伊奈川愛菓への称賛と崇拝 「将棋棋士人狼」第2弾@ニコ生

いやー面白かったですね…。以下、多分にネタバレを含みますのでタイムシフト視聴の方はご注意ください。

【将棋電王戦記念】将棋棋士の人狼2~伝説の企画再び~を観ました。

参加棋士は以下のとおり。

中田功七段、村中秀史六段、大平武洋五段、及川拓馬五段、伊藤真吾四段、門倉啓太四段、藤田綾女流初段、
安食総子女流初段、井道千尋女流初段、貞升南女流初段、伊奈川愛菓女流1級

いやー面白かったですよ…。

まず前回登場メンバーは前回の流れをくむ感じでした。鋭さでいうと中田功七段、村中秀史六段の二人は群を抜いていました。女子陣では藤田綾さんは狼になった時の牙の切れ味が素晴らしい。安食総子さんの市民になった時の女の感的狼検知能力が凄いw

門倉啓太プロと及川拓馬プロは善良ですがやや女性陣の強さに比べると頼りないかな?w 特に門倉啓太プロが人狼になった時の言動がおかしかったですね。あれは絶対に浮気しちゃ駄目なタイプです。すぐに彼女・奥さんにバレますねw

意外に良かったのが大平武洋プロ。普段の寡黙さが上手く活かされていたというか、浮ついたところがないので読みにくかったですね。様子のおかしさから読まれることもなければ、論理矛盾がでないので大丈夫、という。

伊藤真吾さんは普段のスベリ芸のせいか、安定の初日吊られが素敵でした。初手▲7六イトシンというコメントが画面に流れて噴きましたwww

女性陣では井道千尋さんが言動の強めなところがやや無駄に狙われるところがあって、ノーマル市民プレイっぽくない感じになったのが敗因でしょう。終わった時の感想でこんなに狙われるんだなってのがありましたが、ちょっと緊張感がキツさに繋がったのであれがなくなると良いのかも?と思いました。

今回のクライマックス・見所はなんといっても貞升南女流初段と伊奈川愛菓女流1級ですね。伊奈川愛菓さんは人狼経験者だけあってゲームを引っ張ります。しかもクールビューティというか冷静な様子で人狼に回っても市民側に回っても素晴らしい。

ニコ生やTwitter上では彼女に対する称賛と、そしてなぜか崇拝の言葉が並びました。私もその1人ですが…一気にファンになりましたね…どういう人なのか、あとでウィキペディアで調べたいと思います。殆ど変態ですね…すいません…。しかし凄く可愛かった、いや美しかったです、世が世なら親子ほどの年齢の差なのに崇め奉りたい!><

…。

まあ、Twitterでほら、ニコ生鑑賞を盛り上げるためにですね、まあ言っただけですけどね…(取り繕い)。

そして第三ゲーム、役職伏せてニコ生視聴者も推理したんですが、このゲームが神展開でした。第二ゲームも神展開でしたが、こちらもすごかった。

このゲームの主役はなんといっても貞升南女流初段ですね。ちょっと通常プレイでのボロボロさが安定の迷走っぷりだったのですが、この人は狂人(多重人格者)プレイが向いてますねーとTwitterに書いていたのですが、その性能が最大限に発揮されました。

こういう、リアル狂人プレイな人っているんですよね。天然狂人。それがぴったりと役柄にはまっていました。最初の読み通りの人狼二名だったのですが、貞升南女流初段の狂人プレイの巧さ?天然さ?で完璧に読みが狂いました。

そして、あの伊奈川愛菓さえも吊るし対象に貶められるという素晴らしい狂人プレイでした。まあ、伊奈川愛菓さんの吊るされる時の、遺言がまた萌えたわけですが…。

中田功さんが完璧にそのコンピュータを狂わされた貞升南さんの狂人プレイは本当に観ものです。第三ゲーム最後の夜は本当になかなかみたことない告白が繰り広げられます。

いやー本当に面白かったです。第三弾も早くみたいです。毎週やらないかな?w


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二枠確定 第69期C級2組9回戦


ラス前にして昇級者が決まる可能性があったが、三名枠のうち2つが確定した。佐藤天彦プロと糸谷哲郎プロの二人。この二人はC2では流石に能力上位であり、いつ上がってもおかしくなかった。また、同期で、常にやや佐藤天彦が先んじていたということもあり(三段リーグから四段への昇段はダニーのほうが早かったが)、そういう意味でもこの二人が同じタイミングで上がるというのはまた佐藤天彦が抜き返そうとしているようにも見え、面白い。

今期についていえば、佐藤天彦こそがもっとも上がるべき人であり、夏ぐらいから他棋戦を含め、延々と勝ちまくっている状況。次のタイトル挑戦者としては、戸辺誠か佐藤天彦ではないかと密かに考えている。


阿部 健治郎四段(7勝2敗)○?●佐藤 慎一四段(4勝5敗)…21時29分
まだ理論上は昇級可能性が残る阿部健治郎プロが佐藤“慎一さん”慎一プロとの対戦。戦型は相矢倉になった。

矢倉模様から後手の急戦の気配をみて、先手が工夫し、それに後手が反応して相掛かり調に。阿部健治郎プロは藤井猛プロとの研究会を行っているとのことだが、まさに藤井猛流の機敏さ、序盤構想力を感じさせる対応であり、そこからのアグレッシブな両方の桂馬の運用にも兄弟子の雰囲気を感じさせた。

将棋としては五段目の飛車、歩越しの4四角が先手を牽制するつもりがそれを目標に迎撃された、という形であり、先手の圧勝だったように思う。負けた方の持ち時間が多く余っていることを残念に思う。


村中 秀史六段(3勝6敗)●?○糸谷 哲郎五段(8勝1敗)…21時45分☆
糸谷プロが得意の一手損で研究?趣向を見せて序盤でリードを奪った。これは私が知る限りではほぼ初お目見えな構想だと思う。

先手の▲6八玉をみて、後手が早繰り銀に出た。どうせ突く歩なので通常と比べて手順前後ではあるがその局面さえ無事に過ぎればなんということはない。逆に突くからこその準備を感じさせるので、先手としても、それなりに勇気がいるところ。

普通に進んでみると後手の構想が成功し、一歩得になっていた。先手が角を手放した辺りでは少し後手が良さそうで、なによりも早繰り銀の弱点である飛車のコビンが安全なことの精神的な負担の少なさはとても大きい。

時間を使って最後まで指し続けたが、先手の村中秀史プロにチャンスは少なかった。これで糸谷プロは昇級となった。嬉しい!


長岡 裕也五段(3勝6敗)●?○佐藤 天彦五段(9勝0敗)…21時51分
糸谷哲郎ファンであるところの私ではあるが、今期についていえば、佐藤天彦こそがあがるべき、と思われる全般的な活躍を見せている。

戦型はいわゆる一手損の中座飛車。1?3筋からの攻めに備えて事前に早逃げしているこの形だが、それに対してどこから攻めるか?が先手に問われている。本譜はやはり1?3筋方面から攻めたが先手の攻めよりも後手からの方が分かりやすく、そして早かった。

まだ大流行ではないが、いわゆる一手損と同じくパラレルワールドな印象を持っている。SF等でよくある、「ある一つの条件以外は全て通常の世界と同じ世界」というやつだ。

最初は難解だったが、中盤、途中からは後手の早逃げが生きているように思われる展開で投了図は大差とまでは行かないものの後手の快勝といえよう。全勝でアマヒコ昇級!



村田 顕弘四段(3勝6敗)●?○遠山 雄亮四段(7勝2敗)
遠山雄亮プロがゴキゲン中飛車に構え、先手の村田顕弘プロが▲3七銀急戦。先日の銀河戦の糸谷新手?構想が見られるかと思ったが、中飛車側の交換に乗じて二枚銀が前に繰り出されていく展開に。(私はこの形における押さえ込み風味の方針はアマには向かないと思っている)。

何度かの銀交換から打ち直しを経て、先手が竜を作る代償に銀桂交換とした後に自陣に竜を引いた75手目の形勢判断はとても難しい。如何にもプロ同士のそれぞれに少しずつ譲歩して自身の主張を通した面白い局面だと思う。

81手目の局面は玉の固さは後手、駒割は▲桂歩歩(竜)△銀、手番は後手。ただし歩を全部の筋に打っているので先手の持ち駒の歩の意味がなく、かつ竜は内竜。特に▲3七に打たされた歩が面白くなく、後手がいいだろう。

そこから実戦的な穴熊を先手の村田プロが目指すものの、そこを狙われて後手の遠山プロの勝ちとなった。特に端への垂れ歩の辺りはアンチ穴熊派としては見ていてとても面白い。


稲葉 陽四段(7勝2敗)○?●上野 裕和五段(2勝7敗)…23時39分☆
先手中飛車から持久戦模様、相穴熊になった。双方銀冠からの矢倉なので桂馬や香車を打たれる手筋が緩和されている。その分と金や大駒の働きの効率性が戦局に大きな影響を与えるわけだが、そういう見方でみるとこの寄せ合いに入る前の上野プロの投了の意味がわかるのではないか。


菅井 竜也四段(7勝2敗)○?●牧野 光則四段(6勝3敗)…23時40分☆
6?2同士での戦いは菅井竜也プロの勝利となった。出だしで勝ち負けが交互に来ていたので順位戦向きではないのではないか?というような失礼な憶測を書いた菅井将棋だが見事に来期での昇級が見える位置をキープしている。

将棋は先手中飛車から角交換となった。先手は左右分断形の中飛車から片銀冠を築く展開。しかし菅井将棋の面白さ、ギリギリの踏み込みの良さがよく出ている対局だった。

殆ど居飛車党感覚ともいえる踏み込み。あの片銀冠完成前に仕掛ける発想は凄いと思う。普通は逆に離れ駒がある状態で仕掛けたいとするものだが、自らその瞬間に仕掛けるという。

結果的にはそのあたりからのやりとりで少し苦しくなったのだが、将棋というのは形勢の振り子が常に揺れ動くことを考えると、少し振ってあげた、ぐらいの余裕まで感じさせる。

案の定、形勢が動いた後、また少しやりとりがあった85手目では先手が盛り返したようにみえる。ここからの後手の強防と先手の攻め、というやりとりがとても面白いので是非見てほしいところ。



澤田 真吾四段(7勝2敗)○?●西川 和宏四段(6勝3敗)…0時1分☆
この勝負はよくわからなかった。しかしこの二人それぞれの個性が発揮されていたと思う。対抗型ではあるものの、急戦ではなく、穴熊でもなく、それらを前提とした何か、というものだった。

強いて言えば穴熊風味だろうか。

如何にも現代風であり、そして前衛的であり、なんとも不思議な味わいの将棋だった。



中村 太地五段(4勝5敗)●?○横山 泰明五段(7勝2敗)…1時21分
中村太地プロといえば、元振り飛車党で今居飛車党の棋士。後手の横山泰明プロと共に、新人王戦準優勝男対決となった。

なんとなく、トレンディードラマでフラれた者同士でくっつくような雰囲気の二人。

戦型は後手のゴキゲン中飛車に先手が▲3七銀戦法からの穴熊。後手は片美濃。80手目前後の状況をみて、後手が勝つとはとても思えないのだが、途中というか最終盤でもつれてしまった。

この負け方は相当にアツいと思う。

+++++++++++++++++++++

この結果、佐藤天彦プロと糸谷哲郎プロが昇級を決めた。この二人は最終戦を順位を賭けて戦うことに(直接対決という意味ではない)。

三番手は横山泰明、稲葉陽、遠山雄亮、澤田真吾という順番。その下にも2敗勢が続くが、流石に届かないだろう。(この四名の全員が最終局を負けて終るとは考えにくい)

横山泰明プロにとっては鬼勝負、アベケンプロとの対局が控えている。順当であれば稲葉陽プロがあがるような気がしているがどうなるか。

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2010年11月1日、第4回朝日杯二次予選三局の感想

この日は三局あった。どれもそれぞれに面白い戦いだった。


第4回朝日杯二次予選 ▲丸山忠久?△中村太地

早稲田の先輩後輩対戦は後手中村太地プロのゴキゲン中飛車丸山忠久プロの▲3七銀急戦となった。最近は▲7七銀からの二枚銀の展開を多く見る気がするが本譜は銀単騎で単純に攻める方針。

この形はかなり前からあるような気がするが、2筋の突き捨てを先に入れて、3四の地点で得た歩を2三に使えるのであれば居飛車が満足かもしれない。32手目の△4二角が旨そうに見えたが、後手の左翼を捌かせること、成銀が遊ぶことを怖がらずに単純に駒得を求めたのが正解だったようだ。

7七歩と蓋をして角道が閉じたが再び通り、自分の歩が邪魔でなれなかった飛車が成り込んだあたりでは先手の模様が良い。その後、派手に大駒が振り替わって97手目に手番が先手に渡った。「大駒は近づけて受けよ」を狙う後手に対して指した99手目の▲7四歩が勝利打点の味。

このシンプルな速攻でもし先手が良いのであれば、後手ゴキゲン中飛車というのはかなり辛い気がする。▲3七銀がゴキゲンを滅ぼすのかどうか?に今後注目したい。


第4回朝日杯二次予選 ▲村中秀史?△松尾歩

居飛車党同士の対戦は松尾歩プロの一手損中座飛車となった。それでも1?3筋から攻めるために端歩を伸ばすか、或いは他のところから手を作るか?というところで先手の村中秀史プロは後者を選択した。具体的には先日の日浦vs佐藤天において日浦プロが見せた構想をなぞる。

研究手は53手目の▲8六歩だったが、取れる金を取らずに「と金は引く手に好手あり」とした△8七とがあり、後手が良くなった。日浦アマヒコ戦もそうだったが、この戦い方は先手の右翼が全く働かないのが不満であり、まだ修正が必要なようだ。1筋の位を取らずして他でポイントを稼ぐ手順があるかどうか?に今後期待したい。或いは山崎プロが新々山崎流を確立するかもしれない。


第4回朝日杯二次予選 ▲松尾歩?△丸山忠久

実力者同士の対戦。私は一手損を密かに希望していた。その通りになり、しかしその後の展開が全く予想していないものだった。

本譜の手順からの一手損は本当にプロらしいと思う。最初の20手目までをじっくりと解説を見ながら並べて欲しい。後手は一手損しているが、飛車先不突のため、また先手は飛車先を決めていることとあわせて、それらの違いを活かしきれば(相手の2筋からの攻めを甘くして、後手からの攻めにおいて8筋を関係ないものとすれば)逆に得していることになる。

一手損の後手番だけをもつ私としては。本譜の序盤については後手がかなり得をしているように思う。後手番をもっていてやりたい手というのは本譜の手順にも現れる△6四角。この角を打てると勝っても負けても満足、というぐらいに気持ちが良い。

角換わり腰掛け銀系の将棋で、8四に角を置く筋もあるのだが、攻撃力に富む反面、角がやはり標的になることがあるが、6四の場合は攻撃の要素もあるものの、先手の攻めを牽制している意味があり、特に2八に飛車を置きっぱなしにしずらいので二筋の二手を甘くしている意味がある。

双方の駒組みがひと段落した時点では先手の棒銀が捌けなかったと見ることも出来るので後手の作戦勝ち模様。ただし角が睨み合っているのでお互いに仕掛けどころをさぐる展開となり、先手の消極的な手をみて後手の丸山忠久プロが仕掛ける形で開戦となった。

私が痺れたのは70手目の△6七歩成。これぞ角換わりのスペシャリスト丸山忠久、という手で、自玉が堅いことと先手の攻め駒(飛車角銀桂香)が全て働いていない!ということで飛車を一枚渡しても大丈夫とみたもの。ここからの手順は角換わり愛好家にとってはまさにこれだけでご飯三杯、という展開。

角換わりのこの楽しさを知らない振り飛車党を哀れに思う…というと大袈裟だが、角換わりの攻めの楽しさを存分に味わうことができる一局だった。

丸山忠久プロが、巧みな序盤戦術から優勢⇒勝勢と淀みなく指し進めた会心の一局だった。


以下、上記の対局と関係していそうな戦型の最新書籍一式。


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プレイバック糸谷哲郎 第65期C級2組順位戦の全局。

毎月500円払っているのに週末に中継がないと寂しいものだ。というわけで、好きな棋士の1期分まるまる振り返るという特集?を開始してみる。

将棋倶楽部24をほろ酔いで指し、勝ち、そして今からレーティング対局を指すには危ない感じなのでプロの将棋を並べる、、いわゆる至福の時ですね。

特集創刊記事の初回は糸谷哲郎を選んだ。私が好きな若手NO1で、彼の将棋世界での対振り飛車右玉戦法の短期連載講座が大変面白く、右玉を指すようになった次第。

第65期のC2は糸谷のデビュー期で、同期順位戦デビューの面々は高崎一生、遠山雄亮、糸谷哲郎、中村太地がいる。


関西新鋭棋士実戦集

マイコミ将棋books
豊島将之 /糸谷哲郎 毎日コミュニケーションズ

1,380円 (税込 1,449 円) 送料無料

【内容情報】(「BOOK」データベースより)
近年関西には、将来を期待される若手棋士が続々と登場しています。本書では、その中でも特に評価の高い3人の将棋を、詳しい変化とともに解説してあります。それぞれの将棋には、序盤で自分のペースに持ち込む指し方とか、苦しいときの粘り方など、勝利するために必要な要素がたくさん詰まっています。一局の中でポイントとなる局面については変化を詳しく載せましたので、そのエッセンスを吸収してほしいと思います。

【目次】(「BOOK」データベースより)
第1章 豊島将之四段(深夜の大熱戦―対村中秀史四段戦/早指しの熱戦―対飯島英治五段戦/力を出しきった一局―対山崎隆之七段戦/憧れの棋士との対戦―対谷川浩司九段戦)/第2章 糸谷哲郎五段(角換わりの会心譜―対橋本崇載七段戦/ねじりあいを制した角換わり局―対阿部隆八段戦/1手損角換わり棒銀対右玉―対西尾明四段戦/第37期新人王決勝第2局―対横山泰明四段戦)/第3章 村田智弘五段(相穴熊の攻防―対杉本昌隆六段戦/自分らしい将棋―対南芳一九段戦/居飛車穴熊の攻略―対浦野真彦七段戦/15連勝目の一局―対西川慶二七段戦)




1回戦 対局日:2006/06/20  先手:堀口 弘治七段 後手:糸谷 哲郎四段

順位戦デビュー戦は、知っている人は知っている戦慄の将棋だった。戦型は後手糸谷の一手損に先手早繰り銀。堀口の新手が空振りで、中盤で糸谷ど必勝となる。そこからも震えずに早指しでガンガン飛ばし、やや攻めあぐねて訪れた局面が71手目の王手馬取り。この見落としで、一発で負けにしたのだった。

プロの棋戦で、これほど思いっきり単純な王手馬取りが決まったことは多分見たことがない。遠い利きといえば遠い利きだが、それにしてもありえない。その後、詰みまで指すところも何も分からない周りの棋士にとっては不気味の一言だろう。(本人はネット中継を意識して指したとのことだった)。

ただし、面白いもので、この将棋が糸谷の大物振りを更に印象付けることになった。丁度、長島茂雄が、デビュー戦で金本と対戦して3打席3三振に終わったようなものである。しかし、これで驚いては甘かった。我々の想像以上に怪物だった糸谷は、後年これよりもあり得ない反則をすることになる。



2回戦 対局日:2006/07/25 先手:糸谷 哲郎四段 後手:佐藤 紳哉五段

戦慄の順位戦デビューから約1ヶ月後。今後は糸谷先手で、相手は頭髪が少ないほうの佐藤。ただし昔の髪の毛があった時よりも、今のほうが好印象だと思う。それにしてもデビュー当時はサラサラヘアーだった気がするが、あっという間に無くなった。

端的にプロ将棋の厳しさを物語っているようでもあるし、単なる遺伝かもしれない。

戦型はノーマル角換わりで、後手番の佐藤紳が3筋に位を取り、先手の攻めの桂馬跳ねを封じる将棋だった。ただし、初戦の堀口戦同様に、後手が無理をしている形で、相手の疑問手に対して正確な咎めを導き出せる糸谷の良さが出た将棋だった。

投了図は圧勝だろう。C2の中では安定的に勝っている佐藤紳哉に対して3時間残した圧勝で、その実力の片鱗を既に表した、とその当時は思ったのだが、今振り返ると、手の見え方が尋常ではなく、勝つ時は鬼神のような勝ち方をする、ただし相手も棋士の生活が掛かっている長い将棋だと技が掛かりにくく、よって取りこぼしも少なくない、剣道でいうところの大上段に構えた将棋なのだった。



第3回戦 対局日:2006/08/29 先手:糸谷 哲郎四段 後手:淡路 仁茂九段

淡路不倒流が、ツノ銀中飛車風味から右玉風味に変化した、ナマクラ流の将棋。攻めの手をやらせたら、延々と続きそうな糸谷に対して胸を貸す形だ。糸谷はガチガチの銀冠に構え、5筋からの逆襲を見せる。

こうなると左右分断の後手が良い理屈はなく、ひたすら先手糸谷のミス待ち将棋となった。途中、糸谷の間合いをはかる手はあったが、意を決して攻め立てると、既に後手に為す術はなく、あっという間に投了に追い込まれた。

糸谷、またもや圧勝である。今振り返っても気持ちの良い勝ち方ではあるが、後手が無策過ぎたということなのも気づく。


第4回戦 対局日:2006/09/12 先手:大内 延介九段 後手:糸谷 哲郎四段

遂に登場、糸谷の右玉である。先手大内の中飛車に、ほぼ私がやる定跡手順で右玉に組む。先手は穴熊に組むが、対右玉における穴熊は、相性的に良くないのだが、本局でもその相性の悪さが祟る。

細かい手の善悪は差し控えるが、対穴熊における右玉の思想が存分に出ている将棋だ。私レベルでも、こういった、穴熊の無理攻めを丁寧にいなして姿焼きになることは多々有り、経験のない振り飛車党がとりあえず薄い玉だからと穴熊に囲うと痛い目にあること請け合いだ。

ただし、右玉はどこまでいっても右玉なので、受けの力が必要なのは言うまでもない。



第5回戦 対局日:2006/10/03 先手:糸谷 哲郎四段 後手:川上 猛六段

この時点の枕詞は『今年度勝率ランキングトップを走り、順位戦でも3勝1敗の「怪物」』だった。初戦も勝ち将棋だっただけに、実質4?0と思っていたことが懐かしく思い出される。

大内を粉砕した右玉を、川上が望んだように見えた一戦で、川上は後手ノーマル四間飛車に構える。この当時はプロ棋戦においてもノーマル四間飛車が後手番では指されていたように思う。

糸谷の右玉にひたすら待つ川上。基本的に、私は対振りの右玉はどこまでいってもハッタリ戦法だと思っている。相手がじっくり構えていれば、そして穴熊でなければ、自然に不自然な右玉は指し手が苦しくなってくる。

本局はまさにそういう将棋だった。じりじりと包囲網を絞るようなモーヤンの戦い方が百戦錬磨の勝負師らしいものだった。

糸谷は初戦に続き、大敗を喫した。勝ちっぷり、負けっぷりの良さ両方が魅力ともいえるし、荒い将棋ともいえる。この対局も3時間程度しか使っていなかった。



6回戦 対局日:2006/11/07 先手:島本 亮四段 後手:糸谷 哲郎四段

それほど活躍していない島本との対戦。先手島本はノーマル四間飛車。明らかに糸谷の右玉を屠ろうと画策しているように見えたが、糸谷は普通に囲う。このあたりから、正確には川上猛プロに負けてから、右玉を多用することを控えたように思われる。

私も正直、早指しでなければ指す気がしない戦法だ。

てっきり穴熊に囲うのかと思いきや、急戦、しかも加藤ピンもびっくりの棒銀だった。この棒銀を指すのは、この当時ですら高野と飯塚と加藤一二三ぐらいではなかろうか。

しかしそこから仕掛けるのではなく、糸谷ナマクラ流の出現となる。先手で具体的な良さを追求したい島本は必死に手段を講じるが、角交換になり、そこから双方陣形再構築が進むと、そこに出現したのは、後手の矢倉と先手の木村美濃だった。即ち、堅さでは後手優位。

かれこれの陣形の差があり、しかも振り飛車からは打開の術がない。要はなんやかんやで手だけ続けば良い状況で、それは糸谷が最も得意とする展開だ。

そこから先の手順は見ていて呆れるほど、糸谷が上手に、思い切り良く決めた。良くなると変にもつれさせずに勝ちきる技術・展開が、アマチュアからみて糸谷の将棋を強く感じる要因だと思う。



7回戦 対局日:2006/12/12  先手:糸谷 哲郎四段 後手:佐藤 和俊四段

今では振り飛車党の中で二番手集団のトップを走る佐藤和俊との対戦。この当時の佐藤和の活躍っぷりは覚えていないが、将棋世界の若手紹介特集に出ていたような気がするのだが。或いは力戦振り飛車を指す棋士の紹介記事だったかもしれない。

戦型は佐藤の四間飛車に対して糸谷の右玉となった。私の手順と若干異なる部分があり、糸谷のこの右玉はよっぽど力が無いと指しこなせない形だと思う。

この将棋もプロが右玉を待ち構えれば、そう簡単には良くならないという典型で、指していると自然にバラされて攻め合いにならずにただただ負けてゆく・・・という右玉の失敗例そのものだった。これ以降、糸谷の右玉はあまり姿を見せなくなった。



8回戦 対局日:2007/01/09 先手:田村 康介六段 後手:糸谷 哲郎四段

早指し王田村との対戦。結果から書くと、それほど両者早指しでもなく、消費時間でいうと田村1時間5分、糸谷3時間だった。

戦型は、先手田村の石田流。糸谷の対策は左美濃+飛車浮きだった。普通の指し方だ。流石に石田流に対しては、右玉には組めない。対石田流は、特殊な将棋で、対戦相手は延々と受けの手を強いられることになる。ただし右玉が指せる糸谷の受けの力は間違いがない。

早指しで飛ばす田村に対し、こまめに時間を使うのはこういう将棋は一辺に悪くなるかジリジリと良くなるか、というものなので、そのケアと思われる。この将棋で分かったのは、意図的に早指しにしているわけでもなく、普通に指して3時間ということなのだろうということ。

子どもが無意識に指して、結果早指しであることと同じようなものなのだ。読むことは読むが、見える手を指す、という将棋センスがあるが故の早見え早指しということか。将棋世界での順位戦予想におけるハッシー曰く、(意訳すると)独特かつ優れた将棋センスとのことだったと思う。



9回戦 対局日:2007/02/06 先手:伊奈 祐介五段 後手:糸谷 哲郎四段

渡辺明義兄との対戦。最近はあまり見ない、後手端歩位取りの一手損振り飛車に。プロでは最近見ないが、アマチュアでは未だに使える戦法だと私は見ているのだが。

本局でもそうだが、糸谷の将棋は敏しょう性に優れている。ちょっとでも隙があれば、攻め立てることを常に考えている将棋だ。その攻め筋がイモ筋だろうが強引だろうが、怖い展開だろうが、とりあえず攻めとして成立している気配があればそれを嗅ぎわけて、推し進める。

そして、渡辺義兄の持ち味はこの粘り強さだ。容易に倒れない棋風で、若干苦しいぐらいから力を発揮する棋風とみている。本譜も、先手としては面白くない局面から美濃のコビン攻め一本で盛り返す。

この将棋は長い中盤から、終盤の攻防に見ごたえがあり、もし会員の方は是非見て欲しいと思う。両者の良さが存分に出た将棋である。



10回戦 対局日:2007/03/06 先手:糸谷 哲郎四段 後手:藤原 直哉六段

最終戦は藤原プロと。藤原プロは谷川・井上の兄弟弟子でみんな揃って居飛車党である。後手の藤原は出だし振り飛車風の無理やり矢倉に組む。

この将棋にも糸谷の将棋の弱点が現れていると思う。手が見えすぎるが故に、そして続けば勝てることを知っているが故に、自ら攻めに出て、そこに早指し故の洩れが必ず出てくる。

本局も中盤の糸谷の仕掛け後、突如として将棋は終わってしまった。この辺に一種の老獪さが出てくると、順位戦でも相当勝ちそう(今でも相当勝っているが)なのだが。本局に負けて、糸谷は順位戦1期目を6?4で終えたのだった。


2006年度の通算成績は42 戦 31 勝 11 敗 (0.738)で、新人王も獲得した充実の年となったが、「通算成績に比較して、順位戦が奮わない」というのは2006年以降も続くこととなる。

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居飛車党の山 第3回朝日杯将棋オープン戦二次予選7日目

朝日杯オープン戦、これで二次予選勝ち抜き者全員が出揃う、二次予選最終日だった。

取り組みは以下の通り。

東京・午前10時対局 郷田真隆九段 - 村中秀史六段
東京・午前10時対局 行方尚史八段 - 佐藤秀司七段
東京・午後2時対局 郷田か村中 - 行方か佐藤

全員、居飛車党の本格派が揃ったトーナメント表となった。とはいえ、同じ居飛車本格派とはいえ、棋風が少しづつ違うのが当たり前とはいえ、面白い。観戦記者や解説の先生方にはこの辺の微妙な違いを、棋譜や記号を用いずに表現して欲しいところなのだが。


▲村中秀史六段 ? △郷田真隆九段
村中は印象的に、ぞねこと大平と被る。大らかな将棋というか、せせこましくない将棋というか。矢倉を良く指している印象があり、あまり現代的な棋風とは思えないが、保守本道のやや歩道寄りを歩むような将棋。

郷田はご存知のように本筋の手、前進していく手、美しい手を指す羽生世代きっての美学派ではないだろうか。美剣士と呼ばれた修行時代から、侍の佇まいがある。

攻めの鋭さもさることながら、不利な局面、手負いの状態での死んだフリ攻撃にも定評?があり、負けそうな局面でも常に勝ちを狙ってくる怖さがある。森内との名人戦第6局が有名だが、年に1・2回はあんな勝ち方をしているような気がする。

戦型は、矢倉の後手急戦・渡辺新手だった。先日、郷田はA級でもこの将棋を指しており、先手の高橋に負けているが、その反省を踏まえた戦い方が考えられ、どこで工夫してくるかに注目した。

早速出た工夫が、五筋に位を取らせない△5四歩だったが、個人的には一目悪印象な手だった。折角交換した歩を位を取らせないためだけに打ち直すようでは、後手の面白さがないと思われるのだが。

以下、色々なやりとりがあって郷田が勝つのだが、この戦型において郷田新手?は今後指されることはないのではないか。



▲佐藤秀司七段 ? △行方尚史八段
超手厚い着実で腰の重い棋風で知られる佐藤秀司と、居飛車後手番でねちっこく指させると天下一品という印象がある行方尚史の一戦。佐藤秀だと腰が重いという表現があっているが、行方の場合は腰が重いというよりは粘り腰といった感じで、この微妙なニュアンスの違いが棋風・棋譜に現れるのが本当に面白い。

本局は先手の相掛かり棒銀対後手浮き飛車となった。後手は先手の棒銀を浮き飛車で受ける展開で、早い9筋の突き合いは、9五角の王手飛車を含む角筋を生かした先手の攻撃の水面下の動きに備えたものだろう。

今気づいたが、この展開は銀河杯?の阿久津vs行方の戦いと同じかもしれない。

飛車角を交換した局面では後手から先手に迫る筋のほうが早そうで分かりやすく、本譜も後手の食らい付きが成功してほどなく後手の勝利となった。となると角の割り打ちが佐藤秀らしからぬ暴発だったのだろうか?



▲行方尚史八段 ? △郷田真隆九段
決勝は結局、順位戦のクラスが上位の二人による戦いとなった。同じ居飛車党本格派同士の戦いで、実力者が上がってくるというのが、きわどい紙一重の実力差であっても、絶対的な差であることを感じさせる。

戦型は先手の角替わり腰掛銀右四間飛車」対「後手矢倉での受け」となった。実はこの形は私が好きな戦型で▲4一角や▲2六角、または▲2八角などを絡めて攻め倒すのが爽快な戦法なのだが、反面、3七の地点というか飛車のコビンが弱いので、攻めそこなうと渡した駒+角での飛車いじめが五月蝿いことになる弱点を秘めている。

プロはどのようにして攻めるのか?と注目して観戦したのだが、これが流石にプロという手順の応酬だった。

まず、先手の行方が▲4五歩と総攻撃を仕掛ける。しかし、後手は△4四歩と収めにくる。実はこの受けは私もやられたことがある。私のようなアマの場合は勇んで▲5四銀と取りに行って切らされて負けるのだが、行方は一歩交換で満足して銀を戻る。

後手の郷田は三筋の歩を突き捨て、9筋を突き捨て、オマケに7筋も突き捨てて味をつけてから△9五香車と一歩を取りにいく。郷田はこういった一歩を取りにいく展開におけるタイミングが絶妙だと思う。代表例は、対四間飛車における4五歩早仕掛けで、鈴木の指した森内新手の自陣飛車にて振り飛車良しの局面で打つための歩を端で入手する手だろう。

あの将棋は郷田の攻めの鋭さというか、一本芯の通った将棋観を感じるには最適な一局なので是非並べて欲しい。

行方の将棋は本当に不思議な将棋で、受け将棋かというと攻め将棋なのだが、鋭い攻めかというと攻めるのを見せて、相手に動かせてその動きに乗って反撃するという、いうなればカウンターパンチャーなのだ。

本譜もまさにそういう展開で、侍郷田ならば待つはずもなく一気呵成に攻め立ててきて、行方の陣が先に形が乱れる。しかし行方は「厳密には最初に後手が突っかけた時点での香損が、双方最善を尽くすとどこかで祟る」ということを信じているように、手を進めていく。

終盤、後手に粘る手順があったが、郷田がその展開を選ばずに追う王手で形勢がハッキリして行方の勝ちとなった。同じ居飛車党でも、もし木村だったら喜んで指したような気がする手だったが、たしかに混沌とするだけで、勝ち目がないような気もしなくもなく、郷田には似合わない手順だったので仕方の無いところだろうか。

これで二次予選が全て終了した。勝ち残ったのは以下の8人。

丸山九段
屋敷九段
木村九段
行方八段
鈴木八段
畠山鎮七段
谷川九段
糸谷五段

若手は糸谷だけで、30代がメインの構成となったが、早指しでこの面子構成ならば誰が優勝しても全くおかしくないと思われる。私としては是非糸谷に頑張って欲しいと思う。

順位戦では駄目だが、彼の若さとケレンミで早指し戦ということを考えると、十分に決勝まではありえるのではないだろうか。
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