次世代を担うもの、広瀬章人B1へ 第70期B級2組順位戦

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二番手が二敗ということでのラス前昇級となった広瀬章人。その終盤の切れ味は、得意戦法の穴熊と相まって射程距離の違いを魅せつける。

優れた才能の選りすぐりであるプロ集団においても圧倒的に秀でた終盤力。それが広瀬章人の魅力だ。

その反面、序盤戦術においてはやや難がある方だと思う。あらゆる戦型を使いこなしているようにも見えるし、失礼な書き方になるがある意味鷹揚さがあるがゆえのオールマイティーとも言える。

ちょっと出遅れるぐらいでついていって終盤で一気に捲る、というタイプのようで後手番のほうが勝率が高い、というプロにおいてはかなり珍しい戦績であることでも有名だ。

先手となった広瀬vs南戦では、南の右玉的な陽動振り飛車に対して、トーチカに組み上げた。プロで流行する前から、アマチュアでは指されていた戦型である。

手順のアヤで穴熊には組みにくくなったが同じような堅さを得られる。ただし、角の組み換えというか、銀の位置移動の不自然さがあるために、中盤が難しくなる将棋だと思う。

そこを突かれて、完全型になった後手の南が仕掛ける。上手く行ったように見えたが、広瀬の切り返しが絶妙だった。馬を作ったところでは広瀬章人の昇段が近づいた瞬間だろうか。

広瀬章人の将棋を見るときには、是非その角の動きに注目してほしい。この角の運用に秀でていることが、広瀬章人の終盤の切れ味を増している理由だからだ。

細かな角や馬の動きはロングシュートや、直接フリーキックでのゴールを狙うワールドクラスのストライカーのようにも見える。

本局では、角が活躍したのは序盤から中盤だったが、その特徴が現れているので是非有料中継にて確認して欲しい。広瀬章人は次世代を担う天才であることが示されているはずだ。



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関連するタグ 南芳一 広瀬章人 トーチカ 陽動振り飛車

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右玉らしさ。 第4回朝日杯二次予選 ▲畠山鎮?△南芳一

関西の実力者同士の戦い。後手番の南芳一プロは密かに色々と勉強させていただいている。先手番では頑なに横歩を取らず、後手番では頑なに相手の得意を外す。実にアマが真似しやすい戦略。プロ的にはどちらもやや損の可能性があるが、それを具体的に勝敗に結びつけるのが難しいことは将棋というゲームの本質をご存知の方はお分かりだろう。

先手の畠山鎮プロは細くも鋭い攻めが持ち味。北浜健介プロも細くて五月蝿い攻めを得意としているが、それよりも無理っぽさがない…というと北浜プロに失礼だろうか。

本譜は相居飛車、角交換をしない形の右玉になった。

第4回朝日杯二次予選 ▲畠山鎮?△南芳一

右玉愛好家としては。個人的には、角交換しない右玉というのは銀で攻められることが明らかなので苦労が絶えないと見ているが、南プロの右玉は大抵これ。しかもこの右玉で豊島将之プロなど結構な実力者を屠っている。

右玉に対する方針は大きく分けて二つある。一つはじっくり囲って居飛穴など堅さで勝負!という将棋。もう一つは本譜や新人王戦の第二局でアベケンプロがみせたような速攻。

私レベルでの出現率は堅さ:速さ=7:3ぐらいだろうか。どちらが有難いかといえばどちらも有難くない。右玉は佐藤康光ならばいざ知らず、積極的に行くというよりは相手が何かやったらそれに反応する、という将棋なので基本的には最善を尽くされると負けるだろうなあと思って指しているところがある。

右玉にも色々な形があるが、後手番であればストレートに手損なく△7二玉?△6二玉型を(いつかその形にするのであれば)作りたいと思う。しかし本譜は速攻だったので、△6二玉?△5二玉型になった。善悪あるのだが、本譜は結果論として当りがキツくなっていたかもしれない。とはいえ、速攻されるとそれしか囲いようがないのでそれこそ結果論だ。

46手目の△2八銀が南芳一右玉の真髄。こういう僻地に歩を打ったり垂らしたり出来たと金をジリジリ引いたりして相手の緩手で差が急に詰まる…と勝ち、という展開が多い気がする。

52手目、角銀交換の駒損となるものの、どうせお荷物になる角なので、そして攻めに桂馬を参加させることが出来るのでよしとしたもの。この当りの感覚は、角交換型ばかり指している私としては参考になった。打ち込んで相手の金と刺し違える、というのは良くある話だが相手の攻めの銀と交換しても指せる(或いは仕方ない)と見ている。

58手目の局面。手番は先手、玉の堅さは先手、駒割りは▲角△銀桂香と三枚換えだが後手の銀が僻地にいる。先手の右側の駒が攻め駒だとすれば捌けているとも見てとれる。

59手目の▲2二角が感想コメントによると暴発だったようだ。言われてみると嘘でも納得する程度の棋力ではあるが、確かに備えているところ、玉から遠いところへの不足している大駒の打ち込みは後手からみてありがたい。

この辺の数手で双方攻め駒が捌け切ったものの、▲2三歩?▲2四飛の形が残っている先手の攻めが遅そうにみえる。

78手目、△1五角が勝てば勝利打点間違いないの味の良さ。これで負けるとはまさか思わないだろう。もし将棋倶楽部24でこの手が指せれば相手の考慮時間にツイッターを眺めはじめていてもおかしくない。

しかしここから自然な攻めの後手が突如難しく見えるのが右玉の怖いところ。駒得しながら先手玉を追いかけて悪いはずはない、と思うのだが入城されてみると良く分からなくなっていた。

ここで88手目の解説コメントにある感想での正着に驚く。「銀は成らずに好手あり」とはいうものの、ここで銀成らずがさせるのはそれこそコンピュータだけだろう。

そしてこれが右玉というものだろう。良さそうに見えてもあっという間に寄ってしまう不思議な玉。相手が腰の入ってない攻めをしてくれれば、するすると逃げられるのだが、一旦手がつくとこの金銀桂馬がどんな形だろうが、玉がどこにいようが直ぐに寄ってしまう。

本譜の敗着をもって南プロのミスだと言い切れないのは私が右玉党だからだろうか。

こういう終盤の一気に差が詰まる(実際には元々それほどの差がなかったにしても、実際に指しているとお互いに急接近しているように感じるはずだ)ところがあるからこそ、勝ったときの爽快感もひとしおなのだと思う。(こういう将棋ですら負けるから指したくないのだ、という意見があるのも分かるが…)。



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基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

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