進化する矢内将棋 第四回大和証券杯女流最強戦 ▲矢内理絵子-△本田小百合

1月16日(日)の夜に行われた大和証券杯女流最強戦について。

対局が開始される前にツイッター上でまた何かやってくるのではないか?というのは囁かれていたのだが、まさか先手で中飛車にするとは思わなかった。

甲斐・里見という二人の棋士が矢内世代を文字通りごぼう抜きにして天下を二分している今、そして同世代がそれぞれに、特に千葉涼子は棋士との結婚、出産という女流棋士としての理想、という訳ではないが想定される定跡手順に則っているなかで、例のアエラの矢内特集を読む限りでは葛藤している自分。

また、その悩み・葛藤というのは失礼を承知で書けば、将棋一筋に打ち込んできたがゆえの、過去に処理しておくべき類のものだったように記憶している。

よくも悪くも、人間三十路を過ぎると色々と思うところは出てくるもので、それが女性であればまた男性とは異なる深刻さを含む場合がある。

とはいえ、この戦いの連鎖の中から逃げ出すつもりはこれっぽっちもないことを自身で確認し、そしてもう一歩踏み出すために新しい部分に挑戦している…というのが下世話な外野の勝手読みである。

先手中飛車。悪い戦法ではないし、むしろ振り飛車は矢内将棋の本質を考えるとそれほど向いていないという気はしない。ただし矢内将棋について回る、序盤戦術的なモッサリ感は、本局においても否めなかった。

25手目の角道を塞ぐ▲6六歩はちょっと珍しいというか損な手だと思う。角道を開いたままに攻められる、という主張点が失われてしまった。閉じて開いてとやるのであれば立石流や石田流を志向するのが現代的ではあるかもしれない。

最近居飛車穴熊も指し始めた矢内プロだが、その穴熊の組み方も少し旧式であり、3二の金が浮く形。これが意外に苦労がついてまわるものであり、それを前提とした松尾式の穴熊というのが現代将棋の穴熊の歴史。

後手の本田女流は松尾式の穴熊に組み上げるのだが、端を受けてしまう。ここは受けずに攻勢を取る、というのも考えられるところだった。

穴熊は堅い、というのが共通認識としてあると思うが、穴熊退治が好きな私に言わせるとうまい人の穴熊は堅いが、対穴熊用の特殊戦法に無策な穴熊は同じぐらいの棋力であればそれほど堅くない。

争点がないままに特殊戦法の攻撃が決まると、マウントポジションからのタコ殴り状態に成り得る。この端を受けた穴熊もそういう危険性を含んでいる。

細かい棋譜の解説は別のところに譲るとして、文字通りの二転三転だった。しかし最後は終盤力のある矢内理絵子プロが実力を示した。

穴熊の性能を活かす、という意味で言うとある程度の棋力の差か、絶対値としての高さが必要だと私は思っていて、競技プロとしては必修科目だし、私も展開次第では組まないこともないが、むしろ愉しむための将棋という意味で言うと、穴熊を固定化しないほうが、色々と楽しめるのではないか。

話を矢内将棋に戻すと。今後、控えているであろう、対甲斐・里見、そして対清水というところで最近の挑戦がどのように結実するのか?に大いに注目したい。


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