夏競馬・ダート・重馬場・ハンデ戦 第69期B級1組順位戦 2回戦

第69期B級1組順位戦 2回戦

佐藤康光、深浦康市という二人の実力者が、まさかの出遅れスタートとなったB1の第二回戦。雲行きが少し怪しい。この日の結果次第では、更に混沌としてくる可能性がある。実力者の建て直し具合、そして松尾歩、山崎隆之という二人が「夏の上がり馬」になれるかどうか?に注目してこの日の観戦に臨んだ。


▲行方(1-0)?△山崎(1-0)
ここは後手山崎プロということで、一手損に進む。先手が玉側の端歩を突きこしているのが珍しいが面白い趣向だ。88の銀は85歩と突かれるまでは上がる必要は無い、というのが一手損で良くある展開だが、それであれば端歩を突きこされても良い、というのが後手の主張。どこかで玉を広くする手を先手が指すときにこの端歩オプションの利益を得ることが出来る、というイメージ。

先手は将来の利益になるであろうというコールオプションを買い、後手は序盤の手得という実利を得るためのコールオプションを売った、といえば伝わる人には伝わるだろうか。それにしても山崎プロは、いつも面白い工夫を見せてくれるものである。(ここまでお昼)

面白い序盤がまだ続いていた。対する先手はこれもあるだろうなという趣向。要するに7七銀はシャクなわけで、とはいえ端歩を活かしたいとなれば、解はこれしかない。後手の山崎プロは突きこされた端歩に対して雀刺しという珍戦法に出た。これは殆ど苦し紛れだと思うが…。

桂馬を跳ねた隙に角を打ち込んだが、王手で銀桂交換が確定しており、正しく指せば先手が勝ちそう。とはいえ、先手の角も苛めの対象であり、後手の飛車が攻めに使える日は一生来ないかもしれないが、少なくとも受けには良く効いており、しかも苛められる心配は当面ないので、あれやこれやで誤魔化すいつもの山崎流がでるか?に注目。(ここまで夕食)

…と思ったのだが、どうやらプロの見立ては後手の山崎プロ良し、とのこと。しかし先手番で、もし一手損からこの展開になって負けるのであれば、相当に辛い気がする。具体的に何処が悪かったのだろうか?という話になるが、先手番で、端の位を取ったのが悪かったということになるのだろうか。(ここまで21時半)

結局角を打たれて馬を作られた所からは先手に勝ち目が無かったようだ。先手が攻めて後手に普通に反撃されて負け、という将棋で、投了図では9筋の位が全く活きていなかった。これで山崎プロは二連勝となり、初のA級が少し近づいた。力戦将棋の性(さが)として、誰にでも勝てる可能性がある一方で、序盤不出来だとそのまま押し切られる可能性もあるが、山崎隆之プロのA級での戦いぶりは是非見てみたいところだ。

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▲松尾(1-0)?△豊川(1-0)
松尾先手で相掛かりへと進む。後手の3四の歩をめぐってのやり取りが面白いが野月プロの「最新の相掛かり戦法 (プロ最前線シリーズ)」でも出ていたように思う。後手は浮き飛車を活かした意欲的な指し回しだが、パッと見た感じでは6筋と3筋の位のどちらもが不安定な状態に見える。(ここまでお昼)

形勢は分からないのだが、後手の攻めに迫力のある展開となった。しかし後手の方針が非常に積極的なものの、一目見ると玉の位置も飛車の位置も怖い感じ。松尾プロからの的確な反撃があるのだろうか?銀を取って、7二に歩を垂らして、角を4五に打つような手は見えるのだが。(ここまで夕食)

休憩後の手は単に4五角だった。これは受けようと思えば受かる。角を手放しあっているが、攻め始めた先手のほうが正しく攻め続ける権利と義務を有する展開となった。特に後手の3三桂馬が気持ちが良い。先手の端攻めはかなり前のめり感があるし、歩切れなのも気になる。11に銀を打って受けた豊川プロは、ここに投資するぐらいなので先手の攻めが切れ筋だと思っているのではないか。(ここまで21時半)

1一銀の意味は、後手が優勢というわけではなく、もし2二金で受けると後に8九の桂馬を取られて3四桂馬と王手金取りに打たれる筋が気持ち悪いということのようだ。しかしそれでも金を投入してまで桂馬を拾う手順で3四に桂馬を打つ筋が実現し、双方の玉の堅さの違いが大きく、程なく後手の豊川プロが投了した。やはり二枚銀は迫力はあるものの、普通に交換されて4五角を打たれてからは先手ペースということであれば、後手の作戦が失敗していたということだろうか。

松尾歩プロはこれで連勝。山崎プロと一緒に連勝スタートとなった。

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▲畠山鎮(1-0)?△深浦(0-1)
初戦、松尾プロの中座飛車に敗れた深浦王位が、今度は中座飛車をもって畠山プロと対戦。(ここまでお昼)

良く分からないが、畠山プロの「ダブル壁」が少し珍しいだろうか。後手が攻める前に先手が形を崩しにいったが、後手としては攻めが切れたらお終いというような展開になりにくいのでむしろ有難い気はするが、先手の畠山プロは細く攻めさせたら天下一品であり、このあとの鋭い攻めに期待したいところ。(ここまで夕食)

現在の45手目の局面は難しいながらも、先手の言い分が通っていると思う。パッと見、受けるならば攻防の7五角だろうか。(ここまで21時半)

細いながらも先手の攻めが続いている。六〇手目の棋譜コメントがとても美しい表現で私は感心した。細くても、攻めていれば畠山先生のペース、少なくとも受けているよりも勝機があるとみていたのだが、まさにそのような展開となった。本局におけるMOM(MOVE of the match)は75手目の▲1六角だろう。後手の分かりやすい攻め筋である桂馬打ちを封じつつ、攻めにも利いており、最後まで動かなかったが、最後の最後まで守りと攻めの要を演じていた。

これにてなんと深浦プロは連敗スタートとなった。タイトルホルダーがA級に復帰できない可能性が高まり、このままだと今期の王位戦の行末も不安になるところだ。ただしB1における前局と本局についてはA級からの降級時や対羽生棋聖との棋聖戦三連敗のときのような無理な感じではなく、ねじり合いでの負けなので、相手を称えるべきだろう。

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△井上(0-0)?▲杉本(0-1)
振り飛車党だが最近居飛車も指している杉本プロが、井上プロの横歩を受けてたった。井上プロの駒組みは松尾流の中座飛車・中座玉だろうか。(私が勝手にそう呼んでいる)。杉本プロの端歩が少し早いように思うのだが、具体的にこの端歩を活かす手順が今後あわられるのだろうか。(ここまでお昼)

ぱっとしか見てないのだが、夕食休憩の局面の先手を持つ気が全くしない。1筋に手をかけたメリットもなく、飛車先を封じられ、攻めの桂馬を捌かれている・・・のだが、この局面でアマでは良くあるのだが、同桂馬と取らずに金を逃げるような手でぼろっと桂馬を取れるのであれば、先手が良いのだろうか。手の流れだけの印象でいえば明らかに後手を持ちたい気がするのだが。(ここまで夕食)

そして逃げた。逃げて桂馬を取りきった後の手順がいかにも杉本流。そして有力だった。こうなるとどっちがよいのかもう分からない(ここまで21時半)

こうなるとどっちが良いのか分からない、というのが昨晩時点の感想だったが、そこから先も延々とその状態が続いていた。厳密な形勢判断でいえば二転三転どころではないだろう。如何にも一方が杉本プロであることがわかる何とも不思議なねじり合いだった。中座飛車で入玉模様ではなく、普通に寄せ合いになっていて二〇四手、終了時刻が深夜2時近く、というのは恐ろしい。

杉本プロに根負けせずに、延々と受け続けた井上プロの指し回しに凄みを感じた。

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△佐藤康(0-1)?▲鈴木(0-1)
佐藤プロがB1というのは未だに信じられない・・・というのをいつまでも言っていても仕方ないので、今日で最後にしたいと思うが、また言うかもしれません・・・。先手の鈴木プロが早速やってくれました、早石田の超急戦。鈴木流と呼ばれるものだと思うが、この二人での早石田といえば棋聖戦を思い出す。序盤満足なわかれから、終盤鈴木大介プロがひねられたのだが、本局はどうなるか。本日の注目度NO1だろう。(ここまでお昼)

新手の意味は無理やり桂馬を引っ張り出して、その桂馬をとりに行く、というものだった。しかしなかなかその機会が先手に訪れない。お互いに玉の囲いにくい将棋になっているが、素直な応手で歩得かつ攻め駒が働いている後手のほうが気分が良いかもしれない。桂馬は居ないが美濃囲いの邸宅も既に完成している。先手は金無双囲いが考えられるがウサギの耳が開いてる状態なので気持ちが悪い。先手玉には帰る家がない状態であり、先手の新手が少しやり損なっていると思う。(ここまで夕食)

ここが一番早い終局だった。跳ねた桂馬の顔を立てる攻め筋に感心した。秘策で臨んだ鈴木大介プロだったが、その構想は実らなかった。この形はもう出てこないような気がする。修正案はなさそうだ。(ここまで21時半)

その後、程なく終わった。後手の佐藤プロは一直線の攻め合いに持ち込む。後手に変化のしようがなく、お付き合いして後手の一手勝ち、という将棋だった。終局後の、棋譜コメント欄に記されている鈴木大介プロの言葉はごもっとも、という感じ。


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△屋敷(0-1)?▲中村修(0-1)
ここも中座飛車。一手損フィーバーが終わって、中座飛車へ流行が移っている。私はこの中村プロが指している先手の方針がすきなのだが、上手く行くのかに注目したい。(ここまでお昼)

飛車を深く引いていれば、苛められることはない、という意味で中村流の戦い方がすきなのだが、この夕食休憩局面ではどうなのだろうか。片肺飛行という印象で勝つ気がしない。何となく囲いの性能の差が出そうな気もする。しかし、後手が小駒しかないのでどうにかなるのだろうか?元「受ける青春」の見せ場はあるか?(ここまで夕食)

しかしここも私の感性がおかしかったようで、夕食休憩あたりでは、後手の攻めが細く、先手良しと見られていたようだ。だとすれば屋敷プロは何故にこの状況に突入したのだろうか…。(ここまで21時半)

先手の五九手目の▲2六飛車が良い手だったか。後手からの早い攻めがないので、この手で左右挟撃も築きつつ、何かの時に玉を二筋方面に逃がす手も見えている。飛車を2九ではなく2八に引き直した手もその思想だろう。そして2筋にと金が出来て挟撃の見込みがたったところでは先手が良いことは私でもようやく分かる。

最後は先手のシンプルな攻めが決まっては後手に粘りようがなかった。私は繰り返すが中村プロのこの対中座の2九飛車型を優秀だと思っているのだが、本局もそれを証明しているように思う。

一度はA級に上がってもらいたいとC1時代から私が延々に願っている屋敷プロは連敗スタートとなってしまった。

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B1級2回戦の結果、以下のような結果となった。

2勝0敗:松尾歩(5)、山崎隆之(6)、畠山鎮(11)
1勝0敗:井上慶太(1)、中田宏樹(13)
1勝1敗:佐藤康光(2)、行方尚史(4)、豊川孝弘(9)、中村修(12)
0勝2敗:深浦康市(3)、屋敷伸之(7)、鈴木大介(8)、杉本昌隆(10)

松尾・山崎の二名の活躍は順当であり、昇級候補を連覇した畠山プロが素晴らしい。連敗スタートは深浦王位が含まれていることに驚く。その他、元タイトルホルダーの屋敷プロ、振り飛車党の巨匠の二人。

実績上位でA級復帰候補であった、深浦・佐藤の二人が早々に負けて出遅れているが、他との実績の差を考えればこれくらいは良いハンデになろう。まだ2回戦までしか終わっていないが、今期のB1の馬場は荒れており、タイムは出ないだろう。実力上位の人気馬二頭はそれぞれに適切なハンデを課せられたが、これでもまだ十分に勝ち負けだと思う。

過去B1からの昇級をみてみると最低でも8?4以上は欲しいところではあるが、今期のこのぬかるみ具合であれば、8?4をしっかり残せれば順位上位の先行逃げきり型でも、順位後方のマクリ一発型でも十分に昇級の可能性があるだろう。



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