昨日の第72期C級2組順位戦の結果(大石プロ全勝!)

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さて。

昨日のC2の最終節についてです。まずは事実情報から。

【10勝0敗】大石(18)
【9勝1敗】澤田(4)
【8勝2敗】佐々勇(5)、永瀬(6)、村田智(32*)、千田(45)
【7勝3敗】村田顕(7)、及川(10)、阿部光(14)
【6勝4敗】横山(3)、矢倉(9)、吉田(13)、中村亮(19)、高見(23)、田中悠(26)、藤原(31**)、小倉(38*)
【5勝5敗】西川和(8*)、佐藤紳(15)、岡崎(16*)、八代(17)、佐藤慎(20)、中座(22*)、佐藤和(29)、長岡(33**)、藤森(34)、遠山(40**)、石田(44)
【4勝6敗】中田功(11)、西尾(12)、伊藤(24)、牧野(28)、瀬川(39*)
【3勝7敗】森(1)、内藤(2)、神崎(21)、村中(25)、勝又(27)、門倉(30)、増田(36*)、伊奈(42**)、上村(43)
【2勝8敗】田中魁(35)、石川(37*)、西川慶(41*)、竹内(46)

ぱっと見では、やはり大石の全勝が目立ちますね。そして澤田との森信門下ワンツーという点も。佐々木世代といってもいい世代代表格の佐々木勇気もちゃんと昇級しました。

棋風転換した永瀬は序盤の出遅れがあってのここなので上出来でしょうか。来期は上がると思います。

で、降級点周りの話でいくと、まずは藤原先生の勝ち越しで1点消しは前回で決まってましたね。新四段界隈では竹内、上村がとっています。ともに2勝、3勝ということで来期頑張らないと精神的によろしくないでしょうね…恐ろしい世界です。。

3点目でフリークラス行きが決まったのは渡辺明の義理の兄でもある伊奈プロ。勝又プロから下に降級点が付きました。

まだ取組表決まってないのでわかりませんが、来期は阿部光瑠、永瀬拓矢、高見、あたりがあがりそうです。特に矢倉の得意な高見あたりは順位戦向きな気がします。

Tag : 大石直嗣 澤田真吾 佐々木勇気

大石澤田に続く三人目は、佐々木か永瀬か?或いは・・・

昇級確定者は大石直嗣六段と澤田真吾五段。残り1枠は佐々木勇気、永瀬ボーイら四名での争い。降級点もぼちぼち決まってきましたね。勝ち越しで降級点を消した藤原プロは流石としか言い様がないです。

昇級した大石直嗣六段と澤田真吾五段は森門下ですね。どちらもあがって当然という感じがします。中終盤の粘り強さは森門下の特徴ですが、それ以外にも特徴がある二人ですね。

澤田真吾五段は不思議な魅力のある棋士です。米長邦雄から毒気を抜いて天然成分を足したような将棋。泥沼流的な魅力があるやや不利なときの中終盤が私は好きです。

対する大石直嗣六段は、森門下としては糸谷哲郎プロと合わせて序盤が上手いというか研究が深いタイプでしょうか。中盤のじっくりとした指し回し、慌てないところはまさに順位戦向きで、肝っ玉のありそうなところが大物食いだけではなく、大きなトーナメントでも勝ち上がっていく雰囲気があります。

残り一枠、佐々木世代としてリーダーの佐々木勇気が頑張るのか、或いはすでに老成されたような永瀬ボーイが序盤の出遅れから一気にまくるのか。村田千田にも当然チャンスはあると思いますが、自力の佐々木が決めてほしい…と思いますがどうなるか。ただ、佐々木も永瀬も相手は手強いので三番手にもチャンスはあるかもしれません。



以下、事実情報としての結果と順位。

[C級2組]
田中 魁秀九段(2勝7敗)●-○伊藤 真吾五段(4勝5敗)…16時20分
(伊奈 祐介六段-村田 智弘六段…17時13分千日手成立)
大石 直嗣六段(9勝0敗)○-●中田 功七段(4勝5敗)…17時47分
岡崎 洋六段(4勝5敗)●-○田中 悠一四段(5勝4敗)…17時59分
西川 慶二七段(2勝7敗)●-○神崎 健二七段(3勝6敗)…20時42分
石川 陽生七段(2勝7敗)○-●森 けい二九段(3勝6敗)…20時50分
藤森 哲也四段(5勝4敗)○-●瀬川 晶司五段(4勝5敗)…21時13分
吉田 正和五段(5勝4敗)○-●竹内 雄悟四段(1勝8敗)…21時21分
小倉 久史七段(6勝3敗)○-●佐藤 和俊五段(4勝5敗)…21時25分
永瀬 拓矢六段(7勝2敗)○-●矢倉 規広六段(6勝3敗)…21時56分
門倉 啓太四段(2勝7敗)●-○阿部 光瑠四段(6勝3敗)…22時12分
及川 拓馬五段(6勝3敗)●-○佐藤 慎一四段(4勝5敗)…22時28分
牧野 光則四段(4勝5敗)●-○上村 亘四段(3勝6敗)…23時4分
増田 裕司六段(3勝6敗)○-●内藤 國雄九段(2勝7敗)…23時17分
西尾 明六段(4勝5敗)○-●高見 泰地四段(6勝3敗)…23時58分
佐々木 勇気四段(7勝2敗)○-●千田 翔太四段(7勝2敗)…0時0分
長岡 裕也五段(5勝4敗)○-●遠山 雄亮五段(5勝4敗)…0時7分
藤原 直哉七段(6勝3敗)○-●勝又 清和六段(2勝7敗)…0時16分
横山 泰明六段(5勝4敗)○-●中座 真七段(4勝5敗)…0時21分
佐藤 紳哉六段(5勝4敗)○-●西川 和宏四段(5勝4敗)…0時27分
澤田 真吾五段(8勝1敗)○-●村田 顕弘五段(6勝3敗)…0時42分
八代 弥四段(4勝5敗)●-○中村 亮介五段(6勝3敗)…0時49分
村田 智弘六段(7勝2敗)○-●伊奈 祐介六段(2勝7敗)…0時56分
村中 秀史六段(3勝6敗)●-○石田 直裕四段(4勝5敗)…1時0分


【9勝0敗】大石(18)
【8勝1敗】澤田(4)
【7勝2敗】佐々勇(5)、永瀬(6)、村田智(32*)、千田(45)
【6勝3敗】村田顕(7)、矢倉(9)、及川(10)、阿部光(14)、中村亮(19)、高見(23)、藤原(31**)、小倉(38*)
【5勝4敗】横山(3)、西川和(8*)、吉田(13)、佐藤紳(15)、田中悠(26)、長岡(33**)、藤森(34)、遠山(40**)
【4勝5敗】中田功(11)、西尾(12)、岡崎(16*)、八代(17)、佐藤慎(20)、中座(22*)、伊藤(24)、牧野(28)、佐藤和(29)、瀬川(39*)、石田(44)
【3勝6敗】森(1)、神崎(21)、村中(25)、増田(36*)、上村(43)
【2勝7敗】内藤(2)、勝又(27)、門倉(30)、田中魁(35)、石川(37*)、西川慶(41*)、伊奈(42**)
【1勝8敗】竹内(46)

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Tag : 大石直嗣 永瀬拓矢 佐々木勇気 澤田真吾

第70期C級2組 2回戦

2回戦終わってみると、教授こと勝又清和プロがトップ。続いて澤田・アベケン・菅井と若手の実力者が続くことになった。当たりだけみると、中村太地が一番昇級確率が高そうだがどうなるか?

例によって時間がないので、上位陣の取組だけ。


西尾明六段vs勝又清和六段

ノーマル角換わり腰掛け銀から後手の趣向待機策が功を奏した一局。これは教授の名局だろう。最後のシノギも後手番らしくかっこ良かった。

78手目の△6九銀が良い手でここからは後手を持ちたくなった。


佐々木勇気vs澤田真吾
十代の天才同士の戦い。強さの安定感がまだない、やや不出来な将棋も目立つ16歳の佐々木勇気と、その強さの根源が素人には分かりにくいが中終盤のごちゃごちゃしたところに特徴があるように見える、澤田真吾の対戦。

矢倉の脇システムっぽい展開に。先手の角交換後の角打ちがパッと見、無さそうでそれから苦労したようにみえたが。

中盤、70手台の応酬に澤田真吾の特徴が出ていた。引っ張り込むような受け、というか中終盤の才能で、米長邦雄的なものを発揮していくように思う。

佐々木勇気の不振?は経験値不足な雰囲気。とりあえずは指し分けを目指す位でもいいのだろうと思う。


及川拓馬vs阿部健治郎
相三間飛車。先手の石田流に対する対策としての相三間飛車のようだ。工夫はどこにあるのか?

印象的には居飛車党同士の相振りらしい、先攻のための細かい駆け引きが面白く、シンプルに囲った後手が先攻し、先手は5五に角を据えて反撃するが、11に馬を作らされたところでは後手の攻めのほうが効いているように見える。


菅井竜也vs大石直嗣
この将棋は凄い。菅井竜也という棋士の将棋の凄さが出ている。後手も無策というわけではないが、囲いの性質の差なのだろうか、結局捌かれて突破されてしまうのは居飛車党として悔しすぎる。

75手目ぐらいからのねじり合いが両者の特徴が出ていて面白い対局だった。


他にも面白い対局はあったが、割愛…。



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Tag : 米長邦雄 菅井竜也 大石直嗣

05/30のツイートまとめ

shogiwatch

途中まで山崎さん応援してたけど、最後谷川先生を何故か応援している自分がいた。今期も谷川先生調子悪いの続いてるんですよね、確か。
05-30 21:29

いやー山崎さん・谷川先生らしいいい将棋だった。面白かったわー
05-30 21:27

ああ、これでダメか。金は斜め後ろに利かないからね。
05-30 21:26

91香車があるのかあ。これは後手勝ちなんですかね。終盤はさっぱりわからんわー。
05-30 21:25

いや、94からのコースがあるから平気なの?
05-30 21:23

あ、先手玉詰む臭い。
05-30 21:23

でも95が詰めろ逃れの詰めろでは?
05-30 21:21

何かの時の95馬があるから筋入りましたかこれは。
05-30 21:19

そう、金がないからこれがもはや受けに行く居という。
05-30 21:17

これは先手良しですかー。82の歩が光ってますなあ。どこが悪かった?19飛車がまったりしすぎてたか、囲いすぎたか。
05-30 21:16

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Tag : 加藤一二三 大石直嗣

高勝率を誇る者たち 第51期王位戦挑戦者決定リーグ最終局

毎日棋戦中継があればいいのに…という私の呟きの願いが将棋の神様に聞き入れられたわけではないと思うが、王位戦挑戦者決定リーグ戦最終局が中継されることとなった(http://live.shogi.or.jp/oui/index.html)。どなたの決断なのかは分からないが、決断した方と、急な対応で大変であっただろう調整者、及び当日の中継関係者の方々には深く感謝したい。挑戦権を賭けた決定戦は、以下のような状況だった。

王位戦挑戦者決定リーグ戦は、紅組・白組からそれぞれ一人ずつ、挑戦者決定戦を争う対局者を選出する。今期のリーグ戦は、3勝1敗が6人という混戦になっている。状況を少し整理してみよう。

まず紅組から。3勝は渡辺竜王・佐藤九段・広瀬五段の三者。決定戦進出に絡むのは、渡辺竜王?広瀬五段戦、佐藤九段?松尾七段戦の二局だ。

(1)佐藤九段が勝ちの場合……渡辺竜王?広瀬五段戦の勝者とプレーオフに
(2)佐藤九段が負けの場合……渡辺竜王?広瀬五段戦の勝者が決定戦に進出

次は白組。3勝は羽生名人・丸山九段・戸辺六段の三者。決定戦進出に絡むのは、羽生名人?丸山九段戦、橋本七段?戸辺六段戦の二局だ。

(1)戸辺六段が勝ちの場合……羽生名人?丸山九段戦の勝者とプレーオフに
(2)戸辺六段が負けの場合……羽生名人?丸山九段戦の勝者が決定戦に進出

今日の対局結果だけでは決まらない可能性も高い。

リーグ戦の状況



最後の文章が、予言となったわけではないだろうが結果的にはそのようになったのだった。


王位戦 紅組5回戦
先手:木村一基 八段
後手:大石直嗣 四段

最初に終わったのはこの対局だった。先手の木村プロはなんと今期ここまで勝ち星無しの5連敗とのこと。後手の大石プロについて、私は作戦家の印象を持っている。特に前期の対矢倉プロの対局は面白いので順位戦速報に加入されている方はご覧頂きたい。

本局も期待を裏切らない大石プロの序盤戦術だった。私は弱いなりに序盤に凝るほうなので、こういうタイプの棋士は応援したくなる。早めの端歩は通常は棒銀を警戒したものかもしれないが、角を51に引いたのは矢倉崩しの3手角右四間の形を築くためであり、端の一手はその構想と相まって何かしらの意味があるのではないか。瞬間的に51角、62・42銀という形は児玉先生もびっくりの真性カニカニ銀という様相だった。

個人的に気になったのは38手目の銀引き。ここは右金を上がるような手では駄目ということなのだろう(△43金右で受けると飛車が直射した状態で後々の▲52○、△同玉で32の金が浮く、ということか)が、しかし銀を引いて金を上がるという手段では如何にも面白くない。

大石プロが苦しそうな中盤を経て、切っ先を紙一重で見切る、という木村一基プロ得意の展開にて終了した。策士策に溺れる、ではないが趣向を凝らしすぎなのかもしれない、と思われた大石プロの序盤戦術だった。私はかなり好きなタイプだ。変な力戦ではなく、一局一局に工夫があるのは見ていて楽しい。ただしアマがみて楽しい趣向というのは、凝らしすぎの可能性が高い,という難しさはあるのかもしれない。


第51期王位戦 白組5回戦
先手:羽生善治 名人
後手:丸山忠久 九段


次に終わったのがこちらの対局。羽生名人先手で後手丸山プロの横歩取りというのは誰もが予想した戦型だろう。私の戦前予想も当たった。序盤の細やかなやり取りが専門的で難しく、私の棋力ではよく分からなかった。ただし歩を沢山渡して銀を殺す筋がなかった時点で、後手に誤算があったように思う。羽生名人の方針は一貫しており、途中で攻め合って勝ちと読むと一直線のコースを選択した。

88手目の局面は是非見て欲しい珍景ならぬ珍形。まだ難しそうに見えた後手の粘りのある手に対して、最強の手段で応じ、一直線に桂馬を取って、後手の選択肢を限定させた。踏み込むべきところは踏み込みシンプルに決める、というのは羽生名人の得意技。リアルタイムで見ていた人たちは63角成に驚いたようだが、結果的には最善だった。これで最低プレーオフは確保したのは流石の一言である。



王位戦 白組5回戦
先手:三浦弘行 八段
後手:高崎一生 五段

この将棋は必見。先手37銀戦法vsゴキゲン中飛車。対中飛車では高勝率を誇る、研究家の三浦プロがどのような指し回しを見せるか?に注目した。37銀戦法は予想通り。そこからどのように指すのか?と見ていると、これが素晴らしい指し回しだった。31手目、23歩が入った時点では先手が僅かにだが指し易いだろう。後手の玉が71にいること等、かなりギリギリの条件で微差の優勢を取りに行くという対振り飛車における急戦のあり方が示されていたように思う。

しかしその微差はノーミスであれば勝ちきれるという類のものであり、残念ながら人間はノーミスで指すことが難しい。後手玉が美濃に収まった時点、龍と飛車の交換を拒否された時点ではだいぶ後手が盛り返している。例えば51手目で馬を逃げるしか無く、34筋に攻め駒の効きが重複しているとあれば既に先手の得はかなり失われている。

56手目に後手が打った64角が絶品の味。そこからの大捌きでは既に逆転しているかもしれない。70手71手目あたりでは既に後手が良さそうで、振り飛車の左の桂馬と香車が残っており、なおかつ金が1枚遊んでいるのに後手が良さそうにみえるということは相当に後手が良い可能性がある、とツイッターでは呟いたが、そこから程なくして先手の三浦プロが投了した。

これを見ると穴熊戦は詰まらないなどとプロに対して言うのは酷だと思うぐらい、急戦の難しさを感じさせる将棋だった。



王位戦 紅組5回戦
先手:松尾 歩七段 
後手:佐藤康光 九段


ここも横歩取り。最近は一手損は廃れた感がある。序盤の駒組みを見ると、羽生丸山戦よりも後手を持ちたくない印象だった。具体的には1・2筋の歩の状況と、82銀の形が私は好きではない。どちらも突っ張っているというか、頑張っている印象で、ここの佐藤側をもつよりは、羽生丸山戦の後手を持ちたいと思った。

先手は自然に指して駒の効率が高まる。対する後手は82の銀を62に戻すなど、やりくり感が絶えない。極めつけの局面は59手目だろう。35、75に歩が伸びて、桂馬が77・37におり、飛車が5筋、頭に銀。攻撃体勢完成、といった風情。

手のない後手の開戦をみて、満を持して攻める先手。その手順は正確かつ着実で、如何にも松尾プロらしさが出ていた。序盤に取ったはずの1筋の位を無条件で奪回されては流石に勝負あり、というところ。ただし、一気に行くような感じではなく、じりじりと進軍制圧していくのではないか?とツイッターでは呟いたがその通りになったようだ。ぎりぎりまでじっくり優位を拡大して、頃合いと見てから銀桂交換となった90手目以降からは後手に勝ち目はなかった。

松尾はらしい勝ち方だったし、佐藤は昨年の不安要素である序盤の意欲的すぎる面が未だに残っているように思われた。今期好調のようにみえた佐藤康光プロの今期のB1での成績が気になるところだ。



第51期王位戦 白組5回戦
先手:戸辺 誠 六段
後手:橋本崇載 七段


遂に週刊将棋の昇級予想からも外されてしまった橋本プロ。ただしこの王位戦での活躍は挑戦者決定戦に進んだこともあり、本局では本気印で来ることは間違いない。将棋バーの経営は、自身の懐を潤わせることではなく、普及の一つとしてのものだろうし、外見とは違い中身は真面目な好青年だと思うが、二つを掛け持つことが、微妙に本業のほうに影響を与えないとも限らない。そのあたりのファンの心配を払拭するためにも、本局については勝敗は別にしても良い将棋を見せて欲しいと思っていた。

対する戸辺プロはニコニコ明るいポジティブ元気玉方式で、ファンの声援を自身の力に加える気質があり、スポーツでいえば常にホーム状態でその実力を大舞台になればなるほど発揮できるタイプだと見ている。今期の王位戦リーグでは羽生名人を含むA級棋士を3人吹き飛ばしているのだが、何故か?高崎プロに負けている。この将棋で負けてしまうと、取りこぼしがある、という印象をもたれてしまう(振り飛車で全部勝つというのは本当に難しいことなのだが)ので、ファンとしては勝って欲しいところだった。

戦前の私の予想は、ゴキゲン相穴熊か78金(先手が橋本プロだと思っていた)だったが、戸辺プロが先手。後手橋本プロの希望で先手中飛車となった。橋本プロが用意していた作戦は、ツイッターでも呟いたが佐藤流の53銀だった。この手の意味を詳しく知りたい方は「将棋世界 2010年 06月号 [雑誌]」の連載「突き抜ける現代将棋」のゴキゲン中飛車持久戦?の93ページ真ん中あたりからを御覧下さい。詳しく載っています。

勝又プロの「最新戦法の話 (最強将棋21)」のゴキゲン中飛車の章において、この手の感想を本家の近藤プロが語っている場面があったように記憶しています(未確認ですが)。

個人的には、この後手番の作戦を好まない。理由としては、先手が木村美濃であれば中央志向同士で戦えるのだが、先手の片銀冠が横からの攻めに先逃げしている感じがあることが挙げられる。勿論五筋を換えさせないという意味で無くはないと思うのだが、本譜のように流れを落ち着かせて駒組みを進めるのは双方の陣形の進展具合として先手のほうが得をしているように思える。

(かといって急ぐ手段はそれほど思わしい戦果が上がらない、というあたりが上記の将棋世界に載っています。有段者で普通のゴキゲン対策を用いる・ゴキゲンを用いる人は一通り読んで損はないでしょう。)

橋本プロのその後の陣組みは、どちらかと言えばクラシカルな思想に基づいたもの。対石田流やひねり飛車でいえば左木村美濃?だろうし、対立石流などの陣形にも似ている。模様をはる将棋で、アマだと後手の居飛車は1・2段上手(で後手番もたされた側)が指しそうな印象。同じ棋力同士であれば大抵振り飛車が幸せになりそうな雰囲気がある。後手は凄く気を使いながら苦労しながら良くしていくイメージ。

筋の良いプロがこういう将棋を時たま見せる気がしていて、例えば阿部隆プロもその代表だろうか。勝ちにくいのだが、上手く指して苦労して指して結局負ける、というイメージがこういう後手の戦型にはある。いわゆる現代将棋が追求する勝ちやすさという思想よりは棋理としての悪くなさを取っている、というか。

先手は無条件?に77桂馬・66銀の形を作れて満足。私は居飛車党だが唯一中飛車だけは指すが平穏無事にこの形を作れただけで勝敗は別にして半足(満足の半分という意味です…)であり、片銀冠まで無事構築できれば満足。

本譜は片銀冠構築途中に後手の橋本プロが動いた。一段飛車の時にこの8筋の交換があるといつも迷うのが、87に歩を打つかどうか?という点。特に居飛車党でゴキゲンを指す人にはわかってもらえると思うが、居飛車党であればあるほど打ちたくない歩。しかし打たないと大抵ひどい目にあう。振り飛車で勝つのは本当にエライ(偉いではなくエライ)ことだと思う。

本譜は長考の末、戸辺プロは受けずに片銀冠を完成させた。この受けないことの是否を問う形で、戦いが始まった。長考の中で読んでいたであろう、プロとしては第一感と思われる手順で将棋は進む。一本道であまり紛れが無い展開なのでどちらもやれると思っているか、或いは仕方ないと思って進めたのであろう。

派手な応酬があった後の59手目13香車までは両者想定の範囲内。右玉など一段飛車に構える将棋ではこの「33桂馬と跳ねて馬当たり」という筋は比較的水面下だけではなく実戦でも出てくることがあるのだが、その場合どちらかがやれているとか、33桂馬一発で馬を殺して後手良し、という風にはならない気がする。

59手目の形勢判断としては。駒の損得はないものの振り飛車側は左側の駒で、居飛車側は守りの香車が一本とられている。ただしその香車は馬を支えるためだけに使われているので良し悪しは微妙。駒の働きは成り駒を二つ作っている後手、金銀のバランスがよい先手とこれまた微妙。手番は後手だが金の位置を正す一手が必要。そして玉の堅さは先手が良い、ということで僅かに、玉の堅さの分先手が良いと思われる。

いわゆるどちらが勝ちやすいか?という話でいえば先手が勝ちやすい将棋であり、その理由はやはり序盤の陣立てにあると私は思う。

78手目の垂れ歩に対して放置して攻め合いを選んだ戸辺プロをみて、戸辺ファンである私としては勝ちに行ったのだろうと考えていた。戸辺将棋は序盤の僅かな有利を丁寧な構想をテコにして拡大させ、ある時点で戸辺将棋の「寄せルーチン」が発動される。戸辺プロの中でここからは寄せて良しという判断が働くと途端に鋭く寄せ始めるのが魅力なのだが、それがでたのであろうと。

しかし一手受けられると後手陣に迫るのは容易ではなかった。固かったはずの先手陣も単純な桂馬のフンドシ一発で丸裸に近い状況となった。後手の橋本プロが実力を発揮している雰囲気であり、控え室のプロは難しくなっていると感じているようだった。

後手が相当に追い込んできたところで、殴り合いの様相を呈し、一気に決めに行くのか?と思われた時に指された111手目の77銀が実戦的で良い手だった。ある程度相手玉への寄せがわかりやすい形にしておいて、相手に指させる。そして指させることにより次のパンチがカウンターで入るようにしている。

迫力のある追い込みを見せた橋本プロだったが、最後は戸辺プロが勝ちを読みきって勝利した。将棋における陣立ての勝ちやすさの意味を再考させられるような将棋だった。



王位戦 紅組5回戦
先手:広瀬章人 五段
後手:渡辺 明竜王


本日の大一番、注目の一戦。戸辺・広瀬・渡辺は次世代を担う棋士であると私は見ている。それぞれに違う良さがある。広瀬は終盤の手前の切れ味に優れている印象で、穴熊の上手さはクリンチの上手さだと思っている。クリンチと切れ味の鋭さという両方を兼ね備えているのが特徴。渡辺竜王も、攻めの強さと究極の行き詰まった瞬間にでる妙な受けの強さ、戸辺は序盤型かと思わせる優位の拡大の上手さと、見切ってからの終盤の寄せのソツのなさ、とそれぞれ三者三様に優れた二面性を持っていると思う。

今後の棋界を担うであろう実力者であることを考えると羽生との挑戦権を賭けた戦いに名乗り出るにふさわしい二人だと思う。本局は相穴熊を予想し、そのとおりとなった。通常後手番である中飛車側が、その手の得を3筋攻撃の足がかりに用いる。後手の渡辺竜王は、浮き飛車の筋に備えて、右銀を保留して765筋を抑える。序盤は、後手番の渡辺竜王も満足な展開のように思えた。

両者穴熊巧者であることは間違いないが、プロになってからの穴熊実戦数でいうと広瀬のほうが多いように思う。私は一線級には広瀬の穴熊は通用しないだろうと、昨年の順位戦の度に書いていたが、ことこの中飛車における穴熊戦は別である。しかも先手であり、両方の金、飛車の展開を保留しての3筋の仕掛けというのは十分な研究が伺われる工夫だと感じた。

39手目の58金は大胆な手、という解説だったが解説手順で進むのであれば、先手大喜びだろう。桂馬が無条件で65に捌けるので通常は成立しない筋だ。また、後手の22角という手は常に水面下には出てくる筋ではあるが、本当に指したくて指す手なのか?といえば難しい気がする。41手目の▲54歩と突かれた局面、後手はどう応じても気持ちが悪いと思うのだがどうだろうか?

角交換後に無理やり馬を作る広瀬の手順が如何にも広瀬風であり、通常の戦型であれば等価交換で相手に駒を貯めさせる攻めというのは宜しく無いのだが、こと穴熊に限って言えば、食いついてしまえばOKということもあり、成立している。

53手目の局面。駒の損得は金銀交換でやや先手。手番は後手だが後手の飛車が8筋から逸れているので難しいところ。玉の堅さは先手。ということでこの局面では既に先手が良いかもしれない。あとで追加された感想コメントでは、59手目で先手良し、ということだった。となると、あのシンプルな馬を作る手順で先手良しということであり、先手位取り中飛車の相穴熊の定跡としては先手が良いワカレが多いということなのだろうか。

後手の作戦が悪かったのか、或いは後手番の1手が重かったのか。このあたりの結論はいつか出るだろうが、もしかすると後者の可能性はあるかと思っている。結局、最後まで渡辺が粘るが幸せは訪れずに遂に広瀬が難敵を倒してとの白組優勝者との挑決に進んだ。


***********************************

上記の結果により、白組は羽生名人と戸辺のプレーオフ、その後、広瀬との挑戦者決定戦ということになった。渡辺は負けることは負けたが、残った面子が羽生・広瀬・戸辺ということを考えると、高勝率を誇る次世代実力者と当代実力者がしっかり残っているわけで、意外感はない。


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プロアマ共著という珍しいスタイルで、対抗型における穴熊の基本的な定跡と、その後の中盤・終盤の心得が描いてあります。個人的には、穴熊は有段者、出来れば町道場三段ぐらいになるまでは指さないほうが良いのではないか?という気もしなくはないですが、禁断の果実に手を出したいのであれば、級位者の方が読んで損はないでしょう。

この手のコンセプト本は従来であれば絶版になりやすく、なると古書店などでは価値が上がる…というコレクター的な喜びもあります。

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