穴熊らしい勝利と事前勝敗予想 第60回NHK杯一回戦第十一局 伊藤真吾四段vs阿部隆八段

第60回NHK杯一回戦第十一局 伊藤真吾四段vs阿部隆八段

例によってNHK杯のサイトの棋譜のみの鑑賞。

先手のイトシンこと伊藤真吾プロは中飛車や三間飛車を操る最新の振り飛車党一派。次点二回でのフリクラ入りなので、こういう持ち時間の短い将棋については予選、本戦と勝ち星を稼いでC2への昇級を果たしたいところ。

後手の阿部隆プロといえば本手本筋の将棋。前期の順位戦ではB1から落ちてしまったが、対畠山鎮プロとの一戦、角換わりの将棋ではその持ち味を存分に発揮しており、実力的な衰えを感じさせない。

事前の戦型予想としては二択なので特に検討しなかったが、よくある位取り中飛車の相穴熊となった。目に留った点としては、後手が飛車先の歩を突き捨てるのがちょっと早めに感じられたことと、22に角を置いたままで33に銀を上がったことだろうか。後手の桂馬は使えそうも無いので実質的な攻め駒は飛車しかない。

これらは先手に打開の権利と義務と責任があるので、攻めてもらってそこから反撃したいということだと思われた。

小競り合いが続く中盤、5五の地点を狙いに来た銀に対して軽く飛車を三筋に転回したのがこれらの戦型を用いる振り飛車党らしい軽い手。続く数手は22角型を咎めており、後手がそのケアを行う間に四枚穴熊が完成して引き続き先手好調か。

先手は角が働いていないが、後手の飛車も見合いになっているため、文字通りおあいこ、というところで1筋?4筋の見栄えだけで言えば先手が相当に気分が良い。

攻撃の権利を得てからじっくりとと金を作りに行った手が何とも憎らしく、相手に手が無いときはこちらから無理に成算しないほうが良いというアマが参考になる手順だった。

指す手がない後手は穴熊のパンツ脱ぎと呼ばれる手で催促を行う。私が好きな棋書に「羽生善治の終盤術」というものがあるが、その1巻の最初のほうに「当たりを受けてから動きたい」という趣旨の設問がある。62手目の局面をみてそれを思い出した。

先手の伊藤真吾プロは、それでは、とばかりに飛車角交換に出て、次に銀取りになっている手をどうするのか?と見ているとなんと1六の地点に逃げた。この手には大変驚かされたが、将来の桂馬香車を持たれてからの2七の地点を攻める手段を封じており、引き続き先手順調か。

銀を逃げて、後手に攻撃のターンが移ったが、前述の通り、桂馬香車を拾う飛車打ちは有効ではない。ということでと金作りを封じる手を後手の阿部隆プロは指すのだが、これは流石に辛い。

先手が角を二枚重ねた手が本局におけるMVPかもしれない。ここからの手順は何飛車党であっても気持ちが良すぎる。特に三筋に歩が利くことを最大限に活かした手順はこの戦型において三筋が最重要であることを再認識させられた。

ちなみに私は居飛車側の歩が3三の地点に無事打つことが出来れば居飛車としては満足であろう、という単純な指標を持っているが、それを考えると後手の3・4筋があまりにもよろしくない状況、穴熊にしては中途半端に伸びすぎていることが分かるのではないか。
79手目の43金はトドメの一撃。横に逃げても軽く31歩成ぐらいで先手が勝ちそうだ。なにしろ先手玉が固すぎる。そこからの阿部隆プロの頑張りは恐らく放映時間を気にしたのではないかと思う。

少し話がそれるが、NHK杯のサイトの棋譜再生では1筋の歩が二歩状態になっているのが本当の手の推測は出来るものの、先週の戸辺プロの名前の誤りに続いて少し気になった。
イトシンプロは完勝で第二回戦に進んだ。

そういえば先週だっただろうか、ツイッター上にイトシンプロのアカウントがあることに気づいた。そしてNHK杯の放映があることを知った。私ならずとも勝敗結果については自ずと予想がついたであろう。個人的には勝敗予想に拘る方ではないので興がそがれる、ということは無かったが、アカウント作成のタイミングはなかなか難しいものだと感じた。


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