渡辺明、二冠返り咲き!第62期王将戦第五局▲佐藤康光vs△渡辺明

渡辺明という棋士を後に振り返った時、どういう立ち位置にあったとされるのかまだ分からないが、1つだけ確実なのは、「羽生世代をしばき倒すために生まれてきた男」ということだろう。

言葉的には不謹慎かもしれないが、その勝ち方から私が感じるのはそういう印象だ。それほどまでに強く、そしてふてぶてしいという言葉が用いられることもあるが堂々とした立ち居振る舞いと、指し回し。

今回の王将戦にはかなり重要な意味があると私はみていて、それはこの羽生世代の棋士の中ではもっとも豪腕タイプの佐藤康光との対戦成績が一番悪かったはずで、過去のタイトル戦でも棋聖戦で奪取できず、というのがあったり、初期の竜王戦でも連敗スタートだったこともある。

それが徐々に番勝負での負け数を減らし今回は遂に1敗しかしなかったのだからかなり成長したというか、対佐藤康光という戦い方が身についたような雰囲気を感じる。

今期王将戦5局までの渡辺明プロの指し回しを総括すると、佐藤康光プロの創意工夫を空振りに終わらせるような展開を上手くつくっていたといえる。第五局もまた、そういう印象を受けた。

先手佐藤康光プロの作戦は森下システムだった。これが衰退した理由は雀刺しが強力ということだったがどこかに佐藤康光プロの工夫があるはず、と見ていると指されたのが35手目の▲4六角だった。

この手は正直に書くと良い手とは思えなかった。先手で手損してしかも狙われそうな位置。私が渡辺明プロ並の実力を持っていれば、これでちゃんと対応すれば悪くなるはずがないな、と思うだろう。

矢倉棒銀が佐藤康光プロの構想だったが、一歩損して角が危険な場所にいて戦果としてはどうだったのだろうか。

封じ手の局面ぐらいからは後手渡辺明プロの反撃タイム。角を追いやってから端桂でなんとなく後手の模様が良さそうに思える。(ただプロの解説では8六歩という防御手が指摘されていたようだ。)

67手目の▲4六金が強い手で後手としては悪くない交換のように思える。守りの銀ではあるが金との交換であれば良いだろう。

71手目の▲3七桂は援軍を出す意味で仕方ないが、後手の攻めの桂馬と比べて文字通り一歩遅れている。先手の主張というか拠り所は、後手の角の働きが悪いことと、後手の攻めの銀が立遅れてること、そして飛車が八筋ではなく九筋であること、なのだがこのへんが後に、上手く活用されていくこととなるのだった…。

まず先手の攻めに対する応手で角がさばける。そして手番をとってから昼食休憩後の再開手の△3七角が私好みの一着。これが先に入って馬が出来るのであれば、やはり後手がいいと思う。しかし意外?なのは本譜で先手が指せると佐藤康光プロはみていた、という感想が残っている。

対局中に作動していたGPS将棋Twitterの呟きを観る限りではこのへんでは既にGPSは後手が有利だと判定していた。この事実だけを論拠に、既にトッププロレベルの実力がある、とはいえないが、興味深いところではある。

角打ちに対する逃げ場所が悪く本譜の展開でぎりぎり先手玉が寄っている。92手目の局面を佐藤康光プロは良しと判断して進めていたらしい。それが本譜で指せると見ていた、という意味。角打ちが80手目。そしてこの飛車を取られてから△5九飛が92手目。12手。

ニコ生の解説者として来ていた行方尚史プロが語っていたエピソードで、対コンピューター将棋の講座を開発者側が開いてくれたらしい。そこで「コンピューター将棋は30手読みますからプロの皆さんは30手以上先の局面で良くなるようにこころがけてください」といったそうだ。行方尚史はそのコンピューター将棋の開発者の言葉にやや憤慨した雰囲気。

ニコ生の画面には「無理www」「それはむりwww」というような言葉が飛び交ったそうである。そりゃあ人間はそんなに読めるわけがないよ、というニコ生視聴者。

ところが次の行方尚史プロの言葉で一気に場の雰囲気が変わる。行方尚史「そんなのプロだったら当たり前に読んでますよ…」と一言。

「プロスゲー!!!」という驚きのコメントでうめつくされる画面。という展開だったらしい。

しかしちょうど偶然にもトッププロ同士の対局でそのシチュエーションが訪れた。80手目に読んだ91手目の局面。良いと思って進めた結果、実際にはどうだったのか。というと、良くなかった。これがたまたまなのか。

もしかすると開発者が言いたかったのは、「30手平均で基本的には全選択肢をなめ尽くして、その中から最も数値の高い手順をとりますので、人間はその先に良くなる変化を選ぶと勝てますよ」ということなのかもしれない。

シンプルにはそれはほぼ神の領域と言っていいような気がするのだが。神は将棋を解明しない。しかし人間の指し手に対する回答は完璧に準備する。というような。今から本当に電王戦が楽しみである。

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これで渡辺明二冠返り咲きである。竜王と王将。竜王将。棋王戦も今週末に控えているがここも奪取すると三冠。竜王王将棋王で竜棋王将。なんかソーシャルゲームのキャラがどんどん進化していくみたいな感じですね。


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(2012/03/24)
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