プロ棋士負け越し 第三回電王戦第四局ツツカナvs森下卓

昨日電王戦の前にざっくりと将棋世界2014年05月号【Kindle版】(600円)を読みましたが、若手の対談系のが良かったですね。電王戦についても勿論触れられています。心に残ったのは森下卓先生の広瀬章人評ですね。

さて。

第三回電王戦第四局は既報の通り、135手で一丸貴則開発のツツカナがプロ棋士の森下卓に勝利し、ここまでの通算成績で3-1となり残りの屋敷伸之プロが勝ったとして3-2ということで、コンピュータ将棋ソフト側の勝利が確定しました。

プロ棋士としては団体戦となった前回に続き、2大会連続での負け越し。これを重く受け止めるべきかドウかということでいうと、重く受け止めるべきかもしれないのはすでに鬼籍に入っている御仁でしょう。とはいえあの方も責められるべきではない点としては、興行として成り立つ場が、チャンスが、あの時点ではなかったのかもしれません。

ぐぐっとお安くやっている現状ですが、あの対局禁止の当時に今と同じ予算感、ファイトマネーでできていた可能性があるのであればそれはまた別の話ですが。

いつかは越える、いつ頃越える?からの逆引きでグランドプランをつくってといういわゆる経営的な大局観が盤上以外では発揮されないのを不思議に思う声をよくききますが、盤上没我で棋力を高めてきた人生なので仕方ないです。

特に見ていて危険だなーと思うのはファンもプロも肩書にこだわる人が多いんだなということ。一般社会では肩書にこだわる奴にろくな奴は居ない…というのはほぼ通説というか常識になっている気がするんですが、割りとそういう所のこだわりがあるんですよね。。

だいぶ話がそれましたが、将棋の棋譜そのものの話に戻ります。

将棋は矢倉になりました。この辺りは研究の時にも大体が矢倉になっていたようです。しかしどの程度作戦的に用意した局面なり構想になっていたのかは良くわかりません。

ツツカナの手順は多少いわゆる通常ルートからするとずれている感じでしたが定跡ではなく自身の思考で似たような手順を進める事ができているのだとしたらこれは本当に恐ろしいことですね。

35手目、36手目の辺りがなかなか面白いと私は感じたんですが、人間ならば88に玉を入場させるところを優先したい局面でツツカナが欲張りに銀を出たんですね。で、人間的にはそれは許せないのですぐに森下先生は4五歩としたと。

四〇手目の局面では後手は菱矢倉といわれる、良い形とされている陣形に組み上がりました。先手も普通の矢倉で入城完了。

しかしですね、この局面でコンピュータ将棋は先手がまだよいという数字を出していたはずなんですよ。ツツカナ自身はしりませんが、ニコ生の画面上には少なくとも出ていました。となると、人間が思うよりもこの局面は数値的にみて後手が良いわけではないのかもしれません。

例の飛車先の交換のメリット(一歩手持ちにできるメリット)よりもデメリット(手損)のほうが大きい?とコンピュータ将棋ソフトがみているのと同じように。

私も居飛車党なのですが、こういう陣形は実はあまり好きではないです。攻めの銀が自陣にあって、戦線が上ずっている形というのはそこが争点になりやすいので。これは4筋が争点になるのではないか?とツイッターでは呟きました。

解説では行方さんか藤井さんが、五筋と四筋だったら5筋のほうがなんとなく良い、というようなことを言っていましたがどう考えても、四筋のほうが一筋敵玉に近いのでどうなんでしょうね。

要は飛車先交換は手持ちの歩よりも手損のデメリットを大きくみて、この将棋では銀のバックという手損よりも、相手の陣形を上ずらせて争点を作ったことをメリットとして観ている可能性がある、ということです。少なくともコンピュータ将棋ソフト界隈ではコンセンサスがとれていた局面だと思います。

こういう局面における複数のソフトの判定が人間の大局観のチューニングに活用出来るのであれば、人類はまだ進化できる余地を残していると思います。

プロが驚き、私も感動した手が、49手目の▲2六歩。これは本当に強い優雅な手です。舞うような手つきで羽生さんが指しそうな手でもあります。


そこから攻めの体勢をお互いに整えてからの55手目、▲5六歩には心底驚きました。攻めを呼び込んで引っ張りこんで受ける、という戦い方があるわけですが、ほっといてもそこに進めたいというか、後手としては有力な選択肢となっているのに、一歩与えてやってこいと、ツツカナは言ってるんですね。

これもどのみち得していた歩を渡すデメリットよりも、展開を限定させたほうがメリットがあると観ているわけで、人間の心理的な基準では選びにくい手だと思います。

とはいえ。67手目の▲8六同銀と後手の森下さんの突き捨てを銀でツツカナが取った時点では、後手が悪いようには思えない。ここが勝負どころだとして、局面を突き回せば人間側に後手側に勝ちがあるべきだと思う。

森下先生もこの前後の局面で深く読みを入れていた。その辺りが局後の人間の読みというものは…という発言につながっているのだと思う。ここの精査が完璧であればリードを広げているべき地点だったように思う。

私は控室で出ていたという、角を切ってから5九に銀の割り打ちして、玉頭を叩いて…という手順がかなり有力に見える。一直線の怖くてもやれそうな順、というのは一つの高度なアンチコンピュータ戦略だということは、豊島将之が前回示したところだろう。

森下先生の選んだ手順も各所に時限爆弾(いつでも取れる駒)を配置して、コンピュータ将棋ソフトが読めない一直線の水平線効果の彼方の手順の含みをもたせた局面を出現させており、これはこれで高度なアンチコンピュータ戦略だなあとツイッターでつぶやいたのもつかの間、八三手目の局面ではもはや私が後手ならば自信はない。

わーっと仕掛けてから歩切れになって、それから証文の出し遅れ的に端歩を二つついた後手が優勢なはずはないと思うのだが、対局後の森下先生は明るく、その辺でもまだやれるだろうと思っていたと答えていた。その受けこたえを聞いていると本当に楽観派なんだなと思いました。

そこからコンピュータ将棋が持ち前の圧倒的な終盤力を魅せつけて光速の寄せを決めたわけだが、森下先生の明るさもあってそれほど悲壮感漂うインタビューにならなかったのは良かったなと。

ひとり、司会進行役のエリリンだけがしくしくしており、それを思いやるように振り返りの大盤解説で多弁になる藤井先生と行方先生の優しさにはぐっと来ましたけど。



人間が負ける理由にはいくつかあるとおもう。一つはこういう大舞台の重圧。勝てていた局面があったのに負けた人たちというのはこのへんが関係していたように思う。あとは、戦型的な有利不利。将棋世界の最新号で戸辺誠プロが言っていたように、菅井さんも似たような思いで振り飛車をやっているだろうし、それで臨んだ。

あとは棋力として純粋に上回られている可能性。コンピュータ将棋側の関係者は、トッププロレベルにあると言っていたが、それはほぼ間違いないとしてそこからどうするのか。

来週は屋敷伸之プロが出てくるがそこで勝っても負けてもプロ棋士の負け越しが確定しているわけで、次回以降の開催についてどうするのか?誰がでるのか?については盤上の大局観を存分に盤外、実際の経営に活かしてほしいところだ。

正直、前回の電王戦の塚田泰明プロは好きだったが、今回のあのインタビューでの諸々の言動は軽率さしか現れておらず、ああいうバブル世代の軽薄さと、団塊世代のデリカシーの無さに辟易としている世代の会社づとめの人たちにはあまりよい印象を残さなかったのではないかな?と私は思ったわけですが…。(世代論意味ないのは分かる一方でよく特徴がでていたと思う)。

森下先生が対局後に手元に棋士用の盤駒をおいて、読み筋の確認をすることを赦すような仕組みがいいのではないか?という提案があったが、森下先生の敗戦という意味だけで言うと、その盤駒が手元になかったことが問題だったようには正直思えなかったが、良い提案であるとも思った。

ただしそれで本当に読みの補正がされるのであれば、というところがポイントで、他の人は分からないが詰将棋以外の中盤のところのやりとりで、感想戦ではなく自分の頭だけでやったときに、横に盤駒もってやるというのは、本当にすごく助けになるのだろうか?というのがある。

私の場合は、詰将棋は確実に伸びる自信があるが、対局を二つ行っているように、注意散漫になるような気がしてならないんですが、そんなことないですかね?読むという行為と並べて確認するという行為と相互の出し入れがあって、それで更に強まるのかどうか。でも詰将棋は確実に伸びるということはまあ伸びるのかな。

森下先生の案が受け入れられる前に、無責任に塚田泰明先生が発言してからやや修正したように、最強のメンバーで臨むしかないのではないでしょうか。二日制とかでもいいいんじゃないの?><




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電王戦に関する記者会見は今日、ニコファーレで13時から!ニコ生もあるで!

いやー完全に夏休みモードですいません。

・・・まだまだ続くよ!><

さて、今日大事な話があったので、それだけ再周知しておきますね。。


ニコ生はこちらかな?
「電王戦に関する記者発表会」の生放送

もし第三回があるならば&時期が同じならば、すでにある程度固まってる気がします。塚田泰明先生が出てるということは、ドン・キングばりのプロモーターとして、レギュレーションとかを決める役割を山本一成さんと一緒に担う…ということでしょうか。

注目は誰がでるのか?ということと、定番化(公式戦というか複数年契約)になるのか?というあたりでしょうか。正直持ち時間がどうなるか?といかはあんまり私としてはこだわりがないです。どんな戦いでも俺は戦う!俺じゃないですけど・・。

ということで簡単ですが以上です。


電王戦に関する記者会見

「電王戦」に関する記者発表会が8月21日(水)の13時から東京・六本木「ニコファーレ」で行われます。

「電王戦に関する記者発表会」の生放送

発表会詳細

登壇者
谷川浩司 九段 日本将棋連盟会長
片上大輔 六段 日本将棋連盟理事
川上量生 株式会社ドワンゴ会長
第2回電王戦出場 塚田泰明 九段
第2回電王戦出場 山本一成 氏(ponanza制作者)
会場
六本木ニコファーレ
日付
2013年8月21日(水)
開場
12:30~
開演
13:00~
終演
14:30(予定)



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25年前の塚田泰明の攻め筋(GPS将棋の評価)&GPS将棋インストール方法

さて、ながながと引っ張ってますが、掲題について。

Bonanzaでやろうかな・・・と思ったのですが、せっかくなのでGPS将棋でやることにしました。

GPS将棋のインストールについても簡単に触れておきますね。

GPS将棋のダウンロードページの最新版をDLする。

現時点ではこちら→gpsfish-20121102.1.1-win32.exe

インストールが終わったら、このGPS将棋をグラフィカルに操作するための「将棋処」をインストールする。

現時点最新版はこちら→http://www.geocities.jp/shogidokoro/download.html

ダウンロードしたら将棋所を開いて、「対局→エンジン管理」でGPS将棋を選ぶ。(GPSをダウンロードした際に出来たフォルダの中にあるものを選ぶ)。

この最小限の説明で分かる人はこの説明が無くてもインストール出来る気がしますがw

********************************

で、塚田泰明先生の「攻めっ気100%」に載っていたこれにてやや先手切れ筋、という局面が以下になります。
後手が△3四金!と力強くあがったところ。
GPS130502.png
なんだか三浦弘行八段の指した手でこういうゴツい手がありましたよね・・・。

これにて先手の攻めは切れているだろう、という。一目切れているような気はします。塚田田中戦よりは受け重視。GPS三浦戦に近い印象でしかも三浦さんの作戦よりも銀が少なくとも活用されていて先手の角が6八なのもポイントのような気がしますね。

今回思ったんですが、コンピューター将棋を用いて研究するというのは、ある意味全く別の作業なので将棋の実力を高める…ということにはならない気がしますね…。今度別の記事で書きますがこれは全く別の人間が別の作業としてやらないと、かえって将棋の実力を損ねるんじゃないのか?という気もするのですが、私の感性が古すぎる可能性もあります…。

コンピュータ、GPS将棋にはこの局面を三分三〇秒検討してもらいました。ただし私のPCがDELLのノートパソコンなのでどの程度のものなのかはわかりません。。(まだGPS将棋と対戦すらしてません、する気もしないという説もありますがw)。

以下、三分三〇秒考えてもらった結果です。手順の手前の[]の数字が評価値になります。

[209] ▲同銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△6四歩(63)▲3五金打△同銀(34)▲同角(46)△3四銀打▲4三歩成(44)△3五銀(34)▲4八飛(28)△4四歩打

[278] ▲同銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△6四歩(63)▲3五金打△4五銀打▲3四金(35)△同銀(45)▲3五銀打△同銀(34)▲同角(46)△3四銀打▲2六角(35)△6五歩(64)▲同歩(66)△同桂(73)▲6六銀(77)△6四角(42)▲1八飛(28)

[184] ▲4八飛(28)△6四角(42)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△同角(64)▲同飛(48)△6四角打▲8六角打△同角(64)▲同歩(87)△6四角打▲3六飛(46)△1九角成(64)▲7一角打△3五歩打▲8二角成(71)△3六歩(35)

[149] ▲4八飛(28)△6四角(42)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△同角(64)▲同飛(48)△2八角打▲3六飛(46)△1九角成(28)▲7一角打△5二飛(82)▲3五歩打△2五銀(34)▲4三金打△3六銀(25)▲3四歩(35)△同銀(33)▲5二金(43)△2九馬(19)

[211] ▲6五歩(66)△4六歩打▲4三歩成(44)△同金(32)▲4六銀(35)△6五桂(73)▲6六銀(77)△6四角(42)▲5五歩(56)△4六銀(45)▲同角(68)△3五銀打▲6八角(46)△3二飛(82)▲4八飛(28)△4四銀(33)▲2四歩(25)△同歩(23)

[211] ▲6五歩(66)△4六歩打▲4三歩成(44)△同金(32)▲4六銀(35)△6五桂(73)▲6六銀(77)△6四角(42)▲5五歩(56)△4六銀(45)▲同角(68)△3五銀打▲6八角(46)△3二飛(82)▲4八飛(28)△4四銀(33)▲2四歩(25)△同歩(23)
[76] ▲4八飛(28)△8五桂(73)▲3四銀(35)△同銀(33)▲8六銀(77)△6四角(42)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△3七歩成(36)▲同桂(29)△同角成(64)▲4五飛(48)△同銀(34)▲5一角成(24)△8一飛(82)

[111] ▲同銀(35)△同銀(45)▲4六角(68)△6四歩(63)▲6八角(46)△8五桂(73)▲8六銀(77)△4四銀(33)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△同角(42)▲同飛(28)

[143] ▲4八飛(28)△8五桂(73)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4三金打△6四角(42)▲4六角(68)△同角(64)▲3二金(43)△同玉(31)▲4六飛(48)△3五銀打▲4三金打△2二玉(32)▲7三角打

[143] ▲4八飛(28)△8五桂(73)▲3四銀(35)△同銀(45)▲4三金打△6四角(42)▲4六角(68)△同角(64)▲3二金(43)△同玉(31)▲4六飛(48)△3五銀打▲4三金打△2二玉(32)▲7三角打

[201] ▲5五歩(56)△4四銀(33)▲同銀(35)△同金(34)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△3三銀打▲6八角(24)△8五桂(73)▲5四歩(55)△同銀(45)

[201] ▲5五歩(56)△4四銀(33)▲同銀(35)△同金(34)▲2四歩(25)△同歩(23)▲同角(68)△3三銀打▲6八角(24)△8五桂(73)▲5四歩(55)△同銀(45)

これ以外にも読み筋がありました。時間毎に考えた結果がばばーっと出て来ました。上から長く考えた順になっています。一秒とかで三手分ぐらい読んだもの等も含まれているのでどのように深く読んでいくのか?がわかってなかなかおもしろいですね、これは。

正直、第一・第二候補に選ばれた手順に違和感を覚えないか?といえば凄く違和感があるんですが、ポイントはどの手順においても、先手の評価値がプラスである、ということ。

これは、以前私がサイコロの目にたとえた話に近いのですが、コンピューター将棋がベタ読みしていって、その出現する局面、読み筋が大方プラスということはその局面は指しやすい、と見てもいいのではないか?ということです。

具体的にどうするかわからないし、一目細そう、一目ありえなそう、という局面から次から次に人間がやられていった・・・というのが、将棋倶楽部24でのポナンザ・ボンクラーズによる前哨戦、ニコ生による勝てたら百万円企画、そして電王戦でした。

ということで初見で見きれるか?というとこの攻め筋は初見では見切れないような気がします。じゃあこの攻め筋がプロ棋戦でまた出現するのか?といえばそれは良くわかりません。ゴキゲン中飛車の超急戦におけるコンピューター将棋の指した手が凄い!というのもありましたが、あれも結局プロ棋戦では出現していません。

ただし、プロ棋戦においても既にコンピューター将棋を研究パートナーとした手順が出現している可能性はかなり高いんだろうな、という気はします。その場合の選ばれる基準としては人間からみて指し手の違和感のなさ、がまずはあるのではないかなと。

人間の将棋というのは一つの手、一つの局面だけで作られるのではなく、序盤・中盤・終盤を通じてその人の在り方、思想というものが織り込まれて構築されるものだからです。そこが人間将棋の魅力であり、対コンピューター将棋のときの弱点にもなりうる(のは佐藤慎一プロが敗戦の弁として述べていましたね)。

個人的には昔の塚田先生や谷川先生、或いは晩年の中原誠名人のこういう軽い突き捨てからの攻めというのはとても好きだったので、似たような構想がプロ棋戦にまた出現すると、色々な意味で盛り上がるんじゃないかな?と思っていますが…。

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続:25年前の塚田泰明の攻め筋に対するBonanzaの評価

昨日の「25年前の塚田泰明の攻め筋に対するBonanzaの評価」の続きです。

第三図
塚田3図

塚田さん曰く(図の局面で)△7五歩は、田中さんらしい攻め合いを狙う一手だが、局後の検討では(それに代えて)△5三銀と引いて、以下▲4六歩△4四銀右▲4五歩△同銀▲4四歩に△3四金とぶつければ先手がやや切れ筋だ、という結論だった。

しかし、この変化は先手もそんなに悪くない気がする。駒に勢いがあるからだ。

という話でしたのでその局面を並べてみました。

…がまたもや時間がないのでその話は後回しにします…(後回しにするほど重大な局面ではないのですが…)。

最後にこの自戦記がどのようにして終わっているか?を紹介して次に引っ張りますね…。

(前略)本局は全体を通じて私の指し手に勢いがあって、それが勝利を呼んだと思う。特に第1図から▲3五歩△同歩▲2六銀の仕掛けは印象に残る。

あの仕掛けは前例があったわけではなく、対局中にも自信があって決断したわけではない。ただ受け身になってはいけない、という思いがこの仕掛けを生んだ。

結果的にこの仕掛けはある程度の成功を収め、本局以後、この仕掛けが結構ポピュラーにプロの実戦に表れるようになった。




とあります。


繰り返しますが、「結果的にこの仕掛けはある程度の成功を収め、本局以後、この仕掛けが結構ポピュラーにプロの実戦に表れるようになった。」らしいのです。これは今は消滅してしまった攻め筋、今のプロの目からみると一目軽い、ということですから何かしらの具体的な防衛策が講じられて、なくなったのだろうと思います。

感想戦で示された手順は、少なくとも先手が金銀交換で先攻しているのでハッキリ切れ筋でなければいいんじゃないか、ということを当時の塚田さんは言っています。

この辺り、どうなのか?というのは将棋世界のイメージと読みのなんとか、という例の定番連載で是非聞いて貰いたいところですね。

細い攻めをつなげる渡辺明竜王が「随分と細い攻めをつなげるもんですね」と感心していたように、かなり細い展開にはなりますが、もしかしたらこの攻め筋がまた表舞台に立つ日が来るかもしれませんね。

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25年前の塚田泰明の攻め筋に対するBonanzaの評価

さて、長々と引っ張ってすいませんでしたが、次は巻末に載っているエッセイ…はまたの機会にして、早速棋譜について解説コメントを引用していきます。


まずは何度も示しているこの図面ですね。この局面についてどう書いているか。
tukadatanakazenniti.png

塚田泰明 vs 田中寅彦 1982-09-17 全日プロ

実は「塚田の攻め将棋―攻めっ気100パーセント」に掲載されている20局の最初の1つが上記の局面を含む棋譜になっています。

そしてその棋譜につけられたタイトルが「1革命を起こした一手」です。

しかも解説がはじまる局面がちょうど▲3五歩、△同歩と突き捨てた局面なのですね。

どれだけこの攻め筋が衝撃的なものであったか?を示していると思います。

以下、「塚田の攻め将棋―攻めっ気100パーセント」からの引用になります。


初手合

 田中さんといえば、この当時六段であったにもかかわらず、各棋戦で大活躍、勝率も抜群で、そんな意味でも本局は楽しみな、また緊張した初手合の一局だった。また、全日本プロトーナメント戦は賞金制という新しい形をとっており、本局は4回戦、対局料は15万、そして5回戦の25万を賭けた将棋であった。

 四段時代、私は先手相矢倉では雀刺し戦法を得意にしていたのだが、本局は田中さんの注文で外されてしまった。戦型は何であれ、先攻するのは私のほう。▲3五歩と仕掛けた。



これが仕掛けの局面の自戦解説ですね。面白いなと思うのはこの当時、ようやく序盤研究が体系化されつつある黎明期だったようで、「相矢倉の得意戦法は雀刺し」と言っているところだと思います。

今だと相矢倉で雀刺しが得意戦法…といわれるとかなり偏った印象を受けますよね。雀刺しはあくまでも矢倉の中の変化として現れる一つ、という感じです。

そして次にいよいよあの突き捨ててから▲2六銀と出る手についての解説が続きます。


革命を起こした▲2六銀

第二図(歩を突き捨てた局面)では▲3五同角と取る手が自然。

しかし、これには△5二飛と回られると、▲4六銀か▲5八飛と△5五歩を防がなければならず受け身になってしまう。

かといって、第一図(歩を突き捨てる前の局面)に戻って▲2六銀△5二飛▲3五歩と攻めても△同歩とは取ってくれず、手抜きで△5五歩と突かれて困る。

そこで思いついたのが▲3五歩△同歩と勢いをつけて▲2六銀と出る攻め筋だった。

これが、矢倉戦の常識を破り、革命を起こした一手。

なぜか、というと本譜のように△3六歩と突き出されると、いかにも無理攻めに見えるからだ。

しかし、もう後ろは振り向かない。▲3五銀と出て行って▲2四歩を狙った。



この無理であろうという感覚は相手の形がちょっと違うものの、プロ棋士としては当然のようですね。三浦弘行プロが読んだのと同じように銀が出てきたら取られないように歩を突き出して無理攻めだろうと。

本譜はここから三浦弘行vsGPS将棋とは違う展開を示します。素人目にはこう指しそうだな、という角を追う手が後手の田中寅彦プロに出てきて第三図になりました。

個人的には三浦戦は角を2筋に引かれたのがあまり気持ちよくなかった気がするのでこの田中寅彦プロのように角を6八に追いやるのは一つあった考え方だと思います。

ただし、4五の歩が後々目標というか負担になる可能性も高いのでどちらかが明確にいいと言うわけではありません。好みの問題です。今はこういう風にどっちも一局、という考え方が主流ですが、コンピューター将棋による解析を研究の主軸に置くようになるとより厳密になっていく可能性もありますよね。


第三図
塚田3図


受けは考えない

(図の局面で)△7五歩は、田中さんらしい攻め合いを狙う一手だが、局後の検討では(それに代えて)△5三銀と引いて、以下▲4六歩△4四銀右▲4五歩△同銀▲4四歩に△3四金とぶつければ先手がやや切れ筋だ、という結論だった。

しかし、この変化は先手もそんなに悪くない気がする。駒に勢いがあるからだ。

はっきり切れ筋にする手が後手にないとすれば、▲3五歩△同歩▲2六銀の仕掛けは一応成功と思う。(以下略)



という感じです。ちょっと長くなったので今日はここまでにしますが、上記で先手が切れ筋、と書かれた変化について次回はコンピューター将棋に解析させようと思っています。このためにインストールしましたよ!w



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Author:将棋観戦
「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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