトーチカ風に。先手は穴熊で7筋に位が張れたので不満なし。後手は攻めてもらうしかないので、ここも先手清水市代ペースだろう。

しかし、感想をみると指しなれてないので手をどこから作るか悩んでいたという。たしかにその雰囲気を感じたのが大駒交換になった局面。

また、その後の飛車を成り帰って切る手もおかしい。一目無さそうな手で、ちょっとひねりすぎた印象がある。それだけ苦心しているということなのだろうか。このへんの手も強すぎるからこそ指せる手、ではあるものの、等価交換で行けば堅陣が生きる、という穴熊将棋らしさは少ない。

と金を作られて、それが金銀と交換になった時点ではほぼ勝負アリ。終盤はまさかの、序盤で生じた7筋の交換までもが裏目に出てしまった。

どちらも精度の高い将棋だったかどうか?はわからない。特に清水市代プロは決着のあるところで初めて穴熊を用いたという戦型選択のところがどうだったか?という気がしなくもない。(当然研究はあったと思われるが)。

里見香奈女流名人は序盤中盤のついて行く思想と、終盤の一気の加速が充実度合いを示しているように思われる。香車の二枚切りのあたりは、女羽生ならぬ女渡辺、というような鋭さだった。

ほぼ圧勝といってもよい、防衛劇で第38期女流名人位戦五番勝負は終わった。

イカガ?(´・ω・`)つ 女流棋士:観る将棋ファン向けのオススメ



関連するタグ 里見香奈 清水市代 女流名人戦 四間飛車 穴熊

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メカニカル 第38期女流名人位戦五番勝負第3局 ▲里見香奈-△清水市代

近年の石田流の復活は、▲7七桂跳ねを出来るだけ後回しにすること、左銀を玉側にもっていくこと等々にある。

本譜の里見香奈女流名人の指し回しは、戸辺誠のような厳格な・厳密なメカニカルなものを感じさせるものだった。

序盤に乱せるだけ後手陣を乱し、中盤に清水市代が玉から離れた金銀をまた集結させようとしたところで、ほぼ歩だけで撹乱した。後手の飛車は一度も活躍することなく、右側の金銀が6・7筋で遊び、玉の周りには兵がいない状態になっていた。

75手目の飛車周りが勝利打点の味。王様の側から騙されて誘導されて里見香奈女流名人の軍の主力である飛車で狙いを定めた場面、歩の裏に香車、というのがキツいのはよく知られるところだが、それと同じ筋が炸裂した。

あくまでも旧式の武器で戦う清水市代が新世代の振り飛車党にタイトル戦で優位に戦局を進めていくのは難しいように思うのだが…。

振り飛車党は仕上がりが早く、デビュー四戦目でタイトル挑戦を決めた長谷川さんのように、本来の実力差以上の相性を発揮されることが今後も多くなる…かもしれない。

関連するタグ 石田流 清水市代 里見香奈

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女流棋界にラムタラあらわる?! 第5期マイナビ女子 挑決 ▲長谷川優貴-△清水市代

棋譜はこちら。

http://mynavi-open.jp/120202/120202_shimizu-hasegawa.html

(ちなみにラムタラとは、4戦4勝で史上2頭目となる欧州三大競走完全制覇を達成した名馬のことです。その後、日本で種牡馬として供された馬でもあります。)

アマチュア時代から、その棋力には定評があった長谷川優貴が、プロ入り僅か四戦でタイトル戦挑戦を決めた。

戦型は先手中飛車に後手清水スタイル。これは相性の妙というか、そういうものがあったように思う。長谷川優貴の明らかな弱点は居飛車穴熊にある。これはもう確実な話で、問題はそれを克服しているのかどうか?だった。

しかし、清水市代は居飛車穴熊を余り用いない。そのために生じた金星だろう。また、中盤の飛車を見捨てての勝負は、男性プロであっても成否が微妙な取引だったと思う。

マイナビの覇者、上田初美は穴熊においては一日の長がある。対振り飛車には居飛車をもつことも多く、居飛車穴熊を全局投入するだろう。その中で、長谷川優貴が神の手を繰り出すことが出来るのかどうか?にタイトル奪取の如何は懸っているだろう。

(女)羽生の逆襲? 女流名人戦第二局:清水市代vs里見香奈

女流名人戦第二局、清水市代vs里見香奈は後手の里見香奈が勝った。

ただしあの陣形の違いを思えばやや後手番の里見香奈変調?ぐらいまでありそうな、序盤・中盤だった。勝ったのは囲いの性能、序盤の駒組の作りにあったように思う。(ただしあれでこそ清水市代、という序盤だった)。

以前ツイッターにも書いたのだが、里見香奈が奨励会に入って入品した(初段になった)ということは、他の女流棋士に対して言えば、精神的優位に立てるものだが、はたして対清水市代という意味ではどうだろうか?

女流棋士という存在意義をほぼ一身に背負い、それに負けること無くむしろその責任を糧として更に一段上の高みに登ったのが清水市代という棋士だ。

女流棋士の象徴として、アマチュアトップや、男性プロを屠り続けている。

里見香奈女流名人はもしかすると、清水市代の恐ろしさを奨励会に入る前よりも入ったあとのほうが、感じているのではないか。

ここ最近の二人の対戦を見ているとそのように思えてならない。


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男性棋士の新旧トップである羽生善治渡辺明にも少し潮目が変わったような印象を受ける。


JT杯の決勝で、初めて食らった「羽生マジック」の味はどんなだったのだろう。男女新旧トップの戦いに「人間同士の戦い」「(好きな言葉ではないが)人間力の戦い」の要素がここからは好むと好まざるとにかかわらず入ってくるのではないかと見ている。


関連するタグ 里見香奈 清水市代 羽生善治 渡辺明

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ペース配分 第1期リコー杯女流王座戦第1局 ▲清水市代-△加藤桃子

この棋戦のトーナメント表(http://www.shogi.or.jp/kisen/jo-ouza/1/honsen.html)を見て欲しい。

右側の山の違和感がわかるだろうか?とりあえずはアマがいないことはわかる。全員段級位が付いているからだ。

しかし、よく見ると二人の奨励会2級がいることがわかる。しかも挑戦者決定戦がその二人同士で戦っている。では、女流棋士が弱いのだろうか?というとそういうわけではない。

右の山の敗退者の多くが男性棋士に勝ったことがある棋士が多く含まれている。単純にこの奨励会参加中の二人の棋士は強い。そういうことだ。

勝負事において、誰が弱いとか、なぜ勝ったのか、とか敗因は?などというのは基本的には関係ない。強いから勝つ、それだけの話しだ。

そういうわけで勝ち上がってきた加藤桃子奨励会1級は強いからこの大舞台に立っている。勝ち上がりの途中で奨励会の昇格も実現したようで、競馬で言えば夏の上がり馬、という感じだろうか。


第1期リコー杯女流王座戦決勝五番勝負第1局 ▲清水市代-△加藤桃子

対する、左の山を登ってきたのは常勝女王、清水市代清水市代にとって得るものの少ない戦いとなった。もしかすると外野の声としても判官贔屓の日本人らしく加藤桃子を応援するものが多いかもしれない。

とはいえ、今期の成績が示すとおり女流棋士NO1として、その存在を賭けた戦いを一身に背負うこととなった。対あから戦といい、清水市代だけが耐えうる試練として将棋の神様が与えた…という物語を外野は思うが、当人たちは勝負に没頭するだけなのだろう。

戦型は清水市代先手ということで相掛かり中原流となった。この将棋は最近復活しており、私はとても嬉しい。自分で指すことはもはやないが、最も好きな戦型のひとつだ。

先手は目一杯に盤面を使い、ギリギリのシノギを後手がみせる…という戦いになる。

プロを目指すものとして、事前の準備は重要だ。加藤桃子はおそらく先手番ならこう、後手番ならばこれという作戦を用意していたはずだ。

そしてこの先手の作戦は予想されていたこともあり、かなり先の局面までは予め講じていたのではないか。

54手目の△3三銀打ち、までは前例を踏襲しているが、要はそういうことだ。

そこから、最強手の応酬で将棋は進む。ちょうど昔から男性棋士の将棋は手を殺しあう、女流棋士の将棋は主張を通し合うというような趣旨の話があるが、その通りとなった。

本局は60手目あたりまで両者の指し手が早い。これまた競馬で恐縮だが、大舞台、初のG1に出場した若駒が、若干かかり気味に前に出ていき、全体がそれに釣られてラップが上がっている状態だろうか。

このペースではこの距離はもたない。持ち時間3時間というのは、距離でいえば1800~2200メートルのイメージだろうか。マイラーとステイヤーの両方が戦える距離だ。

ちょうど清水市代という棋士はその真摯な取り組み姿勢とあわせて、時間があればあるほど実力を発揮するタイプだ。実力のブレを丹念な読みで整えていく。その凛とした立ち居振る舞いは、どんなに長時間の対局でも決して乱れることはない。

ある種のものが繰り返しの抽出を経て生まれるようにして、清水市代の名局は紡ぎだされる。

対する加藤桃子はまだ修行中の身だ。途中で私も気づいた(http://twitter.com/#!/shogiwatch/status/127640955527495680)のだが、修行で染み付いた時間感覚が決して抜けることはない。

ある種の職業につく人々の体には決して抜けることのない香りがまとわりつくものだが、そのようにして指し手を進めていく。修行においては、逡巡が命取りとなりうる。その研鑽の道をくぐり抜けることができたものだけに、清水市代のような洗練の過程が許される。

結果的には、その両者のペース配分が将棋の命運を分けることとなったのだが、そのペースを落とすべきタイミングはほんの1・2手のはなしだったのだから将棋というのは恐ろしいものだ。

先に息が上がったわけではない。若駒の頼もしい走りに呼応するようにして最強の手を繰り出した61手目に勝負のアヤがあった。

すこしペースを緩めていれば、もう少しだけ選択の幅があったかもしれないが、この61手目の選択により、清水市代の勝ちは一本道となっていた。

ニコニコ動画の、真田圭一プロの解説が素晴らしかった。声がすっきりしていて滑舌が良く、喋りが続く。一人での解説というのはなかなかに大変だと思うが、合いの手としての画面上のコメントがあるので、ニコニコ動画としては1名体制のほうが良いのだろう。

攻防手、攻めの手が続く中での受け一方の手により、先手は奈落に落ちた。ここでペースを緩めることにより、後手の単騎逃げが実現してしまった。

▲8六歩という手は、清水市代ほどの実力者であればこれでは届かないという感触は絶対にあったはずで、序盤の手の流れから言っても▲7一銀は打ちたかった。どこで打つか?というタイミングだけの話で、その時期をはかるためだけの考慮時間であり、手の組み合わせだったように思う。

▲7一銀を打たないのであれば、▲7三歩という手の意味がなくなってしまうので、負けてもどこかで打って欲しかった気はする。(http://twitter.com/#!/shogiwatch/status/127609041932394496)


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奈落、と書いたが戦型の特性上負けるときはそうなることもあるので仕方ない。得意形で負けのワカレではなかったので、そこまでのダメージは無いだろう。それよりも加藤桃子のペースに惑わせられなければ大丈夫という手応えまで感じていてもおかしくはない。

次の後手番での清水市代の戦型選択に注目したいが、相居飛車の矢倉系の将棋か、加藤桃子が戦略家なのであれば清水市代の右玉を誘うかもしれない…。

加藤桃子は時間の使い方としては今のままでいいと思う。プロ野球選手を目指す高校生が木製バットで戦うような考え方もあるが、まずは勝ち抜かなければその高みに到達することはできないのだから。



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(2010/02/24)
野月 浩貴

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この戦型の面白さに目覚めた人は是非。相掛かり系の定跡本は一〇年に一度しか出ないので、出たら買いです。


関連するタグ 真田圭一 加藤桃子 清水市代 相掛かり 中原流

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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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