加藤桃子女流王座の就位式スピーチが凄い件

第1期リコー杯女流王座就位式のスピーチが各所で話題になっていました。曰く、加藤桃子女流王座が16歳とは思えない堂々たるスピーチを行ったと。

気になってしまい、紙媒体で一番詳しいものを買おうと思いました。こんなところにも、良い影響を与えているわけです。しかしあまりに気になって探してみると…全文ありました(苦笑)。速報性としての意義を失いつつある紙媒体において、その棲み分け、生存戦略の在り方についても考えたい所ですが、自分の生存戦略に忙しいのでひとまず一旦は置いといて、素晴らしいスピーチに目を通しました。

第1期リコー杯女流王座就位式(こちらでスピーチの全文が見れます)。



「あの大震災の日、私は将棋会館で記録係を務めていました。交通手段がなくなったため、その日対局があった森下(卓)先生と歩いて帰りました。そのときに迷っていた気持ちを伝えたところ、森下先生は『それは出る一手です』とお答えになられまして、私の気持ちが固まりました。



まず巷で噂になりがちな、なぜ奨励会員が?というところに言及します。



そして迎えた五番勝負の第1局から第3局まで高級ホテルを使わせていただきました。
第1局の場所、こちらのホテルニューオータニでは関係者の皆さまとの会食のときに、普段は食べられないようなおいしいご料理をいただきました。(略)第2局は愛知県のホテルフォレスタでした。対局場から見える景色は緑がいっぱい広がっていて気持ちよかったです。(略)第3局は大阪のザ・リッツ・カールトンでした。3局とも母と一緒だったのですが、エグゼクティブスイートという部屋をご用意していただき、部屋に入った瞬間にとても広くて驚きました。『ああ、こんな家に住みたい』と感激してしまいました(笑)。



そして施設提供されたホテルへの感謝。リコーさんもそうですが、文化の維持存続の応援というのが第一義であるとしているものの、それに付随する宣伝効果は無いよりもあったほうがよいわけで。16歳の等身大の背伸びしない形での言及がより施設の印象を高めています。


清水先生と盤を挟んで向かうことでいままでと違う自分を見つけることができたこと、若いうちからこのような経験をさせていただいてうれしく思います。今回女流王座というタイトルを預からせていただく形になります。修行中の身である私がタイトル保持者として何をすべきか考えた時に、いまはひらすら強くなること、来期のタイトル戦ではさらに強くなった私の将棋を見ていただくことだと思っております。

今回担当していただいたリコーの馬上さんには何から何まで大変お世話になりまして、感謝の気持ちでいっぱいです。研究会で鍛えていただいている先生方、一門の先生方には将棋だけではなく、礼儀も教えていただいております」



スピーチの最初から最後まで、対戦者である清水市代への尊敬と感謝の念が根底に流れている。このスピーチは就位への歓びよりもむしろ、清水への謝辞ですらあると思われるぐらいだ。

若い人がタイトルを獲得した時に、「預からせていただく」というのは谷川浩司永世名人が名人位を獲得した頃からの伝統?だが、そこに続く言葉の力強さ、覚悟に倍以上の齢を重ねた人間であるところの私は素直に驚き羨ましく感じる。

リコーがこの棋戦の発足に何を意図したか?はわからないが、第一期の女流王座が加藤桃子であり、そしてこのスピーチが行われたということだけをとってみても、成功した、その意義はあった、と言えるのではないか。

コンピュータ将棋が人間を凌駕しつつあることが徐々に明らかになっているこの局面で、男性棋戦ではなく女流棋戦で、しかもプロアマ奨励会問わず参加できる大会が発足したのは、単なる勝敗を超越した、新しい展開にむけた第一歩だと言えるのではないか。


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里見香奈奨励会1級が遂に入品!(初段に昇段!)

実は前々から注目していたのだが、成績に差し障りがあると困ると思い、昨晩深夜に呟いただけだったのだが…

なんと!

無事に入品(初段に昇段すること)しました!

里見香奈奨励会1級、初段に昇段!
更新: 2012年1月 7日 17:35

関西奨励会1月第1例会は本日1月7日(土)、大阪市福島区の関西将棋会館で行われ、里見香奈奨励会1級(19歳・森けい二九段門下)が1局目に勝ち、12勝4敗で奨励会初段に昇段しました。奨励会初段の資格を得た女性会員は、現行規定では里見初段が初めてとなります。

《昇段規定》
初段~三段までの昇段は:8連勝・12勝4敗・14勝5敗・16勝6敗・18勝7敗
三段→四段(プロ棋士)年2回の三段リーグに参加し、1・2位の成績を取ること

里見香奈奨励会1級、初段に昇段!



実は直近で連勝が続いており、これを逃してもかなり実現可能性の高い目が残っていたのですが、一発で決めたかったでしょうし、本当に良かったです。

奨励会の有段者は、またひとつ世界が違うと思うので大変だとは思いますが、是非三段リーグの可能性がなくなるまで、挑戦し続けて欲しいと思います。

本人が女性初の四段昇段することを目標にするのと同時に、今後の女性棋士のためにもなるでしょうし。尤も本人は後進のために…というよりは、本人の精進として歓びをもって修行に取り組んでいるのでしょうね。

加藤桃子奨励会一級にもよい刺激になるでしょうし、お互いに切磋琢磨することで、気づいたらふたりともプロになっていた、というのが最高の展開ですね。


今後も、「将棋道」を楽しく歩み続けて欲しいものです。

以下は、アイドルっぽいノリの自著。カバーを外したところにあるお宝?も是非見て欲しいところです。

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(2010/07/21)
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ペース配分 第1期リコー杯女流王座戦第1局 ▲清水市代-△加藤桃子

この棋戦のトーナメント表(http://www.shogi.or.jp/kisen/jo-ouza/1/honsen.html)を見て欲しい。

右側の山の違和感がわかるだろうか?とりあえずはアマがいないことはわかる。全員段級位が付いているからだ。

しかし、よく見ると二人の奨励会2級がいることがわかる。しかも挑戦者決定戦がその二人同士で戦っている。では、女流棋士が弱いのだろうか?というとそういうわけではない。

右の山の敗退者の多くが男性棋士に勝ったことがある棋士が多く含まれている。単純にこの奨励会参加中の二人の棋士は強い。そういうことだ。

勝負事において、誰が弱いとか、なぜ勝ったのか、とか敗因は?などというのは基本的には関係ない。強いから勝つ、それだけの話しだ。

そういうわけで勝ち上がってきた加藤桃子奨励会1級は強いからこの大舞台に立っている。勝ち上がりの途中で奨励会の昇格も実現したようで、競馬で言えば夏の上がり馬、という感じだろうか。


第1期リコー杯女流王座戦決勝五番勝負第1局 ▲清水市代-△加藤桃子

対する、左の山を登ってきたのは常勝女王、清水市代清水市代にとって得るものの少ない戦いとなった。もしかすると外野の声としても判官贔屓の日本人らしく加藤桃子を応援するものが多いかもしれない。

とはいえ、今期の成績が示すとおり女流棋士NO1として、その存在を賭けた戦いを一身に背負うこととなった。対あから戦といい、清水市代だけが耐えうる試練として将棋の神様が与えた…という物語を外野は思うが、当人たちは勝負に没頭するだけなのだろう。

戦型は清水市代先手ということで相掛かり中原流となった。この将棋は最近復活しており、私はとても嬉しい。自分で指すことはもはやないが、最も好きな戦型のひとつだ。

先手は目一杯に盤面を使い、ギリギリのシノギを後手がみせる…という戦いになる。

プロを目指すものとして、事前の準備は重要だ。加藤桃子はおそらく先手番ならこう、後手番ならばこれという作戦を用意していたはずだ。

そしてこの先手の作戦は予想されていたこともあり、かなり先の局面までは予め講じていたのではないか。

54手目の△3三銀打ち、までは前例を踏襲しているが、要はそういうことだ。

そこから、最強手の応酬で将棋は進む。ちょうど昔から男性棋士の将棋は手を殺しあう、女流棋士の将棋は主張を通し合うというような趣旨の話があるが、その通りとなった。

本局は60手目あたりまで両者の指し手が早い。これまた競馬で恐縮だが、大舞台、初のG1に出場した若駒が、若干かかり気味に前に出ていき、全体がそれに釣られてラップが上がっている状態だろうか。

このペースではこの距離はもたない。持ち時間3時間というのは、距離でいえば1800~2200メートルのイメージだろうか。マイラーとステイヤーの両方が戦える距離だ。

ちょうど清水市代という棋士はその真摯な取り組み姿勢とあわせて、時間があればあるほど実力を発揮するタイプだ。実力のブレを丹念な読みで整えていく。その凛とした立ち居振る舞いは、どんなに長時間の対局でも決して乱れることはない。

ある種のものが繰り返しの抽出を経て生まれるようにして、清水市代の名局は紡ぎだされる。

対する加藤桃子はまだ修行中の身だ。途中で私も気づいた(http://twitter.com/#!/shogiwatch/status/127640955527495680)のだが、修行で染み付いた時間感覚が決して抜けることはない。

ある種の職業につく人々の体には決して抜けることのない香りがまとわりつくものだが、そのようにして指し手を進めていく。修行においては、逡巡が命取りとなりうる。その研鑽の道をくぐり抜けることができたものだけに、清水市代のような洗練の過程が許される。

結果的には、その両者のペース配分が将棋の命運を分けることとなったのだが、そのペースを落とすべきタイミングはほんの1・2手のはなしだったのだから将棋というのは恐ろしいものだ。

先に息が上がったわけではない。若駒の頼もしい走りに呼応するようにして最強の手を繰り出した61手目に勝負のアヤがあった。

すこしペースを緩めていれば、もう少しだけ選択の幅があったかもしれないが、この61手目の選択により、清水市代の勝ちは一本道となっていた。

ニコニコ動画の、真田圭一プロの解説が素晴らしかった。声がすっきりしていて滑舌が良く、喋りが続く。一人での解説というのはなかなかに大変だと思うが、合いの手としての画面上のコメントがあるので、ニコニコ動画としては1名体制のほうが良いのだろう。

攻防手、攻めの手が続く中での受け一方の手により、先手は奈落に落ちた。ここでペースを緩めることにより、後手の単騎逃げが実現してしまった。

▲8六歩という手は、清水市代ほどの実力者であればこれでは届かないという感触は絶対にあったはずで、序盤の手の流れから言っても▲7一銀は打ちたかった。どこで打つか?というタイミングだけの話で、その時期をはかるためだけの考慮時間であり、手の組み合わせだったように思う。

▲7一銀を打たないのであれば、▲7三歩という手の意味がなくなってしまうので、負けてもどこかで打って欲しかった気はする。(http://twitter.com/#!/shogiwatch/status/127609041932394496)


+++++++++++++++++++++++++++++++++

奈落、と書いたが戦型の特性上負けるときはそうなることもあるので仕方ない。得意形で負けのワカレではなかったので、そこまでのダメージは無いだろう。それよりも加藤桃子のペースに惑わせられなければ大丈夫という手応えまで感じていてもおかしくはない。

次の後手番での清水市代の戦型選択に注目したいが、相居飛車の矢倉系の将棋か、加藤桃子が戦略家なのであれば清水市代の右玉を誘うかもしれない…。

加藤桃子は時間の使い方としては今のままでいいと思う。プロ野球選手を目指す高校生が木製バットで戦うような考え方もあるが、まずは勝ち抜かなければその高みに到達することはできないのだから。



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この戦型の面白さに目覚めた人は是非。相掛かり系の定跡本は一〇年に一度しか出ないので、出たら買いです。


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里見香奈、奨励会1級編入試験初日は1勝1敗に。

5月3日に行われた奨励会1級編入試験初日の結果は、一勝一敗だったようだ。

里見香奈、編入試験の結果

加藤桃子2級、伊藤沙恵2級と対戦し、加藤桃子2級には敗北し、伊藤沙恵2級には勝利したとのこと。

この順番で対戦したのであれば、初戦で負けたということであり、相当本人としてはプレッシャーの掛かる第二局だった気がするが、見事勝ち切ったということか。

1級入会は21日の西山朋佳4級との香落ち戦に持ち越されたが、2級への仮入会は果たされたとのこと。しかしこの仮入会なる制度、今回の特別措置の中の特別措置のようなもので、具体的にどういうものなのかはよく分からない。一定期間中に1級に上がらないと退会とかの条件がつくのだろうが、まあ緩めでしょう。

このへんは入会前提のようであり萎える部分ではあるが、是非21日に勝ち切ってすっきり1級を勝ちとって欲しいところ。

男性プロ棋士全体の表現としては「三段リーグを抜けるのは無理でしょう」という感じなので、まずは三段リーグまで行って欲しいところだ。

三段リーグで5期ぐらいやるチャンスがあれば、構成面子によっては指し分け程度までは行けるのではないか。そして女性初の入品の可能性は5割以上あると思う。

里見香奈女流もどうせ角道を塞ぐ将棋を指すならば西川和宏プロや永瀬拓矢プロを見習うべきでは?


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「将棋観戦記」というブログで、プロ棋士の将棋を観戦して思ったことを記しています。棋力はありませんが、将棋観戦の楽しさを一人でも多くの人に知ってもらい、「観る将棋ファン」を増やすために貢献できればと思います。主に順位戦速報・タイトル戦等、ネット中継されている将棋を中心に将棋観戦記を書いています。棋譜・符号はなるべく用いずに、将棋のルールが分からない人でも、将棋の勝負の面白みが伝わるように努力します。

基本的にはリアルタイムでの将棋観戦中に思ったことを書き溜めつつ、対局終了後の感想を付け加えて、将棋対局のあった翌日の朝7時頃にアップされるように将棋観戦記を予約投稿しています。「一日一観戦記」をモットーにしているので、同日にネット中継が重なった場合は、対局の重要度を個人的に評価して観戦記の投稿日を調整しています。

将棋観戦中に書き始め、対局が終了すると思われるところから観戦記を完成させていることが多いです。文章内の形勢判断は個人的主観によるもので、観戦中の控え室のプロの意見を取り入れず、将棋ソフトの解析を行なっていないため、形勢判断が正しくない可能性があります。

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