将棋界の一番「怖い」日。。第71期C級2組最終戦。1敗勢が3名昇級!降級点は…。

A級順位戦が一番「長い」日だとすれば、C2の最終戦は一番「怖い」日だろう。降級点という、3つもらうともれなくフリークラス行のチケットをもらえる点数がある。

その割り当て数は9人分ある。昇級が3名に対して、9名分。いつだったか調べたのだが、C2の平均年齢がどんどん下がっている。若くなっている。

要は、この降級点というのは将棋界という野生の王国における淘汰の仕組みである。弱いものが食われる。その中には老いたものが比較的含まれる、ということだ。

20年以上将棋をみている人間として思うのは本当に将棋棋士のトーナメントプロとしての待遇を維持するのが年々大変になっているな、ということだ。

そしてこれは日本の縮図でもある。我々が将棋界を憂うとき、哂うとき、それは我々自身を憂い、哂っているということでもある。

一昔前のC1やC2はまだよかった。青春の苦悩、上がれる才能を持つのに上がれない人間の苦悩とそれを突き抜けたときの歓びを感じることができた。屋敷や先崎。森下。

数えればきりがない天才たちがCクラスで苦労していた。でもそれはのちに大輪を咲かすための糧となっていたはずだ。

だが、今は違う。

将来の名人候補はいつかはあがっていけるが、もしかすると次世代の新戦法や新構想の発信者になるかもしれない人たちが、上がれないのではなく、落ちるのだ。

或いは落ちる恐怖におののき、その本来持っていたであろうクリエイティビティを発揮できずに、縮こまってしまう。そういう雰囲気を今のC2には感じる。

三段リーグからプロ入りしても単純には喜べない。なぜなら、そこからまた第二の三段リーグともいえる、C2クラスが始まるのだから。

C2クラスの平均年齢が下がった結果、もちろんC2のレベルは上がった。4名の天才が入り、3名が抜ける。降級点3つ持ちのロートルや不幸者が落ち、クラスのレベルが煮詰まり濃縮し、より高くなっていく。

日本の若者が苦心・苦労しているのとまったく同じ構図がここにはある。

こういう現状を踏まえたうえで、昇級・降級のレースをみると、より一層理解できるはずだ。

まずは昇級候補。この高レベルなC2のなかで、1敗しかしてない棋士が4名もいる。阪口を除く3名の平均年齢は20歳。

2敗未満のメンツの年齢をみると最年長が矢倉の38歳。もちろん、才能ある人間は上のクラスに抜けていくとはいえ、その若さに私は改めて驚いた。

これを書いてるのは当日の朝、だがおそらく菅井・澤田・斎藤があがるのではないか?とみているが。。

そして降級点。

こちらは9点に対して確定が3点。西川パパ、伊奈、川上。川上はこれで降級となる。まだ40歳だ。

残りの6点を14人で回避の争いを行うこととなるが、4名の20代以下を含む。(高見、牧野、長岡、藤森)。

そういえば、余談になるが、先日のA級順位戦のニコ生解説で、勝負の前に震えるかどうか?という話を解説者4名でしていた。

その時に、豊川先生が、長岡プロの前で「C2で一度だけ降級点を取りそうになったときがあったが、その時は1か月ぐらい体調が悪かった。回避したら治ったけど」という話をしていて痺れた。

長岡プロは降級点をとるかとらないかではなく、降級するかどうか?の勝負を数日後に控えていたわけで、ニコ生の粗い画像を通じても、その顔色が変わったのがわかった。

見ていて忍びない気持ちになったが、それが勝ち負けだけですべてが決まる、将棋の世界なのだった。

佐藤深夜先生が機転を利かせて、話題を変えたのをみて彼の優しさを知った。二人は米長邦雄の葬儀で遅れたC2の対局を、二人っきりで指した仲?なのだった。長岡は喪服?黒ネクタイ?で勝負に臨んだが、正直に書くとひどい将棋だったのを覚えている。

降級点が確定している、あるいはとる可能性がある棋士をみると、すでに1点以上もらっている人が散見される。運の要素がほとんどない(対戦相手、先後のクジ運ぐらい?)将棋の世界では、いつかどこかでその実力の適正なところに、自身の立ち位置が収れんしていく。そしてその収れんまでの時間というのは、それほど長いものではない。

もっといえば、三段リーグの成績と順位戦の成績の相関関係というのがある。三段リーグでの活躍ぶりをみれば、順位戦での活躍もわかる、というものだ。

戦法・戦型のトレンドはあるものの、それがどのように変わっても一定の活躍をするには実力が必要ということなのだろう。波が来た時にうまくとらえて、そうではないときには自暴自棄にならずにこらえる・・・という意味では、その戦い方・姿勢に私が学ぶところも大きい。

と、ここまでが対局開始直後に書いたものになります。ここから先は、全局・・・は難しいので、好きな将棋、昇級に絡んだ将棋、だけを取り上げる予定。降級点については結果のみを記したいと思う。



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まずは昇級だが、結論だけ書くと1敗勢のうち、菅井竜也阪口悟斎藤慎太郎の三名がキープしての昇段となった。斎藤慎太郎は佐々木勇気と並ぶ逸材であることは小さい頃から言われていたが三段リーグで常に良い成績を残したもののなかなか上がれなかったが、ちゃんと帳尻は合うものだ。

また、斎藤慎太郎はいわゆるしょうゆ顔(今言わないの?w)のイケメンでもあり、その性格も素晴らしく、将棋のタイプも魅力的なので、見た目的にも佐々木勇気と人気を今後二分しそうな勢いである。菅井竜也はそのプライスタイルというか、闘志むき出しの感じがたまらなく素敵で、そのガッツがなくなるまでは延々と活躍しそうな雰囲気がある。

阪口悟プロは、奥さんが喜んでるんじゃあないでしょうかw 今期は特に振り飛車党同士の対戦が多く、そしてその相振り飛車において、一日の長を示した、という印象です。

早々に勝負を決めたのは、菅井竜也プロ。夕方前に昇段を決めて、そのまま関西に戻り、解説会に登場するというかっこ良さだった。このバイタリティーが菅井竜也プロの持ち味を示している。

戦型は先手中飛車に後手が5筋を突く形で乱戦模様。こういう将棋は菅井竜也がもっとも得意とするところだ。ヒラメ戦法で出てくるような筋が炸裂して、先手の菅井竜也プロが圧勝した。

阪口悟プロは相振り飛車の後手番で西川ジュニアと対戦。シンプルな美濃囲いから相手の三筋を凹ませて優勢を築いた。今期は本当に相振り飛車での勝利が多かった。△4六歩という筋が炸裂して先手陣は持たなかった。ここも圧勝に近い。

私のもう一人の?アイドル、斎藤慎太郎プロは中座プロと横歩取りの戦いで先手番。本家の8五飛車にやや不思議な作戦(相中原囲い?)で対抗したが1-3筋への集中攻撃が続く形となり、優勢となった。

斎藤慎太郎の将棋は強いと思う。佐々木勇気の粗削りさと瞬間みせるセンス、みたいな感じではなく、作戦に最新さよりも古風さを感じさせつつ、中終盤の強さ、特に中盤のねじり合いの強さがありつつ、序盤の無難さがあるというか。終盤型はもっと序盤が独特な事が多いようにおもうが、それがない終盤タイプ。

もう一人の一敗だった澤田プロは先手番だったが苦しくして千日手王の永瀬に無理せず千日手に持ち込まれた時には時間が2時間ぐらい違った。

指し直し局は永瀬の先手で手損からの先手ゴキゲン中飛車。澤田の取った作戦がやや独特で、序盤早々に先手が良くなったような将棋だった。澤田はこういう意味で終盤型らしい将棋だと思う。

1敗勢から3名は上がるだろうなと思っていたが、前年に引き続き、ハイレベルな戦いが続いた。その煽りを受けたのが、降級点争いだった。熾烈の一言。

石川、松本、小倉、瀬川、上野、遠山、川上、西川慶、伊奈の9名で、松本・遠山・伊奈が2点目。上野と川上がフリークラス降級。

ギリギリしのいだメンツとしては、長岡、藤森だろうか。藤森はやはりこういう運の良さを持っているというか、居飛車穴熊をちゃんと完璧に指しこなせる、というのはやはり大きい。序盤でかなり安心できる展開だったように思う。長岡はニコ生での例のやりとりをみていたので、震えずにしのいだのは素晴らしいと思う。

ネットでも発言・活躍している棋士にとって、こういう時は辛いと思うが、嫌にならずに頑張って欲しいと思う。特に瀬川さんはTwitterで、将棋をやめたい、ぐらいのことを書かれていて衝撃を受けたが、勝手に補足すると、こんなに不甲斐ない将棋を指すようであれば、将棋をやめたほうがいい、というような精進が必須であるということの裏表の覚悟を示すような、一言だったのだろうと思う。

最後に、教授こと勝又清和プロのTwitterの言葉を紹介して終わりとしたい。

へとへとに疲れた。腰が猛烈に痛い。寝たいが頭が冴えて眠れない。棋士としての寿命は延びたが、寿命は縮んだなあと実感する。それでも棋士として対局が出来ることが嬉しい。うれしい。おやすみなさい。

https://twitter.com/katsumata/status/309001646929752064





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(2013/01/23)
山崎 隆之

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折れない心 第70期C級2組順位戦 三回戦@8月30日

終わって全勝が8名。教授こと勝又清和の全勝が特に素晴らしい。三局とも、戦い方・勝ち方がかっこ良く、棋譜として素晴らしいのだ。リーグが違うのだよ!とでも言いたげな、勝ちっぷりを見せてくれている。この調子でカッコいい戦いを見せてほしい。

反対に全敗は5名。この面子が全敗するのか?と恐ろしくなる。特に、今期順位戦に参戦している新四段の苦戦。。5人で15戦して8勝7敗。四段になるということは「C2リーグレベル(指し分け)に到達する」ことである、と言っても良さそうだ。

ちなみに前期も5名の参入があり、50戦して33-17だったので、後半水になれて巻き返してくるのかどうか?に注目したい。特に、ユーキャン通信講座のCM出演が掛かっている!と言っても過言ではない、阿部光瑠四段には残り全勝ぐらいでお願いしたい。

阿部光瑠四段についていえば、ちょっと時間の使い方に苦労しているように見える。早見え早指しは天才プロに共通したものだが、残りの対戦相手も相当に強い面子が並んでいるので、どうかじっくりと順位戦の味を堪能しつつ、アジャストしてほしいものだ。

昇段の三名だが、3連勝スタートの中から二人は出そうな雰囲気。勝又清和プロはアベケン・船江あたりをどう乗り切るか。船江は澤田・遠山。特に遠山の振り穴が出そうな雰囲気で、振り穴といえば広瀬王位が有名だが、遠山の振り穴も絶品だ。

順当にいけば、アベケン・澤田を推したいが、二人が当たりあっているのがポイント。澤田はその他にも、船江・佐藤和と当たっており、一番手には推しにくい。

アベケンも競争相手の村田顕と当たっている。また、アベケンvs教授の序盤戦術にも注目したい。

澤田真吾四段は私レベルのアマにはよく強さが分からないのだが、ごちゃごちゃしたところで力を出してくる雰囲気がある。重馬場得意、というような米長邦雄的なものを感じるところもあり、将来相当走るのではないかと見ている。その真価が今期発揮されれば、全勝で上がるまであるのではないかとは思っている。

当たりがもっともユルいのは、中村太地だろう。牧野戦に勝てばこれまた全勝まである。確か振り飛車から居飛車に転換していたが、最近後手番横歩取りでの安定感も出てきており、取りこぼしがなければ3人枠には収まりそう。

村中も当たりはキツクない。大平と似たような雰囲気を素人には感じるが、相手なりに走る矢倉の得意な居飛車党という感じで、残りを全勝しても全敗しても特に驚かない。村田顕は後半3つがポイントだろう。村中と村田顕は順位が悪いので1敗まで。

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阿部光瑠四段vs△阿部健治郎四段
阿部ダービーとなった対戦だが、時間を大量に残して阿部光瑠が負けてしまった。

序盤の端の突き合いが面白い。そしてそこから角道を封じての相振り飛車となった。この形は後手が攻勢を取りやすいように思う。

後手が美濃、先手は矢倉風味。後手の歩の突き捨てを逆用して陣形を盛り上げるが、玉の位置をみると、先手陣の立ち遅れが気になるところ。

先手が7筋を突き捨てて6筋も…としたところで手抜かれて、2枚の持ち歩で3筋で後手がポイントを稼いだ。素人目にはこれで後手がやりやすく見えるのだが、どうなのだろう。

▲6四歩で△6二金と凹ませた形は気分的にはいいのだが、意外に耐久力があるのは羽生vs広瀬の王位戦で観たような気がする。それを踏まえて本譜を見る限りでは、飛車を取らせたのはやはりやりすぎだったのではないか。

このへん、7・6筋の突き捨てといい、飛車を取らせる順といい、もっと読めるはずで読んでから決行して欲しかった。同じような早見え早指しの糸谷もそうだったが、エイヤと目をつぶって指したような気がする。

対するアベケンは最後まで時間を使い切り、自陣がぎりぎり受かっていることを見切っていた。



勝又清和六段-△藤原直哉六段
今期、順位戦での三局とも完璧な指し回しを見せている勝又清和プロ。この居飛車穴熊も繊細な序盤かつ大胆な終盤、ということで正にお手本。先日のダニーvs森けい二プロの居飛穴の大胆な序盤と辛い粘りとは訳が違った。

完全型の居飛車穴熊になり、後手も8筋9筋の位を取った四枚銀冠。65手目の飛車浮きまでの繊細な指し回しこそが居飛穴の本質だろう。

77手目の▲2五歩まであくまでも焦らない先手。次に桂馬の飛び出し、角の成り込みの両方が受からないので飛車を切って暴れるしかなくなった後手の藤原プロ。

85手目の▲4五飛車成りも素晴らしい。居飛穴に大山流がミックスされた指し回し。相手が暴れるということで、面倒みて勝つ方針に。最後まで後手の攻めが細く、切れて投了となった。


澤田真吾四段-△佐藤紳哉六段
横歩取りの中住まいvs中原囲いに。48手目の△5四角がどうだったか。この角が目標になり、先手が良くなったような印象を受けた。

61手目の▲5二歩が鋭い。この手が入って先手の優勢が確定したように思う。5三に拠点が出来て飛車が五筋に回った手が先手では流石の中原囲いも持たず、後手の投了となった。


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三回戦終わっての星勘定は前述のとおり。勝又清和プロを観て思うのは、将棋にかかわらず、何事もその取り組むべきものへの姿勢と熱情が重要なのだろうということ。

棋譜を見ていると、たまに酷い将棋がある。プロの商売は棋譜を魅せること、というのを理解していても、天才同士の紙一重の才能の違いの中で勝負プロとしての土俵から降りてしまうとそうなってしまうのかもしれない。

教授の将棋世界での連載を読んでいても、将棋って楽しい!という気持ちがあふれでていて、今期の充実の勝利もその折れない心あってのことと思う。

勿論、星が伴わないことはあるはずだが、そこで腐らずに全力を尽くすことの大事さを教えられているような気がする。

そういう意味では今期は全体的に不調だが、瀬川晶司プロも奇跡のプロデビューを実現させたわけだし、必ず復調してくるのではないか。

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一手損康光流 2011年01月09日第60回NHK杯三回戦第五局 ▲羽生善治-△勝又清和

勝又清和教授が羽生善治名人に挑戦する一局。たしかこれで二戦目。一戦目も一手損か何かでかなり善戦されていたような記憶があるが、例によって私の曖昧な記憶なので保証はしません…。

2011年01月09日第60回NHK杯三回戦第五局 ▲羽生善治-△勝又清和

本局も一手損。一手損といえば、私はかなり初期の頃から、何故棒銀に見せかけて後手に1筋を受けさせてから3筋に転戦する私がいうところの「棒銀フェイクの早繰り銀」をやらないのだろう?と言い続けていたのだが、最近のプロの一手損においてはこれが主流の一つになりつつある。

この端を受けさせて3筋に転戦する指し方はアマでは比較的メジャーであり、私もよく24などで遭遇してどうしたもんかね、一手損の上に端まで受けたのに無視されて合計二手損ですか…とげんなりしていたものだった。

そこで現れたのが本譜の佐藤康光流、苺囲いである。このへんの詳しい手順は「将棋世界2011年02月号」の勝又清和教授の連載「一手損のパラレルワールド」に詳しい。(この号だけ買えば、一手損ワールドの心得が学べるという非常に素晴らしい出来栄え)。

佐藤康光流のこの先手の方針に対する対策というのは、一言でいえば二手損を苺囲いでフォローし、左右両方から攻撃する体勢を築く、ということにある。

右玉の玉頭から攻める構想を見せた佐藤康光プロならではの自由で柔軟な考え方に基づくもので、この囲い?でどうにかなるのであれば、後手は△7一、△8二という二手を省略できているので、十分戦えるといえよう。

ただし佐藤康光プロも最初に用いた将棋では相当に先手が良さそうで、最終盤での逆転だった。その他の例としてはC1の勝又清和vs村山慈明戦、同じく勝又清和vs小林裕士戦ぐらいしか知らない。多分、この三局が代表局であり、なんと驚くべきことに後手が全部勝っている。

本局はそれらを下敷きにしたような展開だった。

双方飽和状態になったのは43手目。後手が仕掛けて開戦となるわけだが、何も懸かっていない将棋を指すアマであり、対振り飛車右玉の似非使い手としては、9筋の突き捨てをどこかで入れておきたかった。

勿論指しすぎになるリスクはあるものの、何も懸かっていないので当然味付けは濃い目、である。

本譜は銀交換後の53手目、▲3一角が結構煩かった。余して勝ち、という気もしなくもないが相手が天下の羽生善治名人ということで、かなり恐ろしい。本局は僅かな駒得の後手が良かった可能性はあるが、玉形の違いが大きいので実戦的には難しいところ。

そこから徐々に羽生善治名人が形勢の差を縮め、遂に逆転したか?と思われるのは109手目付近。終盤に入り、駒の損得が関係ない状況になりつつあるように思われた。

115手目の桂打ちも素晴らしく勉強になる一手。後手が竜の効きを封じるしかないのであれば桂馬が死なずに先手の攻めとしては継続の目処が立った瞬間だ。

中盤のねじり合いはかなり後手にも分があるように思われたが、玉形の悪さ、飛車打ちに弱いという点を上手く咎められたように思う。右玉系の将棋においては、やはり飛車をもたれると辛いということだろうか。

用いる戦法的にとても勉強になった一局だった。


佐藤康光の一手損角換わり (佐藤康光の将棋シリーズ)佐藤康光の一手損角換わり (佐藤康光の将棋シリーズ)
(2010/08/25)
佐藤 康光

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自由で柔軟な康光流がふんだんに盛り込まれています。



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読書感想文 「どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語」

どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語」を先週の土曜日に購入した。


どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
(2010/11/25)
梅田望夫

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この本は5つの章から構成されている。そして更に、それぞれの章が前編後編に分かれており、前編が羽生善治が戦ったタイトル戦の観戦記であり、後編がそのタイトル戦が終わった後に行われた本人もしくは挑戦者を知る人間へのインタビューとなっている。

以下、目次から抜き書きした各章の詳細。

はじめに ??残酷な問いを胸に

第一章 大局観と棋風(羽生善治vs木村一基
 観戦記「割れる大局観(第80期棋聖戦第一局)」
 対話篇「棋譜を見れば木村さんが指したものとすぐわかる」(羽生善治)

第二章 コンピュータ将棋の遥か上をゆく(羽生善治vs木村一基)
 観戦記「訪れるか将棋界『X-day』(第80期棋聖戦第五局)」
 対話篇「互角で終盤に行ったら、人間は厳しいです」(勝又清和)

第三章 若者に立ちはだかる第一人者
 観戦記「『心の在りよう』の差(第57期王座戦第二局)」
 対話篇「あれ、むかつきますよ、勝ってんのに」(山崎隆之)

第四章 研究競争のリアリティ
 観戦記「研究の功罪」(第68期名人戦第二局)
 対話篇「僕たちには、頼りないところがあるのかもしれないな」(行方尚史)

第五章 現代将棋における新手の本質
 観戦記「2手目△8四歩問題」(第81期棋聖戦第一局)
 対話篇「優れた調理人は一人厨房でこつこつ研究する」(深浦康市)

あとがき ??誰にも最初はある



観戦記のうち、四つは今でもweb上で無料で読める。買うかどうか迷っている人はまずはそちらからチェックしてみて、多少なりとも面白く感じたら、本書を買う価値はあると思う。

なぜなら観戦記の後編にあたる対話篇がより面白いから。タイトルだけ読んでもその面白さが伝わるのではないか。

将棋を指さない人で躊躇するとすれば、符号(▲7六歩とか△8四歩とか)が出てくるところだろうか。しかし安心して欲しいが、そんなものは読み飛ばしても十分に面白い。

将棋世界という専門誌やNHK将棋テキストなどを購入している人のなかで符号だけみて頭の中で再生出来る人がどのぐらい居るのか。ゼロから棋譜だけみて全部並ぶ人がどれだけいるのか、図面から10手以上の手順が追える人がどれだけいるのか?といえば、かなり少ないと思う。

専門誌を買うような人でも、符号を追えない。逆にいうと符号を追わなくても、面白く読めているのだ。符号は読み飛ばす、梅田望夫氏の描写だけを追う、それだけでとても楽しいはず。

以下、私の感想の補足。

■第一章
木村一基プロの棋風に関する描写が楽しい。後手番の将来を思うとき、木村プロの棋風がもう一花咲かせる日が来るのではないか。後手番勝率は駒落ちの上手さと相関していくのではないか、と私は考えていて、そのあたり。

■第二章
コンピュータ将棋の実力について。羽生名人の言葉に驚いた。勝又清和プロによる人間対コンピュータ将棋の対戦戦型についての考察が当然ながらに面白い。入玉などで怪しい対コンピュータ将棋の具体的戦術について語られる日も遠くないか?と思ったが、あから戦以降急にトーンダウンしたのが残念。

■第三章
羽生善治にとって最愛のジャムセッションパートナーともいうべき山崎隆之。彼の人間的魅力と、勝負師としての弱点は表裏一体。これは木村一基も同様だが。ある程度将棋を知っている人間にとって、山崎隆之プロの将棋というのは恐ろしすぎる。アマでもここまで毎回不思議な形になる人は少ないのではないか。

あの「裏話」の続きを本人の口から聞けるとは思っていなかったのでこれだけでもこの本を買う価値があった。谷川先生の叱咤激励とあわせて、その才能を愛されていることがよくわかる対話だった。

それにしてもここまで正直に指し手における逡巡具合を語るというのは大丈夫なのだろうか。あと、似たような形でしつこく飛車を転回するのはあの将棋の仇を打とうとしているのだろうか?

■第四章
この章の見どころは研究将棋にはめ込もうとする三浦弘行プロの思惑を、残酷なまでに行方尚史プロが語る、という図の凄味だろう。行方尚史プロが梅田望夫氏を好きすぎるのだろうなあというのを感じずにはいられない、その語り。

あとはなんといっても研究将棋の生々しさ、だろう。次の第五章と合わせて、アマでもMY定跡を持っている人間であればあの展開がハマったときの高揚感は分かるところだ。

しかも封じ手の局面で二択としか思えない局面で相手の封じ手。私が三浦弘行だったら、一晩寝ずに(或いは寝付けずに)2つの変化を掘り下げてどちらが来ても鼻歌まじりで勝てると確信して朝の対局場に向かうだろう。そしてそこで現れた封じ手は…。

四連敗で終わった名人戦の後の三浦弘行の将棋がどうなったのか?羽生とのタイトル戦以降、他の棋士たちが調子を落とすのはどうしてなのか?ということについて、正直に語る行方尚史プロ。

将棋にかける情熱・幼い頃の単身上京する姿は羽生から王位をもぎとった深浦康市プロに重なる行方尚史プロだが、かれらはA級の壁(羽生世代の壁)に跳ね除けられている。今のところ。

それらの状況を総評してこの対話篇のタイトルにつながるのだが、失礼を承知でいえば、団塊ジュニア周辺の棋士たちは全般的に幼い印象を受ける。

若くして老成した渡辺明・戸辺誠周辺と比べると特にそう感じる。言葉としては好きではないが人間力というものの違いを感じずにはいられない。のだが、三浦弘行等、浮世離れした雰囲気もまた棋士の魅力なのだった。


■第五章
深浦康市プロは番勝負における準備が凄い、作戦巧者である、というのが棋士仲間内での評判だったが、それを裏付けるような棋聖戦の初戦の作戦についての発言が興味深かった。三浦にしても深浦にしても「羽生が指した手以外は」自信があったという。

しかし実戦で羽生が指した手は彼らの作戦以外の手であり、そしてそれで羽生勝ちとなり、羽生にぶつけた局面は二度と出現しないであろう、という結論になってしまったというのが面白くも恐ろしい。


■総括
将棋ファンでない人からすると、難解に感じるかもしれないが、普段将棋関連の書籍を読んでいる人にとっては割とのどごし爽やか、切れ味の良い読了感という感じになるかもしれない。梅田望夫氏に語りかける棋士たちがイキイキと語る様子が図らずも?描かれていて、棋士たちもまた、内輪同士の語りに厭きていたのだなあと私は感じた。


どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語どうして羽生さんだけが、そんなに強いんですか?―現代将棋と進化の物語
(2010/11/25)
梅田望夫

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球種は一つ、ごきげん中飛車 第60回NHK杯二回戦第七局 ▲近藤正和六段vs△勝又清和六段

先手が近藤プロということで堂々の先手中飛車に。近藤プロには中飛車だけで食っている、という矜持がある。往年の野茂投手が「球種がストレートとフォークの二つだけだから打者は迷うんだ」と言っていたが、球種が1つの場合はどうなのだろうか。その答えの一つがこの将棋。

第60回NHK杯二回戦第七局 ▲近藤正和六段vs△勝又清和六段

先手中飛車に対して、最近の流行は後手が居飛車党であろうと三間飛車にするという作戦。めったに振り飛車を見せない渡辺竜王や行方プロなどが惚れ惚れする指し回しを見せている。

アマの居飛車党の場合、相振りを観るのも指すのも好まない人が多いように思う。私もその一人で、そういう場合に対先手中飛車に対してどうすればいいのか?というのが悩みの種だろう。慣れない相振りにしても、相手はそれがあることを承知で先手中飛車にしているわけで経験値の違いでどうにかされてしまう。

本局は、プロフェッサー勝又の、先手ゴキゲン一本に絞った作戦が炸裂した。野球で喩えれば球種は一つ、のナックルボーラーのナックルボールが変化せずにバックスクリーンに突き刺さるホームラン、という印象の、居飛車党にとっては並べるだけでウハウハな手が連続する気持ちのよい戦い将棋だった。

序盤の見所は後手が飛車先不突なことだろう。それ以外は普通のゴキゲン対抗形。先手が5筋を交換してきたら、手に乗って盛り上がろうという後手の構想にも思える。延々交換してくれないので、やおら飛車のコビンを開けて3七銀ならぬ7三銀超速風に銀をあがる勝又プロ。

33手目の局面、先手が五段目の銀を支える手を指すしかないようでは既に居飛車が良さそうだ。好形といわれるが私は好まない7三桂-7四飛車の形が示現した38手目では、先手の主張点がないにもかかわらずなので、相当に気持ちがよい。

垂れ歩で攻めてくださいとする近藤プロに対して、一瞬千日手か?と思わせる手順から先手が打開した。…が、最善は千日手だったような気もする。(NHK杯で千日手というのは大昔はとても駄目だったように思うが、今はそんなに駄目ではないような気もするのだが、やっぱりその辺の事情もあったのだろうか?)

打開後の手順を見る限りでは打開しないほうが良かったのでは??というぐらいに居飛車側に気持ちのよい手が続く。久しぶりに書くが「これだけでご飯三杯」な手の連続だ。千日手打開後は、武術の師範同士の模範演技を見ているかのような、居飛車側にとって気持ちよすぎる手順だった。

居飛車党で先手中飛車にやられている方は是非、日ごろの鬱憤を晴らす意味でも鑑賞する価値のある棋譜になっている。

先手中飛車を明示してくれた場合、相振りが出来ない居飛車党は本局の手順が参考になるように思う。5筋を謝って面白くないように見えても、がっちり守ってしまえば袖飛車からの攻めのほうが分かりやすい。本譜の▲7九角という手が玉を広くして5筋を守る一石二鳥の手なので覚えておきたいところ。

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Author:将棋観戦
「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

また、あまり推敲することなく投稿しているので、観戦記内に誤字脱字、情報の誤りがある場合があります。お気づきの場合はコメント欄にてご指摘いただけると助かります。早急に訂正させていただきます。

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